光デバイスは3.50%高で全テーマの首位に立ち、人工知能は0.63%安で最下位から2番目に沈んだ。同じAI投資を源とする2つの言葉が正反対を向いた日、買い戻しの先頭に立った古河電気工業は営業利益率では11社の最下位にいる。

前日に売られた電線・光通信株が、翌日そろって買い戻された。表面だけを追えば急落と急反発の往復に見える。ところが2日分を足し合わせると順位が入れ替わり、前日にほとんど下げなかった小型の光部品株が最上位へ出てくる。金融庁のEDINETで11社の営業利益率を並べると、上昇率の序列とはほぼ逆を向く。本稿は8月25日のテーマ別騰落率を全数で書き出したうえで、SWCCの株主に現れた海外運用会社の大量保有報告書を一次資料から読み、増産計画の実額、光部品を支える希土類、そして核融合が原子力発電の4倍動いた市場の値付けまでを追う。

光デバイス3.50%高、人工知能0.63%安という並び

8月25日の大引け時点でテーマ別の騰落率を上から並べると、首位は光デバイスの3.50%高で、2位の蓄電池1.64%高に2倍以上の差をつけた。以下、防衛1.48%、仮想通貨1.43%、金利上昇1.35%、核融合発電1.31%、地方銀行1.30%、AIエージェント1.28%、小型原子炉1.25%と続く。

下位を見ると景色が変わる。ドローン0.66%安を最下位に、人工知能0.63%安、生成AI0.58%安、サイバーセキュリティ0.51%安、SaaS0.47%安が並ぶ。AIという言葉を冠したテーマのうち、AIエージェントとフィジカルAI(0.62%高)は上げ、人工知能と生成AIは下げた。買われたのは計算資源を運ぶ物理的な部材であり、売られたのはソフトウェアと概念に近い側である。データセンターは0.53%高、電力設備投資は0.15%高と小幅にとどまり、資金は基盤全体へ広がったのではなく、前日に叩かれた光の周辺へ集中した。

2026年8月25日大引けのテーマ別騰落率(50テーマ)
2026年8月25日大引けのテーマ別騰落率(50テーマ)

918円安から328円高へ、日経平均が切り返した半日

市場全体の動きは往復だった。日本経済新聞によると、朝方の日経平均は下げ幅が900円程度まで拡大して6万4,600円台で推移し、6万5,000円を下回るのは8月7日以来となった。前夜の米市場で半導体株が下げた流れを引き継いだ売りが先行したものの、前引けにかけて直近の下げが大きかった銘柄へ買いが入り、終値は前日比328円34銭(0.50%)高の6万5,856円43銭で引けた。前日の終値6万5,528円09銭からの切り返しである。

金利の側は落ち着いていない。FREDの実測で米10年債利回りは8月21日に4.74%、30年債は5.27%と、財務省の買い戻し拡大が効いた8月19日の4.65%・5.19%から再び切り上がっている。前日に電線・光通信株を押し下げた材料のうち、金利は消えていない。それでも買いが入ったのは、8月26日のエヌビディア決算を前に持ち高を軽くしすぎた反動と、値幅の大きい銘柄を短期で拾う動きが重なったためである。

2日通算で残ったのは、前日に下げなかった精工技研と湖北工業

11銘柄の上昇率は、古河電気工業10.3%高、サンコール9.1%高、精工技研8.4%高、湖北工業8.3%高、フジクラ5.5%高、SWCC5.4%高、santec Holdings5.1%高、デクセリアルズ4.1%高、オキサイド3.5%高、山一電機2.3%高、住友電気工業2.2%高の順に並ぶ。前日の下落を主導した古河電気工業フジクラが買い戻しの中心に立った形である。前日の急落そのものは銘柄ごとに解剖した記事で扱っている。

ここで前日の騰落率を重ねると、単純な巻き戻しでは説明できない銘柄が現れる。精工技研は前日0.2%安とほぼ動いておらず、湖北工業も1.0%安にとどまっていた。それでいて当日は8%台を上げている。2営業日を足し合わせると精工技研8.2%高、湖北工業7.3%高が最上位となり、古河電気工業の5.2%高、デクセリアルズの4.4%高がこれに続く。前日12.0%安と最も売られたサンコールは9.1%戻しても2日通算で2.9%安と、唯一の水面下に残った。

前日下落率・当日上昇率・営業利益率の3層比較
前日下落率・当日上昇率・営業利益率の3層比較

営業利益率を重ねると、序列はさらにねじれる。EDINETの有価証券報告書から直近本決算を拾うと、デクセリアルズ33.5%、santec Holdings32.8%、湖北工業26.5%、精工技研25.7%、山一電機21.9%、フジクラ16.0%、サンコール13.6%、SWCC9.8%、住友電気工業8.2%、古河電気工業4.9%の順になる。当日の上昇率首位だった古河電気工業は、利益率では11社の最下位に位置する。値幅の大きさを決めたのは事業の採算ではなく、前日にどれだけ売られたかと株式の値動きの大きさであり、その事実がこの日の性格を規定している。

銘柄 (証券コード)8月24日8月25日2日通算営業利益率 (EDINET)
精工技研 (6834)-0.2%+8.4%+8.2%25.7% (売上300億円)
湖北工業 (6524)-1.0%+8.3%+7.3%26.5% (売上174億円)
古河電気工業 (5801)-5.1%+10.3%+5.2%4.9% (売上1兆3,076億円)
デクセリアルズ (4980)+0.3%+4.1%+4.4%33.5% (売上1,138億円)
SWCC (5805)-3.0%+5.4%+2.4%9.8% (売上2,777億円)
オキサイド (6521)-2.1%+3.5%+1.4%非開示 (12月期)
山一電機 (6941)-1.2%+2.3%+1.1%21.9% (売上527億円)
住友電気工業 (5802)-1.2%+2.2%+1.0%8.2% (売上5兆1,102億円)
フジクラ (5803)-5.0%+5.5%+0.5%16.0% (売上1兆1,824億円)
サンコール (5985)-12.0%+9.1%-2.9%13.6% (売上522億円)
santec Holdings (6777)対象外+5.1%対象外32.8% (売上315億円)

ロベコの5.09%は8月14日に成立していた

この日ただ一つ、需給以外の材料を持っていたのがSWCCである。市場が反応したのは海外運用会社による大量保有報告書だが、EDINETで書類そのもの(2026年8月24日16時38分提出)を開くと、報じられた数字の内側が見える。

発行者はSWCC株式会社(証券コード5805)。提出者はオランダのロベコ・インスティテューショナル・アセット・マネジメントで、単独の保有は811,000株・2.63%にとどまる。5%を超えたのは、共同保有者として名を連ねる米ボストン・パートナーズ・グローバル・インベスターズの758,900株・2.46%を合算した結果で、合計1,569,900株・5.09%となる。発行済株式等総数は30,826,861株、保有目的は純投資と記載されている。

日付が示すものはさらに具体的である。報告義務発生日は2026年8月14日。5%を超えた事実は、電線・光通信株が急落した8月24日より10日も前に成立していた。提出が8月24日の取引終了後になったのは制度上の期限に沿った動きであり、8月25日の株価が反応したのは、新しい買い手の出現ではなく、既に確定していた事実の開示である。買い手の性格も付記しておく。ボストン・パートナーズは割安な株式を選別する運用で知られる会社で、AIの成長を買う資金とは出自が異なる。

増産の実額、古河1,000億円・SWCC7倍・フジクラ13,824心

株価の往復とは別の時間軸で、各社は設備の増強を決めている。古河電気工業は2026年8月4日、光ファイバーの増産に約1,000億円を投じると発表した。投資先は米国、ブラジル、日本、インドの4カ国で、量産開始は2028年度下期から。ローラブルリボンケーブルの製造能力はファイバー数量換算で2025年度末比おおむね2倍になる。株価が10.3%動いた1日と、能力が2倍になる3年後は、別の物差しで測る必要がある。

SWCCの計画はさらに傾斜が急である。2026年度から2030年度の中期経営計画で、光ファイバー製品の生産能力を2025年度比およそ7倍へ引き上げる。主役は間欠接着リボン心線「e-Ribbon」で、細径と高密度を両立させ、データセンター間やサーバー室内の配線に使われる。国内外で200億円規模の増産投資を伴う。フジクラは製品側で先行し、2025年7月にハイパースケールデータセンター向けの13,824心ケーブルを発売した。従来のWTCが最大6,912心だったのに対し、外径40ミリメートル未満を保ったまま心数を2倍にしている。住友電気工業は、同じ断面積で通信容量を増やすマルチコアファイバーの標準化と実用化を進める。

santec Holdingsの位置づけは他の10社と異なる。同社が供給するのは光ファイバーでも光部品でもなく、波長可変光源と光測定器、すなわち次世代の光部品を開発し検査するための装置である。光電融合(CPO)やシリコンフォトニクスの量産評価が増えるほど需要が生じる構造で、営業利益率32.8%という水準はその立ち位置を反映している。光電融合の業界地図と買収の連鎖は別稿で全数を書き出しているため、そちらに委ねる。

光アイソレーターの要はテルビウム、規制7種の中にある

湖北工業が海底ケーブル向けで世界首位級を占める光アイソレーターは、光通信と希土類が直結する部品である。反射して戻る光を遮り半導体レーザーを保護する役割を担い、その心臓部にはテルビウムを含むガーネット結晶(TGG)や磁性ガーネットが使われる。テルビウムは、中国が2025年4月に輸出許可制の対象とした中・重希土類7種に含まれる。長距離伝送で信号を増幅する光ファイバー増幅器がエルビウムを使う点も併せると、光が進む道の要所は希土類に押さえられている。中国は希土類の精錬能力の約9割、中・重希土類の生産では99%を握る。

同じ日、レアアースのテーマは1.14%高と全体の13位に入り、小型の再資源化・精錬関連へ短期の資金が向かった。関連する上場企業を整理する。

銘柄 (証券コード)光通信・希土類との接点
アサカ理研 (5724)廃電子基板やめっき廃液から貴金属を回収する湿式精錬の専業。国内で完結する精錬能力そのものが希少
第一稀元素化学工業 (4082)ジルコニウム化合物で世界首位級。中国外の拠点としてベトナム工場を2025年7月に本格稼働
神島化学工業 (4026)光アイソレーターのファラデー回転子に使うTGGセラミックスを供給
信越化学工業 (4063)希土類磁石を自社生産する数少ない化学大手
湖北工業 (6524)光アイソレーターの完成品側。素材の調達が滞れば供給が直撃を受ける

精錬という工程は派手さがなく、株式市場では素材価格の変動として扱われがちである。それでも、規制が強まるほど中国の外に残る精錬能力の価値は上がる。テーマとしての1.14%高よりも、この構造の方が長い時間軸を持つ。

核融合発電1.31%に対し原子力発電0.33%、市場が値付けした時間差

原子力に関わる3つのテーマの並びは、市場が電気の何を買っているかを映す。核融合発電1.31%高、小型原子炉1.25%高に対し、既存の原子力発電は0.33%高。将来の電源が、現に電気を売っている事業の4倍動いた。地熱発電は0.16%安、再生可能エネルギーは0.04%安と水面下に沈み、電力設備投資も0.15%高にとどまる。

この値付けは、AI基盤への投資が電力側でどこに集まるかという問いに直結する。データセンターの電力不足は既に定量化されており、米国では2033年に必要な供給力と実際に届く供給力の差が100ギガワットを超える。その算術と敷地内発電という現実解は前稿で検証した。日本側では柏崎刈羽6号機が2026年4月に営業運転へ移り、脱炭素電源を前提とする国の地域制度が動き出している。原子力の個別銘柄が、電気を売って稼ぐ側と、まだ売っていない側に割れる構造は90銘柄の全数照合で仕分けた。核融合と小型原子炉が既存の原子力発電より大きく動くのは、収益がまだ立っていない分だけ期待の伸びしろを織り込みやすいためで、実際の電力を今日供給しているのは0.33%しか動かなかった側である。

観察点を3つに絞る。第1に8月26日のエヌビディア決算で、ネットワーク部門の売上とデータセンター設備投資の継続性が確認できるか。第2に古河電気工業フジクラが出来高を伴って前日の急落前の水準を回復するか、そして精工技研湖北工業へ向かった資金がとどまるか。第3に米長期金利が8月21日の4.74%・5.27%から再び上がらないか。2日で反対方向へ動いた株価に対し、13,824心のケーブルも7倍の増産計画も1,000億円の投資も、日付を持ったまま変わらずに残っている。