米スペースXが鉄塔会社と、米国の携帯電話基地局の設置場所8万か所を借りる交渉をしていると、ブルームバーグ通信が10月22日に報じた。携帯電話事業への本格参入を狙う。日本では携帯大手3社が同社の衛星を使うが、電波の免許は3社が持つ。
スペースXはこれまで、米TモバイルUSと組み、地上の基地局の電波が届かない地域の通信を衛星で補ってきた。今後は米AT&T、米ベライゾン・コミュニケーションズ、TモバイルUSの米携帯大手3社と契約者の獲得を競う構えだ。周波数では米エコースターから計65メガヘルツ幅を取得したほか、800メガヘルツ帯でも最大14メガヘルツ幅を買い取る契約を結んだ。合わせると約80メガヘルツ幅になる。米連邦通信委員会 (FCC) は10月6日、衛星事業者に携帯電話会社から周波数を借りる契約を結ぶよう求める規定について、スペースXの適用除外を認めた。日本のKDDIのサービスでは、スペースXの衛星通信「スターリンク」の衛星が、KDDIに割り当てられた2ギガヘルツ帯の一部 (上り・下り各5メガヘルツ幅) を使っている。
衛星だけでは都市部の通信量をさばけず、基地局の設置場所8万か所の確保へ
ブルームバーグ通信によると、スペースXは大手の鉄塔会社と交渉しており、米国で少なくとも8万か所の基地局の設置場所を確保したい考えだ。交渉相手には米通信インフラ大手のクラウン・キャッスルも含まれる。同社は5月1日に光ファイバーと小型基地局 (スモールセル) の事業を計85億ドルで売却し、米国に持つ約4万基の鉄塔を貸す事業に特化した。ブルームバーグ通信は、設置場所の賃貸契約が数十億ドル規模になる可能性があると伝えた。クラウン・キャッスルのクリス・ヒラブラント最高経営責任者 (CEO) は10月21日の決算説明会で、個別の顧客との交渉には触れず、衛星通信の大手各社と協議していると述べた。
米ワイヤレス・インフラ協会 (WIA) によると、携帯電話用の鉄塔は2025年末時点で15万8500基 (前年末は15万4800基)、大型の基地局 (マクロ局) の設置場所は25万4850か所あった。8万か所は鉄塔の数の約半分、マクロ局の設置場所の約3割にあたる。クラウン・キャッスルが持つ鉄塔約4万基は、その半分の数になる。8万か所は通信機器を置く場所の数で、鉄塔を8万基新たに建てる計画ではない。既存の鉄塔のほか、ビルの屋上も候補になる。
スペースXが地上の基地局を必要とするのは、衛星だけでは通信容量が足りないためだ。スマートフォン (スマホ) のメイン回線として選んでもらうには、オフィスでの通話や商業施設での動画視聴が混雑する時間帯でも途切れないようにする必要がある。
衛星は1基で広い範囲をカバーできるため、人口の少ない地域に向く。都市部では狭い範囲で多くの端末が同時に通信するため大きな通信容量が必要になるうえ、建物が電波を遮る。TモバイルUSのジョン・ソー最高技術責任者 (CTO) は10月9日、ビジネス向けSNSのリンクトインへの投稿で、衛星のビーム1本が、地上の基地局のアンテナ数百面がそれぞれ受け持つ区域をまとめてカバーすると説明した。衛星のビーム1本の容量を、その数百区域分の利用者で分け合うことになる。地上の基地局は端末の近くに数多く置けるため、通信量を多くの基地局に分散できる。
国内の調査結果も、この役割分担を裏付けている。総務省が2026年1月にまとめた調査によると、KDDIの2ギガヘルツ帯の地上の基地局による人口カバー率は95.66%だが、面積カバー率は25.16%にとどまる。衛星とスマホの直接通信 (総務省の呼び方は「衛星ダイレクト通信」) を加えると、人口カバー率、面積カバー率ともに100.00%になる (2025年5月31日時点。木や建物に遮られると通信できない場合もある)。衛星が広げたのは通信エリアの面積で、人口の多い地域はもともと地上の基地局でカバーしている。
スペースXは10月8日にFCCに提出した文書で、鉄塔やビルの屋上にアンテナなどの一般的な無線設備を設置し、自社の地上通信網を広げる方針を示した。衛星は、地上の基地局の電波が届かない地域を補う役割とした。同社は「衛星と地上の両方の周波数を使う初の通信事業者になり得る」とも記した。
スペースXの周波数は約80メガヘルツ幅、TモバイルUSの約5分の1
スペースXは基地局の設置場所の確保に先立ち、携帯電話サービスに使う周波数の取得を進めてきた。2025年9月、エコースターからAWS-4帯とHブロックの免許 (計50メガヘルツ幅) を約170億ドル (現金と株式) で取得する契約を結んだ。同年11月には、上り専用のAWS-3帯の免許 (15メガヘルツ幅) を約26億ドル相当の株式で追加取得する契約も結んだ。FCCは2026年5月12日、計65メガヘルツ幅の免許のスペースXへの譲渡を承認した。
スペースXは10月8日、米投資会社グレイン・マネジメントが全米で保有する800メガヘルツ帯の免許を取得する契約を結んだ。周波数幅は地域によって異なり、最大で14メガヘルツ幅になる。「800メガヘルツ帯」は使う電波の周波数を示す呼び名で、800メガヘルツ幅を取得したわけではない。周波数が低いほど電波は遠くまで届き、建物の中にも届きやすい。スペースXは、この特性を生かして屋内で通信できる範囲を広げると説明し、既存のスマホの大半がこの周波数帯に対応しているとした。グレインは売却額を公表していない。スペースXは10月20日の決算発表で、取引の完了を2027年前半と見込んだ。FCCの承認などが条件になる。
この800メガヘルツ帯は、TモバイルUSが米スプリントとの合併で引き継いだ周波数だ。米当局は合併を認める際、まず米衛星放送大手ディッシュ・ネットワーク (現在はエコースター傘下) にこの周波数を買い取る権利を与えたが、ディッシュは資金を用意できなかった。TモバイルUSは入札を実施したものの有効な応札がなく、その後グレインと交渉した。TモバイルUSは現金29億ドルと、グレインが持つ600メガヘルツ帯の免許すべてを受け取る形で、2026年8月10日に売却を完了した。TモバイルUSと組んで衛星からスマホへの直接通信を提供してきたスペースXは、TモバイルUSが手放した周波数を使って自社の携帯電話網を築こうとしている。
ソー氏は10月9日の同じ投稿を「周波数だけでは通信網は築けない」と題した。グレインとの取引が完了しても、スターリンクがスマホ向けサービスに使える周波数は約80メガヘルツ幅で、一部は上り専用だと指摘した。TモバイルUSが持つ低周波数帯と中周波数帯は、合わせて400メガヘルツ幅近くになるという。スペースXの周波数幅はTモバイルUSの約5分の1にとどまる。エコースターから取得した65メガヘルツ幅とグレインの最大14メガヘルツ幅を足した最大79メガヘルツ幅は、ソー氏が示した約80メガヘルツ幅とほぼ一致する。ソー氏の言う上り専用の部分は、AWS-3帯の15メガヘルツ幅 (1695〜1710メガヘルツ) とみられる。
FCCは10月6日、スマホと直接通信する次世代衛星1万5000基の計画について、条件付きで一部を承認し、残りの判断を保留した。報道によると、スマホと直接通信する現行の衛星は10月上旬時点で約650基あり、スペースXは次世代衛星の通信容量が現行の衛星の100倍を超えると説明している。スペースXはこれらの衛星を使い、TモバイルUSを通じてショートメッセージと一部のアプリのデータ通信を提供している。衛星とスマホを直接つなぐスペースXのサービスの月間利用者数は、9月末時点で2200万人を超えた。
次世代衛星を使うサービスの開始はずれ込んでいる。スペースXは8月上旬の決算説明会で、開始時期を2027年末としていた。9月中旬にはブレット・ジョンセン最高財務責任者 (CFO) が、2028年前半になるとの見通しを示した。10月20日の決算説明会では、2027年に大型宇宙船「スターシップ」で次世代衛星の打ち上げを始め、エコースターから取得した周波数も使って2028年初めにサービスを開始すると説明した。グウィン・ショットウェル社長は、通信の大半にS帯 (エコースターから取得したAWS-4帯など2ギガヘルツ付近の周波数) を使い、周波数の低い電波で建物の中まで届けると述べた。いずれも衛星を使うサービスの目標で、8万か所の設置場所にいつまでに基地局を置くかは明らかにしていない。
スペースXは地上用の免許も保有、KDDIは自社の周波数の一部を衛星通信に充てる
米国には、携帯電話用の周波数を使って衛星から端末に直接電波を送るサービスについての規則がある。規則は、衛星事業者が携帯電話会社と提携し、その周波数を借りる契約を結ぶよう定めている。FCCはこの契約を、地上用の免許を持つ事業者の同意を確かめ、混信を防ぐための手段と位置づけてきた。TモバイルUSとスペースXの提携は、この規則に基づく。
FCCは10月6日の承認文書で、周波数を借りる契約を求めるこの規定をスペースXに適用しないと決めた。「同じ会社が地上の免許人であり、衛星事業者でもある」として、スペースXに自らとの賃貸借契約を求めるのは不要な負担だと判断した。スペースXはエコースターから取得したAWS-3帯とHブロックについて、地上用の免許も持つ (AWS-3帯は上り専用で、衛星通信では端末から衛星への送信に使う)。スペースXが免許を他社に譲渡した場合、この適用除外は引き継がれない。スペースXは、携帯電話会社の周波数を借りる衛星事業者から、周波数の免許を自ら持つ通信事業者への転換を進めている。
日本では、携帯電話用の周波数の免許は携帯電話会社が持つ。総務省は2024年12月20日、携帯電話用の2ギガヘルツ帯の周波数を低軌道衛星などで使えるようにする改正省令を施行し、12月23日にKDDIに衛星ダイレクト通信用の無線局の免許を交付した。総務省の説明では、端末は携帯電話用の周波数で衛星と直接通信し、衛星を経由して携帯電話網の中核設備 (コアネットワーク) につながる。衛星が基地局の機能を持つため、対応する機種であれば手持ちのスマホをそのまま使える。対応端末は2025年8月1日時点で約900万台だった。
KDDIが衛星ダイレクト通信に使う周波数は、KDDIが持つ2ギガヘルツ帯 (上り・下り各20メガヘルツ幅) の一部だ。山間部などでは、上り・下り各5メガヘルツ幅 (上り1920〜1925メガヘルツ、下り2110〜2115メガヘルツ) を衛星との通信に充て、残る各15メガヘルツ幅を地上の基地局に使う。都市部では各20メガヘルツ幅をすべて地上の基地局に使う。山間部などで衛星に充てる周波数幅は、全体の4分の1にあたる。総務省が2025年10月に公表した調査では、衛星と共用する部分を含む下りの2110〜2130メガヘルツを使うKDDIの屋外の基地局は全国に3万8342局あり、前年より1996局減った。
KDDIは2025年4月10日に国内で初めて「au Starlink Direct」の提供を始め、2026年4月時点で利用者は400万人を超えた。ソフトバンクは2026年4月10日に「SoftBank Starlink Direct」を、NTTドコモは同月27日に「docomo Starlink Direct」を始めた。ドコモは約2か月で利用者が500万人を超えた。3社ともスターリンクの衛星を使う。スペースXは、各社の通信網の一部となる設備を担う立場にある。
FCCによる衛星1万5000基の計画の承認の内容と、ビームごとの信号の遅延の差を衛星上でそろえる特許については衛星とスマホの直接通信の記事で、KDDIの開示資料は銘柄ページで確認できる。
鉄塔会社には借り手が、携帯大手には競合が増える可能性
10月22日の報道を受け、時間外取引でAT&T、ベライゾン、TモバイルUSの株は売られ、クラウン・キャッスルの株は買われた。市場の受け止めは、携帯電話会社と鉄塔会社で正反対になった。スペースXは携帯電話会社にとっては契約者を奪い合う競合に、鉄塔会社にとっては長期契約を結ぶ借り手になり得る。AT&Tなど3社も鉄塔会社から鉄塔を借りて通信設備を置いており、スペースXも同じように借りれば鉄塔を買い取る必要はない。クラウン・キャッスルの業績に直結するのは、賃貸契約が実際に結ばれるかどうかだ。
スペースXの成長を見込む投資家の一部は、携帯電話の市場規模から売上高を試算している。X (旧ツイッター) で発信しているティンボ氏は、米国の携帯電話サービスの市場規模を年約2400億ドルと見積もった。シェア1%で年24億ドル、3%で72億ドル、5%で120億ドル、10%で240億ドルの売上高になるという。同氏は、この事業が中期的に年100億ドルを超える規模になり得るとし、10年後のシェアは10%を超えると予想している。編集部で検算すると掛け算は合っているが、あくまで同氏の推計で、スペースXが示した目標ではない。
スペースXはスターリンクでブロードバンド事業を手がけ、衛星の製造から打ち上げまで自社で担う。顧客は家庭から企業、航空会社、政府まで幅広く、新たな携帯電話事業でもこうした顧客基盤を活用できる。スターリンクの個人向けブロードバンドの契約数は、9月末時点で世界全体で1360万件となり、6月末から160万件増えた。スターリンクを含む通信部門の2026年7〜9月期の売上高は52億4800万ドル、営業利益は23億6700万ドルだった。この利益が今後の投資の原資になる (7〜9月期の決算はスペースXの決算の記事を参照)。
ただ、自宅でスターリンクを使っている人が、長年使ってきた携帯電話の契約までスターリンクに乗り換えるとは限らない。
Xでは、カロル・コジッキ氏も投稿で、米携帯大手3社に対抗して第4の携帯電話会社を目指したディッシュを例に挙げた。同氏は、ディッシュの参入は失敗に終わり、大手3社への影響はなかったと指摘した。そのうえで、衛星1万5000基と全米で使える低い周波数帯、地上の基地局の設置場所8万か所を武器に参入するスペースXについては、ディッシュとは条件が違うとみている。同氏は投稿を「実際にどう進むかを見守る必要があるが、競争はもっと必要だ」と結んだ。もっとも、1万5000基の衛星は計画の一部が条件付きで承認されたばかりで、打ち上げはこれからだ。800メガヘルツ帯は購入の契約を結んだ段階にとどまる。
全米の基地局網に715億ドルとの試算、ディッシュは79億ドルを投じても容量不足
基地局の設置場所を8万か所確保した後にも、通信網を動かすまでの作業が多く残る。借りた場所に機器を置き、電源と通信回線を確保し、電波を調整したうえで、保守も続けなければならない。さらに、利用が集中する時間帯に通信容量が足りるか、建物の中でつながるか、移動中に通信が途切れないかを確かめる必要がある。
ソー氏も同様の指摘をしている。同氏の主張をまとめると、通信網は基地局を1つずつ建て、エリアを少しずつ広げて築くもので、オフィスビルやスタジアムの中まで電波を届けなければならない。工事のほかに、顧客対応や販売網、運営のノウハウも必要になる。同氏は、品質の高い通信網を全米に短期間で築くことはできないと記した。
米調査会社バーンスタインは10月8日付のリポートで、スペースXが地上の基地局網を新たに整備する場合の費用を、周波数の取得費を含めて500億〜1300億ドル (取得費を除くと150億〜800億ドル) と見積もった。必要なマクロ局は3万〜12万か所とみている。低い周波数帯を持っていれば、必要なマクロ局は約30%少なくて済むという。リポートは、グレインの周波数を使う場合の3つの案も示した。テックフローが10月10日に伝えた。
| 想定・実績 | 設置場所の数 | 整備期間 | 費用 | 1か所あたり (編集部の試算) |
|---|---|---|---|---|
| 都市部をカバーする案 | 3万2000か所 | 5.7年 | 469億ドル | 約147万ドル |
| 全米をカバーする案 | 5万7000か所 | 8.4年 | 715億ドル | 約125万ドル |
| 品質重視の案 | 8万2000か所 | 8.1年 | 1128億ドル | 約138万ドル |
| ディッシュの実績 (設備のみ) | 約2万5000か所 | 不明 | 79億ドル | 約32万ドル |
全米をカバーする案では約5万7000か所に基地局が必要で、費用は715億ドル、完成までに8年余りかかる。全米をカバーする案の整備期間 (8.4年) が品質重視の案 (8.1年) より長いのは、リポートの数字のままだ。既存の設備を主に借りる前提の試算で、スペースXが投資を表明した額ではない。対象地域や目標とする通信容量、提携先によって試算は大きく変わる。3つの案の費用にはグレインの周波数の取得費 (5億〜7億5000万ドル) が含まれる。一方、ディッシュの79億ドルは設備投資だけの額で、1か所あたりの金額は単純には比較できない。バーンスタインは、ディッシュが約79億ドルを投じて約2万5000か所に基地局を整備したものの、利用者の多い地域で十分な通信容量を確保できなかったと分析した。
編集部の試算では、通信部門の7〜9月期の営業利益23億6700万ドルを4倍して年換算すると約95億ドルで、全米をカバーする案の715億ドルはその約7.6年分にあたる。通信部門の今後の成長や、投資が複数年にわたることは考慮していない。
SNS上にはさらに厳しい見方もある。投資情報を発信するインベストメント・エッセンシャルズは、基地局8万か所をそろえるには少なくとも10年と2000億ドルがかかり、地域ごとの許認可が要り、数年に及ぶ訴訟も起こり得るとして、実現はほぼ不可能とみる。ただ、金額と期間の根拠は示していない。
通信網の完成時期はまだ見通せないが、基地局の設置場所の賃借交渉が報じられたことで、必要な支出の中身ははっきりしてきた。スペースXは周波数の取得費に加えて設備の設置費を負担し、その後も設置場所の賃料と運営費を払い続けることになる。
米携帯大手3社も衛星通信の合弁で対抗、利用者は料金とつながりやすさで選ぶ
スペースXには、通信網をすべて自前で整備することと、すべて他社に任せることの間に、多くの選択肢がある。鉄塔会社の設備を借りたり、通信網の一部を自前で整備したり、地域によっては携帯電話会社と提携したりと、複数の方法を組み合わせられる。同社はすでに30か国以上で携帯電話会社と提携している。
バーンスタインは10月8日のリポートで、既存の携帯電話会社から通信網を借りて自社ブランドで携帯電話サービスを売る仮想移動体通信事業者 (MVNO) としての参入が最も有力とみていた。鉄塔会社との交渉が報じられる2週間前の分析だ。ジョンセン氏も9月中旬に「既存の携帯電話会社と組むこともできる」と述べていた。
もう1つの案として、家庭や企業に設置されたスターリンクの受信アンテナの横に小型基地局を置き、基地局と通信網の間を衛星回線でつなぐ方式も取り沙汰されている。ショットウェル氏も10月20日、小型の無線装置をスターリンク利用者の家庭や企業のほか、鉄塔にも設置できると話した。一方、AT&Tのジョン・スタンキーCEOは、米メディアのアクシオスが9月29日に報じたインタビューで、スペースXの携帯電話事業の計画を「現実的ではない」と批判した。家庭に小型基地局を置く方式については、十分な通信容量を確保しようとすると設置台数が膨らみ、機器の費用や家の所有者から許可を得る手間もかさむため、「マクロ局で通信網を整備するのと同じだけ費用がかかる」と述べた。他人の家から許可なく携帯電話の電波を出すことはできないとも語った。スタンキー氏の費用の指摘は、家庭に小型基地局を置く方式に向けたものだ。
米携帯大手3社も、衛星通信の強化を進めている。AT&T、ベライゾン、TモバイルUSは10月1日、合弁会社を設立することで正式に合意したと発表した。各社の周波数の一部を持ち寄り、衛星を使って携帯電話の電波が届かない地域をほぼなくすことを目指す。各社が衛星事業者と結んでいる既存の契約はそのまま残し、各社は独自の取り組みも続けられる。
利用者にとっては今後、衛星とつながる携帯電話サービスの選択肢が増える。地上の基地局の電波が届かない場所で衛星につながるというだけでは、スペースXは他社と差別化できない。他の携帯電話会社も同じサービスを提供できるためだ。利用者の乗り換えを促すには、都市部や建物の中での通信品質を高める必要がある。8万か所という数字は交渉段階のもので、借りる用地の数や整備の順序、投資額はまだ決まっていない。利用者が月額料金や、自宅・職場など普段いる場所でのつながりやすさを既存の携帯電話会社と比べられるのは、スペースXが携帯電話の料金プランを発表してからになる。
スペースXは米国で周波数の取得を進め、FCCから、携帯電話会社の周波数を借りる契約を求める規定の適用除外を受けた。基地局の設置場所の賃借も交渉している。日本では、衛星とスマホの直接通信を、KDDIなど携帯電話会社が自社の免許と周波数で提供している。スペースXが携帯電話会社の提携先にとどまるか競合相手になるかは、周波数と地上の基地局を自ら持つかどうかで決まる。KDDIが11月6日に発表する決算で、au Starlink Directの利用者数をどう開示するかが次の焦点になる。
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