ロシアの貿易の約3割は中国が相手だが、中国の貿易に占めるロシアの割合は2025年に3.59%だった。中国はロシアの燃料を買い、機械と車を売る。日本の対露輸入はドル換算で2021年比6割減ったが、LNGの数量の減少は1割強だ。
2026年5月20日、北京での首脳会談後の共同記者発表で、プーチン大統領は2025年の両国の貿易額が約2,400億ドルに達したと述べた。ロシア大統領府が公開した発言記録による。中国税関総署の統計では、2025年の中露の貿易額は2,281億ドルで、前年比6.9%減だった。2,400億ドル前後だったのは2023年 (2,401億ドル) と2024年 (2,448億ドル) である。首脳の発言を両国の統計とロシアの国際収支に照らし合わせると、中露の経済関係はロシア側の依存に大きく偏っており、日本企業にはLNGとサハリン2の出資を通じて影響が及んでいる。
プーチン氏が語った2025年の貿易額、中国の統計より約119億ドル多く
中国外務省によると、習近平国家主席は共同記者発表で、両国の貿易額は3年連続で2,000億ドルを超え、2026年1〜4月は前年同期より約20%増えたと述べた。中国税関総署の国・地域別の統計では、1〜4月は852億ドルで19.7%増と、習氏の発言どおりだった。一方、2025年を約2,400億ドルとしたプーチン氏の数字は、中国の統計の2,281億ドルを約119億ドル (5.2%) 上回る。ロシア側の国別の統計とは照らし合わせられておらず、約2,400億ドルがどの統計に基づくのかは分からない。プーチン氏は同じ日の李強首相との会談では、2025年の両国の貿易の指標に一定の調整があったものの、今年は10%を超える伸びだと述べており、2025年の落ち込みを婉曲に認めたとも読める。
会談後に署名された共同声明 (中国語で約1万8,000字) には、貿易額の数字が1つもない。中国語の原文で語を数えると、「貿易」に当たる語は28回出るが、自国通貨と決済に当たる語はそれぞれ1回しか出ない。金融の条項に、自国通貨による決済でこれまで進めてきた取り組みを続けると書かれているだけだ。「天然ガス」「パイプライン」という語もない。石油・ガス、石炭、再生可能エネルギーは企業間協力の一般論にとどまり、具体に踏み込んだのは原子力だけで、田湾原発と徐大堡原発の建設を期限どおりに終えて運転を始めることと、核融合・高速炉・閉じた核燃料サイクルの協力を段階的に進めることを明記した。核燃料サイクルの前段の工程と原発の共同建設をひとまとめで行う案は、検討するという書き方にとどまる。声明のうち安全保障の条項と、日本を名指しした3か所は、共同声明を原文で検証した記事で詳しく扱った。
会談のあった5月以降、貿易の伸びは加速した。中国税関総署の速報では、2026年1〜9月の中露の貿易額は2,143億ドルで、前年同期比30.6%増だった。1〜4月の19.7%増から伸び率は約11ポイント上がった。会談のあった5月から9月までの5か月では、前年同期比で約4割増えた (税関総署の2025年と2026年の統計から編集部が計算)。中国の対露輸出は33.1%増、対露輸入は28.6%増で、いずれも中国の貿易全体の伸び (23.8%) を上回る。9月単月の貿易額は291億ドルだった。2026年の品目別の内訳は本稿では確かめられておらず、何が伸びをけん引したかは分からない。
ロシアから見た中国は貿易の約3割、中国から見たロシアは2025年に3.6%
結びつきの偏りは、同じ貿易額を両国それぞれの貿易総額と比べると分かる。中国の貿易総額に占めるロシアの割合は2023年が4.04%、2024年が3.97%、2025年が3.59%、2026年1〜9月が3.69%だった。中国の対露貿易は、同じ期間の対日貿易 (2,774億ドル) の77%の規模だ。
ロシア側の分母には、ロシア中央銀行が7月に公表した国際収支の実績を使う。2025年のモノの輸出は4,200億ドル、輸入は3,060億ドルだった。中国の統計の対露輸入1,248億ドルはロシアの輸出の29.7%、中国の対露輸出1,033億ドルはロシアの輸入の33.8%に当たる。輸出入の合計では31.4%だ。中国の輸入統計は運賃・保険料込みの価格、ロシア中銀の国際収支は本船渡しの価格を基準とし、計上の時期もずれるため、この割合は目安である。それでも、ロシアの貿易の3割前後を中国1か国が占めるのに対し、中国の貿易に占めるロシアは4%弱にとどまる。この差は計上の基準の違いだけでは説明できない。
中国の対露輸入は6割強が燃料、パイプライン経由のガスは44%がロシア産
中身は品目別の統計で分かる。国連の貿易統計データベースに中国が届け出た2025年の数字では、ロシアからの輸入1,240億ドル (税関総署の国・地域別統計の1,248億ドルとは0.6%の差がある) のうち、鉱物性燃料 (関税分類第27類) が781億ドルと63.0%を占めた。原油だけで490億ドル (数量では1億86万トン) あり、対露輸入の39.5%を占める。石炭は77億ドル、石油製品は55億ドルだった。ロシアへの輸出1,035億ドルのうち、機械 (第84類) が266億ドル、電気機器 (第85類) が148億ドル、車両 (第87類) が131億ドルで、3品目で5割を超える。
| 品目 (2025年) | 中国の対露輸入 (億ドル) | 中国の輸入に占めるロシア産 |
|---|---|---|
| 原油 | 490.4 | 16.6% |
| パイプライン経由のガス | 94.2 | 44.4% |
| LNG | 50.3 | 14.1% |
| 対露輸入の合計 | 1,240.1 | 4.8% |
割合は国連の貿易統計の中国の申告から編集部が計算した (以下も同じ)。最下段の4.8%は、中国の輸入全体 (2兆5,792億ドル) に占めるロシアからの輸入の割合である。依存は一方通行ではない。中国はパイプライン経由で輸入する天然ガスの44.4%、原油の16.6%をロシアに頼っている。ただ、中国の輸入全体に占めるロシア産は4.8%にとどまる。中国の対露貿易は2025年に215億ドルの輸入超過で、2026年1〜9月も182億ドルの輸入超過だった。
中国からロシアへの集積回路 (関税分類8542) の輸出は、中国の申告では2022年の1億8,000万ドルから2023年は1億7,800万ドル、2024年は1億ドル、2025年は6,200万ドルに減った。香港からロシアへの集積回路の輸出は2023年に3億800万ドルあった。第三国を経由した部品の流れは、直接輸出の統計からは見えない。
日本の対露輸入はドル換算で6割減、LNGは1割強の減少にとどまる
日本とロシアの貿易は、中露貿易とは逆に縮んだ。財務省の貿易統計を国連のデータベースがドルに換算した値で見ると、日本の対露輸入は2021年の141億ドルから2025年の55億ドルへ60.8%減った。円建てでは、この間の円安の分だけ減少率は小さくなる。数量で見ると、原油は443万トンから7万5,000トンへ98.3%減、石炭は1,973万トンから118万トンへ94.0%減で、ほぼ止まった。
LNGだけは違う。2025年のロシア産LNGの輸入量は580万トンで、2021年 (657万トン) より11.7%の減少にとどまる。日本のLNG輸入全体 (6,498万トン) の8.9%をロシア産が占め、金額では対露輸入の60.6%をLNGが占める。対露輸入は、ほぼLNGだけが残った。中国が2025年にロシアから買ったLNGは995万トンで、日本の約1.7倍だった。
三菱商事のサハリン2出資は評価額が1割下がり、送金規制の対象の現金が増えた
サハリン2の運営会社サハリン・エナジーには、三菱商事が10%を出資している。三菱商事の2025年度の有価証券報告書によると、この出資は公正価値 (評価額) で毎期評価し、その変動はその他の包括利益に計上する。観察できる市場価格のない投資として、事業期間にわたって配当を受け取るシナリオとその他のシナリオに確率で重みを付けて評価し、割引率にはロシアのカントリーリスクを上乗せしている。ロシア政府は2024年3月23日付の政府令で運営会社の出資者を承認したが、定款と出資者間協定の条件の協議は続いており、不確実性は残っているという。
| 三菱商事の開示 | 2025年3月末 | 2026年3月末 |
|---|---|---|
| サハリン2出資の評価額 | 550億円 | 494億円 |
| ロシア事業の資産総額 | 1,408億円 | 1,552億円 |
| うち送金規制の対象の現金 | 663億円 | 846億円 |
評価額は1年で56億円 (10.1%) 下がった。前期も246億円下がっていた。三菱商事はロシアでの主な事業として、モビリティ部門の販売金融とLNG関連の投資を挙げている。有価証券報告書が「国際送金規制の対象となる現金及び現金同等物」と書く現金は、1年で183億円 (27.7%) 増え、ロシア事業の資産の増加 (144億円) を上回った。資産に占める割合は47.1%から54.5%に上がり、資産の半分強が国外への送金を規制される現金だ。
サハリン2には三井物産も出資している。同社の2026年3月期の有価証券報告書では、サハリン2への投資残高は588億円だった。北極圏のアークティックLNG2の保証に積んだ引当金などとあわせて、共同声明を原文で検証した記事でまとめた。
サハリン島の石油開発には石油資源開発も関わる。石油資源開発は、サハリン島と周辺の大陸棚で石油の探鉱・開発・生産を手がけるサハリン石油ガス開発の議決権の15.29%を持ち、持分法を適用している。同社の2026年3月期の有価証券報告書には、サハリン石油ガス開発の借入金に対する保証債務36億6,800万円が新たに載った。前期末の保証債務の一覧にはなかった。
サハリン2の取引には米国の制裁の適用除外も関わる。米財務省外国資産管理局は2026年6月11日付の一般許可55Fで、サハリン2の原油の海上輸送に関連するサービスを、日本へ輸入する場合に限って2026年12月18日午前0時1分 (米東部時間) まで認めた。ガスプロムバンク (同行が50%以上を持つ会社を含む) が関わるサハリン2関連の取引と、石油関連サービスの提供禁止の適用除外も、期限は同じだ。この許可は2025年12月17日付の55Eを置き換えたもので、55Eの期限は2026年6月18日だった。
中国から見ればロシアは貿易の4%弱の相手で、プーチン氏が示した2025年の貿易額は中国の統計を約119億ドル上回る。日本との接点は、三菱商事の出資分の評価額494億円と、国際送金規制の対象となる現金846億円という有価証券報告書の数字、そして12月18日に期限が来る米国の許可に表れている。
※2026年10月18日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版は題と本文で2023年の貿易額2,401億ドルを首脳会談の数字として掲げていました。2025年の値は2,281億ドル (6.9%減) で、首脳の発言 (3年連続の2,000億ドル超、2025年は約2,400億ドル) と並べる形に改めました。次の4点は、一次資料で確かめられないか、一次資料と食い違うため削除しました。①共同声明にない「上限なき協力」「軍事技術協力」の記述。②ロシア中央銀行の発表とした人民元の割合35.8%。③英国の王立防衛安全保障研究所の報告とした「27種類の兵器の部品の約6割が中国製」(同研究所の2022年8月の報告が挙げた製造国は日本・米国・台湾・韓国など)。④中国からロシアへの集積回路の輸出が2023年に前年の2倍になり10億ドルを超えたとする記述 (中国の申告では1億7,800万ドル)。日本企業の社名を挙げた段落は、貿易統計と有価証券報告書の数字に置き換えました。分類は「経済」に改めました。
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