セコイア・キャピタルのショーン・マグワイア氏の業績予想によると、スペースXが手がける衛星とスマートフォンの直接通信の売上高は、2028年に約239億ドルに達する。2026年の約47倍で、同氏は次世代衛星の打ち上げを前提にしている。
この衛星直接通信は、市販のスマートフォンが地上の基地局を介さず、基地局の機能を持つ衛星と直接つながる仕組みだ。スペースXはこのサービスを衛星通信「スターリンク」の一部として提供しており、現在は「スターリンク・モバイル」の名称で販売している。日本ではKDDI、NTTドコモ、ソフトバンクの3社がスペースXと提携して取り扱っている。スペースXの目論見書によると、衛星直接通信に使う次世代衛星は大型宇宙船「スターシップ」でしか打ち上げられない。KDDIとドコモもこの衛星を使い、それぞれ2027年中と2028年度中に高速データ通信を始める予定だ。全社で見ると、予想ではAI部門が2028年の売上高の8割強を占める。ただAI部門の伸びは約23倍で、衛星直接通信の約47倍に及ばない。
セコイアのマグワイア氏、スペースXの2028年の売上高を7311億ドルと予想
マグワイア氏の予想では、スペースXの売上高は2026年の約515億ドルから、2028年には約7311億ドルに膨らむ。2年で約14倍になる計算だ。同氏は米ベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタルでパートナーを務める。10月30日 (日本時間31日)、X (旧ツイッター) に「世間はスペースXを分かっていない」と題する長文を投稿した。スペースXの売上高や利益の予想を、2028年まで四半期ごとに示している。
| 項目 (億ドル) | 2026年 | 2027年 | 2028年 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 514.8 | 2,737.6 | 7,311.1 |
| うちAI部門 | 271.5 | 2,238.0 | 6,252.3 |
| うち通信部門 | 190.9 | 405.7 | 885.4 |
| 通信部門のうち衛星直接通信 | 5.1 | 32.3 | 238.6 |
| うち宇宙部門 | 52.4 | 93.9 | 173.5 |
| 営業損益 | 102.6 | 1,673.7 | 4,838.6 |
| 設備投資 | 880.1 | 2,900.2 | 3,689.9 |
| 現金の増減 | ▲777.5 | ▲1,226.4 | 1,148.6 |
予想では、売上高の増加分の大半をAI部門が稼ぐ。売上高全体に占める同部門の比率は、2026年の52.7%から2028年には85.5%まで高まる。中でも、他社にGPUを貸し出す地上のデータセンター事業だけで、2028年の売上高の77.8%を占める。2028年には全社の営業利益率が66.2%に達する。一方、設備投資は2028年までの3年間で計7470億ドルに上る。現金は2027年までの2年間で計2000億ドル余り減り、増加に転じるのは2028年4〜6月期になる見込みだ。
編集部は、予想のうち実績が出ている2026年1〜9月の部分を、スペースXの四半期報告書や決算発表と照合した。各四半期の部門別売上高と、7〜9月期の営業損益、調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は、いずれも決算の数字と一致した。一致しなかったのは7〜9月期のAI部門の設備投資で、予想の165億ドルに対し、実績は164億4400万ドルだった。スペースXは、通信部門に占める衛星直接通信の売上高も、地上のデータセンター事業や対話型AI「グロック」などAI部門の内訳も開示していない。これらはマグワイア氏が独自に推計した数字だ。
マグワイア氏は米カリフォルニア工科大学で物理学の博士号を取得し、2020年からセコイアでスペースXへの投資を担当してきた。10月20日の7〜9月期決算説明会から1週間で予想をまとめたという。同氏は、セコイアがスペースX株を多く持つため自身の見方には偏りがあると断ったうえで、投資を勧めるものではないと付け加えた。スペースXの目論見書に5%以上を保有する株主として記載されているのはイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) だけで、セコイアの保有比率は明らかでない。マグワイア氏によると、予想は標準シナリオの数字だ。特に振れ幅が大きいのは、AIの計算能力1GW当たりの売上高と設備投資、マスク氏が進める半導体工場の計画「テラファブ」への投資額だという。投稿だけでは説明しきれないとして、多くの数字について根拠を示さなかった。
マグワイア氏は、戦争やAI開発の一時停止といった大きな混乱がなければ、スペースXの売上高は過去3年間の米エヌビディアのように急速に伸びるとみる。投資家が見落としているのは、スペースXの人材、他社がまねできないスターシップ、AIデータセンターのコストの低さ、スターリンクのブロードバンドと衛星直接通信の収益性の高さだという。同氏によると、投稿した日は株式相場が下落していた。翌週11月3日の中間選挙を前にした政治の先行き不透明感に加え、イランとの戦争が激化するとの懸念が強まっていた。AIエージェントを使った大規模なサイバー攻撃や各国政府による非常時への備えの呼びかけ、根強いインフレによる金利上昇への警戒も加わったという。同氏は投資家の9割以上は信じないと承知のうえで、その日にあえて予想を公開し、一石を投じたかったという。
スペースXの業績予想、地上のデータセンター事業の売上高は計算能力を基に計算
予想では、地上のデータセンター事業が収益の柱になる。編集部が確かめたところ、同氏は予想の対象とする9四半期のすべてで、この事業の売上高を四半期ごとに、前の四半期末の計算能力を基に計算していた。たとえば2028年10〜12月期の売上高は1800億ドルとしている。同年9月末の計算能力18GWに1GW当たりの年間売上高400億ドルを掛け、4で割った額だ。予想に使った計算能力は、四半期報告書に載っている定格電力と同じ数字だ。四半期報告書によると、この数字はGPUと付帯設備の定格電力を足したもので、実際に消費した電力ではない。
計算能力の前提は、会社の見通しと大きな差はない。予想は2026年9月末の計算能力を1.7GWとしており、四半期報告書に記載された定格電力と一致する。2026年末は2.5GWとした。スペースXの最高財務責任者 (CFO) が示した2.5〜3GWという見通しの下限だ。2027年末は10.2GWとし、マスク氏が達成できると自信を示した13GWより低く見積もった。
マグワイア氏は1GW当たりの年間売上高を、2026年10〜12月期は300億ドル、2027年7〜9月期以降は400億ドルと見込んだ。予想では、AI部門の設備投資は、四半期ごとに増やす計算能力に1GW当たりの投資額を掛けた額になる。1GW当たりの投資額は、2026年7〜9月期の550億ドルから2027年10〜12月期以降は300億ドルに下がる。編集部が計算し直したところ、AI部門の設備投資にはテラファブと宇宙データセンター事業への投資が含まれていない。振れ幅が大きいと同氏が述べていたテラファブへの投資額は、予想の表に載っていない。3年間で計7470億ドルに上る全社の設備投資にも、テラファブの分は含まれていない。
予想は2028年のAI部門の売上高を4つに分けている。地上のデータセンター事業、グロックなどの事業、約310億ドルの宇宙データセンター事業、約52億ドルのテラファブだ。編集部が4つを足すと約6813億ドルになる。同氏がAI部門の合計とした約6252億ドルより約560億ドル多い。同氏は全社の売上高の計算に、少ない方の約6252億ドルを使っている。宇宙データセンター事業について同氏は、業績に本格的に寄与するのは2029年からだとして、詳細は説明しなかった。
同氏は、AIの計算能力を貸し出す料金が下がっても、コスト競争力で勝るスペースXは優位を保てると説く。1GW当たりの売上高は景気の影響を受けやすいが、設備投資とおおむね連動するという。料金が下がれば設備も安くなり、同じ投資額でより多くの計算能力を確保できる。ただ電力の確保には時間がかかり、値下がりの影響を補いきれない面もあるという。
同氏によると、計算能力の貸出料金は、ITバブル期に過剰投資となった光ファイバー網の料金よりも、原油価格の動きに近い。GW級のAIデータセンターは参入障壁が高いうえ、部材が不足し、完成までに長い時間がかかるためだ。原油のような資源では、最もコストの低い生産者まで採算割れになるほど価格が下がっても、その状態は長く続かない。コストの高い企業が破綻して供給が減る間に、低コストの企業がシェアを広げて優位に立つ。1GW当たりの設備投資が100億ドル前後まで下がっても、スペースXは低コストと小回りの良さで勝ち残るというのが同氏の見立てだ。業界平均は今後4年ほど200億ドルを割り込む公算は小さいが、競争相手が減ればスペースX自身の投資額は下がると同氏は見込む。
投資家が見落としている点として同氏がまず挙げるのは人材で、引き合いに出すのは中国だ。マグワイア氏は2009年に北京の新興企業で短期間働いたことがある。当時は社員7人が北京郊外にある4部屋のアパートで共同生活を送っていた。仕事は1日16時間、週6日だった。同氏は、中国以外でこれほど長時間働く職場はマスク氏の会社しかないと述べる。スペースXではロケットが飛ぶか爆発するかで白黒がはっきりし、試験で部品が壊れれば原因を徹底的に調べる。そこに会社が掲げる壮大な目標と、優秀な若手を抜てきして仕事を任せるマスク氏のやり方が加わり、25年かけてほかに類を見ない組織ができたという。
同氏によると、米アマゾン・ドット・コムや米グーグル、GPUを貸し出す新興AIクラウドにも優れた人材はいる。ただ、スペースXの社員は粒ぞろいで、テスラと合わせれば「どんな問題でも解ける人がいる」。スペースXは発電用のタービンが足りなければ自社で造る。米テネシー州で発電所の稼働が認められなければ、隣のミシシッピ州に発電所を建て、州境を越える高圧送電線を引く。通信障害にはスターリンクのチームが対応し、ベトナムからテキサス州への大型装置の輸送はスターシップの回収チームが受け持つという。同氏は、GW級のAIデータセンターの建設は、CPUが中心だった数十MW級の従来のデータセンターとは比べものにならないほど難しいと説明する。これほどの速さと規模で設備を造った経験があるのは、スペースXのほかには中国の技術者だけだという。
マグワイア氏の予想、スターシップの打ち上げは2028年に250回
予想では、大型宇宙船「スターシップ」の打ち上げは2027年に38回、2028年に250回へ増える。用途別では宇宙データセンター向けが最も多く、衛星直接通信向けがそれに続く。ただ、編集部が2028年の用途別の回数を足し合わせると260回になり、予想にある合計の250回と一致しない。一方、主力ロケット「ファルコン9」の打ち上げは、2026年の139回から2028年には107回に減る。
予想の表は1〜9月を実績として扱っており、ファルコン9の打ち上げは109回で、四半期報告書の110回とほぼ同じだった。四半期報告書によると、スターシップの打ち上げは1〜9月に3回で、うち2回が7〜9月期だった。これに対し、予想は7〜9月期を1回、2026年の通年を2回としている。衛星を初めて軌道に投入した9月28日の14回目の飛行試験だけを数えたとみられる。マスク氏は10月20日の説明会で、2027年前半に週1回、同年末までに週2回以上の打ち上げを目指すと述べた。スペースXが11月に予定する15回目の飛行試験では、初めて上段の宇宙船を発射台のアームで回収することを目指す。
マグワイア氏は、中国のロケット技術はスペースXより約10年遅れていると指摘する。ブースターを初めて回収したのはスペースXが2015年、中国が2026年だったという。編集部が調べたところ、ファルコン9の1段目が初めて地上に着陸したのは2015年12月21日だった。スターシップのブースターを発射台のアームで初めて回収したのは、2024年10月13日の5回目の飛行試験だった。中国で初めてブースターを回収したのは中国航天科技集団だ。2026年7月10日の長征10号Bの初飛行で、1段目を洋上の船に張った網で回収した。中国のロケットで初めて地上に着陸したのは、藍箭航天 (ランドスペース) が8月に打ち上げた朱雀3号で、機体は着陸後に炎上し、横倒しになった。地上への着陸で比べると差は約11年、発射台のアームや洋上の網で回収する方式で比べると約2年になる。同氏の「約10年」は、スペースXの地上への着陸と中国の洋上回収を比べた数字で、両者は回収の方式が異なる。
同氏によると、中国は電気自動車 (EV)、宇宙、量子技術、半導体をほぼ同時期に重点分野と位置づけ、宇宙と半導体には同じように力を注いできた。EVでは約10年で欧米勢を抜き、量子技術でも約10年で欧米に追いついたという。中国の半導体については、台湾積体電路製造 (TSMC) に約5年遅れているとみている。中国が極端紫外線 (EUV) 露光装置の試作機を完成させ、改良を進めているとのうわさもあるという。欧米との差は、半導体では縮まりつつあるが、宇宙ではスターシップの登場で逆に広がったと同氏はみる。
同氏は、人類が造った機械で最も複雑なのはスターシップだと考えている。対話型AIと音声で十数時間やりとりしたという。AIが最も複雑な機械の候補に挙げたのは、最先端の半導体工場、オランダのASMLのEUV露光装置、国際熱核融合実験炉、原子力潜水艦、欧州合同原子核研究機関の大型加速器、国際宇宙ステーションだった。同氏が難しさの物差しにするのは、一流の人材と十分な資金、設備をそろえても、先頭を走る企業の技術に追いつくまでに何年かかるかだ。ゼロから始めるなら半導体工場の方が難しいが、既にある装置や部品を使えるなら、スターシップの方が難しい場合が多いとする。最先端の半導体もスターシップに近い難しさだとし、AIの自己改良で生まれる基盤モデルならスターシップに並ぶとも付け加える。仮に最先端の半導体の方が作るのが難しいとしても、スペースXはスターシップの部品の多くを自社で造っており、他社がまねるのは難しいと同氏は強調する。スペースXは活動を妨げられない限り技術の最先端を走り続け、それが米国の国益にかなうとも同氏は書いている。同氏は、スペースXが10年後にはロケットと同じく半導体も自前で手がけているとの見方も示した。
スターリンクの通信容量、スターシップ1回でファルコン9の最大20回分
マグワイア氏によると、スターリンクの売上高は年換算で約200億ドルに達し、スペースXはファルコン9を約400回打ち上げて衛星網を構築したという。四半期報告書によると、7〜9月期の通信部門の売上高は52億4800万ドルだった。編集部が年換算すると約210億ドルで、同氏の数字とほぼ同じ水準だ。スターリンクの衛星を載せたファルコン9の打ち上げは、10月29日時点で429回だった。米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクダウェル氏の集計をもとに編集部が数えた。
マグワイア氏は、スターシップを1回打ち上げると、ファルコン9の約20回分にあたる通信容量を増やせると説明する。目論見書によると、スターシップは1回の打ち上げでブロードバンド用の第3世代の衛星「V3」を最大60基、軌道に投入できる。1回の打ち上げで増える通信容量は、ファルコン9の1回分の最大20倍になる。9月の14回目の飛行試験では衛星を26基投入した。決算発表によると、増えた通信容量はファルコン9の1回分の約10倍だった。同氏の計算では、年200億ドルの売上高を上げるにはスターシップを約20回打ち上げる必要がある。打ち上げ1回当たりの売上高は年約10億ドルになる計算だ。同氏は、衛星を約5年使う場合、打ち上げ1回当たりの売上高は計50億ドルになると試算する。ただ、目論見書によると衛星の耐用年数は3〜5年だ。編集部は、打ち上げ1回で増やせる通信容量が、9月の飛行と同じくファルコン9の約10回分にとどまる場合も試算した。この場合、打ち上げ1回当たりの売上高は年約5億ドルと、同氏の試算の半分になる。
同氏は通信部門の売上高を、「スターリンク」のブロードバンドと衛星直接通信の2つに分けて予想した。ブロードバンドには米政府向けの「スターシールド」を含めている。衛星直接通信の売上高は2026年の約5億ドルから2028年には約239億ドルに増える。同じ期間にブロードバンドの売上高は約3.5倍になる。2028年10〜12月期には、衛星直接通信の売上高はブロードバンドの54%に達する。衛星直接通信の売上高は、2029年か30年にはブロードバンドを上回る公算が大きいという。同氏は、スペースXが市場を広げるため、ブロードバンド、衛星直接通信、宇宙データセンター事業のいずれでもコストを大幅に引き下げるとの見方も示している。
予想では、スターシップで衛星直接通信に使う衛星を打ち上げ始めるのは2027年1〜3月期だ。打ち上げの回数は同年に12回、2028年に79回となる。衛星直接通信の売上高は、2027年の約32億ドルから、打ち上げが急増する2028年には約7.4倍に膨らむ。目論見書によると、スペースXは衛星直接通信に使う次世代衛星「V2」を2027年からスターシップで打ち上げる計画だ。V2はファルコン9やファルコン・ヘビーでは運べない。名称は、目論見書では「V2 Mobile」、KDDIの発表では「Starlink Mobile V2」となっている。報道によると、グウィン・ショットウェル社長は10月20日の説明会で、2027年中にV2の衛星を順次打ち上げると述べた。米国では新たに取得する周波数で、2028年初めにサービスを始めるという。
スペースXは衛星直接通信の売上高を個別に開示していない。四半期報告書では法人・政府向けの売上高に含めていると記すにとどめ、7〜9月期にこの区分の売上高が増えた主な理由は航空機へのスターリンク搭載だと説明した。目論見書によると、スペースXが携帯電話会社から受け取る料金は、定額か利用者数に応じた額だ。2026年3月末時点で、スマートフォンと直接通信する衛星は約650基あった。約30か国で月に約740万台の端末が接続していた。
利用者1人当たりの売上高に換算すると、予想の伸びがいかに大きいかがわかる。ショットウェル氏によると、世界の衛星直接通信の月間利用者は9月末に2200万人を超えた。マグワイア氏は、7〜9月期の衛星直接通信の売上高を1億500万ドルと推計している。編集部の計算では、これを9月末の利用者数で割ると、1人当たり月約1.6ドルにとどまる。6月末と9月末の利用者数の平均で割っても約1.8ドルだ。予想では、2028年10〜12月期の衛星直接通信の売上高は月平均で約36億ドルに達する。米Tモバイルは2025年、衛星通信の料金を月額10ドルに設定した。その全額をスペースXが受け取るとしても、月36億ドルの売上高を上げるには約3億6000万人の利用者が必要な計算だ。編集部の計算では、スペースXが売上高を予想の水準に近づけるには、利用者を増やすだけでなく、V2の高速データ通信で携帯電話会社から受け取る料金を引き上げる必要がある。
KDDIは次世代衛星で高速データ通信と音声通話を2027年に始める計画
日本で衛星直接通信を最初に始めたのはKDDIだ。2025年4月に「au Starlink Direct」を始め、接続した利用者は2026年4月時点で累計400万人を超えた。8月10日にスペースXとV2の利用契約を結んだと、9月15日に発表した。アジアの通信会社では初めてだという。KDDIによると、V2は衛星1基当たりの通信速度が現行の衛星の約20倍になる。KDDIはV2を使った高速データ通信と音声通話を2027年中に始める計画だ。
衛星との通信にどの会社の周波数を使うかは、日米で異なる。米国ではスペースXが2028年初めに自社の周波数でサービスを始めるため、米エコースターから周波数帯を196億ドルで取得する契約を結んだ。取得は2027年11月に完了する見込みだ。10月8日には、屋内でも電波が届きやすい800メガヘルツ帯の周波数を取得する契約も結んだ。2027年前半の取得完了を見込む。日本では総務省が2024年12月に改正省令を施行し、携帯電話の2ギガヘルツ帯を衛星との直接通信にも使えるようにした。KDDIは自社に割り当てられたこの周波数帯のうち上り下り各5メガヘルツ幅を、山間部などで衛星と通信するのに使う。日本では衛星を使う場合も、自社の周波数でサービスを提供するのは携帯電話会社だ。
NTTドコモは4月27日に「docomo Starlink Direct」を始め、接続した利用者は10月8日に累計1000万人を超えた。8月にはKDDIと同じくV2を使ったサービスを提供することでスペースXと合意し、音声通話と高速データ通信を2028年度中に始める予定だ。ソフトバンクは4月10日に「SoftBank Starlink Direct」を始めたが、V2を使う契約はまだ発表していない。3社とも主要な料金プランの契約者には追加料金なしで提供しており、スペースXに支払う金額は公表していない。スペースXが受け取る料金は定額か利用者数に応じた額のため、日本の携帯各社が高速通信で追加料金を取っても、スペースXの売上高が増えるとは限らない。KDDIは11月6日に4〜9月期の決算を発表する予定だ (KDDIの銘柄ページ)。
セコイアが2020年に予想したスターリンクの売上高は、実績の約1.5倍だった
マグワイア氏は、2020年10〜12月にセコイアで自ら作ったスターリンクの業績予想も明らかにした。2020年10〜12月はスターリンクが初めて売り上げを計上した四半期で、予想は当時、非現実的な数字に見えたという。2020年に作った予想では、衛星の数と1基当たりの通信容量から、まず収容できる人数を推計した。これに1人当たりの月間平均収入 (ARPU) を掛けて売上高を試算した。2026年の売上高は約252億ドル、ARPUは月44ドルと見込んでいた。
編集部は予想との比較に、衛星直接通信や政府向けも合わせた通信部門の売上高を使った。それでも2023〜2025年は、いずれの年も予想が実績の1.4〜1.6倍に上った。2025年は予想の約185億ドルに対し、実績は約114億ドルだった。予想は、2025年末時点の年換算の売上高を約229億ドルと見込んでいた。通信部門の実績は2026年7〜9月期でも年換算で約210億ドルにとどまる。
中身を見ると、予想より多かった項目と少なかった項目がある。スターリンク衛星を搭載したファルコン9の打ち上げは2025年に122回と、予想の44回の約2.8倍に上った。予想が見込んだ衛星の数からみて、この44回はスターリンク衛星の打ち上げだけを数えた回数とみられる。打ち上げた衛星も3169基と、予想の2552基を上回った。一方、予想は衛星網の収容能力を2025年に約4104万人分としていたが、個人向けの契約数は同年末で890万件にとどまった。2025年のARPUは月81ドルで、予想の46ドルを大きく上回った。予想の利用者数は収容できる人数を指すので、契約数とは単純に比べられない。それでも、契約は打ち上げほどには伸びなかった。
マグワイア氏は今回も、2020年の予想と同じく、打ち上げで増える通信容量をもとに売上高を試算している。スターシップを1回打ち上げるたびに、年間の売上高が約10億ドル増える計算だ。2020年の予想に比べ、衛星の数は早く増えたが、売上高はまだ予想の水準に達していない。
衛星直接通信の売上高が2年で約47倍になるという予想が当たるかどうかは、スターシップによるV2の打ち上げが2027年に予定どおり始まり、順調に進むかで決まる。打ち上げが遅れれば、KDDIが2027年中、ドコモが2028年度中を予定する高速データ通信の開始も遅れる。
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