パワーエックスの電気運搬船Power Ark・Power Barge(海上パワーグリッド) PowerX / Ocean Power Grid electric power carrier ships Power Ark and Power Barge
電気運搬船は、船に積んだ蓄電池に電気をため、海を渡って運ぶ構想の船である。パワーエックスの子会社、海上パワーグリッドが開発する。外洋を走る Power Ark と、穏やかな海で使う推進機関のないはしけ (バージ) 型の Power Barge を掲げる。2026年11月時点で船は完成しておらず、屋久島の電気を周辺の島へ運ぶ事業で2028年頃の運航開始を目指す。
詳細解説
- 開発会社
- 株式会社海上パワーグリッド (2024年2月9日設立、本社は東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 22階、代表取締役社長 大西英之、代表取締役会長 伊藤正裕) oceanpowergrid.jp
- 親会社の持ち分
- パワーエックスの持株比率と議決権比率はともに69.43% (2026年3月の第三者割当増資と新株予約権の行使の後)。パワーエックスは上場時の有価証券届出書で、持ち分を今後下げる方針を示した contents.xj-storage.jp
- 事業の段階
- 上場時の有価証券届出書 (2025年11月) では、海上送電事業は構想準備段階で、事業化に至っていないと記した。初号船の開発のプロジェクトを進め、国内外で実証する予定とした contents.xj-storage.jp
- Power Ark (現在の公表値)
- 長さ約90メートル、幅約18メートル、総電池容量120MWh、航行区域は沿海・近海・遠洋 oceanpowergrid.jp
- Power Barge (現在の公表値)
- 長さ約60メートル、幅約30メートル、総電池容量120MWh、航行区域は平水区域 oceanpowergrid.jp
- Power Barge の発表 (2024年4月23日)
- 電気運搬船の派生型として、短い距離と穏やかな海域で使うバージ船の構想を発表した。当時の諸元は全長81.0メートル、幅30.0メートル、載貨重量6,000トン、総電池容量240MWh で、現在の公表値と違う power-x.jp
- 初号船「X」の計画 (2024年4月時点)
- Power Ark 100 の初号船「X」の詳細仕様書を2024年夏に仕上げ、2025年中に建造を始めて2026年内の竣工を目指すとした power-x.jp
- 屋久島の事業
- 屋久島電工と、屋久島の水力発電の電気を種子島など周辺の島へ電気運搬船で運ぶ事業の検証で合意した (2025年7月30日)。2028年頃の運航開始を目指す power-x.jp
- 九州電力との提携
- 2023年4月にパワーエックスと九州電力が海上送電の覚書を結び、2025年6月13日に九州電力が海上パワーグリッドと資本業務提携を結んだ。外部からの出資は初めてだった oceanpowergrid.jp
- 横浜港の検討
- 横浜市・東京電力パワーグリッドと、横浜港のグリーン電力の供給拠点の検討で覚書を結んだ (2024年4月24日)。2025年1月24日には戸田建設・三菱UFJ銀行も加え、洋上風力の電気を横浜市臨海部から供給する方法を検討する覚書を結んだ oceanpowergrid.jp
- 事業の広がり
- 2026年2月から、離島と港湾の小規模な電力網 (マイクログリッド)、離島と洋上のデータセンター (Mega Power DC) も海上パワーグリッドが担う。港湾・離島向けの蓄電システムの販売も行う power-x.jp
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 船体の建造 | 公表されていない | 電気運搬船を建造する造船所は公表されていない | oceanpowergrid.jp | |
| 搭載する蓄電池 | 岡山県玉野市 (パワーエックスの工場) | 2024年4月の Power Barge の構想では、パワーエックス製の20フィートコンテナ型のリン酸鉄リチウムイオン電池 (LFP) の蓄電池を96個載せるとした | 現在の120MWh の型の搭載個数は公表されていない | power-x.jp |
| 船舶用の水冷モジュールの開発 | 公表されていない | パワーエックスは2025年12月期に、船舶用蓄電池に使う水冷モジュールを研究開発した | contents.xj-storage.jp |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 仕組み
- 船の蓄電池に電気をため、目的地まで運んで系統に送る。陸の電力系統で届かない経路を補い、洋上風力の電気や需要地から遠い再生可能エネルギーを運ぶ contents.xj-storage.jp
- 海底ケーブルとの違い
- パワーエックスは、大規模な敷設工事が要る海底ケーブルより環境への負荷が小さく、災害に強い送電方法になり得ると説明する contents.xj-storage.jp
- 水深に左右されない
- 海底送電ケーブルの敷設実績がある水深300メートル未満の海域は日本の排他的経済水域の10%程度で、電気運搬船なら水深に関係なく電気を運べると海上パワーグリッドは説明する oceanpowergrid.jp
- 停泊中の使い方
- 港に停泊している間も系統の調整力として使えるとする power-x.jp
- 2つの型の使い分け
- Power Barge は推進機関を持たず、月平均の有義波高が1.0メートル以下の瀬戸内海のような穏やかな海域向けに、Power Ark より費用を抑える設計とした (2024年4月) power-x.jp
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| Power Ark 長さ・幅 | 約90メートル・約18メートル | oceanpowergrid.jp |
| Power Ark 総電池容量 | 120MWh | oceanpowergrid.jp |
| Power Ark 航行区域 | 沿海区域、近海区域、遠洋区域 | oceanpowergrid.jp |
| Power Barge 長さ・幅 | 約60メートル・約30メートル (2024年4月の構想は81.0メートル・30.0メートル) | oceanpowergrid.jp |
| Power Barge 総電池容量 | 120MWh (2024年4月の構想は240MWh) | oceanpowergrid.jp |
| Power Barge 航行区域 | 平水区域 | oceanpowergrid.jp |
| Power Barge 載貨重量・速力 (2024年4月の構想) | 6,000トン・通常5〜8ノット | power-x.jp |
| Power Barge 防じん・防水 (2024年4月の構想) | IP56 (国際電気標準会議の規格) | power-x.jp |
| 電池の種類 | リン酸鉄リチウムイオン電池 (LFP) の20フィートコンテナ型蓄電池 (2024年4月の構想) | power-x.jp |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 蓄電池 | 20フィートコンテナ型 LFP 蓄電池 (2024年4月の構想で96個) セルの調達先は公表されていない |
パワーエックス 東証グロース 485A |
— | 日本 岡山県玉野市 |
パワーエックスの発表 A |
| 船体 | Power Ark (自航船)・Power Barge (推進機関のないバージ船) 造船所の名前は発表されていない |
公表されていない | — | 公表されていない |
海上パワーグリッドのサイト A |
| 推進装置 | Power Ark の推進装置 | 公表されていない | — | 海上パワーグリッドのサイト A | |
| 陸上側の受電・送電設備 | 港の系統接続設備 | 公表されていない | — | パワーエックスの発表 A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1電源屋久島電工の水力発電所 (屋久島) の電気を運ぶ事業を検証する企業: 屋久島電工
- 2蓄電システムパワーエックスの蓄電池の運用・制御の技術を使う企業: パワーエックス
- 3海運・造船の知見日本郵船が初期の資金調達 (シリーズA) に出資した。3月31日に海上パワーグリッドの社外取締役に就いた加藤淳は、同日の発表で2026年4月1日に日本郵船の技術開発グループ長に就く予定とされた企業: 日本郵船
- 4電力会社九州電力が資本業務提携を結び、中部電力グループの合同会社 CEPCO-R がシリーズAに出資した企業: 九州電力・中部電力グループ
- 5資金日本政策投資銀行、みずほ銀行 (脱炭素への移行を支える出資枠)、クラフティア、辰巳商会がシリーズAに出資した企業: 日本政策投資銀行・みずほ銀行・クラフティア・辰巳商会
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1設計2024年4月時点で Power Ark 100 の初号船の詳細仕様書を作っていた設備・企業: 海上パワーグリッド
- 2建造建造の開始は発表されていない設備・企業: 公表されていない
- 3事業の検証屋久島での初号プロジェクトを中心に技術検証と事業性の確立を進める (2026年2月)設備・企業: 海上パワーグリッド・屋久島電工
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| Power Ark・Power Barge | 公表していない。船の価格も電力輸送の料金も示されていない | 2026-11-07 | oceanpowergrid.jp |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 問い合わせ | 海上パワーグリッドのサイトの問い合わせ窓口で受け付ける。事業内容は電気運搬船の開発・販売と海上電力輸送 | oceanpowergrid.jp |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 保守の体制 | 電気運搬船の保守・運航の体制は公表されていない | oceanpowergrid.jp |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 国内 (九州・中国地方、屋久島周辺、横浜港) | 2024年4月の構想で Power Barge の運航想定は九州と中国地方の間。屋久島から種子島などへの輸送を検証する。海外への販売は公表されていない | power-x.jp |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 海上パワーグリッドのシリーズA (A種優先株式6,109株、2026年3月13日払い込み) | 10億9,900万円 (1株18万円、パワーエックスの追加出資を含む。増資後の資本金6億400万円) | contents.xj-storage.jp | |
| 海上パワーグリッドの資本金 (資本準備金を含む) | 12億900万円 | oceanpowergrid.jp |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
電気運搬船は、パワーエックスのグループでまだ事業化に至っていない構想段階の事業である。2024年4月には初号船を2026年内に竣工させるとしたが、建造の開始は発表されていない。屋久島の事業では、2025年7月に2028年頃の運航開始を目指すとした。
公表する諸元も変わった。Power Barge の容量は240MWh から120MWh に、長さは81メートルから約60メートルになった。容量は Power Ark と同じ120MWh である。
事業は船にとどまらなくなった。海上パワーグリッドは2026年2月から離島と港湾のマイクログリッドやデータセンターも担う。10月には八戸市の蓄電所向けに Mega Power 2500 を受注した。日本郵船や九州電力などの出資で、パワーエックスの持ち分は69.43% に下がった。
公表されていないこと
- 電気運搬船を建造する造船所と建造の開始時期は発表されていない。
- 2024年4月に掲げた初号船「X」の2026年内の竣工の計画が変わったかどうかは、発表で説明されていない。
- 現在の120MWh の型に載せる蓄電池の個数とセルの調達先は公表されていない。
- 電力輸送の料金と1回の輸送の費用は公表されていない。
出所
- 海上パワーグリッド 公式サイト (2026-11-07)
- 海上パワーグリッド 会社概要 (2026-11-07)
- バージ型電気運搬船「Power Barge」を発表 (2024-04-23)
- 電気運搬船による屋久島の再生可能エネルギーを島外輸送する事業の検証を開始 (2025-07-30)
- 九州電力と資本業務提携契約を締結 (2025-06-13)
- 横浜市臨海部のグリーン電力供給拠点構築に関する覚書を締結 (2024-04-24)
- 海上パワーグリッド社におけるシリーズAラウンド資金調達の実施について (2026-02-27)
- (みずほ銀行・パワーエックス・海上パワーグリッド) 株式会社海上パワーグリッドへの出資について (2026-02-27)
- 連結子会社 (株式会社海上パワーグリッド) の第三者割当増資に関するお知らせ (2026-02-27)
- 海上パワーグリッド 社外取締役就任のお知らせ (2026-03-31)
- 栗林商会の系統蓄電所向けに海上パワーグリッドが受注 (2026-10-06)
- 有価証券届出書 (新規公開時) (2025-11-21)
- 有価証券報告書 第5期 (2025年12月期) (2026-03-25)
- 洋上風力発電によるグリーン電力を横浜市臨海部を起点として供給する方法の検討に関する覚書を締結 (2025-01-24)
出所との照合日: 2026年11月7日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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