パワーエックスEnergy Blade(データセンター向けラック型蓄電システム) PowerX Energy Blade
パワーエックスが2026年5月14日に製品の構想として発表した、サーバーラックに積むデータセンター向けの蓄電システム。直径21ミリ・長さ70ミリの円筒形 (21700) の三元系 (NMC) セルを使う。1ラック最大48キロワット時 (kWh)・直流200〜800ボルトで、系統の変動にミリ秒単位で応える。ラック内の非常用電池を兼ね、需給調整市場で使えるようにする。2027年に提供を始める予定で、価格は公表されていない。
詳細解説
- 発表
- パワーエックスは2026年5月14日、データセンター向けラック型蓄電システム「PowerX Energy Blade」の製品コンセプトを発表した。2027年の提供開始を目指して開発中で、同日から実装に向けたパートナーを募った。 power-x.jp
- 提供時期 (予定)
- パワーエックスは2027年の提供開始を予定する。開発中のため最終の仕様は変わることがあると注記した。2026年11月7日時点で出荷や採用は発表されていない。 power-x.jp
- 対象
- 建屋型のデータセンターが対象。パワーエックスは、コンテナ型の Mega Power DC に続き、建物のデータセンターにも蓄電池を使う製品を広げると説明した。 power-x.jp
- 3つの役割
- (1) 系統の需給の変動にミリ秒単位で双方向に応え、データセンターを系統の調整力として使えるようにする。(2) オープン・コンピュート・プロジェクト (OCP) のオープンラック第3版 (ORv3) の中で、大容量・長時間の非常用電池 (BBU) として働く。(3) 直流の出力を200〜800ボルト (V) まで変えられ、IT ラックに48V の直流を送りながら、系統の調整にも応える。 power-x.jp
- 系統の異常のときの動き (使用例)
- 周波数の急な変化など系統の異常を自ら検知するか、送配電事業者 (TSO) の信号を受けると、50〜100ミリ秒で放電に切り替え、系統から受ける電力の代わりを務める。4〜7秒でソフトウエアが計算の処理を整理して消費電力を下げ始め、整理が終わると放電を絞って異常が収まるまで監視する。 power-x.jp
- 実証
- パワーエックスは研究開発拠点 POWERD LAB で、エヌビディア H200 を8基積んだサーバー・系統の模擬装置・蓄電システムを組んだ。系統の異常に合わせて蓄電池の放電と GPU (画像処理半導体) の消費電力の抑制を同時に行う試験をし、結果を白書として公開した。 contents.xj-storage.jp
- 顧客への利点 (会社の説明)
- パワーエックスは、需給調整市場やデマンドレスポンス (DR、需要の抑制) に参加して収益を得られると説明する。ピーク電力を下げ、混雑時に需要を絞ることを条件に接続する「ノンファーム型接続」を受け入れて、早く系統につなぐ。再生可能エネルギーを蓄えて、非化石証書などの環境価値を使いやすくする。 power-x.jp
- 収益の試算の前提
- 受電20メガワット (MW) のデータセンターに、出力18キロワット (kW) の電源棚 (シェルフ) を IT ラック1台に4段 (1ラックあたり72kW) 積み、ラック270台に入れた場合で試算した。パワーエックスは、一次調整力 (FCR) の価格がどの水準でも投資を回収できると説明する。 power-x.jp
- 海外展開
- パワーエックスは海外でも使える前提で製品を開発すると決算説明資料で示した。対象とする制度・市場として、日本の電力広域的運営推進機関 (OCCTO) と電力需給調整力取引所 (EPRX)、米東部の地域送電機関 PJM、欧州送電系統運用者ネットワーク (ENTSO-E) を挙げる。 contents.xj-storage.jp
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 生産拠点 (公表されていない) | 公表されていない | 開発中の製品で、生産する工場は公表されていない。 | パワーエックスの既存の製品は岡山県玉野市の自社工場 Power Base と提携工場で造る。 | power-x.jp |
| POWERD LAB (研究開発拠点) | 東京都大田区 | Energy Blade の考え方を確かめた実証の機材を組んだ拠点。2025年12月31日時点で研究開発の設備を置く。 | contents.xj-storage.jp |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- セル
- 直径21ミリ・長さ70ミリの円筒形 (21700) の三元系 (NMC) リチウムイオン電池。容量の8倍の電流で充放電できる (8C 級)。パワーエックスの他の蓄電システムが使うリン酸鉄リチウムイオン電池 (LFP) とは種類が違う。 power-x.jp
- 電池の組み方
- セル15個を直列にして1つの非常用電池 (BBU、公称約49.5V、250〜500ワット時) とし、BBU を4〜6個まとめて1モジュール (EBM、約1〜3kWh) にする。ラックには EBM を最大16台直列に積み、最大48kWh とする。 power-x.jp
- 系統との接続
- 双方向の絶縁型の電力変換装置 (デュアル・アクティブ・ブリッジ、DAB 方式の半導体変圧器、定格125kW) で系統側につなぐ。放電・充電とも125kW で、一次調整力 (FCR) に双方向で応える。冗長構成は2並列8直列で、1系統が止まっても動く (N-1)。 power-x.jp
- サーバー側の給電
- モジュールごとに絶縁型の直流変換器 (3〜6kW) を持ち、絶縁した48V の直流母線でサーバーに給電する。ラックの間は差し込むだけでつながる (ブラインドメイト) 48V の直流母線で結ぶ。通常の運転中はセルの電流をほぼ0に保つ (フロート状態)。 power-x.jp
- 保護
- 常時閉の直列の接触器2つ、稼働中に交換 (ホットスワップ) するための常時開のバイパス、残留電荷を抜くアクティブ放電回路を持つ。高電圧部の絶縁試験は1,500V、直流変換器は交流2,125V・60秒。絶縁監視装置を備える。 power-x.jp
- 制御ソフトウエア
- 蓄電池がミリ秒単位で系統の要請に応える一方、パワーエックスのソフトウエアがサーバーの計算の負荷を制御し、データセンターの処理を止めずに系統の調整を行う。 power-x.jp
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| ラックの規格 | 21インチラック (OCP Open Rack V3 準拠)。パワーエックスは独自の ORV3-HV フレームと呼ぶ | power-x.jp |
| 電池セル | 円筒形21700・三元系 (NMC)・8C 級 | power-x.jp |
| モジュールあたりの蓄電容量 | 約3kWh (2026年5月の発表)。製品の案内では約1〜3kWh | power-x.jp |
| ラックあたりの蓄電容量 | 最大48kWh (16モジュール搭載時) | power-x.jp |
| 電圧 | 出力電圧は直流200〜800V。電池側の電圧は16モジュール直列で819.2V。高電圧の配線の定格は直流806V と案内する | power-x.jp |
| 系統側の出力 | 125kW (半導体変圧器の定格、放電・充電とも) | power-x.jp |
| ラックあたりの IT 負荷 | 1ラックあたり40〜120kW | power-x.jp |
| 対象の IT ラック | デル・テクノロジーズ IR7000 シリーズ (高さ44U) 2台または同等品。寸法750×1,200ミリ | power-x.jp |
| 準拠する規格 (案内) | 国際電気標準会議 (IEC) の規格で、電力変換装置 62477-1:2022、電池の安全 62619:2022、絶縁 60664-1:2020、サーバー側 62368-1:2020。系統連系は日本電気協会の系統連系規程 (JEAC 9701:2016)、ラックは OCP ORV3 Spec 1.0 | power-x.jp |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電池セル | 円筒形21700 三元系 (NMC) リチウムイオン電池 (8C 級) LFP のセルを使う他製品とは別のセル。 |
公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
パワーエックスが公表したのはセルの形と種類だけ。 A |
| 系統側の電力変換装置 | DAB 方式の双方向の半導体変圧器 (125kW) | 公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
仕様の案内による。設計者・製造者は公表されていない。 A |
| モジュールの直流変換器 | 共振型 (CLLC 方式) または DAB 方式の絶縁型直流変換器 (3〜6kW)、BBU ごとの非絶縁の双方向降圧回路 | 公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
回路の構成の案内による。 A |
| 絶縁監視装置 | 絶縁監視装置 (ISOMETER) 品名はドイツの計測機器メーカーの商標 (供給は発表されていない)。 |
公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
保護の機能として製品名が案内されている。供給の契約は発表されていない。 A |
| 接触器 | 常時閉の接触器2個、常時開のバイパス、アクティブ放電回路 | 公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
保護の機能の案内による。 A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1電池セル三元系の円筒形セルを使うが、調達先は公表されていない。企業: 公表されていない
- 2IT ラック・サーバーパワーエックスはデル・テクノロジーズの IR7000 シリーズ (高さ44U) を対応するラックとして挙げる。企業: デル・テクノロジーズ (対応するラックとして名前が挙がる)
- 3実装のパートナーパワーエックスは2026年5月14日から実装に向けたパートナーを募っている。相手は発表されていない。企業: 公表されていない
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1量産開発中の製品で、製造の工程・設備・生産能力は公表されていない。設備・企業: 公表されていない
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| PowerX Energy Blade / Energy Blade Rack | 公表されていない (問い合わせ) | 2026-11-07 | power-x.jp |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 問い合わせ・事業パートナーの募集 | 製品ページから問い合わせる。パワーエックスは事業パートナーを募っている。 | power-x.jp |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 保守・保証 | 開発中の製品で、保証の年数や保守の内容は公表されていない。 | power-x.jp |
| 部品の交換 | モジュールはバイパスの接触器で、稼働中に交換 (ホットスワップ) できる設計である。 | power-x.jp |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 海外 | パワーエックスは海外展開を前提に開発すると示し、米東部の PJM と欧州の ENTSO-E の制度を対象に挙げる。輸出の実績・契約は発表されていない。 | contents.xj-storage.jp |
| 輸出管理 | 輸出規制の対象になるかどうかは公表されていない。 | power-x.jp |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年11月7日まで | 受注・出荷 | 発表されていない | 2027年に提供開始の予定。 | power-x.jp |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 試算のモデル (受電20MW のデータセンター) | 出力18kW の電源棚を IT ラック1台に4段 (1ラックあたり72kW)、Energy Blade を積むラック270台 | power-x.jp |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
Energy Blade は、サーバーラック内の非常用電池を、系統の調整に使える蓄電池に置き換える製品である。セルは円筒形21700の三元系 (NMC) とパワーエックスは案内する。パワーエックスは有価証券報告書で、各製品のセルとモジュールを共通にして量産で価格を下げると説明しているが、Energy Blade はこれと別の化学系になる。
2026年5月の発表は製品の構想と仕様の案で、提供は2027年の予定である。パワーエックスは、FCR の市場価格がどの水準でも投資を回収できると試算する (受電20MW・270ラックの前提)。実証は H200 を8基積んだサーバー1組の規模で、商用のデータセンターでの運用は発表されていない。規格の名前は挙げているが、認証を取ったかは公表していない。
公表されていないこと
- 価格、生産する工場、セルの供給元は公表されていない。
- 案内に並ぶ規格 (IEC 62619・JEAC 9701 など) のうち、どれを取得したかは公表されていない。
- パワーエックスは年間の収益額を数字では公表していない。
- セルを三元系 (NMC) としながら、セルの公称電圧を3.3V (BBU の49.5V を15個で割った値) と案内しており、化学系の説明がそろっていない。
- 電池側の直列の電圧819.2V が高電圧の配線の定格806V を上回る案内で、その関係は説明されていない。
出所
- PowerX Energy Blade 製品ページ (パワーエックス) (2026-11-07)
- データセンター向けラック型蓄電システム「PowerX Energy Blade」を発表 (2026-05-14)
- 同 (PDF) (2026-05-14)
- PowerX Data Center 製品一覧 (2026-11-07)
- 2026年12月期 第1四半期 決算説明資料 (2026-05-14)
- 有価証券報告書 第5期 (2025年12月期) (2026-03-25)
- ニュースルーム一覧 (2026-11-07)
出所との照合日: 2026年11月7日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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