米国防総省は将来の兵器の検討を、マスク氏やアンドゥリル創業者のラッキー氏らに委ねた。米軍は無人機の大量運用へかじを切り、日本も無人装備約5万2千機の導入を探る。アンドゥリルは日産自動車の追浜工場を取得する協議に入ったと報じられた。

ヘグセス米国防長官は2026年9月30日、米バージニア州のクアンティコ海兵隊基地で演説し、将来の戦争に必要な技術を検討する研究チーム「プロジェクト・メリディアン」を設置すると発表した。チームについて「米国で最も優れた頭脳が率いる」と述べ、米スペースXを率いるイーロン・マスク氏、米防衛企業アンドゥリル・インダストリーズ創業者のパーマー・ラッキー氏、ニュート・ギングリッチ元米下院議長の3人を紹介した。ヘグセス氏が起立を促すと、会場から拍手が起きた。米軍準機関紙「星条旗新聞」によると、聴衆は若手将校と下士官ら約600人だった。3人は共同責任者を務め、120日後の2027年1月28日までに提言をまとめる。

マスク氏は2025年に政府効率化省(DOGE)の事実上のトップを務め、同年5月に政権を離れた。演説前日の9月29日にもホワイトハウスでトランプ米大統領と同席しており、2日続けて政権の行事に姿を見せた。ただ、マスク氏がどのような身分でチームに加わるのか、国防総省は明らかにしていない。

研究チームは120日で提言、覚書に3人の名前なし

ヘグセス氏が署名した覚書は1ページ。国防総省の最高技術責任者を兼ねるエミル・マイケル国防次官に対し、外部の協力機関を通じてチームを立ち上げるよう指示している。機関の名称は明らかにされていない。トランプ政権は国防総省を「戦争省」と呼んでおり、覚書や発表文もこの名称を使っている。

任務は、将来の戦場を想定して必要な兵器と技術を洗い出し、開発や配備の具体策を提言することだ。覚書は戦争のあり方を変える技術として、人工知能(AI)や自律型システム、ロボット、バイオ技術のほか、レーザーや高出力マイクロ波で目標を無力化する指向性エネルギー兵器などを挙げた。統合参謀本部や陸海空軍などには、それぞれが進めている研究を生かしてチームに協力できるよう準備を求めた。提言をまとめた報告書は、ホワイトハウス科学技術政策局が2026年8月に策定した「国家安全保障科学技術戦略」に沿った内容にするとしている。

覚書には、マスク氏ら3人の名前は出てこない。3人を共同責任者としたのは、同じ日の発表文と演説だ。報告書は公表し、機密に当たる部分は付属文書に分けるという方針も、発表文と演説で示された。検討の対象は「地下深くから、地球と月の間の宇宙空間まで」に及ぶとしている。

ヘグセス氏は演説で「将来の紛争を最も的確に予測できる人材は、国防総省の中だけにいるわけではない」と述べた。省内だけで課題を設定して答えを出せば見方が偏るとして、外部の人材を起用する理由を説明した。新たな戦略や政策をつくるのではなく、米軍が優位を保つべき領域と、そのために必要な能力を見極めるのが目的だという。

ヘグセス氏は、初会合を演説の直後に開くと明らかにした。場所は会場から約180メートル離れた、機密情報を扱える施設だ。期限を120日と短くしたのは、報告書がまとまる前に内容が時代遅れになるのを避けるためだと説明した。

米軍は「質も量も」へ転換、無人機の受領は発注3万機の約56%

ヘグセス氏は同じ演説で、無人機やロボット兵器の運用を統括する「自律戦闘軍」の創設も表明した。陸海空など各軍の部隊を束ねる統合軍の一つで、司令官には大将が就く。2027年10月1日までの発足を目指す。「10年前に検討を始めるべきだった」とも語った。

創設の準備は「プロジェクト・アジャンクール」と名付けた計画で進める。ヘグセス氏はメリディアンとは別の覚書で手順を指示した。名称は、1415年にイングランド軍が長弓を使い、数で勝るフランス軍を破った戦いに由来する。覚書は、米軍が冷戦に勝利した後、数を絞って高性能の兵器をそろえる戦略をとり、これが40年間通用してきたと振り返った。コンピューターの性能向上で、精度が高く安価な兵器を大量に生産できるようになり、高価な従来型の装備の優位が揺らいでいるとも強調した。調達と戦い方を改めるのに「10年もかけられない」としている。

プロジェクト・メリディアンとプロジェクト・アジャンクールの体制。ヘグセス国防長官が2つの覚書に署名した。メリディアンはマイケル国防次官が外部の協力機関を通じて立ち上げる。マスク氏、ラッキー氏、ギングリッチ氏が共同責任者を務め、2027年1月28日までに提言を出す。アジャンクールでは、無人兵器の計画を束ねる統括組織が30日以内に行動計画をまとめ、2027年10月1日までに自律戦闘軍を発足させることを目指す
プロジェクト・メリディアンとプロジェクト・アジャンクールの体制。ヘグセス国防長官が2つの覚書に署名した。メリディアンはマイケル国防次官が外部の協力機関を通じて立ち上げる。マスク氏、ラッキー氏、ギングリッチ氏が共同責任者を務め、2027年1月28日までに提言を出す。アジャンクールでは、無人兵器の計画を束ねる統括組織が30日以内に行動計画をまとめ、2027年10月1日までに自律戦闘軍を発足させることを目指す

ヘグセス氏は、今後は質と量の両方が必要になると訴えた。高性能の兵器を稲妻に、無人機の大群をやむことのない風雨にたとえた。使い捨てを前提にした安価な無人機を大量に投入すれば、費用の面で優位に立ち、敵に絶え間なく圧力をかけられると説明した。ウクライナでの戦闘の教訓として、勝敗を分けるのは特定の機種ではなく、状況の変化に素早く対応できる体制だと述べた。

調達の仕組みも問われている。米国では大型装備の開発で、実際にかかった費用に一定の利益を上乗せして支払う契約が広く使われてきた。この方式では、開発が長引くほど企業の利益が膨らむ。米ロッキード・マーチンなどが手がける戦闘機は、構想から配備まで10年以上かかる例も珍しくない。ヘグセス氏は装備の調達で、大手だけでなく新興企業にも門戸を開く考えを示した。

量の面で、米軍は出遅れている。ヘグセス氏は2025年7月の覚書に「敵対国は合わせて年に数百万機の安価な無人機を生産している」と記した。ドリスコル陸軍長官は同年11月、ロイター通信に対し、陸軍が調達する無人機は年約5万機にとどまると明かした。ロシアとウクライナはそれぞれ年約400万機を生産しており、中国はその2倍を超えるとの見方も示した。両国のどちらか1カ国の生産だけで、米陸軍の調達数の約80倍に当たる。ただし5万機は調達数、400万機は生産数で、単純には比べられない。

過去の取り組みも目標に届かなかったとされる。バイデン前政権が2023年8月に打ち出した「レプリケーター」構想では、2025年8月までに数千機規模の無人兵器を配備する目標を掲げていた。米議会調査局の報告書によると、国防総省の元当局者は、期限までに配備できたのは数百機規模にとどまったと述べている。

トランプ政権は無人機の調達計画に2年間で10億ドルを充て、2027年までに20万機超を調達する目標を掲げる。企業を競わせ、試験の成績が良い順に発注する。ヘグセス氏によると、これまでに数千機を中東などに送り、数カ月から数年かかっていた納入までの期間を数日から数週間に縮めた。国防総省の公開データを集計すると、第1段階の発注は3万機。10月1日時点で出荷は2万3,040機、軍が受領したのは1万6,680機だった。発注の約56%に当たる。第2段階では6万機を発注する計画だ。

米国防総省による無人機調達計画の第1段階の進捗状況。発注3万機に対し、2026年10月1日時点で出荷は2万3,040機、受領済みは1万6,680機。2027年までに20万機超の調達を目指す。陸軍の調達は年約5万機、ロシアとウクライナの生産はそれぞれ年約400万機
米国防総省による無人機調達計画の第1段階の進捗状況。発注3万機に対し、2026年10月1日時点で出荷は2万3,040機、受領済みは1万6,680機。2027年までに20万機超の調達を目指す。陸軍の調達は年約5万機、ロシアとウクライナの生産はそれぞれ年約400万機

予算の規模はさらに大きい。国防総省は2027会計年度(2026年10月〜2027年9月)の予算要求に、無人機関連で536億ドルを盛り込んだ。内訳は、自律型システムの調達や国内の生産能力への投資が392億ドル、敵の無人機への対処が144億ドル。536億ドルは全額、通常の歳出予算とは別枠での要求で、議会が認めるかどうかは見通せない。

アジャンクールの柱は2つある。1つは自律戦闘軍の体制づくりだ。必要な人員、予算、調達権限を確保し、無人機を扱う専門の職種を各軍に設ける。もう1つは調達方式の見直しで、現場の部隊が開発を担う企業と組み、装備の選定から予算の執行までを自ら手がける。準備の実務は、省内の無人兵器や自律型兵器の計画を束ねる統括組織が担う。米紙フェデラル・タイムズによると、統括組織は6月29日付の覚書で設置され、責任者は国防副長官に直属する。ヘグセス氏はアジャンクールの責任者に、民間技術の導入を担う国防イノベーションユニットを率いるオーウェン・ウェスト氏と、海軍特殊部隊シールズの下士官マックス・ストラシザー氏を充てた。統括組織は30日以内に行動計画をまとめる。

プロジェクト・メリディアンと自律戦闘軍の日程。2026年9月30日に2つの覚書に署名、10月30日までに自律戦闘軍の発足に向けた行動計画、2027年1月28日までに将来の兵器に関する提言、2027年10月1日が自律戦闘軍の発足目標
プロジェクト・メリディアンと自律戦闘軍の日程。2026年9月30日に2つの覚書に署名、10月30日までに自律戦闘軍の発足に向けた行動計画、2027年1月28日までに将来の兵器に関する提言、2027年10月1日が自律戦闘軍の発足目標

自律戦闘軍が自ら装備を調達するには、法改正が必要になるとみられる。統合軍は大統領の判断で設置できるが、装備を調達する権限は、特殊作戦軍の例のように議会が法律で個別に与えてきた。ヘグセス氏は覚書で、必要な法整備に向けて議会と調整するよう指示している。上院軍事委員会が6月に可決した2027会計年度の国防権限法案には、ロボットや自律型兵器を担う統合軍を大統領が設置できるとの条項が盛り込まれた。

ただ、法案が司令官に認める調達の範囲は狭い。試験や試作、初期配備のための少量の調達は1件2,000万ドルを上限とし、それ以外は、陸海空軍などのいずれかがすでに価格を決めて契約した装備しか調達できない。上院本会議は7月14日、法案の審議入りを巡る採決を行ったが、賛成50、反対46で、必要な60票に届かなかった。審議は中間選挙後に先送りされた。下院が7月に可決した法案に、同様の条項はない。メリディアンの提言を自律戦闘軍の調達にどう生かすのかは、どちらの覚書にも書かれていない。

中国は2027年末までに台湾を巡る戦争に勝てると想定、米国防総省が分析

覚書も演説も、中国を名指ししていない。ただ、国防総省は2025年12月に公表した中国の軍事力に関する年次報告書で、中国軍が2027年までの目標の達成に向けて着実に前進していると評価した。「中国は2027年末までに、台湾を巡る戦争に勝利できるようになると見込んでいる」とも記した。

報告書は中国によるAIの軍事利用にも触れている。中国は、AIを駆使する「知能化戦争」への移行が次の軍事革命になるとみているという。一方で、中国軍の理論や作戦構想はなお発展途上にあると分析した。AI搭載をうたう中国の無人兵器についても、多くは人間があらかじめ固定目標を設定したり、遠隔で操縦したり、細かく指示したりする必要があると指摘した。

最前線に立つ台湾も、無人機の数が足りない。米シンクタンクの新アメリカ安全保障センターが2026年2月にまとめた報告書の推計では、ウクライナは2025年に約450万機の無人機を生産した。台湾の生産数は推定で年8,000〜1万機にとどまり、2028年までに年18万機に引き上げる台湾当局の目標には遠く及ばない。中国製の部品を使わないため、製造コストがかさんでいるという。

部品の供給は中国が握る。米戦略国際問題研究所は米商務省のデータを基に、モーターに使う焼結磁石の世界生産の約90%を中国が占めると指摘した。中国は2024年9月に無人機の輸出管理を見直し、軍事目的に使われる民生用無人機の輸出を禁じた。同年10月には、台湾に製品を販売した米無人機メーカーのスカイディオなどに制裁を科した。スカイディオは電池を調達しにくくなり、出荷する機体に付ける電池を1機1個に制限した。米国も2025年12月、連邦通信委員会が外国製の無人機と重要部品を規制対象に加えた。

中国国営新華社通信は10月1日、自律戦闘軍の創設とメリディアンの設置を論評抜きで報じた。中国外務省や国防省の報道官の発言は、10月2日時点で確認できていない。台湾と日本の無人機取引は別の記事で取り上げた。

AI企業は安全性の自主基準で合意、アンソロピックと国防総省は法廷で対立

メリディアンの覚書が挙げた技術の筆頭はAIだ。トランプ氏は9月29日、ホワイトハウスにAI企業の経営幹部らを招いた。オープンAI、アンソロピック、メタ、グーグル、エヌビディアの米5社の経営幹部が出席した。ロイター通信によると、各社はAIの安全性を巡る自主基準を設けることで合意した。AIが設計どおりに動くかどうかは、第三者の監査で確かめる。トランプ氏はデータセンターの急速な増設を後押しする考えも改めて示した。

トランプ氏は同じ日、連邦政府の文書でAIを「超知能(SI)」と呼び替える大統領令に署名した。前週の国連総会では「SIを制する者が勝つ」と述べていた。ホワイトハウスで同席したマスク氏は記者団の質問に「AIの利点を強調しておきたい」と答えかけ、「失礼、SIだ」と言い直した。「豊かさの時代」が訪れる公算が最も大きいとの見方も示した。

兵器にAIをどこまで使うかを巡る議論は決着していない。国防総省の指令は、武力行使に当たって、指揮官や操作員による「適切な水準の人間の判断」が働くよう自律型兵器を設計することを求めている。トランプ氏は6月の大統領覚書で、この指令を90日以内に改定するよう国防長官に指示した。改定版が出たかどうかは、10月2日時点で確認できていない。

アンソロピックと国防総省の対立も続く。ヘグセス氏は2月、アンソロピックに対し、同社のAIを「あらゆる合法的な目的」に制限なく使うことを認めるよう求めた。アンソロピックが自律型兵器と大規模監視への利用を認めない方針を変えなかったため、トランプ氏は全省庁に同社製品の利用停止を指示した。ヘグセス氏は同社を供給網上のリスクに指定した。指定は2件あり、同社が提訴した。連邦地裁は8月、このうち1件を違法と判断した。連邦控訴裁は9月25日、残る1件について、判事3人のうち2人の賛成で指定を支持した。同社は上級審での審理を含め、あらゆる選択肢を検討するとしている。

連邦政府がAIの安全対策を企業の自主基準に委ねる一方、州では企業を訴える動きが出ている。フロリダ州の司法長官は、対話型AIが自傷行為や暴力を助長したとしてオープンAIを提訴しており、9月28日には仮差し止め命令を出すよう裁判所に申し立てた。

マスク氏の身分は非公表、スペースXとアンドゥリルは国防総省からの受注を伸ばす

覚書と発表文の内容を比べた。

項目覚書発表文
3人の名前記載なし共同責任者と明記
任務兵器と技術の洗い出し、具体策の提言将来の戦場で必要な能力の検討
期限2027年1月28日設置から120日以内
報告書の公表記載なし公表し、機密部分は付属文書に
身分・報酬・利益相反記載なし記載なし

マスク氏は2025年、特別政府職員として政府効率化省を事実上率いた。特別政府職員は、勤務が年間130日以内に限られる臨時の職員だ。今回も同じ身分なのか、民間人として加わるのか、報酬は出るのか。いずれも分かっていない。国防総省は米ニュースサイトのテッククランチの取材にも、発表文以上の説明をしなかった。

身分が焦点になるのは、政府職員かどうかで利益相反の扱いが変わるためだ。米連邦刑法は政府職員に対し、自身や、自身が役員を務める企業の経済的利益に絡む案件に携わることを原則として禁じている。特別政府職員も対象になり、助言するだけでも違反に問われうる。事前に手続きをとれば、適用を免除される場合もある。一方、民間人はそもそも対象にならない。

国防総省には、外部の有識者でつくる諮問委員会がすでにある。国防政策委員会や、2026年2月に連邦官報で設置が公表された科学・技術・イノベーション委員会などだ。いずれも連邦諮問委員会法に基づく組織で、会合は原則公開とし、委員の人選が偏らないようにすることが義務づけられている。設置する際は、連邦官報に掲載しなければならない。ギングリッチ氏は国防政策委員会の委員を務めたことがある。

メリディアンの設置は、10月2日時点で連邦官報に掲載されていない。連邦諮問委員会法の施行規則は、民間団体が設け、政府の実質的な管理下にない組織は対象外と定めている。チームを外部の協力機関が設け、運営も政府の実質的な管理下に置かないのであれば、会合を公開する義務は生じない可能性がある。3人が民間人として加わるなら、利益相反の禁止規定も及ばないことになる。

マスク氏が率いるスペースXも、ラッキー氏が創業したアンドゥリルも、米軍と取引がある。スペースXが6月に提出した目論見書によると、マスク氏は最高経営責任者(CEO)と最高技術責任者、会長を兼ね、議決権の約82.4%を握る。

スペースXの2025年の売上高186億7,400万ドルのうち、約5分の1は米連邦政府向けだった。政府内の主な取引先は米航空宇宙局(NASA)、国防総省、一般調達局、情報機関で、国防総省向けの金額は個別に開示していない。2025年には、安全保障に関わる中・大型の打ち上げ12件のうち、同社が11件を担った。米宇宙軍が2025年4月に3社と結んだ打ち上げ契約(計54件、見込み額約137億ドル)では、スペースXが28件、約59億ドルと最も多かった。同社は再使用型ロケット「ファルコン9」で打ち上げ費用を引き下げ、衛星通信網「スターリンク」を戦場にも提供してきた。

米政府の支出データベースを基に、国防総省が2社との契約で支払いを約束した金額を、編集部が会計年度ごとに集計した。

会計年度スペースX(億ドル)アンドゥリル(億ドル)
2022年度7.61.1
2023年度8.61.6
2024年度18.15.8
2025年度16.54.6
2026年度(6月まで)22.05.1

2026年度は6月までの9カ月間で、スペースXが2022年度通年の2.9倍、アンドゥリルが4.6倍に達した。アンドゥリルは子会社を除く本体の契約を集計した。試作品の開発などに使われる特別な契約の分は、2社とも含んでいない。宇宙軍が2026年5月に発注した2件がこれに当たる。米防衛専門メディアのディフェンススクープによると、スペースXは航空機などを宇宙から追跡する衛星網の整備を41億6,000万ドルで、軍用衛星通信網の試作を22億9,000万ドルで受注した。スペースXの事業は企業データベースに、上場の経緯は別の記事にまとめている。

アンドゥリルはラッキー氏らが2017年に設立した。非上場で、財務情報を開示していない。CEOには設立時から、ラッキー氏以外の共同創業者が就いている。主力製品は、センサーや無人機を一括して制御するソフトウエア「ラティス」だ。軍の発注を待たず、自己資金で無人機などを開発して売り込む手法をとる。ディフェンススクープによると、米海兵隊は2025年3月、基地を小型無人機から守る装備の調達で、アンドゥリルと期間10年、最大6億4,200万ドルの契約を結んだ。米空軍は2026年6月、有人機と連携する無人戦闘機の生産を、アンドゥリルと米ゼネラル・アトミクスに発注した。米防衛専門メディアのディフェンス・ニュースが報じた。

2人が自社に関わる議論に加わるのかどうか、国防総省は明らかにしていない。テッククランチは、提言が2人の会社の製品に有利な内容になりかねず、批判を招きそうだと伝えた。

日本も無人装備約5万2千機の導入を検討、アンドゥリルは日産追浜工場の取得を協議か

日本も無人装備の大量導入に動いている。共同通信は9月16日、2027〜31年度の次期防衛力整備計画で、政府が無人装備約5万2千機の導入を検討していると報じた。AIと無人装備の予算は約7兆円と、現行計画の6倍に膨らむという。防衛力整備計画は安全保障関連3文書の一つで、政府は年内に改定する方針だ。

足元の予算にも無人装備の項目が並ぶ。防衛省の資料から主な項目をまとめた。

項目区分金額
無人装備の関連経費2026年度予算案約2,773億円
うち沿岸防衛体制の構築同1,001億円
小型攻撃用無人機2027年度概算要求363億円
迎撃用無人機同76億円
大型無人機MQ9B同2,922億円

表の「無人装備の関連経費」は、防衛省が「無人アセット防衛能力」と呼ぶ分野の予算で、無人機や無人艇などが対象になる。このうち約36%を占めるのが、無人機などを組み合わせて沿岸を守る構想「シールド」だ。2026年度の金額は契約額で、翌年度以降に支払う分を含む。2027年度の3項目には、表の額のほかに、金額を示さない「事項要求」がある。MQ9Bの2,922億円は17機分だ。

防衛省は2027年度の概算要求で、無人装備を活用して隊員の被害を抑え、費用の面でも優位に立つ考えを示した。ヘグセス氏が演説で示した考え方と重なる。次期計画の全体像は別の記事で検証した。

日米の協力は、部品の調達から始まっている。日米両政府は4月、防衛産業の協力を話し合う定期協議で、小型無人機などの供給網の強化を急ぐことで一致した。日米を含む多国間の枠組みで、小型無人機の電池などについて、産業の実態調査や相互認証の進め方を検討することも確認した。電池は、中国の制裁でスカイディオの調達に支障が出た部品だ。共同通信は4月、日米が軍民両用の技術で協力する枠組みをつくり、第1弾に無人機を想定していると報じた。在日米軍の装備も変わり始めた。沖縄に駐留する米海兵隊は6月、無人車両に搭載した地対艦ミサイル「ネメシス」を正式に配備した。

国内では生産体制づくりが課題になる。日本経済新聞によると、防衛省は10月、新興企業向けの新しい調達制度で公募を始める。攻撃用無人機などが対象で、早期の量産を目指す。既存の大手では、三菱重工業が8月、2026年度の航空・防衛・宇宙部門の受注見通しを1兆6,500億円から1兆7,500億円に引き上げた。同部門の6月末の受注残高は3兆8,983億円に上る。同社の決算資料は銘柄ページに載せている。

アンドゥリルはこの市場を狙う。2025年12月に日本法人の設立を発表した。日経によると、日本製の部品だけを使う無人機を開発し、工場の新設や日本企業との提携を検討している。

ロイターは2026年6月25日、アンドゥリルが日産自動車の追浜工場(神奈川県横須賀市)の取得に向けて協議していると、関係者3人の話として報じた。軍用無人機の生産拠点に転用し、従業員の多くを製造要員として雇う意向という。日産は「現時点で決まったことはない」とコメントした。アンドゥリルは「憶測にはコメントしない」としつつ、日本政府と連携し、国内生産の強化につながる方策を探っていると説明した。ロイターは、売却先の候補がほかにもあると伝えた。工場の取得に踏み切るかどうかは、自衛隊からの受注の規模に左右されるという。10月2日時点で、両社から合意の発表はない。

日産は2025年7月、追浜工場での車両生産を2027年度末に終え、日産自動車九州(福岡県苅田町)に移すと発表した。追浜工場は1961年の操業開始から累計1,780万台以上を生産し、約2,400人が働く。日産は跡地の活用について「幅広い選択肢を検討する」としている。日産の開示資料は銘柄ページで確認できる。

米軍の方針転換は、共同で作戦に当たる自衛隊の装備と、それを造る日本の工場にも影響する可能性がある。将来の兵器と技術を米軍に提言する3人のうち1人は、日本で工場の取得を協議していると報じられた企業の創業者だ。

提言の期限は2027年1月28日。国防総省がマスク氏とラッキー氏の身分や利益相反への対応を明らかにするか、提言が自律戦闘軍の調達と同盟国の装備にどう反映されるかが焦点になる。

投資家向けの個別銘柄レポートと技術デューデリジェンスのご相談は、編集部のお問い合わせ窓口までお寄せください。