関西電力が2026年3月期に原子力で使った燃料は、1キロワット時当たり0.79円だった。火力は10.82円かかっている。今の市場価格でウランと濃縮役務を買っても原子力は1.5円前後で、燃料高で広がるのは原発と火力の差のほうだ。
関西電力の有価証券報告書によると、同社の2026年3月期の原子力の燃料費は364億5,300万円で、発電量は460億900万キロワット時だった。1キロワット時当たりに直すと0.79円になる。同じ期の火力は燃料に3,819億7,300万円をかけて353億500万キロワット時を発電しており、1キロワット時当たり10.82円である。九州電力も原子力0.84円、火力8.93円で、火力は原子力の10.6倍だった。ウランの価格が1ポンド90ドル前後まで上がった今も、原子力の燃料費はこの水準から大きく動かない。
投資家向けの情報を発信するセルゲイ氏は、原油とガスの高騰が原子力株への投資を後押ししていると書く。原子力は電力需要の伸びと、エネルギー安全保障への関心の高まりという2つの追い風を同時に受けているという。投稿者によれば、原油高は多くの先進国で原子力の採算を直接は押し上げない。ただしガスと液化天然ガスの価格を上げ、国内でベースロード電源 (昼夜を問わず一定の出力で動かす電源) を確保するよう政府を促すため、その分だけ原子力を選ぶ理由が増す。ウランのスポット価格が1ポンド90ドル前後、濃縮役務の単価が215ドル前後にあることを、投稿者は供給が逼迫している表れとみる。本稿は投稿者の論の順に沿って、燃料費への影響、ウランと濃縮の値動き、投稿者が挙げた26社の事業を一次資料で確かめる。
ウラン価格が上がっても原発の燃料費は1キロワット時当たり1円台、関西電力の実績は火力の13分の1
燃料の値上がりが発電の費用にどれだけ響くかは、燃料1キログラムの費用の内訳で決まる。世界原子力協会の計算例では、原子炉の燃料1キログラムを作るのに、ウラン精鉱 (八酸化三ウラン) 8.9キログラム、六フッ化ウランへの転換7.5キログラム分、濃縮7.3分離作業単位 (天然ウランから核分裂しやすいウラン235の割合を高める作業の量を表す単位)、成形加工300ドルが要る。燃焼度 (燃料1トンから取り出す熱の量) を4万5,000メガワット日とすると、燃料1キログラムから36万キロワット時の電気が得られる。
記者はこの計算例のうちウランと濃縮役務の2つを、実際の価格に置き換えて試算した。転換と成形加工は現在の価格を一次資料で確かめられなかったため含めていない (未取得)。米エネルギー情報局によると、米国の電力会社が2025年に買ったウランの加重平均価格は1ポンド58.46ドル、濃縮役務は1単位108.70ドルだった。この価格ではウランと濃縮役務の費用が1メガワット時当たり5.39ドルとなり、2025年度の平均相場の1ドル150.74円で換算すると1キロワット時当たり0.81円である。関西電力の実績の0.79円とほぼ重なる。2026年8月末の市場価格 (ウラン89.68ドル、濃縮役務215ドル) を当てはめると9.25ドル、同月平均の1ドル158.85円で1.47円になる。ウランが投稿者の挙げる契約の上限の150ドルまで上がっても、12.54ドル、1.99円にとどまる。
ガス火力と比べると差ははっきりする。米エネルギー情報局の電力年報によると、米国の天然ガス火力は1キロワット時の電気をつくるのに平均7,754英国熱量単位 (2024年) の熱を使う。国際通貨基金がまとめる日本の液化天然ガスの輸入価格は、2026年1月の100万英国熱量単位当たり10.435ドルから、3月に20.812ドル、7月に19.562ドルへ上がった。同じ熱効率で燃料費に直すと、1メガワット時当たり80.9ドルから151.7ドル、円では12.85円から24.09円へ、半年でおよそ11円上がった計算になる。原子力の燃料費は、2025年の支払い価格から今の市場価格に当てはめ直しても0.6円余りしか増えない。ウランが1ポンド1ドル上がったときの燃料費の増加は1メガワット時当たり0.0545ドル、液化天然ガスが100万英国熱量単位当たり1ドル上がったときは7.754ドルで、142倍の開きがある。
原子力の燃料費には、使用済み燃料の処理にかかる費用が入っていない。九州電力は燃料費とは別に、使用済み燃料の再処理の拠出金を380億5,000万円計上している。1キロワット時当たり1.33円で、燃料費と足しても2.17円である。火力の燃料費の4分の1に満たない。関西電力の同じ費目の金額は今回取得できなかった (未取得)。
原油高がガス価格に波及するという投稿者の見方は、2026年の日本と欧州にそのまま当てはまった。ブレント原油は1月の1バレル64.59ドルから3月に99.41ドル、5月に103.84ドルまで上がり、7月は83.73ドルだった。欧州の天然ガスも1月の11.987ドルから7月に17.93ドルへ上がった。一方、天然ガスを自国で生産する米国のガス価格は、1月の4.14ドルから7月に2.96ドルへ下がった。記者の見立てでは、燃料費の面で原子力が有利になったのは燃料を輸入に頼る日本と欧州であり、米国で原子力への追い風になっているのは燃料費ではなく電力需要の伸びである。原油の急騰の背景は原油価格が織り込む供給途絶を検証した記事で扱った。
関西電力は有価証券報告書で、燃料価格の高騰が続くと燃料費調整制度の平均燃料価格が上限を超え、値上がり分の一部を料金に反映できない可能性を事業等のリスクに挙げる。上限を超えて自社で負担することになるのは火力の燃料代であり、発電量の多くを原子力で賄う会社ほど、このリスクは小さくなる。
ウランの長期価格は96ドル、米国の電力会社が2025年に払った平均は58ドル
カメコが公表する業界調査2社の平均によると、ウランのスポット価格は2026年8月末に1ポンド89.68ドル、長期価格は96.50ドルだった。スポット価格は1月末の94.28ドルから3月末に84.25ドルまで下げ、6月末85.00ドル、7月末86.38ドルと戻した。長期価格は1月末の89.00ドルから6月末に95.50ドルへ上がり続けている。電力会社が数年先の燃料を長期契約で確保しようとすると、長期価格はスポット価格を上回りやすい。投稿者が挙げるスポット90ドル前後、長期96ドル前後は、この月末値と合う。投稿者は、ゴールドマン・サックスがウランの需給は逼迫から供給不足の段階に入りつつあるとみていることも紹介する。
それでも、米国の電力会社が実際に払っている価格はまだ低い。米エネルギー情報局のウラン販売年報によると、米国の原発事業者が2025年に買ったウランは4,690万ポンドで、前年の5,590万ポンドから16%減った。加重平均価格は1ポンド58.46ドルと前年の52.71ドルから11%上がったが、今の長期価格の6割にとどまる。買った量の87%は長期契約で平均55.91ドル、スポット契約の13%は76.01ドルだった。原産国はカナダ32%、カザフスタン28%、オーストラリア15%、ウズベキスタン7%、米国7%、ナミビア4%である。
支払額が市場価格に追いつかないのは、契約の仕組みによる。カメコの2026年4〜6月期の決算資料によると、同社の長期契約の多くは引き渡し時の市場価格に連動し、下限価格と上限価格を定めている。上限価格は引き渡しまでの物価上昇に合わせて引き上げられる。投稿者によれば、一部の契約の上限は1ポンド140〜150ドルに達している。カメコは、スポット価格が5ドル上がると売上高は1,400万カナダドル増えるが、上限のかかる契約があるため調整後純利益は200万カナダドル減るとみる。同社が示す平均販売価格の想定は次のとおりである。
| スポット価格 (ドル) | 2026年 | 2028年 | 2030年 |
|---|---|---|---|
| 80 | 66 | 72 | 76 |
| 100 | 67 | 80 | 88 |
| 160 | 69 | 92 | 106 |
表1 カメコが想定する1ポンド当たりの平均販売価格 (2026年6月30日時点、同社の決算資料)。スポット価格が160ドルになっても2026年の販売価格は69ドルにとどまる。
ウラン高が売り手の売上高に反映されるまでには数年かかる。カメコは2026〜2030年に年平均2,800万ポンドを超える引き渡し契約を結んでおり、2026〜2028年は平均より多く、2029〜2030年は少ない。業界調査会社の集計では、2026年1〜6月の長期契約は約3,300万ポンドと前年同期の約2,700万ポンドを上回った。電力会社の燃料費も同じように遅れて上がるが、先に見たとおり、その上げ幅は1キロワット時当たり1円に届かない。
投稿者は、ウラン採掘の6社を、実績ある生産者から売上のない開発会社、ウランの現物を保有する会社まで幅があると整理する。カメコは埋蔵量と品位で世界屈指の鉱山と燃料サービスに、原子炉メーカーのウェスチングハウスへの出資を組み合わせ、核燃料サイクル全体に関わる。カザトムプロムは世界最大の生産者で、低コストの原位置浸出採鉱法 (地下の鉱床に薬液を流し込み、ウランを溶かし出して回収する方法) と電力会社との長期契約で世界の供給を支える。両社が出資するインカイ合弁会社は2026年に1,040万ポンドを生産する見通しである。米国の電力会社が買ったウランの原産国の上位2か国がカナダとカザフスタンであることとも整合する。ネクスジェン・エナジーは高品位のアロー鉱床を軸にした生産前の開発会社で、生産が始まれば供給を大きく増やせるが、計画どおりに進むかどうかのリスクを抱える。ウラニウム・エナジーは米国で原位置浸出採鉱法による生産を広げ、先物などで売値を固定していない在庫を持つ。エナジー・フュエルズは米国のウラン採掘と製錬に希土類の処理を組み合わせ、デニソン・マインズはフェニックス鉱床で原位置浸出採鉱法の計画を進めながらウランの現物を保有し、ウラン価格の変動がそのまま業績に響く。投稿者は、カメコとカザトムプロムを実績ある主要な供給者、残る4社を、鉱山の開発や米国内での供給、ウラン価格の上昇の恩恵を受けやすい点で投資妙味のある会社と位置づける。
濃縮役務の単価は215ドルで米国の電力会社の支払額の2倍、ロシア産26%の置き換えが続く
燃料の中で最も値上がりしたのは濃縮役務である。濃縮役務の代金は、第1節で触れた分離作業単位ごとに払う。米エネルギー情報局によると、米国の電力会社は2025年に1,300万単位を買い、加重平均は1単位108.70ドルと前年の97.66ドルから11%上がった。投稿者の挙げる215ドルは、その2倍にあたる。先の試算では、ウランと濃縮役務の費用に占める濃縮役務の割合は2025年の支払い価格で41%、8月末の市場価格で47%になり、ウランとほぼ並ぶ。
値上がりの背景には、ロシア産の置き換えがある。2025年に米国の電力会社が買った濃縮のうち、米国産は23%、外国産が77%で、ロシア産は26%を占めた。フランス産は18%、英国産は14%、オランダ産は8%である。セントラス・エナジーの2026年4〜6月期の四半期報告書によると、ロシアは政令1544号 (2024年11月14日) で国営のテネックスによる米国への低濃縮ウランの輸出の包括許可を取り消し、政令1516号 (2025年10月2日) でその期限を2027年12月31日まで延長した。セントラスとテネックスの供給契約は2028年までである。
投稿者は、セントラスを米国の濃縮と高純度低濃縮ウラン (ウラン235の割合を5〜20%に高めた燃料で、多くの新型炉が使う) の主要な供給者と位置づけ、西側諸国が核燃料の調達先を自国や同盟国に移すなかで、新型炉の燃料供給の要になるとみる。セントラスは2026年2月、フルアの子会社とオハイオ州パイクトンの遠心分離工場で低濃縮ウランと高純度低濃縮ウランの生産を広げるため、設計・調達・建設を一括で請け負う契約を結んだ。米エネルギー省も、濃縮度19.75%の高純度低濃縮ウランの国内生産能力を新たにつくる業務をセントラスの子会社に発注した。欧州の濃縮大手ユーレンコもニューメキシコ州の工場で4系列目の遠心分離機を動かし、年約35万単位の能力を加えた。2027年までに70万単位を増やす計画の一部である。燃料の分類で投稿者が挙げるもう1社のライトブリッジは、炉の出力と安全を高める金属燃料を開発しているが、まだ売上がなく、技術のライセンス供与で収益化を目指す段階にある。
小型炉の6社は許認可と受注がこれから、ニュースケールには日揮と中部電力が出資する
燃料費の安い原子力で負担が重いのは、建設費と工期である。投稿者は小型炉と新型炉の6社について、炉型は異なるが多くは初期段階にあり、成否は許認可の取得、資金の確保、計画の実行にかかっているとみる。投稿者の整理では、オクロは高速炉を開発しながら燃料、同位体、電力販売の事業も築き、炉の開発だけに頼らない。エックス・エナジーは小型の高温ガス炉と、その専用燃料の製造を組み合わせる。ナノ・ニュークリア・エナジーは超小型炉を開発し、核燃料の輸送などの周辺事業にも広げる。ハドロン・エナジーは多くの受注見込みを掲げる超小型炉の開発会社だが、株式の売買が少なく、資金調達が大きなリスクになる。ディープ・フィッションは地下深くの掘削孔に炉を置く方式を追い、建設費を抑えられる可能性がある一方、資金面と実行面のリスクが大きい。
ニュースケール・パワーについて投稿者は、米原子力規制委員会から設計認証を受けた唯一の小型炉を持つが、商業化は建設の正式な受注を得られるかどうかにかかると書く。日本の出資者の有価証券報告書にも、同じ事情が表れている。日揮ホールディングス (1963) の有価証券報告書によると、同社は2021年3月に米国の特別目的会社を通じてニュースケールに出資し、国際協力銀行が2022年4月、中部電力 (9502) が2024年11月にそれぞれ出資した。日揮はこの特別目的会社に1億7,400万8,000ドルの債務保証をしている。一方で、米国で初めてのニュースケールの実証炉として計画された案件は、建設に至らずに終わった。
原子炉メーカーの3社は、原子力と組み合わせる事業がそれぞれ異なる。GEベルノバは原子力に加えてガス、送電網、タービンの幅広い電力機器を持ち、出力30万キロワット級の小型の沸騰水型炉を成長の柱の1つにする。日立製作所 (6501) は有価証券報告書で、パートナーのGEベルノバと連携し、カナダでの小型炉の初号機の建設開始を機に、北米やポーランドなど欧州へ小型炉の事業を広げると記した。ロールス・ロイスは航空と防衛に、すでに商業契約を得た小型炉の事業を組み合わせる。BWXテクノロジーズは艦船用の原子炉、燃料、商業用の部品を供給する原子力専業のメーカーである。機器とサービスの3社 (フルア、ミリオン・テクノロジーズ、カーチス・ライト) について投稿者は、原発の建設や保守、燃料設備、安全対策への支出から幅広く収益を得ており、特定の案件に依存しないとみる。フルアがセントラスの濃縮工場の拡張を請け負ったのは、その一例である。日本ではIHI (7013) が、小型炉の建屋の壁に使う鋼製モジュールの実物大の試作を完成させた。
稼働中の原発を持つ6社は、燃料高の影響が小さい電気を長期契約で売る
投稿者は、すでに原発を動かしている電力会社6社が、データセンター向けの長期の電力販売契約を増やしているとみる。記者の見立てでは、燃料費が1キロワット時当たり1円前後で、ウランが上がっても大きく変わらない電気は、数十年単位で価格を固定する契約に向く。コンステレーション・エナジーは米国最大の原発群を持ち、卸電力市場での売電と大手IT企業との長期契約を組み合わせて、発電所を数十年先まで採算に乗せる。ビストラも卸電力市場で売電する発電所と原発を併せ持ち、電力価格の上昇と大手IT企業との長期契約の両方から恩恵を受ける。
料金規制を受ける電力会社の4社は、原子力を安定した電源の中核に据える。デューク・エナジーは原子力をベースロード電源の中核とし、データセンター向けの需要の伸びが設備投資を押し上げる。サザン・カンパニーは料金規制を受ける電力会社で、米国で最も新しい原子炉であるボーグル原発の増設分を持つ。ドミニオン・エナジーのバージニア州の原発群は、世界最大級のデータセンターの集積地を支える。エンタジーはメキシコ湾岸南部で原子力の比率が大きい、料金規制を受ける電力会社で、データセンターの需要で設備の稼働率が上がる可能性がある。原子力の関連企業を電気を売る会社と売らない会社に分けた整理は、AI基盤の90銘柄を分解した記事で扱った。
ウランが1ポンド90ドル、濃縮役務が1単位215ドルまで上がっても、原子力の燃料費は1キロワット時当たり1円台にとどまる。関西電力の実績では0.79円で、火力の10.82円の13分の1である。ウランの値上がりが電力会社の支払額に及ぶまでには、上限つきの長期契約のため数年かかる。液化天然ガスの高騰は、この半年で火力の燃料費を11円押し上げた。燃料費の面での原子力の優位は、日本の関西電力や九州電力のように燃料を輸入しながら原発を動かしている会社で最も大きく、米国の6社ではデータセンター向けの長期契約という形で表れている。
投資家向けの個別銘柄レポートと技術デューデリジェンスのご相談はこちら。
💬 この記事へのコメント 0
まだコメントはありません
最初のコメントを投稿してみましょう!⚠️ エラーが発生しました