SBエナジーを軸にした4社の資金の流れは、売上を水増しする循環取引にはあたらない。ただ、同社が付与した新株予約権の価値は賃料収入から差し引かれ、米エヌビディアが保証で払った額も借り手が補填する。原資は主にオープンAIの売上だ。

ソフトバンクグループが議決権の過半を握る米SBエナジーは、データセンター事業の売上がまだ無いまま、企業価値500億ドル超での新規株式公開 (IPO) を目指していたが、延期したと報じられた。ソフトバンクGは米オープンAIに累計646億ドルを投じる計画で、オープンAIはSBエナジーのデータセンターを借り、米エヌビディアはその賃貸契約に上限1,050億ドルの保証を付けた。資金が同じ企業の間を循環しているように見える構図だ。本誌はSBエナジーが米証券取引委員会 (SEC) に出した上場申請書類、エヌビディア、米マイクロソフト、米アマゾン・ドット・コムの開示書類、ソフトバンクGの発表、米連邦地裁の記録を2026年9月25日に読み、それぞれの資金が何の対価で、最終的に誰が負担するのかを確かめた。

SBエナジーの上場延期、データセンターの売上はゼロで会社が算定した株式価値は445億ドル

SBエナジーの上場申請書類は2026年9月1日に公表され、9月4日と9月21日に修正版が出た。9月21日版でも公開価格の仮条件は空欄のままで、延期を届け出た書類は無い。米紙ニューヨーク・タイムズによると、目標とした500億ドル超 (1ドル150円で7兆5,000億円超) の企業価値では投資家の需要が十分に集まらず、上場は少なくとも10月中旬以降に延びた。

会社全体では売上がある。2025年の売上高は2億1,350万ドルで、最終損益は7億3,800万ドルの赤字だった。2026年1〜6月期は売上高1億3,870万ドル、最終損益は32億890万ドルの赤字だ。売上の中心は太陽光発電と蓄電池で、申請書類は「データセンター事業ではまだ売上を計上していない」と書く。同社が6月30日時点で算定した株式の価値は445億ドルで、報道が伝えた目標の企業価値はそれを12.4%上回る。

借入の条件も厳しい。英フィナンシャル・タイムズによると、同社は約49億ドルの借入で10%近い利回りを提示したが、買い手は十分に集まらなかった。テキサス州のコスモス拠点の建設資金として子会社が2026年5月に発行した社債の表面利率は8.875%だ。受注残高と借入の条件は、上場延期の記事と借入の記事で詳しく報じた。

ソフトバンクGとオープンAIの資金はSBエナジーを介してつながり、新株予約権は賃料収入の減額になる

上場申請書類によると、ソフトバンク側がSBエナジーに現金で出資した額は累計約32億ドルだ。オープンAIの関連会社も2026年1月9日に、優先株で5億ドルを出資した。同じ日にSBエナジーはテキサス州ミラム郡の2棟 (約30万8,000キロワットと44万5,000キロワット、期間15年) をオープンAIに貸す契約を結び、オープンAIに新株予約権を付与した。新株予約権は、あらかじめ決めた価格で株式を取得できる権利を指す。行使価格は1株0.01ドルで、現在の個数は399万1,809個だ。

循環と見るかどうかを左右するのは、この新株予約権だ。申請書類は、新株予約権を「オープンAIに賃貸契約を結んでもらうための重要な誘因」と位置づけ、賃料などの支払額から差し引く形で会計処理すると書く。賃貸が始まれば、新株予約権の費用を契約期間にわたって賃料収入から減額する。新株予約権の公正価値は、付与した時点の約36億4,600万ドルから6月30日には約55億ドルに増えた。オープンAIが優先株で出資した5億ドルの11倍にあたる。1〜6月期に計上した評価損25億7,310万ドルが、同期の赤字の大半を占める。

設備の流れは、SBエナジーがエヌビディアから画像処理半導体 (GPU) を買うという一部の見方とは違う。SBエナジーが建てるのはラックまでで、申請書類は「サーバーやGPUは借り手が持ち込む」と書く。オハイオ州パイク郡の拠点では、GPUを供給するのはエヌビディアで、調達するのはオープンAIだ。拠点は17棟、IT機器向けの電力容量で約800万キロワットにのぼる。SBエナジーとオープンAIは2026年8月17日に20年の賃貸契約を結び、賃料の支払いは建物ごとに2028〜32年に始まる。SBエナジーは逆に、オープンAIのソフトウエアとサービスを2026年に1,000万ドル、2027年に1,500万ドル、2028年に2,500万ドル以上買う約束もしている。

循環取引は、複数の会社が商品を転売し合い、実態のない売上を計上する不正な取引を指す。SBエナジーの賃料は、これから建てる実物の施設の対価で、建設資金は金融機関など外部から借りる。その意味で循環取引とは違う。一方で、出資と新株予約権、ソフトウエア購入の約束が同じ2社の間で交わされている。SBエナジーは申請書類で、オープンAIが投資適格の格付けを持たない借り手だと明記している。

ソフトバンクG、オープンAI、SBエナジー、エヌビディアの間の資金と契約の流れ。オープンAIの優先出資5億ドルに対し新株予約権の公正価値は約55億ドル、エヌビディアが保証で払った額はオープンAIが補填する
ソフトバンクG、オープンAI、SBエナジー、エヌビディアの間の資金と契約の流れ。オープンAIの優先出資5億ドルに対し新株予約権の公正価値は約55億ドル、エヌビディアが保証で払った額はオープンAIが補填する

エヌビディアの保証は上限1,050億ドル、払った額はオープンAIが補填する取り決め

エヌビディアは2026年8月17日にSECに提出した臨時報告書で、オハイオ州の拠点の賃貸契約に保証を付けたと開示した。借り手のオープンAIが破綻したり支払いを怠ったりした場合に、貸し手のSBエナジーに支払う。四半期報告書は、保証の範囲を賃料と電力料金の一部に限り、施設の建設費全体や借り手の義務のすべてを保証するものではないと書く。対象は約425万キロワット分で、上限は累計1,050億ドルだ。追加の約380万キロワット分に保証を付けるかは、同社が判断する。エヌビディアはSBエナジーに、前払い式の株式先渡し契約で15億ドルを払い込み、上場時に15億ドル分の株式を買う契約も結んだ。合わせて30億ドルを出資する予定だ。

同じ臨時報告書には次の一文がある。オープンAIは、エヌビディアが保証に基づいて実際に払った額の全額を補填することで合意した。四半期報告書は、保証の見返りとして施設にはエヌビディア製のAI設備だけを置くと書く。SBエナジーの申請書類によると、同社は保証料を払わず、保証料はオープンAIが別の契約で払う。契約上の最終的な負担者は借り手自身だが、オープンAIが払えなくなった場合、エヌビディアが補填を受けるのは難しい。貸し手にとっては、保証の範囲でオープンAIの信用力をエヌビディアの信用力で補う形になる。

特定の顧客への依存も、エヌビディアの開示から分かる。2026年7月26日時点の売掛金は、直接取引する顧客5社がそれぞれ22%、14%、13%、11%、10%を占める。四半期報告書は社名を出さずに、ある「AIの研究開発企業」が、同社の顧客からクラウドサービスを買うことで売上の相当部分を間接的に生んだと書く。同じ時点の株式投資は990億ドル、未実行の出資の確約額は250億ドルで、オープンAIへの出資額は社名つきでは開示していない。

オープンAIの出資者、ソフトバンクGの646億ドルにアマゾン500億ドルが続く

オープンAIへの出資は、ソフトバンクGだけではない。開示書類と発表、報道による主な出資者と金額は次のとおりだ。

出資者金額出所
ソフトバンクG646億ドル (予定を含む累計)同社の発表
アマゾン500億ドル (払い込み済み)アマゾンの四半期報告書
エヌビディア300億ドル報道 (開示に金額なし)
マイクロソフト130億ドル (うち119億ドル払い込み)マイクロソフトの年次報告書

ソフトバンクGは2025年4月に75億ドル、12月に225億ドルの計300億ドルを出資し、約11%の株式を取得した。2024年9月以降の累計は346億ドルになる。2026年2月27日に追加で300億ドルを出すと決め、4月1日と7月1日に100億ドルずつ実行し、10月1日に第3弾の100億ドルを予定する。完了すれば累計646億ドル (1ドル150円で約9兆7,000億円) で、持ち分は約13%になる。2月の調達は調達前の企業価値が7,300億ドルで、報道では総額1,100億ドル、うちエヌビディアが300億ドルだった。調達は3月31日に出資の確約総額1,220億ドル、調達後の企業価値8,520億ドルで完了し、スライブ・キャピタル、アラブ首長国連邦 (UAE) の投資会社MGX、アンドリーセン・ホロウィッツ、D・E・ショー、TPG、T・ロウ・プライスなども加わったとされる。マイクロソフトの持ち分は年次報告書で約25%とされ、非営利の財団は約26%を持つと報じられている。

ここでも、出資した資金が売上として出資者に戻る構図がある。マイクロソフトは2026年6月期に、オープンAIから収益分配を含め241億ドルの売上を計上し、6月末の売掛金は60億ドルあった。払い込んだ出資額の約2倍を、1年で売上として計上した計算だ。アマゾンは出資と並行して、380億ドルだったクラウドの利用契約に1,000億ドルを上乗せした。米AMDはオープンAIに最大1億6,000万株を取得できる新株予約権を付与し、オープンAIはAMDのGPUを最大600万キロワット分買う。オープンAIは2026年6月に上場申請書類の草案を非公開で提出したと公表したが、上場の時期は未定としている。

オープンAIへの主な出資者と金額。ソフトバンクG 646億ドル、アマゾン500億ドル、エヌビディア300億ドル (報道)、マイクロソフト130億ドル
オープンAIへの主な出資者と金額。ソフトバンクG 646億ドル、アマゾン500億ドル、エヌビディア300億ドル (報道)、マイクロソフト130億ドル

支払いを支えるのはオープンAIの売上、アンソロピックが年換算で上回ったとの報道も

出資金は一度しか使えないが、賃料は20年続く。データセンター事業の受注残高約4,300億ドルを、加重平均の残存契約期間19.6年で割ると、受注残高全体の賃料は年平均219億ドルになる (本誌試算)。受注残高の大半はオープンAIとの契約だ。オープンAIのサラ・フライヤー最高財務責任者 (CFO) は2026年8月の投資家向け会合で、年換算の売上を400億ドルと明らかにしたと報じられた。受注残高から求めた年平均の賃料は、その54.8%にあたる (本誌試算)。ソフトバンクGの646億ドルは、この賃料の約3年分にすぎない。ソフトバンクGの資金がオープンAIを経てSBエナジーに戻り、それで賃料を賄えるという見方は、金額から見て成り立たない。20年の賃料を払う原資は、主にオープンAIがこれから稼ぐ売上と、追加の資金調達になる。

オープンAIの支払い義務はSBエナジーにとどまらない。アルトマン最高経営責任者 (CEO) は2025年11月、計算資源の確保で約束した額が今後8年で約1兆4,000億ドルにのぼるとSNSに投稿した (報道)。会社の開示による裏づけは無い。米オラクルの受注残高は2026年8月末で6,640億ドルにのぼり、報道ではうち3,000億ドルがオープンAIとの契約とされる。

競争相手の伸びは速い。米アンソロピックは2月に300億ドルを調達し、調達後の企業価値3,800億ドル、年換算の売上140億ドルと発表した。5月には650億ドルを調達し、調達後の企業価値は9,650億ドル、年換算で470億ドル超と発表した。7月末には650億ドルに達したと報じられている。報道の数字どうしの比較になるが、売上の年換算ではアンソロピックがオープンAIを上回る。アンソロピックでも同じ構図がある。アマゾンが出資し最大200億ドルの融資枠を設ける一方、アンソロピックはアマゾンのクラウドへの支払いの約束を1,000億ドル超上乗せした。

マスク氏の主な請求は時効で退けられ、テスラとスペースXにオープンAI採用の記録は見当たらず

オープンAIは2015年12月11日に設立され、イーロン・マスク氏とサム・アルトマン氏が共同会長を務めた。設立時の支援者は計10億ドルの拠出を表明していたが、オープンAIによるとマスク氏の実際の拠出は4,500万ドル未満だった。2017年、営利会社への移行を話し合う過程で、マスク氏は株式の50〜60%と経営権を求めたことが、オープンAIが公開したメールとメッセージで分かる。2018年初めには、オープンAIをテスラに結びつけ、テスラを資金源とすべきだとするメールに、マスク氏が「まさにそのとおり」と返信した。2018年2月20日の理事退任の理由は、当時の発表では、テスラがAIに力を入れるなかで利益相反を避けるためとされた。

マスク氏は2023年にxAIを設立し、2024年8月5日に米連邦地裁でオープンAIとアルトマン氏らを訴えた。2025年2月にはマスク氏らの投資家連合が974億ドルでの買収を提案し、理事会は拒否した。営利化の仮差し止めの申し立ては2025年3月4日に退けられ、オープンAIは10月28日に組織再編を終えた。営利部門は、公益性を掲げる営利企業「パブリック・ベネフィット・コーポレーション (PBC)」になった。この再編は、ソフトバンクGの出資の条件でもあった。2025年4月の発表によると、2025年末までに組織再編ができなければ、ソフトバンクG自身の出資は最大300億ドルから100億ドルに減る決まりだった。公判では2026年5月18日、陪審が主な請求を時効を理由に退け、裁判官が5月20日にその評決を採用した。反トラスト法 (独占禁止法) の請求とオープンAIの反訴は審理が続き、終局判決は出ていない。

アルトマン氏は2023年11月17日に理事会から「一貫して率直ではなかった」として解任され、11月21日に復帰した。外部の法律事務所の調査は2024年3月、同氏の行動は解任に値するものではなかったと結論づけた。

テスラやスペースXがオープンAIの技術を採用したことを示す一次資料は見当たらない。テスラの年次報告書にオープンAIの名は出てこず、自動運転は自社設計の推論用半導体で動かすと書く。2025年7月にはxAIの対話AI「グロック」がテスラ車に搭載され (報道)、テスラは2026年1月にxAIへ約20億ドルを出資する契約を結んだ。xAIは2026年2月2日にスペースXに買収された。アルトマン氏がいなければテスラがオープンAIを採用していたかどうかは確かめようがない。2018年のメールからは、マスク氏がオープンAIをテスラの側に取り込もうとしていたことがうかがえる。

ソフトバンクG、エヌビディア、マイクロソフト、アマゾンからオープンAIに向かう資金は多いが、戻ってくる資金の原資は主にオープンAIの将来の売上と追加の資金調達だ。エヌビディアが保証で払った額はオープンAIが補填する取り決めで、新株予約権の分だけSBエナジーの賃料収入は減る。20年分の賃料と保証の信用リスクは、年換算の売上400億ドルのオープンAIという1社に集中している。

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