大分県由布市と山形県米沢市で建設が始まった系統用蓄電所2か所の事業で、オリックスの出資比率は23.7%にとどまり、残る76.3%は三菱UFJ信託銀行の匿名組合など外部の3者が出資する。福島県浪江町の住友商事の蓄電所は、完全子会社が全額を出資する。
大型の系統用蓄電所3か所の建設開始が、2026年9月30日と10月1日に相次いで発表された。オリックスの由布蓄電所と米沢蓄電所、住友商事の浪江町の蓄電所の3か所だ。ポートも9月29日に、小型の蓄電所4か所への投資を決めた。
系統用蓄電所は、送電網に直接つなぐ蓄電設備である。電気が余る時間帯に充電し、足りない時間帯に放電する。事業者は電気の売買の差額や、需給を整える調整力の提供で収入を得る。系統用蓄電所を個人で集計している発信者は、9月29日から10月1日に発表した3社がいずれも、建設費を自己資金だけで賄っていないと指摘した。そのうえで、規模を事業者の名前だけで数えると、各社に帰属する規模を過大に見積もることになると書いた。各社の発表や適時開示、電力広域的運営推進機関 (広域機関) が公表した長期脱炭素電源オークションの落札一覧を基に、資金調達の手法と、持ち分で換算した規模を確かめた。
由布と米沢、オリックスの出資比率は23.7%で外部の3者が76.3%
オリックスの発表 (2026年9月30日) によると、由布蓄電所 (大分県由布市) は定格出力70MW・定格容量280MWhで2028年に、米沢蓄電所 (山形県米沢市) は定格出力75MW・定格容量309MWhで2030年に運転を始める予定だ。敷地はどちらも約1万平方メートルある。同社の試算では、1日1回の充放電で、由布は一般家庭約2.3万世帯、米沢は約2.8万世帯の1日の使用量を賄える。
出資比率はオリックスが23.7%、外部投資家3者が計76.3%。同社は、外部投資家の資金を活用した系統用蓄電所の開発は初めての取り組みとしている。2024年に運転を始めた紀の川蓄電所も共同出資だが、相手は電力会社の関西電力で、出資比率は50%ずつである。オリックスは由布と米沢で、開発・運営に関する意思決定の支援や事業管理を行うアセットマネジメント業務を担う。建設中の保安管理と運転開始後の運営・維持管理 (O&M) は、グループ会社のオリックス・リニューアブルエナジー・マネジメントが行う。外部投資家の資金を活用して資本効率を高め、グループ全体の自己資本利益率 (ROE) を引き上げる狙いだと同社は説明している。
外部投資家の1つは、三菱UFJ信託銀行の連結子会社の合同会社ジーアイアイ2を営業者とする匿名組合である。同行が同日発表した資料によると、同行はこの匿名組合を通じて、オリックスなど共同投資家3社とともに出資する。匿名組合は、出資者が事業の損益の分配を受け、運営を営業者に任せる契約形態だ。同行は将来、信託機能を生かしたファンドの組成などを通じて、多様な投資家に運用の機会を提供するとしている。同行によると、100%子会社のグリーンインフラ・デベロップメントも、オリックスなど共同投資家とともにアセットマネジメントを担う。一方、オリックスはアセットマネジメントを自社の業務としており、両社で分担の書き方が異なる。
2つの発表を合わせると、出資者はオリックス、ジーアイアイ2を営業者とする匿名組合、ほかの2社の計4者になる。残る2社の名前は、どちらの発表にもない。由布と米沢で融資を受けるかどうかも、両社の発表には書かれていない。
三菱UFJ信託銀行の発表には、オリックスの発表にない一文がある。由布と米沢の2か所で、卸電力市場、需給調整市場、容量市場に参加するという記述だ。容量市場には、長期脱炭素電源オークションも制度上含まれる。この入札は、落札した電源に原則20年間、固定費に見合う収入を与える国の制度である。そこで落札の有無を確かめたが、広域機関が公表した第1回から第3回までの落札一覧に、由布と米沢の名前は見当たらなかった。オリックス株式会社の名義で落札したのは、第1回の滋賀県米原市の「米原市湖東蓄電所 (仮称)」(落札容量96,208kW) の1件である。ただ、落札一覧には仮称や記号だけの案件名が多く、名前が見当たらないからといって、落札していないとは言い切れない。
持ち分換算では、由布と米沢の589MWhのうちオリックスの持ち分は約140MWh
由布と米沢を足すと、出力145MW・容量589MWhになる。これにオリックスの出資比率23.7%を掛けると、同社の持ち分は出力約34.4MW・容量約139.6MWhで、残る約449.4MWhは外部投資家の持ち分になる。設備全体の容量と持ち分換算の容量には、約4倍の開きがある。
同様の差は、オリックスがすでに稼働させている蓄電所にもある。関西電力の発表によると、2024年12月1日に運転を始めた紀の川蓄電所 (和歌山県紀の川市、48MW・113MWh) は紀の川蓄電所合同会社が保有し、関西電力とオリックスが50%ずつ出資している。オリックスの持ち分は113MWhの半分、56.5MWhになる。
当サイトの系統用蓄電所の上場企業ランキングは個人集計の台帳を基にしており、共同事業の蓄電所は出資する各社の欄にそれぞれ設備全体の容量を計上している。オリックスと関西電力はともに「稼働1件・113MWh」で1位に並ぶが、どちらも同じ紀の川蓄電所を数えており、2社分を合計すると実際の設備の2倍の226MWhになる。由布と米沢が稼働した後に同じ方法で数えれば、オリックスの欄に589MWhが加わる。
ランキングは、どの会社がどれだけの蓄電所に関わっているかを見るには役に立つ。一方、蓄電所の利益のうち各社の業績に寄与するのは出資比率に応じた部分で、残りは他の出資者に分配される。オリックスは自らの役割をアセットマネジメントと位置づけており、出資に応じた分配とは別に、その報酬を受け取るとみられる。報酬の額は開示していない。
住友商事の浪江は全額出資で、三菱UFJ銀行がプロジェクトファイナンスを組成
住友商事の発表 (2026年10月1日) によると、浪江町の蓄電所は出力62MW・定格容量291MWhで、2029年に商業運転を始める予定だ。事業主体は浪江蓄電所合同会社で、住友商事の完全子会社BSホールディングスが全額を出資する。住友商事は発表文の注釈で、BSホールディングスについて、蓄電設備を保有する子会社と説明している。住友商事はこれまでに、建設中を含め9件・合計出力約200MWの蓄電事業を手掛けてきた。
浪江蓄電所合同会社は、三菱UFJ銀行がリードアレンジャー (融資の取りまとめ役) を務めるプロジェクトファイナンスで資金を調達し、建設工事を始めた。プロジェクトファイナンスは、事業が生み出す収益を主な返済原資とする融資手法で、親会社の信用よりも蓄電所の収益見通しが審査の中心になる。融資の額、参加した金融機関の数、親会社による返済保証の有無は、発表に書かれていない。
浪江は長期脱炭素電源オークションの落札案件である。広域機関が2025年4月28日に公表した第2回 (応札年度2024年度) の落札一覧では、浪江は応札事業者がBSホールディングス、案件名が「BS浪江」、区分が「蓄電池 (運転継続時間が3時間以上6時間未満)」、落札容量が49,905kWと記載されている。落札容量は調整係数を掛けた後の値で、出力62MW (62,000kW) の約80.5%に当たる。容量を出力で割った連続放電時間は約4.7時間で、この区分に収まる。由布 (4.0時間)、米沢 (約4.1時間)、ポートの4か所 (約4時間) も、同じ長さの範囲に入る。制度の仕組みは長期脱炭素電源オークションの解説にある。
落札で長期にわたる安定した収入が見込める浪江は、プロジェクトファイナンスを組みやすいとみられる。由布と米沢は、資金の大半を外部の共同出資者が出す形を取り、融資を受けるかどうかは開示されていない。
三菱UFJグループは由布と米沢で出資し、浪江で融資をまとめる
三菱UFJの名前は、オリックスと住友商事の両方の案件に出てくる。由布と米沢では三菱UFJ信託銀行が子会社を営業者とする匿名組合を通じて出資し、浪江では三菱UFJ銀行が融資をまとめる。どちらも三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下である。出資者は、事業が順調なら受け取る分配が増える一方、事業が不振なら出資金を失うおそれがある。貸し手が受け取るのは決まった元利金に限られるが、出資者より先に返済を受ける。同じグループが、両社の案件に出資と融資というリスクの異なる立場から関わっている。
ポートは4か所を金融機関からの調達で建てる計画、増資の資金を充てる可能性も
小型の蓄電所でも、同じ週に動きがあった。ポート (東証グロース、証券コード7047) は9月29日の取締役会で、栃木大田原・埼玉入間・埼玉比企嵐山・新潟北蒲原 (いずれも同社の案件名) の4か所への開発投資を決めた。4か所とも蓄電池の出力は約2MW、容量は約8MWhで、合計の容量は約32MWhになる。2026年11月ごろに着工し、2027年4〜7月ごろに順次稼働する予定だ。新潟北蒲原は東北電力、ほかの3か所は東京電力の管内にある。
4か所の投資額は約16億円で、同社は「複数金融機関から調達予定」とし、第三者割当増資で得た資金を一部充てる可能性にも触れた。同社は、業績への影響が軽微だとして、1か所ごとの投資額を開示していない。平均すると1か所約4億円、容量1kWh当たり約5万円になる (本稿の計算)。2026年4〜6月に決めた10か所は投資額が約39億円、容量が合計約74MWhで、1kWh当たり約5.3万円と今回とほぼ同じ水準だ。
増資の資金使途は、2つの開示で確かめられる。9月15日に決めた第三者割当増資の払込総額は2,450,482,600円 (約24億5048万円) で、10月1日に払い込みが完了した。割当先は、ビジョナルの子会社ビズリーチ (自己株式の処分653,500株)、シンガポールの投資会社ウィル・フィールド・キャピタル (新株484,100株)、一般社団法人一人親方労災保険組合 (新株48,500株) の3者である。開示された使途は次の3つで、合計24億4800万円は差引手取概算額の24億4883万円とほぼ一致する。
| 使途 | 金額 (百万円) |
|---|---|
| M&Aの待機資金 | 1,500 |
| ストック収益の成長投資 | 500 |
| 蓄電所の追加開発 | 448 |
| 3つの合計 | 2,448 |
同社によると、蓄電所の開発資金は基本的にグリーンローン (使い道を環境事業に限った借入) で調達する。先に取得する土地や、送電網につなぐための工事費負担金などで自己資金が要る場合があり、今後の開発で1か所当たり約5千万円を9か所前後に充てる想定だという。5千万円を9か所に充てると約4億5千万円で、増資の使途のうち「系統用蓄電所追加開発一部資金」の4億4800万円とほぼ一致する。投資額が1か所約4億円の規模なら、5千万円は投資額の約12.5%に当たる (本稿の計算)。
ポートは群馬県で3か所を稼働させている (伊勢崎第一が2025年6月10日、太田が6月18日、伊勢崎第二が10月16日)。3か所とも需給調整市場での取引を始めており、同社は蓄電所の事業が初年度の2026年3月期に黒字になったと説明している。今期 (2027年3月期) に開発投資を決めたのは計14か所で、すべて稼働すれば、稼働中の3か所と合わせて17か所を保有することになる。外部と出資を分け合うオリックスや、全額出資の事業会社が案件ごとに融資を受ける住友商事と違い、ポートは小型の蓄電所を自社で保有し、借入を中心に件数を増やしている。
3社とも建設資金を自社だけでは賄わず、規模は持ち分換算で見る必要がある
3社の建設資金の集め方は、外部からの出資を受け入れるオリックス、全額出資の事業会社がプロジェクトファイナンスを組む住友商事、金融機関からの借入を中心とするポートの3通りに分かれる。
| オリックス (由布・米沢) | 住友商事 (浪江) | ポート (4か所) | |
|---|---|---|---|
| 出力・容量 | 由布70MW・280MWh / 米沢75MW・309MWh | 62MW・291MWh | 各約2MW・約8MWh |
| 運転開始 | 由布2028年 / 米沢2030年 (予定) | 2029年 (予定) | 2027年4〜7月ごろ (予定) |
| 出資・保有 | オリックス23.7%、外部3者76.3% | BSホールディングスが全額出資 | ポートが保有 (今期決定の14か所と稼働中の3か所で計17か所) |
| 建設資金 | オリックスと外部3者の出資 (融資の有無は未開示) | 三菱UFJ銀行がまとめたプロジェクトファイナンス | 投資額約16億円を複数の金融機関から調達予定 (増資の資金を一部充てる可能性) |
| 主な収入源 | 卸電力・需給調整・容量の各市場 (三菱UFJ信託銀行の発表) | 長期脱炭素電源オークションによる容量収入 (第2回で落札) | 4か所は未開示 (稼働中の3か所は需給調整市場) |
| 自社の業務 | アセットマネジメント (三菱UFJ信託側も担うと発表)、O&Mはグループ会社 | 開発・保有 (子会社経由) | 開発・保有 |
共同出資にしたオリックスは、持ち分を23.7%に抑えながら大型の設備に関わり、アセットマネジメント業務を担う。浪江を子会社経由で全額保有する住友商事と、4か所を自社で保有するポートは、借入を使って規模を広げる。上場企業が関わる系統用蓄電所の規模は、事業者ごとに設備全体を数えるだけでは判断できず、由布と米沢の589MWhのうちオリックスの持ち分が約140MWhにとどまるように、持ち分で換算して初めて各社に帰属する容量が分かる。
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