北海道電力の送配電子会社が11月1日から託送料金を上げる。値上げの大半は基本料金で、電力量料金はほぼ据え置きだ。系統用の蓄電所は約款の特別措置を使えば増える額を抑えられるが、放電の側で払う基本料金は上がる。
託送料金は、小売電気事業者や発電事業者が送配電網(系統)を使うときに払う料金で、家庭や企業の電気料金に含まれている。料金は、契約の大きさ(キロワット、kW)で決まる月々の固定料金である基本料金と、使った電気の量(キロワット時、kWh)に応じて払う電力量料金に分かれる。北海道電力の送配電子会社、北海道電力ネットワークは9月11日、託送料金を11月1日に見直すと経済産業相に届け出た。中規模の工場やビルが使う高圧の標準的な契約では、基本料金が1kWあたり月842.60円から1,108.80円へ3割強上がる一方、電力量料金は1kWhあたり2.28円のまま動かない。北海道電力(9509)は9月25日、これを受けて11月から電気料金を上げると発表した。
蓄電事業を解説する投稿では、送配電網に直接つなぐ系統用の蓄電所は、託送料金の条件を定めた託送供給等約款の特別措置によって値上げの負担がほとんど変わらないとの指摘があった。節約の効果が増すのは、工場やビルに置く蓄電池だという。約款を読むと、蓄電所の負担を抑える特別措置はある。ただ、使うと放電の側に基本料金がかかり、しかも申し出がなければ使えない。
北海道電力ネットワークの託送料金、値上げはほぼ基本料金に
北海道電力ネットワークが公表した単価表では、標準的な契約や実量の契約は基本料金だけが上がり、電力量料金は据え置かれる。家庭や商店の低圧、中規模の工場やビルの高圧、大きな工場の特別高圧のいずれも同じ形だ。基本料金と電力量料金の両方が上がるのは、発電事業者が送配電網に電気を送り出すときに払う発電側課金(2024年に導入。約款での名称は系統連系受電サービス)だけだ。なお、基本料金がなく使った量だけで払う従量制の契約は、電力量料金が上がる。
| 契約の区分 | 基本料金(1kW・月) | 電力量料金(1kWh) |
|---|---|---|
| 低圧・電灯(実量) | 295.90円→477.40円 | 8.24円→8.24円 |
| 低圧・動力(実量) | 664.40円→1,006.50円 | 4.46円→4.46円 |
| 高圧(標準) | 842.60円→1,108.80円 | 2.28円→2.28円 |
| 特別高圧(標準) | 515.90円→628.10円 | 1.02円→1.02円 |
| 高圧(従量) | 基本料金なし | 16.09円→20.45円 |
| 発電側課金(本土) | 110.00円→137.50円 | 0.35円→0.43円 |
(出所: 北海道電力ネットワーク 別紙2 託送料金単価表、2026年9月11日。消費税等相当額を含む。電灯は家庭など、動力は工場のモーターなど、実量は使った電力の実績で契約電力が決まる契約、標準は基本料金と電力量料金を組み合わせた一般的な契約。本土は離島を除く)
値上げは、物価や金利の上昇などで送配電の費用が膨らんだためだ。託送料金は、国が送配電会社ごとに5年間の収入の見通しを承認し、それを上限に単価を定める。この仕組みを「レベニューキャップ制度」という。同社は7月10日に見通しの変更を申請し、経済産業相は9月4日に申請どおり承認した。2023〜2027年度の5年間の収入の見通しは、1兆59億円から544億円増えて1兆603億円になった。
増えた544億円の内訳は、物価などの変動が337億円、金利の変動が125億円、送配電会社が抑えられない費用(制御不能費用)の見込みと実績の差が58億円、同じ区分のうち容量市場の約定や公募の結果で決まった費用(容量拠出金など)が24億円だった。新しい単価を使う2026年11月から2028年3月までの年平均の収入の見通しは、2,018億円から384億円増えて2,402億円になる。このうち発電側課金で賄うのは165億円(7%)で、残りの2,237億円(93%)は電気を使う側が払う。消費税等を除いた1kWhあたりの平均単価(収入単価)で比べると、低圧は10.23円から12.12円、高圧は4.69円から5.51円、特別高圧は2.70円から3.08円、発電側は0.64円から0.79円に上がる。
系統用蓄電池は特別措置を受ければ、充電の料金は失われる電気の分だけ
系統用蓄電池は、発電所に併設せず送配電網に直接つなぐ蓄電池で、電気が安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電して売るなどして稼ぐ。その施設が蓄電所だ。充電するときは電気を使う側として託送料金がかかる。これを払うのは、蓄電所に電気を供給する小売電気事業者など託送の契約を結ぶ事業者(契約者)で、電気料金を通じて蓄電所に転嫁する。放電するときは発電側課金がかかり、支払う義務は蓄電所の事業者自身にある。
充電側の負担を軽くするのが、約款の附則3にある、揚水発電所や蓄電所向けの特別措置だ。揚水発電は、電気が余る時間に水をくみ上げ、足りない時間に落として発電する仕組みで、約款は蓄電池と同じ扱いにしている。契約者があらかじめ申し出ると、料金の対象になるkWとkWhは、充電に使う分については「揚水等損失率」を掛けた量だけになる。充電以外に使う分はそのまま数える。揚水等損失率は、充電して放電するまでの間に失われる電気の割合で、送配電会社と契約者が蓄電所ごとに毎年協議して決め、約款にも単価表にも値は載っていない。
措置を受けるには条件がある。ためた電気を敷地の外の利用者へ送ること、充電に使う電気とそれ以外の電気を計量器などで区分できること、あらかじめ決めた手順で充電と放電を制御できることだ。
特別措置を受けると、充電の料金から外れた電力が発電側課金の基本料金の対象に回る
放電の側では、約款の附則15の(5)が、蓄電池が放電した電気の電力量について発電側課金の電力量料金を受け取らないと定める。電力・ガス取引監視等委員会の資料によると、揚水発電と蓄電池の電力量料金を免除する方針は、他の電源との公平を保つため資源エネルギー庁の審議会で決まった。発電所に併設した蓄電池の扱いは別で、併設先の発電所の種類によっては、協議で定めた方法で算定した電力量に料金がかかる。
基本料金は扱いが違う。約款の本則22条の(2)イの(ロ)は、発電側課金の基本料金の対象を、協議で決めた送り出せる最大の電力(同時最大受電電力)から、同じ地点で電気を使う側の契約電力を引いた値とし、マイナスならゼロとする。附則3の適用を受けていなければ、充電と放電の電力が同じ蓄電所はこの差し引きがゼロになり、発電側課金の基本料金はかからない。
ただし、22条の(2)ハの(ホ)は、附則3の適用を受けている場合、損失率を掛けた後の電力(接続供給課金対象電力)1kWを契約電力1kWとみなすと定める。編集部の解釈では、附則3を使うと差し引く電力も損失率を掛けた小さな値になり、充電の料金の対象から外れた電力が、そのまま発電側課金の基本料金の対象に回る。放電の最大電力が充電と同じ出力1kWの蓄電所なら、外れる0.9kWと発電側課金の対象の0.9kWは同じ値になる。監視等委員会の中間とりまとめの概要は、発電所に併設した蓄電池について、蓄電池が充電に使う分の契約電力(接続供給課金対象電力)を差し引いて対象の電力を計算すると記しており、編集部の解釈と整合する。
編集部は、出力1kW(充電も放電も1kW)の蓄電所で、揚水等損失率を10%と仮定して、託送料金の基本料金を試算した。所内の照明や空調など充電以外に使う電気は考えず、一部の変電所につながる発電所の基本料金を割り引く「系統設備効率化割引」も入れていない。低圧で受電する系統用蓄電池は試算に含めていない。
| 基本料金(出力1kWあたり・月) | 値上げ前 | 値上げ後 | 増える額 |
|---|---|---|---|
| 高圧・附則3の適用あり | 183.26円 | 234.63円 | +51.37円(+28.0%) |
| 高圧・適用なし | 842.60円 | 1,108.80円 | +266.20円(+31.6%) |
| 特別高圧・附則3の適用あり | 150.59円 | 186.56円 | +35.97円(+23.9%) |
| 特別高圧・適用なし | 515.90円 | 628.10円 | +112.20円(+21.7%) |
(出所: 北海道電力ネットワークの託送料金単価表と託送供給等約款をもとに編集部が試算。損失率10%、系統設備効率化割引なし。附則3の適用ありは、充電側の基本料金が0.1kW分、発電側課金の基本料金が0.9kW分にかかる。損失率が1ポイント上がるごとに、高圧の増える額は約2.4円大きくなる)
附則3の適用を受けた高圧の蓄電所は、試算では1kWあたり月234.63円を払い、増える額は月51.37円で、適用がない場合の266.20円の約5分の1にとどまる。特別高圧では増える額が35.97円で、適用がない場合(112.20円)の約3分の1だ。損失率20%なら、高圧で増える額は75.24円になる。電力量料金の負担は変わらない。充電側の単価は据え置かれ、放電分は免除されるためだ。
特別措置を受けない場合と比べれば、増える額は小さい。ただ上昇率でみると、附則3の適用を受けても高圧で28.0%上がり、適用がない場合の31.6%に近い。特別高圧では、適用を受けたほうが上昇率は高い(23.9%対21.7%)。増える額が小さいのは、もともとの負担が小さいからだ。附則3の適用を受けた蓄電所は、出力の9割(0.9kW)に、1kWあたり月110円から137.50円に上がる発電側課金の基本料金を払う。高圧で増える51.37円のうち、発電側課金の分は24.75円、充電側の分は26.62円だ。
系統設備効率化割引の対象になる変電所につながる蓄電所は、割引の分だけ負担が軽くなる。割引の単価も上がり、割引Aで最も大きい区分(A-1)は59.40円から73.70円になる。割引Bの対象でもあれば単価は足し合わされる。
家庭の電気代はモデルで月481円上がり、その大半は基本料金
北海道電力は、北海道電力ネットワークが物価や金利の上昇の影響を託送料金に反映するのを受け、その変動分を電気料金に反映すると説明した。北海道電力は、大手電力に経過措置として残る規制料金についても、託送料金の変動を反映するため経済産業相に届け出た。規制料金のうち一般的な家庭向けの契約である従量電灯Bの基本料金は、30アンペアで1,254.00円から1,716.30円になる。電力量料金の単価は、最初の120kWhまでが35.69円から35.77円、120kWhを超え280kWhまでが41.98円から42.06円で、ほぼ据え置きだ。
30アンペアで月230kWhを使うモデル家庭の電気代は、月11,115円から11,596円へ481円(4.3%)上がる。481円のうち462.30円が基本料金の上げ幅で、電力量料金の上げ幅は230kWhで18円余りにとどまる。この金額は再生可能エネルギー発電促進賦課金(1kWhあたり4.18円)を含み、燃料費等調整額を含まない。
工場やビルの蓄電池は、ピークを1kW下げると節約できる額が小売料金で年3,300円余り増える
投稿が挙げた工場やビルの蓄電池について、約款で確かめる。約款19条の(2)イによると、低圧の実量契約と、契約電力500kW未満の高圧では、その月と過去11か月に記録した最大の需要電力のうち大きいほうが契約電力になる。1年で最も多く電気を使った時の値で基本料金が決まる仕組みだ。
使用が最も多い時間だけ蓄電池から放電すれば、この値が下がり、下げた1kWごとに毎月の基本料金が安くなる。契約電力500kW未満の高圧の託送料金では、1kWあたりの基本料金が3割強上がるので、ピークを下げ続けた場合に節約できる額は年間10,111.20円から13,305.60円へ、3,194.40円増える。企業が実際に払う小売の料金(託送料金の上げ幅を含む)では、北海道電力の工場向けの高圧電力の基本料金が1kWあたり月2,880.20円から3,157.10円に、ビル向けの業務用電力が2,693.20円から2,970.10円に上がり、どちらも節約できる額が年間3,322.80円増える。この金額は、力率による割引や割増を考える前の値だ。
系統用の蓄電所の収入と費用の組み立ては、蓄電事業の体系解説の事業の章で扱っている。国内の系統用蓄電池の一覧は系統用蓄電池のページに、北海道電力の開示は北海道電力(9509)の銘柄ページにまとめた。
北海道電力ネットワークの今回の値上げは、契約の大きさにかかる基本料金に偏っている。ピークを削れる工場やビルの蓄電池は、その値上げ分だけ価値が増す。系統用の蓄電所は、附則3の特別措置を受ければ増える額を高圧で約5分の1、特別高圧で約3分の1に抑えられるが、出力の9割に値上げ後の発電側課金の基本料金を払う。附則3は契約者が申し出なければ使えない。申し出がなければ蓄電所の充電には高圧や特別高圧の基本料金が満額でかかり、11月1日からはその単価が高圧で3割強、特別高圧で2割強上がる。
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