AIの電源に賭ける新しい投資信託が動き出した。だが運用会社が示す上位10銘柄は4通りあり、名前が掲げる2つの部品は保有の3分の2にとどまる。届出書と公的統計を1つずつ突き合わせた結果をまとめる。

2026年8月17日、米国のCboe BZX市場に1本の上場投資信託が上場した。銘柄コードはPSOX、証券識別番号は87975E735、経費率は0.75%。運用会社は英国に本拠を置くテマで、うたい文句は「AIの背後にある電力に投資する」である。投資の見立ては2つの部品に絞られている。1つは電圧を安定させ雑音を取り除く積層セラミックコンデンサー、もう1つは電気を変換し制御するパワー半導体。運用会社はこの2つをAI基盤の新たなボトルネックと位置づけ、データセンターが800ボルト直流の配電へ移った後、AIサーバー向けの積層セラミックコンデンサー需要は2027年までに約5倍になり、ラック1台当たりのパワー半導体の搭載量は11倍を超えて増えうると説明する。前者はSemiAnalysisの2026年の見立て、後者はミレアセット証券の2026年6月の見立てとして注記されている。製造が資本集約的で技術の壁が高く既存の大手に有利であること、運用は指数に連動せず人が銘柄を選ぶ形で、SemiAnalysisと共同で調べていることも並んでいる。

本誌は運用会社が公表した保有明細と保有内訳の表、米証券取引委員会に提出された目論見書、金融庁のEDINET、経済産業省の生産動態統計、米連邦準備制度の統計を突き合わせた。数字は互いに合わないところが多く、合わない理由の多くは書類の側に残っていた。

公表された保有内訳の全項目
公表された保有内訳の全項目

公表された3つの表を、まず全項目そのまま書き出す

運用会社のサイトは「2026年9月8日現在」として3つの表を掲げている。上位10銘柄はデルタ電子10.66%、インフィニオン・テクノロジーズ9.10%、村田製作所9.06%、ヤゲオ8.61%、サムスン電機8.58%、ブルーム・エナジー5.58%、太陽誘電4.54%、アイクストロン4.48%、ホーリーストーン4.44%、エイア・テスト・システムズ4.29%。国別は台湾33.79%、米国21.82%、日本18.61%、ドイツ13.58%、その他12.20%。業種別は情報技術89.89%と資本財10.38%の2つだけである。

この10社を足すと69.34%、上位5社だけで46.01%になる。国別で最も重いのは台湾で、日本は3番目にとどまる。業種別の2つを足すと100.27%で、100%を超えるのは現金が差し引きになっているためである。

同じ運用会社が示す上位10銘柄が、4通りある

ここから数字が合わなくなる。同じ上位10銘柄が、出どころによって4通りある。

上位10銘柄の4通りの一覧
上位10銘柄の4通りの一覧

8月26日の発表資料はインフィニオン11.24%、ヤゲオ10.48%、デルタ電子10.41%、村田製作所10.30%を挙げた。運用会社のサイトの本文はデルタ電子10.85%、村田製作所9.23%、インフィニオン8.93%、サムスン電機8.82%、現金及び現金同等物8.27%、ブルーム・エナジー5.14%、太陽誘電4.70%、アイクストロン4.26%、ナビタス4.14%、エイア4.11%と並べ、いずれも「2026年9月4日現在」と付記する。9月4日付の保有明細はデルタ電子10.66%、インフィニオン9.10%、村田製作所9.06%、ヤゲオ8.61%、サムスン電機8.58%で、現金は▲0.31%である。

そして「2026年9月8日現在」と表示された表の10銘柄は、9月4日の保有明細と1つ残らず同じ数字だった。小数第2位まで10銘柄すべてが一致する。国別と業種別も明細から復元できる。台湾は明細のデルタ電子・ヤゲオ・ホーリーストーン・プロスペリティ・エイジア・ヴァイタル・パワーチップ・MPIの7社を足すと33.79%、米国5社で21.82%、日本4社で18.61%、ドイツ2社で13.58%となり、いずれも表の数字と合う。9月4日は金曜、9月8日は火曜で、間に2営業日ある。台湾、日本、ドイツ、韓国の株価と為替がすべて動かずに10銘柄の比率が小数第2位まで揃うことは実際には起こらない。表に付いた日付と、表が示している時点は別である。

食い違いが最も大きいのは現金である。サイトの本文は8.27%で5番目に置き、明細は▲0.31%とする。差は8.58ポイントで、正負も逆になる。本文の上位10にはヤゲオもホーリーストーンも載っていないが、明細では8.61%と4.44%で上位10に入る。8月26日の発表資料の時点でヤゲオは既に10.48%あった。つまりサイトの本文が示しているのは、8月26日より前の姿である。

上場9日後に名前と銘柄コードが変わり、投資方針の記載は変わらなかった

この食い違いの理由は、米証券取引委員会に提出された書類に残っている。

改名の前後で変わったところ
名の前後で変わったところ

8月17日に提出された要約目論見書の表紙は「Tema Power Semiconductor ETF Trading Symbol: SIC」である。パワー半導体の投資信託で、銘柄コードはSICだった。この版の本文にMLCCという語は一度も出てこない。

8月26日に提出された版の表紙は「Tema MLCC & PowerSemi ETF (PSOX) formerly the Tema Power Semiconductor ETF (SIC)」となり、目論見書の日付は「2026年8月17日、2026年8月26日改訂」と記される。上場から9日後に、名称と銘柄コードが変わった。

本誌が2つの版を1文ずつ突き合わせたところ、差が出たのは表紙と見出しの名称、銘柄コード、日付の3か所だけだった。投資方針の記載は1字も変わっていない。純資産の80%以上を投じる先は「運用会社がパワー半導体会社と判断した会社」のままで、パワー半導体会社の定義も、リスクの記載も、地域の記載も同じである。改訂版で増えたMLCCの語4回は、すべて投資信託の名称の中にある。「MLCC会社」という定義は、どちらの版にも存在しない。

積層セラミックコンデンサーの会社が記載のどこに入るのかを探すと、パワー半導体会社の定義に並ぶ製品の一覧に「コンデンサーおよび接続部品や受動部品などの電子部品」という1行が見つかる。積層セラミックコンデンサーの会社はこの1行を通って対象になる。保有明細でこの分野の会社は6社39.06%を占め、単独では最大の区分である。名前の半分を担う分野が、記載では製品一覧の1行に収まっている。

7月に登録された「MLCC専業」の投資信託には、40%という数値基準があった

記載にMLCCの定義がないのは、書き忘れたからではない。定義を持つ別の登録が、1か月前に出されている。

上場していない MLCC 専業の登録
上場していない MLCC 専業の登録

2026年7月21日に提出された届出書には「Tema MLCC ETF」という投資信託が載っている。銘柄コードも上場市場も経費率も空欄のままだが、MLCC会社の定義だけは細かく書かれている。年間売上高の40%以上が対象製品の研究、開発、設計、製造、生産、組立、実装、流通、販売、試験、保守から生じていること。あるいは今後18か月から24か月で40%以上になる見込みがあり、かつ積層セラミックコンデンサーが事業の重点であると公表していること。対象製品には積層セラミックコンデンサーのほかアルミ電解、フィルム、タンタル、高分子、シリコン、電気二重層の各コンデンサー、チップ抵抗器、インダクター、コイル、信号用変成器、回路保護部品、誘電体材料、電極材料、導電ペースト、製造と検査の装置、シリコンやガラスの中間基板、シリコン貫通電極まで並ぶ。

この投資信託が上場した形跡はない。走り出したのはパワー半導体の投資信託の方で、9日後に名称だけMLCCを足した。結果として、名前にMLCCを掲げる投資信託の記載には「年間売上高の40%以上」という数値基準が存在しない。7月の届出書にはそれがあった。

事業で分け直すと、名前どおりの2分野は64.2%

目論見書の話を離れて、実際に何を持っているのかを見る。公表の業種別は情報技術89.89%と資本財10.38%の2つだけで、これでは部品を作る会社と装置を作る会社と発電する会社が同じ枠に入る。本誌は20銘柄を事業内容で分け直した。

事業内容で分け直した内訳
事業内容で分け直した内訳

積層セラミックコンデンサーの会社が村田製作所太陽誘電、ヤゲオ、サムスン電機、ホーリーストーン、プロスペリティ・ダイエレクトリクスの6社で39.06%。パワー半導体の会社がインフィニオン、ルネサス、STマイクロエレクトロニクス、ナビタス、モノリシック・パワーの5社で25.15%。この2つを足した64.21%が、名前どおりの部分である。

残る36.10%の中身は次のようになる。電源と電力変換の装置がデルタ電子とヴァイコーの2社で14.41%。製造装置と検査がアイクストロン、エイア・テスト・システムズ、MPIの3社で9.74%。その他の関連事業がブルーム・エナジー、エイジア・ヴァイタル・コンポーネンツ、古河電気工業の3社で9.73%。受託生産のパワーチップが2.18%。ブルーム・エナジーは燃料電池でデータセンターに電気を供給する会社、エイジア・ヴァイタルは冷却の送風機を作る会社、古河電気工業は電線と光部品の会社で、いずれもコンデンサーもパワー半導体も作っていない。この3社で9.73%を占める。

公表の純資産総額と、保有明細から出る純資産が3.03倍ずれている

金額の側にも合わないところがある。

純資産総額の食い違い
純資産総額の食い違い

運用会社のサイトは純資産総額897,628ドル、口数20,000口と記す。割ると1口44.88ドルになる。ところが保有明細の時価を全部足すと2,718,030.18ドルで、3.028倍になる。この2つはどちらも「2026年9月4日現在」と付記されている。

どちらが比率の分母かは、割り算をすれば分かる。デルタ電子の時価289,871.56ドルを明細の合計2,718,030.18ドルで割ると10.6648%となり、明細に記された10.66%と一致する。公表の純資産総額で割れば32.3%になり、明細のどの数字とも合わない。比率の分母は明細の側にある。

上場投資信託の口数は、指定参加者が設定単位でまとめて作ることで増える。1口44.88ドルのまま純資産が3倍になるには口数が3倍必要で、20,000口が61,000口前後まで増えた計算になる。サイトの基本情報だけが最初の値のまま止まっている、と読むのが自然である。同じページに載る経費率0.75%を明細の純資産に掛けると年20,385ドル、公表の純資産に掛けると年6,732ドルで、運用会社に入る金額も3倍違ってくる。

20銘柄・上位5社で46%、現金は差し引きでマイナス

集中の度合いも押さえておきたい。

集中度と現金
集中度と現金

銘柄数は現金を除いて20。目論見書は15超100以下と定めるので、下限に近い。上位3社で28.82%、上位5社で46.01%、上位10社で69.34%。銘柄ごとの比率を2乗して足すハーフィンダール指数は646で、20銘柄が均等なら500だから、それより3割ほど偏っている。最大はデルタ電子の289,872ドル、最小はMPIの26,464ドルで、金額では11倍の開きがある。

現金及び現金同等物は▲8,546.40ドル、比率で▲0.31%である。買い付けた株式の受渡しが済む前に評価だけが立つと現金の欄は一時的にマイナスになるため、それ自体は珍しくない。金額も純資産の0.31%で、運用に支障が出る規模ではない。ただし運用会社のサイトの本文が示す8.27%とは正負が逆である。

目論見書はこの投資信託を、分散の要件が緩い「非分散型」の投資会社と位置づけ、少数の発行体に高い比率を割り当てられると明記する。実際に上位5社で46.01%を占め、うち3社が積層セラミックコンデンサーの会社である。

記載は台湾を書かず中国を書き、実際は台湾が33.79%で中国が0%

地域についても、目論見書の記載と実際の保有にずれがある。

地域の記載と実際の内訳
地域の記載と実際の内訳

目論見書は「資産の相当部分は米国、欧州、韓国、日本、中国に投じられる見込み」と書く。リスクの記載でも中国、欧州、日本、韓国の4つを個別に立てる。台湾はどちらにも1度も出てこない。

保有明細では台湾が33.79%で最大である。デルタ電子、ヤゲオ、ホーリーストーン、プロスペリティ・ダイエレクトリクス、エイジア・ヴァイタル、パワーチップ、MPIの7社が並ぶ。中国は1社もなく0%である。目論見書が名指しした5つの地域のうち、最も大きく書かれた中国の保有がゼロで、書かれていない台湾が3分の1を占める。台湾の7社のうち5社が受動部品か積層セラミックコンデンサーを作る会社で、8月26日の名称変更と同じ向きに寄っている。ドイツとオランダを合わせた欧州は17.47%になる。

54ボルトから800ボルトへ ― 電流が16.7分の1、抵抗損が278分の1

ここまでが書類の話である。ここからは、この投資信託が拠って立つ技術の中身を確かめる。

800ボルト直流へ移る理由
800ボルト直流へ移る理由

現在のデータセンターは交流415ボルトまたは480ボルトの三相で受電し、機器の側では直流48ボルトから54ボルトを使う。この48ボルトを800ボルトへ上げるというのが移行の中身である。

理由は電気の基本式で説明できる。電力は電圧と電流の積で決まるため、同じ電力を運ぶなら電圧を上げた分だけ電流が下がる。600キロワットのラックは48ボルトなら約12,500アンペアが流れるが、800ボルトなら約750アンペアで済む。16.7分の1である。導体で失われる電力は電流の2乗に抵抗を掛けた値なので、電流が16.7分の1になれば損失は約278分の1に落ちる。銅の断面積は流す電流の大きさで決まるから、電流が下がれば同じラックを細い導体で結べる。1メガワットのラックを48ボルトから54ボルトで組むと銅の母線だけで約200キログラム必要になるが、800ボルトなら片側1,250アンペアで足りる。

なぜ今なのかは、ラック1台の消費電力が押し上げているためである。第1段階は2026年後半から2027年前半でラックは180キロワットから220キロワット、第2段階は2027年から2028年で600キロワット超、第3段階は2028年後半から2029年で停電に備える電池のラックが分かれ、第4段階は2029年以降に半導体変圧器が入る。2030年までに追加される800ボルト直流の設備は約39ギガワットと見込まれている。48ボルトのまま電流だけを増やす道は、銅の量と発熱で物理的に塞がる。

変換の段を減らすと効率が82.0%から87.4%へ上がる

電気は受電からGPUまで、電圧を変えながら何段も通る。段ごとに数%ずつ失われ、それが積み上がる。

変換の段と機器の市場
変換の段と機器の市場

現在の交流経路は7段の変換を通り、累積の効率は82.0%である。第1段階で83.7%、第2段階で86.5%、第3段階で86.9%、第4段階で87.4%まで上がる。施設全体では約5%の消費電力の削減にあたり、1ギガワットの計算負荷なら50メガワットを超える常時の削減になる。電気代の削減額は年間で数千万ドルの規模と見積もられている。

機器の値段も出ている。ラックの外に置く電源は1台40万ドルから50万ドル、設置量に直すと1メガワット当たり約50万ドルで、市場規模は2028年に約110億ドルでピークを迎える。電池のラックは1メガワット当たり約20万ドル。半導体変圧器は1メガワット当たり100万ドルから150万ドルで、2030年の市場規模は約320億ドルと見込まれる。効率はスイス連邦工科大学チューリッヒ校の試作が400キロワットで98%を出し、実用域は98.0%から98.5%である。重量は40分の1、体積は14分の1になるという主張もある。

この分野で設計を公表している2社が、保有明細の1位と2位である。デルタ電子は110キロワットの電源ラックに80キロワットの電池を組み込み、6段で480キロワットを構成する設計を示した。インフィニオンは4キロワットの部分電力変換基板を並列につないで12キロワットにする方式を採る。停電に備える電池ユニットは現在5.5キロワット級で、8キロワットから12キロワット級へ上がる見込みである。2026年5月には北米の電力信頼度協議会が第3水準の注意喚起を出しており、電力系統の側でも扱いが変わり始めている。

積層セラミックコンデンサーが5倍に増えるという主張の中身

もう一方の部品も、仕組みから見ておきたい。

積層セラミックコンデンサーの仕組みと需要
積層セラミックコンデンサーの仕組みと需要

積層セラミックコンデンサーは、薄いセラミックの層と金属の電極を交互に重ねた部品である。層の数で容量を稼ぐため、1個の中に数百から千を超える層が入る。セラミックの誘電率が高いほど同じ体積で多くの電気をためられ、材料はチタン酸バリウムが主流になっている。役割は2つあり、1つは電圧の揺れを吸って一定に保つこと、もう1つは不要な高い周波数の成分を接地側へ逃がすことである。

数が増える経路は3つある。第1に、電圧を変える段ごとに、入口と出口へコンデンサーの群れが必要になる。800ボルト直流への移行で段の構成が変わり、これまで使われなかった高い耐圧の品種が新たに必要になる。第2に、ラックの電力が180キロワットから600キロワット超へ上がると、同じ電圧の揺れに抑えるために必要な容量が電流に比例して増える。GPUの消費電流が一瞬で大きく増えると電圧が沈むため、その沈みを埋める部品をGPUのすぐ近くに多数置く必要がある。第3に、窒化ガリウムや炭化ケイ素の素子はシリコンより高いスイッチング周波数で動くため、配線に生じる寄生インダクタンスが効きやすくなる。寄生インダクタンスの小さい部品を近くに並べる設計になり、1個当たりの容量は下がる代わりに個数が増える。この3つが重なった結果として、AIサーバー向けの需要が2027年までに約5倍という見込みが示されている。

日本は年1兆777億個のセラミックコンデンサーを作り、1個0.76円で売る

この部品を日本がどれだけ作っているのかは、公的統計で分かる。

日本の受動部品の生産
日本の受動部品の生産

経済産業省の生産動態統計を品目ごとに年計すると、2024年のセラミックコンデンサーの生産は1兆777億個、金額で8,194億円だった。2023年は1兆37億個、7,428億円で、数量は7.4%、金額は10.3%増えている。金額を数量で割ると1個当たり0.760円で、2023年の0.740円から2.8%上がった。アルミ電解コンデンサーは1個17.9円、タンタルは20.0円、フィルムは90.4円だから、積層セラミックは桁が2つ小さい。この単価の部品を年に1兆個作る規模が、資本集約的で技術の壁が高いという説明の裏付けになる。

インダクターは2024年に1,612億個で数量が32.6%伸び、金額も981億円で22.7%増えた。AIサーバーの電源で必要になる部品の並びと合う。一方でチップ抵抗器は数量が5.7%減り、アルミ電解コンデンサーも5.7%減った。受動部品の中で伸びている品目と減っている品目が分かれている。

この投資信託の日本勢は村田製作所9.06%、太陽誘電4.54%、ルネサス3.96%、古河電気工業1.05%の4社18.61%で、積層セラミックコンデンサーとして組み入れられているのは村田製作所と太陽誘電の2社13.60%にとどまる。アルミ電解コンデンサーの日本勢は1社も入っていない。

有価証券報告書に「800V」と書いた日本企業3社は、いずれも組み入れられていない

本誌は受動部品とパワー半導体の日本勢16社の最新の有価証券報告書をEDINETから取得し、全文で語を数えた。

有価証券報告書の語数
有価証券報告書の語数

「800V」を書いていたのはニチコン富士電機三菱電機の3社である。ニチコンは電気自動車の充電時間を縮めるための800ボルト以上の高電圧化と、炭化ケイ素の進化に伴う125度を超える高温対応の必要性を記す。生成AIサーバーとデータセンター向けの設備投資が一段と活発化しているとし、コンデンサー事業の営業利益は196.3%増えて45億98百万円になった。同社の本文にコンデンサーの語は186回出てくる。富士電機はパワー半導体12回、炭化ケイ素10回で、売上高1兆2,276億円、営業利益1,366億円。三菱電機は800Vが2回で最多、データセンターも10回書いている。この3社はいずれも保有明細に名前がない。

もう1社、名前のない会社の記述が具体的である。日本ケミコンはAIサーバー電源用の基板自立形アルミ電解コンデンサー「KHRシリーズ」を開発したと記す。サーバー用電源では高さ70ミリメートル以上のコンデンサーを横置きする設計が増えているため最大100ミリメートルの長尺を揃え、同一寸法の従来品と比べて平均25%程度の高容量化を実現したと記す。AIサーバーで広く採用されている48ボルト直流給電方式に対応する製品として、導電性高分子ハイブリッドの開発も進める。本文にコンデンサーの語は131回出る。この会社も保有明細にない。

組み入れられている3社が書いていることも見ておく。村田製作所は「積層セラミックコンデンサがサーバー向けを中心に幅広い用途で増加した」と記し、売上収益は5.0%増の1兆8,309億円、営業利益は0.8%増の2,818億円だった。有形固定資産1兆3,009億円が総資産の41%を占め、AIサーバーを中心としたデータセンターの需要増加を見据えた相当規模の設備投資の継続が、監査上の主要な検討事項として監査報告書に記載されている。資本集約的という説明は、この1行で裏が取れる。太陽誘電はデータセンター向けに大型・高耐圧の高信頼性品の開発へ注力するとし、営業利益は91.2%増の200億円になった。ルネサスはパワー半導体10回、窒化ガリウム10回に対し、データセンターは1回、自動車は70回で、向いている先が違う。

窒化ガリウムで最も多く書いていたのは京セラの34回とサンケン電気の23回、炭化ケイ素ではロームの12回と富士電機の10回だった。どちらも保有明細にない。

米国勢5社のうち2社は営業赤字、1社は損失が売上高の2.9倍

保有する米国上場5社の直近の決算を、米証券取引委員会に提出された財務データで確かめる。

米国勢5社の決算
米国勢5社の決算

ナビタス・セミコンダクターは2026年上期の売上高1,913万ドルに対し営業損失5,496万ドルで、損失が売上高の2.9倍にあたる。研究開発費2,772万ドルは売上高の1.45倍で、2025年通期の純損失は1億1,695万ドルだった。窒化ガリウムは800ボルト直流への移行で伸びると見込まれる分野だが、現時点で収益は立っていない。保有比率は4.17%である。

エイア・テスト・システムズは2026年5月期の売上高5,000万ドルに対し営業損失1,415万ドル。炭化ケイ素の素子を検査する装置を作る会社で、損失は売上高の28.3%にあたる。保有比率は4.29%。この2社で8.46%が営業赤字の会社である。

対照的なのがモノリシック・パワー・システムズで、2026年上期の売上高17億8,483万ドル、営業利益5億4,505万ドルで営業利益率30.5%、粗利益率55.3%。組み入れ5社で最も利益が厚い。ヴァイコーは2025年12月期に売上高4億5,270万ドル、営業利益8,183万ドル。ブルーム・エナジーは同期に売上高20億2,399万ドル、営業利益7,280万ドルで、金額では組み入れ全社の中でも大きいが、燃料電池でデータセンターに電気を供給する会社である。

経費率0.75%が受け取る金額と、この規模の投資信託が置かれる位置

事業として見たときの数字も整理しておく。

費用と規模
費用と規模

経費率0.75%の内訳は運用報酬0.75%、販売手数料0%、その他0%である。目論見書は「その他の費用」を当期の見積もりであると注記しており、運用会社が費用を負担する形と読める。投資家の側から見た費用は明快で、1万ドルを投じて年5%で回った場合、1年で77ドル、3年で240ドルになる。同じ主題を掲げる広く分散した投資信託の経費率は0.35%から0.50%が多く、0.75%はその1.5倍から2倍にあたる。

運用会社が受け取る金額は、保有明細の純資産270万ドルに掛けて年20,385ドルである。上場投資信託の運営に必要な監査、管理、上場の費用を賄える規模ではない。規制上の四半期の保有報告はまだ1本も提出されておらず、直近の提出は2026年7月29日付で、上場前のものである。現時点で外から検証できるのは、運用会社が任意で公表する日次の保有明細だけになる。

為替の対応は行わず、売買と配当の受け取りのために短期間だけ外貨を持つと定められている。日本、台湾、韓国、ドイツ、オランダの株式が82.19%を占める組み合わせで為替をそのまま受けるため、円やニュー台湾ドルの動きが基準価額に直接効く。貸株を行うことがあり、借り手は時価相当の担保を差し入れる。私募や流動性の低い証券への投資は純資産の15%まで認められ、非上場会社も含みうる。売買の実務は委託先のタイダル・インベストメンツが担う。

なお、この種の資金がAI関連へ集まり続ける構図は通貨の側からも論じられている。ドイツ銀行の報告「Capitalism and the dollar」は、AIをめぐる競争が米国への資本流入とドル需要を左右すると整理する。米国の統計で見ると、半導体・電子部品の生産指数は2019年平均から2026年平均で68%上がり、同分野の生産者物価は26%、プリント基板の生産者物価は64%上がった。同じ期間に電子機器製造の就業者数は4%減っている。電力の生産者物価は36%上がった。設備と電気の値段が上がり、人は増えていない。

投資家が次に見る数字

  • 規制上の四半期の保有報告がいつ出るか。運用会社が任意で公表する明細と違い、こちらは提出義務があり、時点も定まる。名称と記載のずれが埋まるかどうかも、次の届出書で分かる。
  • 純資産総額と口数の公表値が更新されるか。保有明細から出る純資産は公表値の3.03倍で、経費率0.75%を掛けた金額も3倍違う。どちらが正しいかは、次の更新で判明する。
  • 積層セラミックコンデンサーの比率が39.06%から動くかどうか。目論見書に「MLCC会社」の定義がない以上、この比率は運用の判断だけで動かせる。7月に登録された40%基準の投資信託が別途上場するのかも合わせて見ておきたい。

名前が指す2つの部品は、確かにAIサーバーのラックの中で数が増える。600キロワットのラックを48ボルトで組めば12,500アンペアが流れ、800ボルトなら750アンペアで済むという計算に、異論の余地は小さい。ただしこの投資信託を買うことは、その計算に賭けることとは別である。上場9日後に名前が変わり、投資方針の記載は変わらず、公表された上位10銘柄は4通りあり、純資産総額は保有明細の3分の1で、目論見書が書かない台湾が33.79%を占める。これらはすべて、運用会社が公表した資料と、当局へ提出した書類に書かれている。