光電融合はAI需要で数兆円市場へ向かい、業界地図には買収4件と「自社量産」5社が並ぶ。日本はNTTのCPO商用サンプル、量子ドットレーザーのQDレーザ、光源5方式のうち3方式の量産で、設計でなく光源と実装に強みを持つ。
光電融合 (電気配線を光に置き換えてロジックと同じパッケージに収める技術) の特集を9本組んだ。市場が急成長して数兆円規模に向かいAIがけん引すること、データセンターでGPU間の接続まで光になること、新実装形態CPO (Co-Packaged Optics) に7つの革新技術があること、検査では位置合わせの速度と再現性が関門になること、業界地図はAI需要で「バブルの様相」を示し日本は光源に強いこと、光変調器では4つの材料がCPO採用を争い化合物系に日本勢が懸けること、NTTの光電融合がビッグテックと「大きな商談」を交渉し政府がラピダスとの連携に期待すること、量子ドットレーザーを造れるのは日独2社でQDレーザが攻勢に出ること、新光電気工業が「TSMCにはない魅力を」と製造受託に乗り出すこと、である。本稿は特集に付された業界地図4枚 (設計大手、新興、製造受託、光源メーカー) と教育図2枚 (半導体の役割・分類) の全社を書き出し、金融庁EDINETの有価証券報告書、財務省の貿易統計 (e-Stat)、米連邦準備制度のデータ (FRED) で日本勢の現在地を測る。SK hynixのCPO論文とメモリー3社のAvicena出資は先行記事で扱った。円換算は1ドル=159.21円 (2026年8月14日、FRED) による。
業界地図①設計大手: 「自社量産」はNTT・IBM・Intel・Samsung・GlobalFoundriesの5社、買収は4件
デバイスとPIC (光集積回路) の設計大手は4群に分かれる。通信事業者ではNTT (9432) が唯一「自社量産」の札を持ち、2027年1〜3月期にCPO製品の商用サンプル提供を予定する。米Coherentが並ぶ。光技術では米Nubis Communicationsを通信大手Cienaが買収し、カナダのRANOVUSが続く。半導体メーカーではBroadcomが2025年に6.4TbpsのCPO製品を出荷し、NVIDIAが2025年に1.6Tbps品の実用化を目標に置く。Marvellは光電融合新興の米Celestial AIを買収し、AMDは米Enosemiを買収した。IBMは自社量産で日本の材料メーカーと積極連携し、Samsungは自社量産で2027年にCPOの技術導入を計画、Intelは自社量産で光電融合を長年開発しチップレット技術を発表した。台湾のMediaTek、日本の富士通 (6702) と三菱電機 (6503) が設計側に、電子部品ではTDK (6762) と京セラ (6971) が載る。
製造受託ではTSMCが光電融合実装技術「COUPE」を展開してBroadcomやNVIDIAから受託し、GlobalFoundriesがPICファウンドリのシンガポールAMFを買収して自社量産と受託を並行し、イスラエル系のTower Semiconductorが続く。後工程受託 (OSAT) は台湾のASE、米Amkor、中国のJCET、そして日本の新光電気工業である。新光電気は2024年に産業革新投資機構 (JIC) 系のTOBで非公開化されたパッケージ基板大手で、特集は同社の製造受託への参入を「TSMCにはない魅力を」という言葉で伝える。基板からパッケージ実装、光の結合までを一括で受ける形は、前工程を持たないOSAT側からの光電融合参入で、ロジックの受託で成立した台湾一極とは別の入口になる。買収はMarvell→Celestial AI、AMD→Enosemi、Ciena→Nubis、そして光通信の米Credo→カナダのHyperlume (マイクロLED光接続) の4件が地図に載り、AI需要の過熱を映す。
業界地図②新興と光源: チップレット商用化は2025→26→27年の三段、量産できる量子ドットは日独2社
新興は9社が載る。米Ayar Labsは2027年にチップレット製品の量産を始め、NVIDIAなど大手が出資する。Celestial AIは2026年に商用化しMarvellに買収された。米Lightmatterは2025年に商用化し光演算技術も開発、米Lightelligenceは光演算に注力しプラガブル製品も手掛ける。米Lumentumはプラガブル製品を展開し、米Luminous ComputingはBill Gates氏が出資した。米Xscape Photonicsは多波長レーザー光源が特徴でNVIDIAが出資し、イスラエルのNewPhotonicsはプラガブルとCPOを開発してソフトバンクと協業する。日本からはアイオーコアが小型・耐熱性を特徴に国のプロジェクトへ参画し、車載にも力を入れる。チップレット (光入出力の部品を演算チップの隣に置く方式) の商用化はLightmatter 2025年、Celestial AI 2026年、Ayar Labs 2027年の三段で、プラガブル (差し替え式モジュール) からCPOへの移行期に両方を手がける企業が並ぶ。
「日本は光源に強み」の根拠は光源メーカーの一覧にある。連続波のCW-DFBレーザーは住友電工 (5802)、三菱電機、Coherent、Lumentum、カナダのPOET Technologies、フランスのScintil Photonics、台湾のEnnostar。VCSEL (面発光レーザー) は古河電工 (5801)、富士通、Coherent、Ennostar。量子ドットレーザーはQDレーザ (6613) とドイツのInnoLumeの2社だけが量産でき、米Quintessentが光コムとの組み合わせで続く。光コムレーザーはアイルランドのPilot Photonics、スイスのEnlightra、Xscape、Quintessent。マイクロLEDは米Avicena、Credoが買収したHyperlume、Ennostarである。5方式のうちCW-DFB・VCSEL・量子ドットの3方式で日本企業が量産側におり、量子ドットは温度変化に強くシリコン上への集積に向く特性で、QDレーザが攻勢をかける。光源はCPOの外に置いて交換できる部品 (外部光源) とする設計が主流のため、レーザーの寿命と歩留まりがデータセンターの保守費を決め、化合物半導体の結晶成長の蓄積がそのまま参入障壁になる。
なぜGPU間まで光になるのか: 接続の電力が壁になり、CPOの7つの革新技術と検査の関門が量産を分ける
特集が「データセンターの変貌」と呼ぶ変化は、接続の階層が順に光へ置き換わることを指す。データセンター間とラック間の接続はすでに光で、次はラック内のGPU間、最後はパッケージ内へと光が入る。銅の電気配線は速度を上げるほど届く距離が縮み、800Gbps超では数メートルが限界になる。AIクラスターはGPU数万個を束ね、接続の消費電力が全体の1〜2割を占めるため、1ビット当たりの電力を電気の数分の1にできる光への置き換えが、電力制約そのものの緩和策になる。CPOはスイッチやGPUと光エンジンを同じ基板に実装する形態で、特集は7つの革新技術を挙げる。光変調器ではシリコン、ニオブ酸リチウム薄膜、InP系、ポリマー系の4材料がCPO採用を争い、化合物系に日本勢が懸ける。検査は光ファイバーとPICの結合をミクロン以下で合わせる工程が量産速度を決め、位置合わせの速度と再現性が課題として特集の1本を占める。設計が光れば量産が続くわけではなく、実装と検査という「地味な工程」が歩留まりの関門になる構図は、HBMの積層検査と同じである。
教育図の整理では、半導体は人体にたとえられる。脳がメモリー (DRAM=短期記憶・電源を切ると消える、NAND=長期記憶・切っても残る) とロジック (情報処理)、目がイメージセンサー (光をデジタル信号に変換)、耳がアナログ半導体 (音・光・温度をデジタル信号に変換)、筋肉がパワー半導体 (電圧・電流を制御) で、分類は集積回路 (ロジック=CPU・GPU・FPGA、メモリー=DRAM・NAND・SRAM、マイクロ=マイクロコントローラー、アナログ=電源用IC・アンプ)、ディスクリート、オプトエレクトロニクス (LED・フォトダイオード)、センサーに分かれる。光電融合はこのたとえでは「神経」で、脳と脳、脳と目をつなぐ配線を電気から光に替える。神経の速度と消費電力が全身の性能を決める段階に来たことが、この特集の前提である。
NTTのIOWNとラピダス連携、日本勢の有報: 設備投資2兆3,260億円のNTTと、5方式3勝の光源
NTTの光電融合はIOWN構想の中核で、デバイスは子会社のNTTイノベーティブデバイス (横浜) が担い、ビッグテックとの「大きな商談」を交渉中と特集は伝える。政府がラピダスとの連携に期待するのは、2nmロジックの隣に光入出力を置く構図が、ラピダスの後工程と光電融合の実装で重なるためである。2026年3月期の有価証券報告書では、NTTは営業収益14兆4,091億円・営業利益1兆7,062億円 (11.8%)・設備投資2兆3,260億円・研究開発費2,787億円で、国内最大級の投資力を持つ。光源側の日本勢は、住友電工が売上5兆1,102億円・営業利益率8.2%・研究開発費1,629億円、古河電工が売上1兆3,076億円・営業利益率4.9%、富士通が売上3兆5,030億円・営業利益率9.9%、三菱電機が売上5兆8,948億円・営業利益率7.3%、TDKが売上2兆5,048億円・営業利益率10.9%、京セラが売上2兆702億円・営業利益率5.7%である。輸出側の統計では、半導体等電子部品の輸出が2025年に6兆5,880億円で台湾向け1兆4,861億円が首位に立ち、2026年上半期は4兆1,402億円だった。台湾のTSMCがCOUPEでCPOの前工程を受託する構図は、この輸出の行き先とも重なる。米国の半導体工業生産指数 (FRED) は2026年7月に191.9で上昇を続け、半導体生産者物価指数は29.0で横ばいのままで、光電融合の投資は物価でなく数量の統計に現れる。
過熱の測り方と関連銘柄: バブルの様相でも、量産と検査を持つ側が残る
特集が「バブルの様相」と呼ぶ状態は、買収4件と大手の出資が新興の評価額を押し上げている局面を指す。過熱の中で残る企業を選ぶ基準は、本稿の整理では3つある。量産の実績 (Broadcomの6.4Tbps出荷、QDレーザとInnoLumeの量子ドット量産)、置き換えの難しい工程 (光源の結晶成長、検査の位置合わせ)、そして顧客の資本が入っているか (NVIDIAのAyar・Xscape出資、ソフトバンクのNewPhotonics協業) である。本稿の主題は光電融合であり、関連銘柄は希土類でなく「光源・実装・検査の日本株」を置く。数字は2026年3月期の有価証券報告書によるもので、売買の推奨や評価は示さない。
- NTT (9432): IOWN・CPO商用サンプル2027年1〜3月期。設備投資2兆3,260億円
- 住友電工 (5802): CW-DFBレーザー光源。研究開発費1,629億円
- 古河電工 (5801): VCSEL光源・光ファイバー。営業利益639億円
- QDレーザ (6613): 量子ドットレーザー量産の日独2社の一角
- 富士通 (6702): VCSEL・光電融合設計。営業利益率9.9%
- 三菱電機 (6503): CW-DFB・設計大手。研究開発費2,359億円
- TDK (6762) / 京セラ (6971): 実装部品・パッケージ材料
- アドバンテスト (6857): 検査。光電融合でも位置合わせ検査が関門
希土類の関連銘柄は別稿に役割別の30銘柄がある。データセンターの電力側 (原子力・電力会社と国策AIデータセンター) は先行記事が扱っており、光電融合は「電力を増やす」側でなく「接続の電力を減らす」側から同じ制約に取り組む技術である。
確かめられる点
- 第1に、NTTのCPO商用サンプルが予定どおり2027年1〜3月期に出るか、ビッグテックとの商談が契約として公表されるか。
- 第2に、Broadcomの次世代CPO (12.8Tbps級) とNVIDIAの1.6Tbps品の出荷が2026〜27年の決算説明に載るか。
- 第3に、QDレーザの有価証券報告書で量子ドットレーザーの売上が光通信向けに伸びるか。
- 第4に、新光電気工業の製造受託が最初の顧客を公表するか。
- 第5に、Ayar Labsの2027年量産とチップレット三段 (2025→26→27年) が予定どおり進むか。
買収と出資の速度が量産の速度を上回り続ければ「バブルの様相」の側が濃くなり、逆なら数兆円市場の側が濃くなる。
光電融合の分業は、設計が米国、前工程受託が台湾・米国、後工程受託が台湾・米国・中国・日本、光源が日本・米国・欧州・台湾という配置で始まった。日本の持ち場は華やかな設計ではなく、光源の結晶成長と実装・検査であり、それはロジックで敗れた後も装置と材料で残った持ち場と同じ形をしている。
💬 この記事へのコメント 0
まだコメントはありません
最初のコメントを投稿してみましょう!⚠️ エラーが発生しました