GPUに対するCPUの数が1対1に近づくという見方がSNSで広がった。数えてみると、エヌビディアではグレースの世代から主力ラックがGPU2個にCPU1個で、GPU1個あたりのCPUコアも16から44へ増えている。
これまでAI向けのデータセンターは、GPUを何個積むかで語られてきた。AIが自分で調べ物をし、プログラムを動かし、データベースを引く「AIエージェント」が広がると、GPUの前後で動くCPUの仕事が増える。SNSで広く共有された4社の比較は、この変化でCPUが次の主役になるとみて、エヌビディア、AMD、アーム、インテルを並べ、「CPUは群雄割拠になりやすいが、AIシステム全体ではエヌビディアが引き続き有利」と結論づけた。本稿は、その根拠になる数字を各社の製品仕様と決算資料で確かめる。
GPUとCPUを1対1とする見通しは、インテルの最高財務責任者が4月の決算説明会で示した
この比較は、学習ではGPU7〜8個にCPU1個、推論では3〜4個に1個、AIエージェントでは1対1という3段の変化を前提にしている。この3段には出どころがある。インテルのジンズナー最高財務責任者は2026年4月23日の決算説明会で「学習ではGPU7〜8個にCPU1個、推論では3〜4対1。エージェントや複数のエージェントでは、逆向きに少し振れる可能性さえある」と述べた。同じ説明会でタン最高経営責任者も「顧客はサーバーのCPUをAI向けの半導体と並べて導入しており、その比率はCPUの側へ戻りつつある」と説明している。
比較の「1対1」は、この「逆向きに少し振れる」を丸めた表現にあたる。発言したのはCPUを売る側の財務責任者で、数字は目安として示されたものだ。ただし需要の増加そのものは、CPUを売る各社が同じ方向で説明している。アームは3月、データセンターは1ギガワットあたり現在の4倍以上のCPU容量を必要とすると述べた。インテルのジンズナー氏は、供給が足りない額は10億ドル単位に達すると述べ、費用の増加に合わせて値上げしたと話した。
エージェントがCPUを必要とする理由は、仕事の中身にある。文章を生成する処理はGPUが担うが、生成した命令に従ってプログラムを実行し、外部のサービスを呼び出し、データベースを検索し、複数のAIの仕事を割り振る処理はCPUが受け持つ。「GPUだけでは全体が速くならない」という指摘は、この待ち時間を指している。
エヌビディアの主力ラックはすでにGPU2個にCPU1個で、GPU1個あたりのCPUコアは16から44へ増えた
比率の目安を、実際に出荷されている機種と比べると食い違いが見えてくる。エヌビディアのGPU8個を載せたサーバー(ブラックウェル・ウルトラ世代)は、インテルの64コアのCPUを2個使う。GPU4個にCPU1個である。一方、GPU72個を1つのラックに収めた主力機は、前世代のグレースとブラックウェルの組み合わせからCPU36個を載せており、GPU2個にCPU1個になっている。次世代のベラとルービンの組み合わせも同じ2対1だ。発言にある学習の7〜8対1よりも、エヌビディアの主力ラックはすでにCPU寄りの構成で出荷されている。
個数だけを数えると判断を誤る。CPU1個に載るコアの数が世代ごとに増えているからだ。GPU1個あたりのCPUコアは、8基構成のサーバーで16(128コア÷8)、グレースの72基ラックで36(2,592コア÷72)、ベラの72基ラックで44(3,168コア÷72)と増えてきた。ベラは1個に88コアを持つ。
AMDの72基ラック「ヘリオス」は、GPU72個にCPU「ベニス」18個を組み合わせる。個数ではGPU4個にCPU1個で、エヌビディアの主力ラックよりGPU寄りに見える。だがベニスは1個に最大256コアを載せる。AMDはヘリオスに載せるベニスの型番を明かしていないため仮定になるが、最大構成なら合計4,608コアで、GPU1個あたり64コアとエヌビディアを上回る。「GPU1個に対してCPUがどれだけ必要か」という問いは、個数ではなくコア数で答える必要がある。
エヌビディアのGPU72個のラック7本にCPUだけのラック1本を足すと、GPU504個に対しCPU508個になる
エヌビディアは2026年3月16日、CPU「ベラ」を発表した。独自設計のコアを88個持ち、各コアが2つの処理を同時に進める。同時に、ベラを液冷で256個まとめたCPUだけのラックも示した。2万2,500以上の独立した実行環境を同時に動かせると説明しており、256個×88コアの2万2,528コアから、1コアに1つの環境を割り当てる計算になる。5月31日にはベラを「エージェントのためのCPU」と位置づけ直し、液冷の高密度ラックと空冷の2ソケット機を用意すると発表した。採用先にはアンソロピック、オープンAI、オラクル、コアウィーブなどが並び、提供は2026年秋に始まる。
このCPUラックを主力ラックと組み合わせると、1対1の比率は自社製品だけで組める。ベラとルービンの72基ラック7本にはGPU504個とCPU252個が載る。ここにCPUラック1本(256個)を足すと、CPUは508個になり、GPU504個とほぼ1対1に並ぶ。CPUラック1本で埋められるのは、72基ラック7本分にあたる(256÷36=7.1)。
SNSの比較は、エヌビディアを「総合力で最有力」と評し、GPU、CPU、ネットワークをまとめたシステムと単体のCPUサーバーの両方を持つ点を挙げた。この評価は、出荷の実績からも裏づけられる。エヌビディアは前世代のCPUであるグレースを累計で約250万個出荷したと明らかにしている。CPUの需要が増えることは、そのままエヌビディアが不利になることを意味しない。増える需要の受け皿を、同社は自社のラックの中にも外にも用意している。
一方で、同社はCPUの売上高を決算で分けて開示していない。比較が勝敗の判断材料に挙げた「採用・出荷・価格・利益率」のうち、エヌビディアについて外から確かめられるのは採用先と累計出荷数までである。
AMDのデータセンター部門は2.07倍に伸び、次世代CPU「ベニス」はマイクロソフトのAI向け仮想マシンに載る
AMDの2026年4〜6月期の売上高は115億3,600万ドルで、前年同期比50%増えた。データセンター部門は67億ドルで107%増、全社売上高の58%を占める。会社は伸びの理由にサーバー向けCPU「エピック」とGPUの需要を挙げており、この部門にはGPUも含まれる。
次世代のエピックであるベニスは、5月20日に台湾積体電路製造(TSMC)の2ナノ技術で量産に入り、7月23日に第6世代として正式に発表された。最大256コアを持ち、オープンAI、アンソロピック、メタ、マイクロソフト、オラクルが採用を決めた。マイクロソフトは7月20日、ベニスを使う仮想マシンを2種類発表している。1つはAIのデータ処理に向け、約500の物理コアと4テラバイトのメモリーを備える。もう1つは半導体設計などの技術計算に向け、176コアを持つ。比較にある「マイクロソフトのアジュールで採用(AI・データ処理向け)」は、この発表と一致する。
AMDは9月18日、第6世代エピックの上位品がベラに比べコアあたり1.2倍の性能を出すと主張した。自社の測定による比較である。比較は「サーバーCPUで高いシェアを広げる余地」とも書くが、AMDもインテルも市場シェアを開示しておらず、一次資料では確かめられない。
アームはデータセンター向けロイヤルティーが2倍を超え、自社で売るCPUの需要は2年で20億ドルを上回った
アームの2026年4〜6月期の売上高は12億8,900万ドルで22%増えた。ロイヤルティー(技術使用料)は7億1,500万ドルで、このうちデータセンター向けは前年同期の2倍を超えた。データセンター向けCPUの設計基盤「ネオバース」の出荷は累計15億コアを超え、最初の10億コアに6年かかったのに対し、直近の5億コアは9か月で出荷された。
アームの設計を使うCPUは、比較が挙げた各社に広がっている。エヌビディアのベラはアームの技術で作られ、量産に入った。グーグルはアーム系CPU「アクシオン」を自社のAI半導体TPUを制御するCPUに使う。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はメタと複数年の契約を結び、「グラビトン5」を数千万コア規模で導入する。マイクロソフトは「コバルト200」を使う仮想マシンを広げた。どの陣営のCPUが売れても、アームにはロイヤルティーが入る。
アームは3月24日、自社で売る初めてのCPU「AGI CPU」を発表し、設計を貸す会社から製品を売る会社へ一歩踏み出した。最大136コアで、TSMCの3ナノ技術で作る。最初の顧客はメタで、オープンAI、クラウドフレア、SAPなども名を連ねる。7月の決算では、2027年3月期と2028年3月期の2年間の需要が20億ドルを超え、当初示した10億ドルを上回ったと説明した。アームの株式の86.4%はソフトバンクグループが持つ(2026年5月21日時点)。日本の投資家にとって、アームの伸びはソフトバンクグループを通じて届く。
インテルのデータセンター・AI部門は59%伸びたが、受託製造部門は20億ドル超の営業赤字が続く
インテルの2026年4〜6月期の売上高は161億ドルで25%増えた。データセンター・AI部門の売上高は62億6,200万ドルで59%増、営業利益は24億7,400万ドルだった。比較にある「データセンター・AI部門は堅調(売上約62億ドル)」はこの数字にあたる。比較には作成日として「2025年9月21日」と記されているが、1年前の同じ部門の売上高は39億3,900万ドルで、中の数字は2026年のものである。
CPU需要の追い風が吹く一方で、半導体の受託製造部門の重荷は残る。同部門の売上高は57億6,500万ドル、営業損益は20億8,900万ドルの赤字だった。前年同期の31億6,800万ドルの赤字からは縮んでいる。
エヌビディアとの関係も深まった。両社は2025年9月18日に提携を発表し、インテルがエヌビディア専用のx86 CPUを作り、エヌビディアがそれを自社のAI基盤に組み込むことで合意した。エヌビディアはインテルに50億ドルを出資する。当サイトはインテルが示したCPUとGPUの比率の変化も取り上げた。インテルにとってのCPU需要の増加は、自社のCPUの販売と、エヌビディアに組み込まれるCPUの両方から入ってくる。
CPUが伸びる時代の勝敗は、CPUを何個売るかでは決まらない。GPU1個あたりのCPUコアはすでに16から44へ増え、エヌビディアはCPUだけのラックを1本足すだけで比率1対1を組める。SNSの比較が描いた群雄割拠は4社の決算に確かに表れているが、増えるCPUの需要を自社の製品で最も広く受け止められる位置にいるのは、GPUの最大手であるエヌビディアである。
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