台湾は2025年にドローン (小型無人機) を12万2,706機輸出したが、日本の貿易統計では台湾からの輸入が45機にとどまった。日本は中国から12万2,154機を輸入し、1機の平均価格は台湾の輸出とほぼ並ぶ (本誌試算)。

日本の防衛市場をめぐり、海外のドローンメーカーの進出や、日本企業と海外企業の提携が相次いでいる。米アンドゥリル・インダストリーズが日本に進出し、テラドローンは迎撃ドローンを手がけるウクライナの2社を傘下に収めることを決めた。ウクライナの無人艇メーカーの最高経営責任者 (CEO) も来日し、日本での生産の提携先を探した。台湾のシンクタンク、科技・民主・社会研究センター (DSET) は9月23日、日台間では共同生産などの協力がほとんど進んでいないとする報告書を公表した。本誌は報告書の内容を、財務省の貿易統計や経済産業省・総務省の資料、台湾の法令と照合した。

米アンドゥリルやウクライナ勢が日本に照準、テラドローンは迎撃ドローン2社を傘下に

アンドゥリルは2025年12月、東京に事務所を開くと発表した。創業者のパーマー・ラッキー氏は、日本企業と組んで日本向けの防衛装備を生産する考えを示したと報じられた。

テラドローン (東証グロース) は2026年3月31日にアメイジング・ドローンズ、4月28日にウィニーラボへの出資を発表した。いずれもウクライナ企業で、飛来する敵の無人機を空中で撃ち落とす迎撃ドローンを開発・製造している。6月15日には、両社の持ち分50%ずつをエストニアの子会社に移し、テラドローンの連結孫会社にすると決めた。出資比率は50%だが、テラドローンは実質支配力基準により連結の対象になると判断した。連結決算に取り込むのは2027年1月期中になる見通しだ。テラドローンの迎撃ドローンについては、防衛装備庁の調達をめぐる記事で詳しく報じた。会社の概要はテラドローンの企業ページにまとめている。

ロイター通信によると、ウクライナの無人艇メーカー、ユーフォースのCEOは2026年4月に来日した。政府関係者や防衛関連企業に日本での生産を打診したが、協議は初期段階だという。米国やウクライナの企業が日本に生産拠点を求めるなか、台湾企業の動きは目立たない。

台湾の輸出12万機、日本向けは45機

DSETの報告書は、同センターの研究員が日台の企業や専門家など14組に聞き取り調査をし、日台の公的統計と合わせてまとめた。

台湾のドローン輸出は、2024年の3,473機から2025年に12万2,706機へ、約35倍に増えた。台湾経済部 (経済産業省に相当) の産業発展署によると、2025年のドローン本体の輸出額は9,300万ドルだった。2026年1〜3月は1億1,500万ドルで、3か月で前年1年間の実績を上回った。主な輸出先はチェコ、ポーランド、米国だ。経済部の輸出額を報告書の輸出機数で割ると、1機の平均価格は約760ドルになる (本誌試算)。

財務省の貿易統計によると、日本が2025年に台湾から輸入したドローンは45機、金額は1,602万7,000円だった。報告書が示す日台間の貿易の数字も、この統計による。1機あたりでは約35万6,000円で、1ドル=150円で換算すると約2,370ドルと、台湾の輸出の平均価格の3倍を超える (本誌試算)。

日本は2025年に12万4,946機、319億6,284万円のドローンを輸入した。このうち中国からの輸入が12万2,154機と、台数の97.8%を占めた。金額では132億7,376万円で、全体の4割強だ。中国からの輸入は1機あたり約10万9,000円で、同じ換算で約720ドルになる (本誌試算)。台湾の輸出の平均価格とほぼ同じ水準だ。

日本からの輸出は1,132機、8億7,280万円で、うち851機が米国向けだった。台湾向けは3機、816万5,000円にとどまった。

日本のドローン貿易と台湾の輸出 (2025年)。台湾の輸出は12万2,706機、日本の中国からの輸入は12万2,154機、台湾からの輸入は45機、台湾向けの輸出は3機
日本のドローン貿易と台湾の輸出 (2025年)。台湾の輸出は12万2,706機、日本の中国からの輸入は12万2,154機、台湾からの輸入は45機、台湾向けの輸出は3機

国内で使われる機体も大半が中国製だ。経済産業省の検討会の中間取りまとめ (2025年12月) によると、産業用ドローンの国内市場の9割を中国製が占める。国の機体登録制度の登録数でみると、2025年4月時点で中国製が91%、日本製は3%だった。

覚書は20件、共同生産は1件もなし

日台の企業や業界団体、研究機関が結んだ覚書は、公表分だけで20件にのぼる。報告書の一覧では、2025年以降の締結が13件 (2025年8件、2026年5件) と、半数を超える。報告書によると、日本UAS産業振興協議会 (JUIDA) は29か国の45団体と覚書を結んでおり、国・地域別では台湾の4団体が最も多い。

日本の上場企業も名を連ねる。台湾の政府系研究機関、工業技術研究院は2025年6月にACSLと、8月に川崎重工業と覚書を結んだ。ACSLとの覚書には台湾からの部品調達を盛り込んだ。テラドローンは2025年9月、自社の機体を台湾で販売する代理店契約を台湾企業と結んだ。

それでも、日台間で共同生産が決まった例は、公表資料では1件もない。日台はいずれも、米国や欧州、ウクライナの企業とは共同生産を協議している。

台湾は6年で2,400億台湾ドル計上へ、2030年に月産10万機の見通し

台湾は予算を法律で裏付けた。台湾の立法院 (国会に相当) は2026年8月27日、無人機や無人艇などの産業育成と調達を定めた特別条例を可決した。条例は9月11日に公布された。第4条は6年間で総額2,400億台湾ドル (1台湾ドル=4.6円で約1兆1,000億円、本誌換算) の予算を組むと定める。毎年400億台湾ドルの計上が原則だ。

日本は2022年12月に決めた防衛力整備計画で、2023〜27年度の5年間に「無人アセット防衛能力」の事業費として約1兆円を見込む。台湾の予算は産業育成を含み、防衛装備の取得に充てる日本の事業費とは対象が異なる。

生産目標にも日台で大きな差がある。経済産業省は2030年までに、ドローン本体と主要部品を年約8万機分、国内で供給できる体制を築く目標を掲げる。台湾の中央通信社によると、経済部産業発展署の署長は2026年5月、ドローンの生産能力は月約1万5,000機だと説明した。2030年には月10万機を超えるとの見通しも示した。その通りになれば、台湾の1か月の生産能力が日本の年間目標を上回る。

協力阻む3つの壁、5.8ギガヘルツ帯の映像伝送は日本で業務に使えず

報告書は、日台の協力を阻む壁として3つを挙げる。

1つ目は政府間の枠組みがないことだ。日本は台湾と国交がなく、中国の反発を招くおそれもあるため、政府間で正式な協定を結びにくい。協力は民間の覚書か、日本台湾交流協会と台湾日本関係協会という窓口機関を通じた取り決めにとどまる。

2つ目は日本の製造能力が乏しいことだ。報告書が引用する日本産業用無人航空機工業会の統計では、日本の産業用ドローンの生産は2022年に1,428機だった。2023年は898機に落ち込み、2024年も940機にとどまった。台湾の輸出とは桁が2つ違う。

3つ目は認証だ。日台はドローンの認証を相互に承認していない。報告書は、相手の市場で販売するには情報セキュリティー、無線、安全のそれぞれの審査を受け直す必要があると指摘する。本誌は、このうち無線分野の制度の違いを日台の法令で確認した。

台湾では、国家通信放送委員会 (NCC) の型式認証を受けた低出力の機器なら、5,725〜5,850メガヘルツの周波数帯を免許なしで使える。日本は事情が異なる。総務省によると、機体のカメラ映像を見ながら操縦するFPV (一人称視点) 飛行などでは、5ギガヘルツ帯のアマチュア無線が使われることがある。ただ、アマチュア無線は業務に使えない。

5.8ギガヘルツ帯は、高速道路の自動料金収受システム (ETC) などの狭域通信 (DSRC) に割り当てられているため、業務用の映像伝送の対象になっていない。この周波数帯で映像を送る機体は、日本ではアマチュア無線の免許を取り、趣味の範囲で使うしかない。

日本で業務用に映像を送る主な方法は2つある。免許不要の2.4ギガヘルツ帯を使うか、「無人移動体画像伝送システム」用の169メガヘルツ帯・2.4ギガヘルツ帯・5.7ギガヘルツ帯を使う。後者は出力が最大1ワットで、無線局の免許と、第3級陸上特殊無線技士以上の資格が必要だ。台湾で免許なしに使える周波数帯のうち5,725〜5,755メガヘルツは、日本の5.7ギガヘルツ帯と重なる。5.8ギガヘルツ帯で映像を送る台湾の機体を日本で業務に使うには、通信機能を日本の周波数帯に合わせて改修し、技術基準適合証明 (技適) を取得しなければならない。5.7ギガヘルツ帯に移す場合は、無線局の免許と無線従事者の資格も要る。免許不要の2.4ギガヘルツ帯を使う機体でも、技適は必要だ。

ドローンの映像伝送に使える周波数帯の日台比較。5.8ギガヘルツ帯は台湾では免許なしで使えるが、日本ではETCなどに割り当てられ業務には使えない
ドローンの映像伝送に使える周波数帯の日台比較。5.8ギガヘルツ帯は台湾では免許なしで使えるが、日本ではETCなどに割り当てられ業務には使えない

無線機器の相互承認協定 (MRA) も、日台間にはない。日本が電気通信機器の分野で協定を結んでいる相手は、欧州連合 (EU)、シンガポール、米国、英国だ。日台の窓口機関は2012年、電気製品の安全分野で取り決めを結んだが、無線機器は対象外だ。

情報セキュリティーの仕組みも日台で異なる。台湾は2024年12月にドローンの情報セキュリティー検査の基準を定め、通信の暗号化などを求めた。検査を実施できるのは台湾当局が指定した6機関に限られる。日本では2020年9月の関係省庁の申し合わせで、政府機関が安全保障に関わる業務でドローンを調達する際は、内閣官房との事前協議が必要になった。調達する省庁は、情報漏えいや機体の乗っ取りへの対策も示す必要がある。

防衛省の沿岸防衛「SHIELD」、報道に台湾製の名前なし

報告書が特に取り上げるのが、防衛省の「無人アセットによる多層的沿岸防衛体制」、SHIELD (シールド) だ。防衛省は2026年度予算に1,001億円を計上し、2027年度中の構築を目指す。小型攻撃用無人機はⅠ型からⅢ型の3種類を取得する。

Ⅱ型とⅢ型については、しんぶん赤旗が2025年9月、試験にイスラエルのユービジョンとエルビット・システムズの機体が使われたと報じた。試験で使われたもので、選定の結果ではない。Ⅰ型については、東京新聞が2026年2月、丸紅エアロスペースがオーストラリアのディフェンドテックス製「Drone40」を提案し、落札したと報じた。応札は1社だけで、落札額は36億8,016万円、約310機分だったという。落札額を機数で単純に割ると1機約1,190万円になるが (本誌試算)、付属の装置を含むかどうかは公表されていない。防衛省は5月、Ⅰ型の機種を一般競争入札で決めたと発表したが、機種名は明らかにしていない。

こうした報道に台湾製の名前は出てこない。報告書は、日本が台湾製を調達の候補に加えるよう提言する。台湾海峡で有事が起きた場合、距離の近い日本との供給網は途切れにくいとみている。台湾側には候補となりうる機体もある。台湾国防部 (国防省に相当) 傘下の研究機関、国家中山科学研究院は、自爆型の小型無人機を量産し、軍に納入している。台湾メディアによると、偵察と攻撃を兼ねる別の型も量産の準備に入った。

報告書は、45機はドローン本体の数で、モーターや電池、通信部品などは含まないと断っている。そのうえで台湾側に、中国製を使わない部品の対日輸出を増やすよう提言する。本誌の見方では、通信部品であれば日本の機体メーカーが自社の機体に組み込んだうえで技適を取れる。ドローン本体を輸入して認証を取り直すより負担は軽い。

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