パワーエックスの蓄電所運用代行(アグリゲーション・蓄電所トーリング) PowerX battery storage aggregation and tolling
パワーエックスは、自社製の蓄電システムを置いた系統蓄電所や太陽光発電所の蓄電池を、卸電力・容量・需給調整の各市場で運用する仕事を請け負う。所有者に固定の対価を払う「蓄電所トーリング」、電力市場での運用を中心とするマーチャント型 (収入は市場の価格で変わる)、その中間のハイブリッド型から選べる。初めての運用は2025年9月の神奈川県愛川町の蓄電所である。
詳細解説
- 提供会社
- 株式会社パワーエックス。電気事業法に基づく小売電気事業者 (登録) と特定卸供給事業者 (届出) power-x.jp
- サービスの構成
- 蓄電所の開発・協業 (地点開発・案件の買い取り・共同開発)、蓄電所の販売 (アセットサービス)、発電所併設のアグリゲーション、需要地併設のアグリゲーション、電力提供 (小売・卸) power-x.jp
- 運用のモデル
- 電力市場での運用を中心とするマーチャントモデル (収入は市場の価格で変わる)、固定の収入を保証するトーリングモデル、両者を組み合わせたハイブリッドモデル (2025年12月期の有価証券報告書)。蓄電所の販売では、ハイブリッドとフルマーチャントから選べる contents.xj-storage.jp
- 蓄電所トーリング
- パワーエックスが蓄電所の賃貸借契約に基づき、調整力の対価を固定価格で所有者に払う仕組み。「蓄電所トーリング」はパワーエックスの登録商標 power-x.jp
- 初の運用事例
- ミラースアセットマネジメントが持つ「MSB神奈川愛川蓄電所」(Mega Power 2700A 3台、定格7.4MWh、パワーコンディショナー (PCS) の出力1.99MW) が2025年9月1日に商業運転を始めた。トーリングを採用 power-x.jp
- 発電所併設サービスの開始
- 2025年8月21日に蓄電池併設型太陽光発電所向けの電力アグリゲーションを始めた。最初の案件はセンコーコーポレーションが鹿児島県大崎町に持つ太陽光発電所で、Mega Power 2700A 1台を置く power-x.jp
- 全国への拡大
- 2026年3月13日に発電所併設サービスの提供地域を九州から全国 (沖縄を除く9エリア) に広げ、需給調整市場の一次調整力での運用にも対応した。対象は出力1.5MW以上の高圧・特別高圧の太陽光発電所 power-x.jp
- 需要地併設の事例
- 松本重工業の音戸工場、日本郵便の岡山郵便局に Mega Power を置き、需要と市場価格に合わせて充放電する power-x.jp
- 実績の数字
- 定置用蓄電システムの導入・採用実績は3,190MWh・190拠点 (うち設置済み111拠点) (2026年10月1日、Mega Power 2700A・2500・PowerX Cube、会社発表) contents.xj-storage.jp
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 蓄電システムの製造 (岡山第2工場) | 岡山県玉野市 (三井E&S玉野事業所内) | 運用する蓄電所に使う Mega Power 2700A と Mega Power 2500 を受注生産する | 運用代行そのものはサービスで工場を持たない | power-x.jp |
| 本社工場 Power Base | 岡山県玉野市田井 | 2027年1月に Mega Power の製造ラインを増設する予定 | power-x.jp | |
| 運用拠点 | 公表されていない | 市場取引と遠隔監視を行う拠点の所在地と人員は公表されていない | 電力事業の従業員は4人 (2025年12月31日) | contents.xj-storage.jp |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 複数の市場での運用
- 蓄電所の調整力を電力小売の需給の釣り合いに使い、卸電力取引市場・容量市場・需給調整市場でも運用する power-x.jp
- 一次調整力への対応
- 愛川の蓄電所は当初、三次調整力①②と二次調整力②で運用し、2025年12月をめどに一次調整力に対応するとした。津市の芸濃町荻野蓄電所は2026年3月19日に一次調整力の運用を始めた power-x.jp
- 発電所併設の運用
- 出力抑制のかかる時間帯に充電し、価格の高い時間帯に放電する。再生可能エネルギーの固定価格買取制度 (FIT) から、市場価格に上乗せ額を払うフィード・イン・プレミアム (FIP) 制度へ移り、プレミアムを得る power-x.jp
- 遠隔監視と制御
- 自社開発の PowerOS で遠隔監視と常時の保守を行う。充放電データを人工知能 (AI) のモデルに学習させ、市場取引の自動化と最適化を図る contents.xj-storage.jp
- 系統混雑の緩和
- 関西電力送配電との実証では、送配電事業者が決めた条件どおりに充放電できるかと、それ以外の時間帯の市場での運用と両立できるかを確かめる (2027年度に開始の予定) power-x.jp
- JC-STAR への対応
- パワーエックスは、2027年度に系統につなぐ設備で IoT (モノのインターネット) 機器のセキュリティー評価制度 JC-STAR のレベル1 が必須になるとし、機器と接続の相談に応じるとしている power-x.jp
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 発電所併設の対象 | 出力1.5MW以上の高圧・特別高圧の太陽光発電所 (低圧は対象外) | power-x.jp |
| 提供地域 | 北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州 | power-x.jp |
| 使う蓄電システム | Mega Power 2700A (公称2,742kWh) と Mega Power 2500 (公称2,507kWh)。発電規模に応じて1台から複数台 | power-x.jp |
| 発電事業者への対価 | 固定収益モデル、または市場価格に一部連動するハイブリッドモデル | power-x.jp |
| 芸濃町荻野蓄電所 (三重県津市) | Mega Power 2700A 3台、定格7.4MWh、PCS 出力1.99MW、所有は JMES BESS ONE 合同会社、EPC (設計・調達・建設) はサンヴィレッジ | power-x.jp |
| 松江市宍道蓄電所 (仮称) | Mega Power 2700A 3台、公称8.23MWh、PCS 出力2.0MW、事業者ちゅうぎんエナジー、EPC はミライト・ワン、2026年度中に運転開始の予定 | power-x.jp |
| 八戸市の蓄電所 | Mega Power 2500 3台、公称7.52MWh、PCS 出力2.0MW、事業者セブンパワーストレージ合同会社 (栗林商会の全額出資)、2027年10月に運転開始の予定。運用はパワーエックス | power-x.jp |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 蓄電システム | Mega Power 2700A・Mega Power 2500 セル・モジュールは中国などのパートナーから調達 |
パワーエックス 東証グロース 485A |
— | 日本 岡山県玉野市 |
パワーエックスの発表 A |
| パワーコンディショナー・変圧器・受変電設備 | 系統蓄電所向けの資機材一式 パワーエックスが資機材一式として供給する。機器のメーカー名は公表されていない |
公表されていない | — | 公表されていない |
ちゅうぎんエナジーとの契約の発表 A |
| エネルギー管理システム (EMS) | TAMERBA EMS (九電みらいエナジーの大村の太陽光発電所の事例) ニシム電子工業は九州電力の連結子会社 |
ニシム電子工業 | — | 日本 公表されていない |
パワーエックスとニシム電子工業の発表 (2026年2月5日)。九州電力の連結子会社であることは2026年3月3日の発表による A |
| 遠隔監視・制御のソフトウエア | PowerOS | パワーエックス 自社開発 |
— | 日本 | 有価証券報告書 A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1地点の開発土地の権利を持つ案件の買い取り、機材の供給だけ、開発から運用までの共同開発、の3つから協業の形を選べる企業: パワーエックス・開発事業者・EPC事業者
- 2資金と所有リース会社・銀行系・不動産系の会社が蓄電所を持つ (JA三井エナジーソリューションズの JMES BESS ONE、ちゅうぎんエナジー、ミラースアセットマネジメントなど)企業: JA三井リース・ちゅうぎんエナジー・ミラースアセットマネジメント
- 3設計・施工蓄電所ごとに EPC 事業者が施工する (サンヴィレッジ、ミライト・ワン、ユニバーサルエコロジーなど)企業: サンヴィレッジ・ミライト・ワン・ユニバーサルエコロジー
- 4運用運転開始後の市場運用と保守をパワーエックスが担う企業: パワーエックス
- 5案件の発掘スマートエナジーと発電所併設型蓄電池の案件を組む覚書 (2026年9月1日)。2026年12月までに1件、2027年12月までに3件、2028年12月までに10件程度を目標とする企業: スマートエナジー
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1案件の組成地点の開発、系統アクセスの手続き、補助金の申請の支援設備・企業: パワーエックス・協業先
- 2機器の供給と設置自社製の蓄電システムと周辺機器を納め、EPC 事業者が施工する設備・企業: パワーエックス・EPC事業者
- 3市場への登録と運用複数の電源を束ねて取引する事業者 (リソースアグリゲーター) として需給調整市場などに入札し、蓄電池を充放電させる設備・企業: パワーエックス
- 4収益の分配トーリングなら固定の対価を払い、マーチャント型なら市場の収益に連動して払う設備・企業: パワーエックス・蓄電所の所有者
💴 販売価格と補助金
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 運用代行 (トーリング・マーチャント・ハイブリッド) | 公表していない。案件ごとに契約で決める | 2026-11-07 | power-x.jp |
| 蓄電所の販売 (アセットサービス) | 公表していない。特定生産性向上設備等投資促進税制の一括即時償却を使えるとパワーエックスは案内する | 2026-11-07 | power-x.jp |
| 項目 | 額 (円) | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 経済産業省・資源エネルギー庁 令和6年度 再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金 | 公表されていない | 大和ハウス工業の福岡鞍手系統用蓄電所が採択された。運用はパワーエックスが担う | power-x.jp |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 直接の相談 | 発電所の所有者、蓄電所への投資家、需要家がパワーエックスの電力事業に問い合わせる | power-x.jp |
| 金融機関・商社との協業 | ちゅうぎんエナジーは蓄電所事業者・太陽光発電事業者・需要家をパワーエックスに紹介する役割を担う | power-x.jp |
| 子会社経由 | 港湾事業者向けは子会社の海上パワーグリッドが資機材を売り、パワーエックスが運用する (栗林商会の八戸の蓄電所) | power-x.jp |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 保守 | 運転開始後の保守を含めて資機材一式を供給する (ちゅうぎんエナジーとの契約) | power-x.jp |
| 遠隔監視 | PowerOS による遠隔監視で常に監視して保守し、不具合を早く把握する | contents.xj-storage.jp |
| 保守の連携 | NTTアノードエナジーとは全国8拠点の蓄電所の保守の連携を起点に協業を検討する (2026年2月10日) | power-x.jp |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 日本国内 | 運用代行は国内の9エリアで提供する。海外での運用代行は公表されていない | power-x.jp |
| 日本・米国・オーストラリア | エナジーボールト・ジャパンと、蓄電所の開発・資金調達・建設・運営の協業を目指す (2026年11月5日、法的拘束力はない) | power-x.jp |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年1〜6月 | 電力事業のうち期間に応じて計上する売上 (電力小売・蓄電所の運営) | 8 | 億円 | 7億6,700万円。運用代行だけの売上は公表されていない | contents.xj-storage.jp |
| 2026年1〜6月 | 電力事業セグメントの売上高 | 12 | 億円 | 11億7,000万円。蓄電所運営サービスの本格化と蓄電システムの販売で前年同期の4.8倍 | contents.xj-storage.jp |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 定置用蓄電システムの導入・採用実績 (2026年10月1日、会社発表) | 3,190MWh・190拠点 (うち設置済み111拠点) | contents.xj-storage.jp | |
| 関西電力送配電との実証の蓄電池 (想定) | 約2,000kW・8,000kWh | power-x.jp |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
パワーエックスの運用代行は、蓄電システムを売った後も収益を得るための事業である。蓄電所トーリングでは、パワーエックスが所有者に調整力の対価を固定価格で払う。所有者は蓄電所の収入の見通しを立てやすくなる。
運用の実績は2025年9月の愛川の蓄電所から始まり、津市、鞍手町と広がった。松江市や八戸市の蓄電所でも、運用を担う契約を結んだ。発表された運用の案件は、蓄電システム3〜4台、定格7〜10MWh 程度の高圧の蓄電所が中心である。
パワーエックスは2026年10月30日、関西電力送配電と、蓄電池で系統の混雑を和らげて設備の増強を先送りする使い方を試すことで基本合意した。大阪北部の変電所に約2,000kW・8,000kWh の蓄電池を置き、2027年度に実証を始める予定である。
公表されていないこと
- 運用代行だけの売上高、運用している蓄電所の数と容量の合計は公表されていない。
- JA三井リースと開発する愛知県東浦町と静岡県牧之原市の蓄電所は、2026年春に一次調整力の運用を始める予定と3月19日に発表された。運用を始めたという発表はまだない。
- センコーコーポレーションの太陽光発電所は、2026年2月をめどに FIP へ移って運用を始める計画だった。開始の発表はまだない。
- 愛川の蓄電所が2025年12月をめどとした一次調整力への対応は、その後の発表がない。
- トーリングの固定の対価の水準と契約期間は公表されていない。
- パワーエックスがアグリゲーターとして市場に登録している電源の量は公表されていない。
出所
- PowerX Energy 蓄電所サービス (2026-11-07)
- 「MSB神奈川愛川蓄電所」の商業運転を開始 (2025-09-08)
- 蓄電池併設型太陽光発電所向け電力アグリゲーションサービスを開始 (2025-08-21)
- 蓄電池併設型太陽光向け電力運用サービス、提供エリアを全国に拡大 (2026-03-13)
- JA三井リースと三重県津市の系統蓄電所で需給調整市場・一次調整力の運用を開始 (2026-03-19)
- ちゅうぎんエナジーと系統蓄電所の販売・運用契約を締結 (2026-04-20)
- 大和ハウス工業の系統蓄電所に蓄電システムを納入 (2026-10-02)
- 栗林商会の系統蓄電所向けに海上パワーグリッドが受注 (2026-10-06)
- 九電みらいエナジーに一次調整力対応の太陽光併設蓄電システムを納入 (2026-02-05)
- スマートエナジーと発電所併設型蓄電池の導入に関する協業に向けた覚書を締結 (2026-09-01)
- NTTアノードエナジーと蓄電池事業における協業検討を開始 (2026-02-10)
- 蓄電池を活用した新たな系統接続・設備形成手法の実現に向けた基本合意書の締結について (2026-10-30)
- Energy Vaultと蓄電システムの供給・事業協業に関する戦略的パートナーシップ契約を締結 (2026-11-05)
- 大型蓄電システム「Mega Power 2700A」の累計生産台数が500台に到達 (2026-08-24)
- 本社工場に大型蓄電システムの製造ラインを増設 (2026-03-23)
- 有価証券報告書 第5期 (2025年12月期) (2026-03-25)
- 2026年12月期 第2四半期 (中間期) 決算短信 (2026-08-13)
- 定置用蓄電システム48.54億円の受注及び累計設置拠点数100拠点突破に関するお知らせ (2026-10-16)
- ニシム電子工業・丸紅新電力と太陽光併設型・系統用蓄電池パッケージ商品を提供開始 (2026-03-03)
出所との照合日: 2026年11月7日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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