上海臨港の沖合に据えた海底データセンターは、約500メートル先の洋上風力発電所から直接受電する。海蘭信の開示から計算すると、海南島沖で先に稼働させた施設の2025年の収益は調達資金から投じた額の約5%で、見込みに届かなかった。

中国で海底データセンターを手がける北京海蘭信数据科技 (海蘭信、深セン証券取引所に上場) は2026年4月22日、2025年12月期の年次報告書を公表した。転換社債で調達した資金の使い道を一覧にした開示に、海南島沖の施設の第1期についての記載がある。調達資金から投じた額は2億1,512万元で、2025年にこの事業から得た収益 (同社の用語では「効益」) は1,070万元、累計でも1,457万元にとどまり、見込んだ収益に達したかを示す欄は「否」となっている。2025年の収益は、投じた調達資金の4.97%にあたる (本稿の計算)。同社はこの収益が利益なのか売上高なのかを示していない。見込みに届かなかった理由について同社は、一部の顧客がラック単位で借りる従来の形から、専用の仕様やモジュール型の設備を求める形に移りつつあり、事前の技術の調整に想定より時間がかかったためと説明した。

上海臨港の海底データセンターは第1期2.3メガワット、近くの洋上風力発電所から2回線で受電

上海自由貿易試験区の臨港新片区では2025年6月10日、区の管理委員会、持ち株会社の上海臨港新片区投資控股集団、海蘭信が4割を出資する上海海蘭雲科技の3者が協定を結び、洋上風力の電力を直接使う海底データセンターの事業が始まった。新華社が上海市政府の英語版サイトに載せた記事によると、海蘭雲の初期投資は16億元で、第1期は2.3メガワットの実証施設、2期を合わせた全体の計画は24メガワットである。海蘭雲の蘇洋総経理は、設計上の電力使用効率 (施設全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った値で、1に近いほど冷却などの無駄が少ない) を1.15未満とし、使う電力の9割超を洋上風力でまかなうと説明した。第1期は同年9月の稼働を目指した。新華社は10月22日、施設が21日に完成したと伝えた。

施設の詳細は、中国中央テレビの経済チャンネルが2026年5月に現地から伝えた (中国新聞網が転載)。場所は小洋山の東の沖合で、機器を収めた本体は水深10メートルの海底に据えられ、海面から20メートル余り突き出た足場だけが水上に見える。全体の重さは1,950トン、機械室は4階建てで各階が約160平方メートル、ラックは192台で1台あたりの電力は約12キロワットである。192台に12キロワットを掛けると2,304キロワットとなり、第1期の「2.3メガワット」はラック全体の電力と一致する。この構造物は半年で建設を終えたという。電力は、約500メートル先にある出力20万キロワットの洋上風力発電所 (年間発電量5億キロワット時超) から受ける。海蘭信は年次報告書で、洋上風力発電所から35キロボルトの送電線2回線で受電し、ラック1台の電力を15〜200キロワットの範囲で変えられる設計にしたと記している。冷却には海水を使い、淡水は使わない。同じ報道は、この海域の年間平均水温が15度にとどまると伝えた。2.3メガワットの規模で必要な用地は200平方メートルで、陸上に建てる場合の10分の1だという。

省エネの数字は、新華社の2本の記事で食い違う。6月の記事では蘇総経理が、海水で冷やす方式は陸上の施設に比べて全体の消費電力を30〜40%減らすと説明した。10月の記事では、上海の施設の設計上の削減率を22.8%とした。削減率は「1−海底の施設の電力使用効率÷陸上の施設の電力使用効率」で表せるので、海底の施設の値を1.15として逆算すると、22.8%は陸上の施設の値を1.49、30〜40%は1.64〜1.92と置いた計算になる (本稿の計算)。中国中央テレビは陸上の施設の電力使用効率を通常1.4〜1.6と伝えており、この範囲に収まるのは22.8%から逆算した1.49のほうである。ただしこの検算は公表値どうしの逆算で、海底の施設の実測値を確かめたものではない。

稼働の時期も資料によって書き方が違う。海蘭信は年次報告書で、2025年のうちに建設を終えて商業運転に入り、中国電信 (チャイナテレコム) や上海市の国有電子機器大手、上海儀電と契約を結んで、最初の設備を顧客に引き渡したと説明した。中国中央テレビは2026年5月の現地報道で運転中の施設として伝え、最初に接続した利用者を約10キロメートル離れた通信会社のAI計算拠点とした。2025年10月21日に完成してから、いつ商業運転に入ったのかは、当事者の資料では確かめられなかった。

設計と運営の側は規模を広げる計画を掲げている。同じ報道によると、1基で5〜7メガワットの海底データセンターを長江デルタ、珠江デルタ、渤海沿岸の海域に複数並べる構想を進めている。時期と投資額は示していない。

施設容量電源冷却状況 (2026年10月時点)
上海臨港 (海底)第1期2.3メガワット、計画24メガワット洋上風力から35キロボルトの2回線海水2025年10月に完成、商業運転中
海南陵水 (海底)容器100基の計画陸上の電力網 (110キロボルトの変電所2か所)海水第1期は2023年12月に完成、2025年2月に容器を追加
マイクロソフト (海底)サーバー864台・ラック12台オークニー諸島の電力網 (再生可能エネルギー100%)海水2020年に引き揚げ。2024年に取り組みの終了を表明
日本郵船ほか (浮体)コンテナ型 (容量は非公表)太陽光と蓄電池非公表2026年3月に実証開始、2026年度末まで
商船三井 (浮体)20〜73メガワット発電船 (LNGなど)海水か河川水で直接冷やす2027年の稼働を想定 (2025年7月時点)

容量と電源は各社と当局の発表、新華社の記事から。海南の電源は中国能源報 (2025年2月) による。

海南の海底データセンターは容器100基の計画、海蘭信の事業別売上高には区分がない

海南省陵水沖の施設は、中国の国営メディアが世界初の商用の海底データセンターと伝えるものである。人民日報によると、2022年12月に最初の容器 (サーバーを収める密閉した円筒形の容器。中国側の呼び名はデータ倉) が水深35メートルに沈められ、2023年12月31日に第1期が完成した。容器1基の重さは1,300トンを超え、最終的に100基を据える計画で、すべてそろえば年1億2,200万キロワット時の節電と、陸上の用地6万8,000平方メートル、淡水10万5,000トンの節約になると同紙は伝えた。設計寿命は25年である。運転の実績については、中国電信研究院が2024年4月に出した報告で、2022年12月から2023年12月までの電力使用効率が1.1まで下がったとした。海蘭信は、2025年も1.1前後で推移したと年次報告書に記した。運営する海蘭雲の蘇総経理は新華社に、海南の施設は稼働以来サーバーの故障がなく、現地での保守も要らなかったと述べたが、台数や期間などの数字は示していない。

電力は海上ではなく陸から送られている。中国能源報によると、中国南方電網傘下の海南電網は、陸上にある110キロボルトの変電所2か所から専用線で電力を送り、一方を常用、もう一方を予備にしている。陸上にある電源設備や試験・運営の拠点の受電容量は、これまでに計4,000キロボルトアンペアである。同社の陵水の電力供給部門の担当者は、第1〜3期で申し込まれた受電容量が合計2万4,000キロボルトアンペアになると述べた。上海の施設が洋上風力に直結するのに対し、海南は陸上の電力網に頼る。

2025年2月18日には新しい容器が沈められた。海蘭信の年次報告書によると、この容器は海南高速公路傘下のAI計算センター運営会社、数智高速智算中心 (陵水) が投資して建てたもので、同社は容器ごと計算資源を貸し出す並行科技に引き渡した。3月12日には海蘭雲 (年次報告書は略称だけを記す) が、この施設を使って中国のAI企業ディープシークの大規模言語モデルを動かし、機器からモデルまでまとめて提供するサービスを、政府と企業向けに始めた。ディープシークはこのサービスで使うモデルの開発元であって、同社がこの施設の利用者だという記載は年次報告書のどこにもない。中国能源報は、ディープシークのモデルを使ったAIアシスタントとの対話を毎秒約7,000回処理できると伝えたが、算定の根拠は示されていない。

海蘭信の決算のどこに表れるかを見ると、この事業の規模が分かる。2025年の売上高は7億1,632万元で前年比87%増、親会社株主に帰属する純利益は4,029万元で4.9倍だった。増収をけん引したのは海洋観測・探査の機器で、売上高は前年の5,573万元から3億4,538万元に増え、全体の約48%を占めた。次いでスマート船舶と航行システムが3億4,292万元 (約48%) で、事業別の売上高に海底データセンターの区分はなく、「その他」が2,802万元 (約4%) あるだけである。

海南の第1期を実施するのは、陵水にある全額出資の子会社、高恩 (海南) 科技で、この会社の数字は連結決算に入る。年次報告書の主要子会社の表によると、2025年の売上高は2,742万元、純利益は1,017万元だった。ただしこれは子会社単体の値で、2024年は売上高4,978万元と、同年の「その他」(2,176万元) を上回っていた。海底データセンターの売上が事業別のどの区分に入っているかは、開示からは分からない。一方、2025年2月の容器を建てた数智高速智算中心 (陵水) には海蘭信が42%、上海の事業に名を連ねる上海海蘭雲科技には40%を出資しており、どちらも持分法を適用する関連会社で、両社の売上は海蘭信の売上高に合算されない。

海底データセンター計画投資額 (万元)投資の進み具合2025年の収益 (万元)見込みの達成
海南 第1期21,511.80100.00%1,070.05達していない
上海臨港 第1期12,225.7531.85%計上なし2026年4月に完成の予定

海蘭信の2025年12月期年次報告書にある、転換社債の調達資金の使い道の開示から。海南の第1期が調達資金の事業として完成したのは2024年8月 (日付は表によって8月1日と8月31日の2通り)。上海の完成予定は年次報告書の時点のもので、その後の開示は確認していない。上海の事業の実施主体は、2025年に株式を取得して連結した孫会社の海蘭雲 (上海) 数据科技に移った。同社の取得日から年末までの純損失は117万元だった。

故障率8分の1はマイクロソフトの実験の数字で、同社は海底での建設をしていない

海底データセンターの信頼性の話でよく引かれる「故障率は陸上の8分の1」は、中国の施設の数字ではない。米マイクロソフトのプロジェクト・ナティックの第2段階の結果である。同社は2018年春、英スコットランドのオークニー諸島沖の水深約36メートルに容器を沈め、2020年夏に引き揚げた。同社の発表によると、円筒形の容器にラック12台、サーバー864台を収め、乾燥窒素を満たして密閉した。電力は、再生可能エネルギーで全量をまかなうオークニー諸島の電力網から供給を受けた。責任者のベン・カトラー氏は引き揚げ後、水中の故障率は陸上で比較用に動かしたサーバーの8分の1だったと述べた。業界誌データセンター・ダイナミクスによると、海底の855台のうち故障は6台、陸上の135台のうち8台だった。故障率は0.70%と5.93%で、比べると約8.4分の1になり、8分の1という説明と合う (本稿の計算)。同社は容器や熱交換器、サーバーなどの部品をすべてリサイクルし、設置した海底は元の状態に戻すとしている。

実験の成果は、事業化には結びつかなかった。2024年6月、同社でクラウド運用部門を率いるノエル・ウォルシュ氏はデータセンター・ダイナミクスの取材に、海底データセンターはどこにも建設していないと答えた。そのうえで、海面下での運用や、振動がサーバーに与える影響について多くを学んだと述べた。同社は別の声明で、水中のデータセンターは今は持っていないが、ナティックは研究の場として使い続けるとした。中国の2つの施設については、故障率の数字は公表されていない。海蘭信が年次報告書で説明しているのは、電源と通信をそれぞれ二重にし、冷却装置に予備を持たせた冗長設計までである。

日本郵船は横浜港で浮体式の実証、商船三井は中古船1隻で洋上データセンター20〜73メガワットを計画

日本の上場企業が公表している海上のデータセンターの主な計画に、次の2件がある。どちらも海底には沈めず、水面に浮かべる。

1件目は日本郵船がとりまとめる横浜港の実証である。日本郵船、NTTファシリティーズ、ユーラスエナジーホールディングス、三菱UFJ銀行、横浜市の5者は2025年3月27日に覚書を結んだ。大さん橋ふ頭のミニフロート (縦25メートル、横80メートルの災害対策用の浮体式係留施設) に、コンテナ型のデータセンターと太陽光発電設備、蓄電池を置く。実証は2026年3月25日に始まり、2026年度末までをめどに、塩害や揺れのある環境で安定して動くか、再生可能エネルギーだけで必要な電力を賄えるかを確かめる。発表によると、NTTファシリティーズは2024〜26年に完成する国内のデータセンター (予定を含む) の約7割に構築や運用で関わり (件数ベース)、ユーラスは国内の風力発電の連系容量で首位である。5者は将来、洋上風力発電所の近くに浮体を置き、陸上の送電網を介さずに発電した電気を使う構想を掲げる。

2件目は商船三井で、2025年7月7日にトルコの発電船大手カラデニズ・ホールディング傘下のキネティクスと基本合意した。自社の中古船をデータセンターに改造し、カラデニズの発電船から電力の供給を受ける。発表によると容量は20〜73メガワットで、モジュールを追加して拡張できる。船は総トン数9,731トン、全長120メートル、幅21.2メートル。サーバーは海水か河川水で直接冷やす。発電船は液化天然ガス (LNG) など複数の燃料に対応し、両社は陸上の電力網への接続もあわせて検討する。2025年7月の発表時点では、2025年に改造の設計を終え、26年に工事と許認可の取得を済ませ、27年に稼働させる計画だった。改造にかかる期間は1年程度と見込み、陸上に建てる場合に比べて開発期間を最大3年短くできる可能性があるという。

商船三井は2026年3月30日、日立製作所、日立システムズとも基本合意した。中古船を改造した浮体式データセンターの2027年以降の稼働を視野に、日本、マレーシア、米国で需要と事業性を調べる。3社が発表で例に挙げた自動車運搬船は床面積が約5万4,000平方メートルあり、国内最大級の陸上データセンターに相当するという。

商船三井が1隻で狙う上限の73メガワットは、上海臨港の全体計画24メガワットの約3倍にあたる。ただし商船三井の数字は基本合意の段階の計画の上限で、上海は完成した施設の計画である。工期は、上海の構造物が半年で建設を終えたのに対し、商船三井は改造に1年程度を見込む。日本の2社は発表で海底を選ばなかった理由に触れていない。商船三井は日立2社との合意で、係留や保守を含む海上での運用の要件を整理するとしている。電源の選び方も異なる。上海の施設は洋上風力から直接受電し、日本郵船の実証は太陽光と蓄電池、商船三井はLNGなどを燃やす発電船を使う。

日本のデータセンターの電力需要は2035年度に661万キロワット上乗せ、上海の全体計画は24メガワット

電力広域的運営推進機関は2026年1月21日に公表した2026年度の需要想定で、データセンターと半導体工場の新増設を個別に積み上げた。新増設を個別に上乗せする方法は2024年度の供給計画から使っており、2026年度にも83万キロワット (うちデータセンター64万キロワット) が上乗せされている。2035年度には新増設で最大需要電力が762万キロワット押し上げられ、うち661万キロワットをデータセンターが占める見通しだ。

年度新増設による上乗せ (万キロワット)うちデータセンター (万キロワット)
2026年度8364
2030年度420328
2035年度762661

電力広域的運営推進機関の需要想定 (2026年1月) の別添表から。最大需要電力への上乗せ。

電力量では2035年度に568億キロワット時が上乗せされ、うちデータセンターが494億キロワット時を占める。全国の最大需要電力は2035年度に1億6,460万キロワットになる見通しだ。同機関は、事業者の工事の延期や設計変更で稼働時期が後ずれし、データセンターの需要は2033年度までは前回の想定を下回るが、データセンターと半導体工場を合わせた新増設の需要は2034年度以降は上回る見通しだとした。

2035年度のデータセンターの上乗せ661万キロワットを、上海臨港の全体計画24メガワット (2万4,000キロワット) で割ると約275になる。需要想定は送電網から見た最大需要である。24メガワットがIT機器の容量なのか受電の容量なのかは資料に書かれておらず、上海の施設は洋上風力に直結していて送電網の需要でもない。IT機器の容量だとすれば、電力使用効率1.15を掛けた受電の規模は約27.6メガワットで、比は約240に下がる。定義は一致しないので目安にとどまるが、日本で2035年度に新増設分として上乗せされるデータセンターの需要は、上海臨港の全体計画の数百か所分にあたる。

海底データセンターは、海南の電力使用効率が1.1前後、マイクロソフトの実験では故障率が陸上の8分の1と、技術面では成果を示している。だが規模は上海の全体計画でも24メガワットにとどまり、運営側が掲げる1基5〜7メガワットへの大型化は時期も投資額も示されていない。海南の第1期は2025年の収益が投じた調達資金の約5%で、技術を確かめたマイクロソフトは海底での建設をしていない。日本郵船と商船三井は水面に浮かべる方式を選び、商船三井は船1隻で上海の約3倍の容量を狙うが、両社ともまだ実証と設計の段階にある。今後は、海蘭信が2026年12月期の年次報告書で海南の収益と上海の顧客との契約をどう開示するか、横浜の実証が2026年度末に塩害と揺れへの耐性の結果を示すか、商船三井の1隻目が2027年に稼働するかが焦点になる。国内のデータセンターの所在地は日本のデータセンター一覧に、関連する上場企業の利益の構造はデータセンター関連銘柄にまとめている。日本郵船、商船三井、日立製作所の開示は各銘柄ページで追える。

※2026年10月4日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版の「ディープシークが海底データセンターの計算資源を使っている」という記述は、海蘭信の年次報告書にある「海蘭雲がディープシークのモデルを使うサービスを始めた」という内容に改めました。「陸上の8分の1の故障率を中国企業が実現した」という記述は、マイクロソフトのプロジェクト・ナティックの結果だったため改めました。「年間平均の水温15度」は東シナ海と南シナ海の両方の値としていましたが、上海臨港の海域の値として報じられたものに改めました。「毎秒7,000件の処理」は、算定の根拠が示されていない中国能源報の数字であることを明記しました。「日本の部材がなければ物理的に不可能」という記述は根拠を確かめられず削除し、投資額の円換算も外しました。

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