商品の復権は鉱山と市場で始まり、まだポートフォリオに届いていない。ブルームバーグ商品指数が年初来32%上げ、エネルギー株が42%上げた2026年、米国の投資アドバイザーが商品に振り向ける顧客資産は平均4.6%にとどまる。
マーチャンツ・ニュースのジャコモ・プランデッリ氏は9月4日付のニュースレターで、この差こそが投資機会の全てであり、差が埋まる過程を内側から見たものが「ルネサンス」だと書いた。本稿はその主張を1つも省かずに書き起こし、ブルームバーグの指数資料、IEA の7月報告、ロイターの首脳会談報道、ポリマーケットの2市場、そして SEC・EDINET・e-Stat・FRED の4つの一次情報で数字を確かめた。読み進めると、日本はこの話の外側ではなく、2026年1月以降は最も直接の当事者になっていることが見えてくる。
ニュースレターはルディ・ドーンブッシュの言葉から始まる。「経済では、物事は思ったより長くかかり、それから思ったより速く起こる」。商品は2026年の静かな主役で、指数は年初来およそ31%、エネルギーは米国株で最も上昇率の高いセクターである。それでも平均的な米国の投資アドバイザーは顧客資産の約4.6%しか商品に振り向けていない。上昇は鉱山と市場で始まり、ポートフォリオにはまだ及んでいない。
指数は動き、ポートフォリオは動いていない — 32%と4.6%の間にあるもの
ブルームバーグの2026年8月31日付ファクトシートによると、商品指数 BCOM のトータルリターンは年初来32.06%、直近1年で42.79%、円建てなら年初来34.52%、1年で55.28%である。2025年通年の15.77%を8カ月で2倍にした。構成比はエネルギー36.1%、農産物30.7%、貴金属15.0%、産業金属14.0%で、個別では金12.2%、ブレント原油10.3%、WTI 8.1%、天然ガス6.2%、銅5.9%と続く。ニュースレターの「およそ31%」は9月4日時点の値で、8月末の公式値と整合する。
図1 — ブルームバーグの騰落率の図を本稿が読み取って再構成し、右に BCOM の公式値と S&P500 のエネルギー株を並べた
ブルームバーグの図は2024年12月31日を0とした3本の線で、商品指数は2025年4月の関税ショックで一時マイナスに沈んだあと、2026年1月から急角度で上がり、4月に38%前後の高値を付けた。S&P500 は1〜2月の17%を高値に3月に8%まで下げてから戻し、米国債指数は16カ月で5%前後にとどまる。Investing.com の集計では、S&P500 のエネルギー株 (XLE) は8月31日時点で年初来42.32%と、他のどのセクターよりも上げ幅が大きい。原油は米イランの戦闘とホルムズ海峡の通航制限で2025年末の安値から2倍を超え、FRED の WTI は9月1日に1バレル91.48ドルである。本誌がホルムズ危機で動く日本株で追った通航6隻の実相が、そのまま指数の年初来32%の主因になっている。
一方の4.6%は、アバディーン・インベストメンツが2025年10〜11月に米国の投資アドバイザー300人 (顧客資産1,160億ドル) に行った調査の数字である。44%のアドバイザーは「商品の配分は5%超が望ましい」と答え、6%以上とする層もいる。2026年に貴金属を増やすと答えたのは37%、商品全般は29%で、約3分の2が地政学リスクの回避を利点に挙げ、75%超が1年と5年の両方で分散効果を期待する。ニュースレターが言う「鉱山と市場では始まったがポートフォリオには届いていない」は、この調査の言い換えである。差が4.6%から6%に埋まるだけで、顧客資産1,160億ドルの調査対象で16億ドルが商品に流れる計算になる。
株式1に対して商品0.78 — 50年の比率が示す「安さ」の中身
ニュースレターが「より的確な尺度」と呼ぶのは、GSCI トータルリターン指数を S&P500 で割った比率である。この比率は50年以上さかのぼるサイクルの底に近い水準にあり、逆数 (株式÷商品) は2025年8月に過去最高を付けて2000年のITバブルの頂点を上回った。9月の比率は約0.78で、BigGo の8月31日付記事によれば50年平均は約1.1である。
図2 — 相対サイクルの転換点の模式図と、本稿が集めた比率の水準、アドバイザーの配分調査
模式図の読み方は単純で、金色の三角 (上) は商品が株に対して割高だった1973〜74年の石油危機、1990年の湾岸戦争、2008年の資源高の頂点、橙の三角 (下) は商品が割安だった1970年代初め、2000年、2020年、そして現在である。相対サイクルは50年で3度転換し、最初の2度の底のあとには、それぞれ10年にわたって実物資産が金融資産を上回った。ニュースレターの要点は現在の水準より一段深いところにある。相場はすでに商品を底から押し上げたが、市場が物理的な希少性に対して付ける価格は、その傍らに積み上がった巨額の金融資産に比べてほとんど動いていない。ここ数年で最大級の商品高が、50年の差をほとんど埋めていない。商品は値を戻したが、希少性はまだ価格に織り込まれていない。読者は最初の上昇に乗り遅れたのではなく、2度目の上昇にはまだ早い段階にいる、というのがニュースレターの位置づけである。
この主張の裏付けとなる数字を本稿で補う。UBS のサガール・カンデルワル氏は8月21日付の顧客向けリポートで「商品の上昇局面に備えよ」と記し、バークレイズは「次の商品ショックが形になりつつある」、HSBC は「余裕在庫が急速に減っている」と書いた。銅は1月29日に LME 3カ月物で1トン14,527.5ドルの最高値を付け、8月7日にも14,258ドルまで戻した。タングステンは3,000ドル超、ウランは1ポンド90ドル超である。比率0.78が意味するのは、これだけ動いても株式の側がさらに上がったため、商品の相対的な安さが解消していないという事実である。
鉱石が尽きたのではない、鉱石を素材に変える資金が逃げた — IEA の投資統計
ニュースレターが「この数カ月で最も変わった部分」と呼ぶのは供給側で、強気の根拠は地球上の鉱石が尽きることではない。鉱石を使える素材に変える資金が、需要が上向く瞬間に産業から流出したことである。IEA が7月16日に公表した「重要鉱物見通し2026」は率直で、2025年の重要鉱物への投資は9%減り、電池材料 (リチウム・ニッケル・コバルト) の資本支出は20%超減り、リチウム専業は約40%減らした。探鉱支出も10%超減った。唯一の例外が銅で、銅専業の投資は約8%増えた。
図3 — 採掘と精製の上位3カ国 (Mining Visuals) と、IEA の投資・集中・費用の数字
商品ごとの供給の状況は大きく違う。だからニュースレターは「あらゆるものが15年間投資不足だった」と言う人を信用しない。実態はもっと明確で、もっと実用的だ。供給側の対応力が弱まっているのは、最も再構築しにくい工程である。最も再構築しにくい工程は採掘ではなく精製で、同じ IEA の報告は精製の集中が過去最高になったと記す。レアアースを除いた精製の首位国の平均シェアは72% (2023年70%) で、全鉱物で見た首位精製国の平均は70% (2020年68%)、中国とインドネシアの2カ国で2023〜25年の精製供給の増加分の4分の3超を占めた。マンガン・ニッケル・黒鉛では増加分のほぼ全てが首位供給国によるものだった。西側が長年手放してきたのは、この段階である。
Mining Visuals の図はその構造を6鉱物で示す。レアアースは採掘の上位3カ国 (中国・ミャンマー・米国) で84%、精製の上位3カ国 (中国・米国・マレーシア) で94%。黒鉛は88%と99%、コバルトは83% (コンゴ民主共和国が首位) と87% (精製は中国が首位)、ニッケルは79%と80% (どちらもインドネシアが首位)、銅は50%と63%、リチウムは75% (豪州が首位) と95% (精製は中国が首位) である。採掘で分散している鉱物ほど、精製で中国に集まる。銅でさえ精製の上位3カ国のうち首位は中国で、コンゴ民主共和国とチリが続く。
最も重要な商品は最も小さい市場 — 6.5兆ドルと3,000億ドルの計算
1つの数字が問題の見え方を一変させる。IEA は、中国の拡張されたレアアース規制が完全に適用された場合、中国外の年間6.5兆ドルの下流生産が危険にさらされると見積もる。自動車、ハイテク、防衛、エネルギーにまたがる。電池用黒鉛の貿易が途絶するだけで年間3,000億ドル超に及ぶ。ニュースレターはここで立ち止まる。経済全体にとって最も重要な商品は、最大の市場を持つものではないかもしれない。それは、下流の1兆ドル規模の産業を止める、小さくて目立たない素材かもしれない。市場規模は戦略的重要性を測る誤った尺度で、これに気づくとサイクル全体の見取り図が変わる。
IEA のビロル事務局長は同じことを費用の側から言う。重要鉱物は電池セルの費用の約4分の1を占めるが、電気自動車の価格の約3%にすぎない。レアアースは永久磁石の費用の約40%だが、車両の価値の1%未満である。「莫大な経済価値が比較的少量の重要鉱物に依存している」というのが報告の結論で、だからこそ高リスク11材料の戦略備蓄は9億ドル未満で賄え、磁石の脱中国は10年で約600億ドルの投資で足りると計算する。公的資金の拠出表明は2023〜25年で4倍の650億ドルに増えたが、投資全体は減った。金額は小さく、時間は長い。ここに差が生まれる。
時間軸のずれ — 価格は1秒、融資は数カ月、分離工場は数年
優位が続く理由は時間軸のずれである。価格は1秒で動き、資金調達は数カ月、分離工場や磁石の生産ラインは数年かかる。IEA は、既存の首位国の外で精製設備を建設する費用は20%から150%超高く、運転費も約50%高いと見積もり、これを「鉱物安全保障のプレミアム」と呼ぶ。2035年時点で計画されているレアアース精製能力は想定される鉱山産出の約3分の2、磁石の生産は需要の約3分の1にとどまる。中国のレアアース精製シェアは2023年の90%超から2025年に85%へ下がり、2035年に70%へ下がる見通しだが、下がってもなお7割である。
2025年に中国が重希土類と磁石の輸出を制限したとき、中国外の自動車メーカーは部品を入手できず、一部は生産を減らした。これは供給統計には表れない、すでに生産ラインを止めた不足である。2025年4月4日の公告第18号で7元素 (サマリウム・ガドリニウム・ジスプロシウム・テルビウム・ルテチウム・スカンジウム・イットリウム) と磁石が許可制になり、その後2カ月で中国の磁石輸出は約4分の3減った。スズキは5月26日から6月6日までスイフトの国内生産を止め、フォードはシカゴ工場のエクスプローラーの生産を5月に1週間止めた。電動シート、ブレーキ、ステアリング、ワイパー、燃料噴射のモーターに入る小さな磁石が届かないだけで、生産ラインは動かない。IEA が2025年から2026年4月までの価格として記すのは、ベースメタルが3分の1上昇、銅の最高値、リチウム2倍超、コバルト約130%高、タングステン6倍で、その裏に投資減がある。
ボトルネックが交渉の駒になった — 9月24日の首脳会談と予測市場
こうした事情の全てが、レアアースの話をどの供給統計にも表れないものに変える。それは交渉である。中国の支配力は鉱山ではなく主に加工工程にあるため、この投資機会全体の最大の変動要因は、どこかで新しい鉱山が開くことではない。中国政府が輸出許可を出し続けるかどうかであり、それは市場の判断ではなく政治の判断である。
図4 — ポリマーケットの2市場 (年内の関税合意、9月末までの追加制裁) と、首脳会談までの日程、米国向け輸出の実績
いま風向きは緩和の方向にある。ロイターは9月4日、習近平国家主席が9月24日のワシントンでの首脳会談に中国企業の最高経営責任者の大規模な代表団を同行させる計画だと報じた。習氏が企業経営者を伴って外遊するのは2015年以来で、2020年に始まった技術・教育・不動産への規制強化で多くの経営者が不興を買っていたことを考えれば異例である。中国政府が投資と通商の関係を保ちたいと示す合図として広く読まれ、中間選挙を前にしたホワイトハウスに経済面の成果を提供する狙いもある。そして米国側の要求の筆頭にあるのは、米企業向けのレアアース輸出許可の拡大である。磁石のボトルネックは通商交渉の付随的な論点ではなくなり、主要議題の1つになった。ホワイトハウスは「中国のCEO団は把握していない」と答えている。
予測市場の参加者はすでに平穏に賭けている。ポリマーケットで年内の米中関税合意は8月19〜20日に91.8%まで上がり、8月24〜27日に84.8%へ下げ、9月7日時点で87.5%と、ニュースレターが言う「90%近辺」で往復している。9月末までに米国が対中の新たな制裁を科す確率は8月26日の25%から9月3日以降7.5%へ低下した。近い将来については、このニュースレターが挙げる全てにとって追い風である。供給ショックなし、新たな対立の激化なし、許可は出続ける。中国税関の数字もそれを裏づけ、米国向けの磁石は2026年7月に647トンと、規制後初めて2024年の月平均を上回った。規制対象の化合物は7月29トン (6月8トン) で、規制前の水準にはまだ遠い。
握手は解決を意味しない — 11月10日の期限と取り消せる許可
しかし首脳の握手を問題の解決と取り違えてはならない。首脳会談で手渡された許可は次の対立で取り消せる許可であり、前述の依存構造は2人の指導者がカメラに向かって笑っても消えない。しばらく静かになるだけである。これはニュースレターのどの図表でも価格に織り込めない唯一の変数で、許可の発給状況と9月24日の首脳会談を注視せよ、と結ぶ。この分野では、中国政府の判断がどの鉱山よりも局面を動かす。
期限は具体的にある。2025年10月9日に中国が発表した拡張規制は、中国産の原料や技術を使って海外で作られた製品にまで及ぶ域外適用を含み、10月30日の米中合意で2026年11月10日まで1年間停止された。停止であって撤回ではない。米国向けのテルビウムは2026年1〜7月に直送がゼロで欧州経由に回り、ジスプロシウムは2025年4月以降直送がなく、酸化ルテチウムの世界輸出は7月にゼロになった。価格も二重構造になった。8月17日時点で酸化ジスプロシウムは中国国内1キロ205〜211ドルに対し西側1,100〜2,000ドル超、酸化テルビウムは989〜998ドルに対し3,600〜5,000ドル超で、5〜10倍の開きがある。ブラジルのセラ・ベルデが結んだ15年契約の下限価格は575ドルと2,050ドルで、これですら中国国内の2〜3倍である。マッキンゼーは2035年でも中国外のジスプロシウム・テルビウム供給は需要の2割未満と見込み、ベンチマークは2027年に中国外のジスプロシウムが中国国内の最大8.3倍になると予測する。本誌がレアアース30銘柄を役割で読むで書いた「中国が握るのは鉱山ではなく精製工程」が、そのまま価格差の形で現れている。
日本はもう対岸の火事ではない — 対日磁石輸出52%減と GDP 1.3%
ニュースレターは米中の話として書かれているが、2026年の日本はこの話の当事者である。2026年1月6日、中国商務部は高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を念頭に、軍民両用品目の対日輸出を即日禁止する措置を公表した。翌7日には日本産ジクロロシランの反ダンピング調査も始まった。中国税関によれば、2026年7月の中国から日本へのレアアース磁石輸出は111トンで前年同月比52.2%減、前月比13.6%減である。減少幅は1年1カ月ぶりの大きさで、性能を高めるジスプロシウムなどの厳しい規制が効いている。
図5 — 中国から日本への磁石輸出の月次、依存度と損失試算、有価証券報告書15社の語の出現回数
JETRO の集計では、中国から日本への磁石 (HS 85051110) は2025年4月の92,214キロから許可制で5月に25,719キロへ落ち、6月131,947キロ、7月232,626キロ、8月255,695キロと戻り、11月に304,551キロと最多になった。許可は申請から承認まで3カ月超かかり、企業は商務部の審査の透明性の低さを訴えた。日本のレアアース調達の対中依存は2010年の89.8%から2024年に62.9%へ下がり、ベトナム32.2%、タイ4.8%が代わった。日本経済研究センターの2025年の数量ベースでは66% (2009年は93%) で、酸化ランタンは100%、酸化イットリウムは94%が中国産である。ジスプロシウムとテルビウムは野村総合研究所の木内登英氏が「ほぼ100%」と書く。
損失の試算は3種類ある。木内氏は2010年の経験を当てはめ、レアアース輸入の3カ月停止で約6,600億円 (GDP 0.11%)、1年で約2.6兆円 (0.43%) と見積もる。大和総研は2025年12月5日、レアアース・レアメタルの輸出規制で実質 GDP が1.3〜3.2%下押しされるとし、部材まで含む全面停止が1年続けば約7兆円、雇用90万人相当の減少と計算した。みずほリサーチ&テクノロジーズは1月22日、対中輸入が1年停止した場合 GDP 0.9%の下押しとする。対象になり得る品目は電気機械・電子部品7.7兆円、コンピューター2.4兆円、精密機械0.4兆円、レアアース等0.2兆円の計10.7兆円で、2024年の対中輸入の42%に当たる。産業別では自動車 (特に電気自動車とハイブリッド車) の生産17.6%減、風力発電12%減、電子部品8.5%減という推計がある。
対策も進んでいる。国家備蓄の目標は需要の60日分から、地政学リスクの高い鉱物は180日へ引き上げる案が出た。豪州ライナスはマレーシアで中国外初の商業規模の重希土類分離を2025年5月 (ジスプロシウム) と6月 (テルビウム) に始め、分離能力は年1,500トン、双日と JOGMEC は日本向けに2023年の契約で重希土類の65%、改定契約で中重希土類の75%を確保した。双日は2025年10月30日、豪州鉱石をマレーシアで分離した重希土類の日本への輸入開始を発表した。岩谷産業は2025年3月に仏カレマグの分離工場に参入し、日米両政府は2026年3月19日の首脳会談でレアアース・リチウム・銅の共同開発に合意して三菱マテリアル (5711)や三井物産 (8031)が米国内の4事業に参加する。南鳥島沖では探査船「ちきゅう」が1月に深海レアアース泥の試掘を始め、2027年1月に日量約350トンの採鉱試験、2028年度以降の商業化を目指す。ただし中国産精鉱の平均価格が1トン約3,600ドルなのに対し、南鳥島産の採掘費は7,000〜70,000ドルと見積もられ、「ちきゅう」の運用費は年に百数十億円である。本誌が米軍のレアアース脱中国で追ったマレーシアの再編は、日本にとっては双日とライナスの契約が実態である。
有価証券報告書に書かれた「銅」と、書かれなかった「レアアース」
EDINET で2026年6月提出の有価証券報告書15社を機械集計すると、資源関連の用語の分布が見える。「銅」は住友金属鉱山 (5713)で142回、JX金属 (5016)で157回、三菱マテリアル (5711)で88回、三菱商事 (8058)で53回、DOWA (5714)で51回出るのに対し、「レアアース」を書いた会社は15社中8社で、信越化学工業 (4063)の10回 (希土類磁石を1973年から武生工場で製造)、大平洋金属の4回 (レアアース分離・精錬の研究開発を開始)、TDK (6762)と岩谷産業の3回が上位である。伊藤忠商事 (8001)は銅もレアアースも重要鉱物も1回も書いていない。
回数より記述の中身に目を向けたい。住友金属鉱山はリスクの項に「中国の輸出規制や中東情勢悪化によるホルムズ海峡封鎖などにより、レアアースや石油製品の供給の途絶や価格の高騰が生じ、当社の生産活動に影響を及ぼす可能性」と書き、TDK は「磁気応用製品のマグネットに用いられるジスプロシウム等の重希土類は中国に、二次電池に用いられるコバルトはコンゴ民主共和国に依存」と明記して使用量削減に取り組むとした。三菱商事は銅価格が1ポンド0.1ドル動くと当期純利益で年56億円の変動と試算し、チリのアングロスール社に45.1億ドルで20.4%を出資して2025年の同社銅生産約21万トンに持分を持つ。丸紅 (8002)は銅1トン100ドルの変動で年約13億円、三井物産は銅価格が3カ月遅れで連結業績に反映されると書く。三菱マテリアルは銅精鉱の処理量を2025年度比60〜70%へ減らし、電子基板くず (E-Scrap) の処理を2035年度に倍増させると記した。買鉱条件 (TC/RC) の低迷で鉱石を製錬する事業から回収・再生の事業へ移る、という精製側の判断である。双日は「レアアースなどのクリティカルミネラルについても、経済安全保障の重要性を踏まえ、サプライチェーンの多角化」と書き、岩谷産業は「フランスのカレマグ社に出資し、レアアースを精錬する工場建設を進める」と記した。有報が語るのは、日本の資源会社の損益が銅に最も敏感で、レアアースはまだ商社と磁石メーカーのリスクの項にとどまる、という現状である。
誰の売上と費用になっているか — SEC・FRED・e-Stat
米国側の損益は SEC の XBRL に出ている。2026年4〜6月期、フリーポート・マクモランは売上高70億2,900万ドル、営業利益20億300万ドル、サザン・コッパーは42億8,900万ドル、26億2,300万ドルで営業利益率は61%、手元現金は56億6,500万ドルに積み上がった。金のニューモントは売上高61億1,800万ドル、純利益22億200万ドル、現金90億900万ドルである。リチウムのアルベマールは2025年通年の営業赤字3億6,710万ドルから、4〜6月期に営業利益4億5,290万ドルへ戻った。IEA が「リチウム投資40%減」と記した局面で、炭酸リチウムは第1四半期に1トン約26,278ドルとほぼ2倍になり、赤字が1年で黒字に変わった。
図6 — 米国の鉱山・素材6社の直近四半期、FRED の商品価格、e-Stat の非鉄金属製造業、レアアースの二重価格
レアアースの2社は対照的だ。MP マテリアルズは4〜6月期の売上高1億850万ドルに対し営業損失3,200万ドル、設備投資は2億3,030万ドルで売上の2倍、現金は2025年末の11億6,600万ドルから4億2,910万ドルへ減った。エナジー・フュエルズは売上高2,510万ドル、営業損失3,060万ドルである。IEA が「首位国の外で精製設備を建てる費用は20〜150%高い」と書いた数字が、そのまま損益計算書に出ている。銅の会社が現金を積み上げ、レアアースの会社が現金を減らす。これが「鉱物安全保障のプレミアム」の会計上の帰結で、6.5兆ドルの下流を守る費用を誰が前払いしているかを示す。
FRED の7月の月平均は銅1トン13,543ドル、ニッケル16,632ドル (5月18,793ドル)、アルミニウム3,158ドル (5月3,658ドル)、亜鉛3,594ドル、錫52,882ドル、鉄鉱石101.6ドル (5月111.6ドル) で、IMF の全商品価格指数は193.2 (5月214.5) と5月から下げている。8月末の指数32%高は6月の調整をはさんだ数字で、ニュースレターの「まだ早い」は、5〜7月の下げの後で書かれている。米国の生産者物価は全商品284.1、金属・金属製品384.9である。
日本側では e-Stat の法人企業統計 (四半期、非鉄金属製造業・全規模) が価格を利益に変えた。営業利益は2025年4〜6月の1,381億円から2026年4〜6月の3,853億円へ2.8倍、売上高は4兆2,488億円から5兆8,176億円へ37%増えた。住友金属鉱山の2026年3月期は売上高1兆7,415億円 (9.3%増)、税引前利益2,556億円 (714.7%増) である。一方で鉱工業指数の電気銅は2024年1〜3月の101.3から2026年1〜3月の88.9へ下がり、鉱業の営業利益は2025年1〜3月の1,918億円から2026年1〜3月の950億円へ半減した。国内の製錬量は減りながら、権益と価格で利益が増える。日本の非鉄の2026年前半はこの形で、三菱マテリアルが精鉱処理を6〜7割に減らす判断と同じ方向を向いている。
金のトレーダーから見た復権 — 主役は金ではない
金の側から見ると、ニュースレターが描く復権は別の側面を持つ。金は2026年1月28日に1オンス5,589.38ドルの最高値を付けたあと、9月初めに約4,369ドルまで21.8%下げた。BCOM で金は12.2%の最大構成銘柄だから、指数の年初来32%は金の下げを吸収したうえでの数字で、原油と産業金属が引っ張った。米国のアドバイザーが2026年に増やすと答えた資産は貴金属が37%、商品全般が29%で、ポートフォリオに入る順番は金が先である。ここに時間差がある。指数を押し上げているのはエネルギーと銅で、ポートフォリオに入ってくるのは金。この2つが同じ「商品」として語られる限り、比率0.78の谷を埋める資金は、谷を作った側 (産業金属・エネルギー) とは別の資産に流れ込む。金のトレーダーが読み取るべきは、金が商品の復権に乗り遅れているのではなく、2025年に先に走った金が2026年に一服し、産業金属と原油が追いついている、という順番である。
ニュースレターが「鉱石ではなく資金が逃げた」と言う投資減9%は、金には当てはまらない。金の設備投資は続き、ニューモントの4〜6月期の設備投資は7億1,900万ドル、現金90億ドルである。希少性の織り込みが遅れているのは、精製という中間工程を持つ鉱物のほうで、金は精製のボトルネックを持たない。同じ商品でも、ボトルネックの有無で「早い・遅い」が分かれる。
これから確かめる4つの数字
第1は9月24日の首脳会談で、米企業向けの輸出許可の拡大が文書化されるか、そして11月10日の停止期限が延長されるか。ポリマーケットの87.5%と7.5%は「平穏」を織り込んでいるが、許可は取り消せる。第2は対日輸出の月次で、7月の111トンが8〜9月にどこまで戻るか、財務省の貿易統計と中国税関で追える。第3は IEA の次回統計で、2026年の投資が9%減から反転するか、特にリチウムの40%減が価格2倍を受けて戻るか。第4は比率0.78で、商品指数がさらに上がっても S&P500 が同じだけ上がれば谷は埋まらない。アドバイザーの4.6%が6%に動くとき、その資金が金に行くのか銅と原油に行くのかで、谷の埋まり方が変わる。
ドーンブッシュの言葉の後半、「それから思ったより速く起こる」は、まだ起きていない。指数が32%上げ、アドバイザーの配分が4.6%のままである9月上旬は、その前半にいる。
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