2026年9月11日、テスラは運転装置のないサイバーキャブを日本で初公開し、国内の運行は未定とした。その4日後にウェイモが日本交通、GOと組み、2027年中の都内での営業開始で合意した。先に日本へ入るのは、生産能力で劣る側である。

米国でロボタクシーの展開地域が広がり、シリコンバレーでは2社を乗り比べられるようになった。テスラは2025年6月22日にテキサス州オースティンで配車事業を始め、カメラと人工知能だけで走る方式を強みに、コスト、地域の拡大スピード、車両の投入規模の3つでウェイモに勝ると見込んでいる。この記事は、その見込みを会社の開示と米当局の資料に当て、どこが裏づけられ、どこが裏づけられないかを確かめる。そのうえで、テスラの無人タクシーが日本に入るには何が要るのかを、日本の制度から組み立てる。

テスラが勝ると見込む3点は、生産能力の数字で裏が取れる

テスラの方式は、カメラの映像から運転操作までを1つの人工知能で処理するエンド・ツー・エンドで、高精度の地図を前提にしない。ウェイモの第6世代の装置は、カメラ13個、LiDAR 4個、レーダー6個に車外の集音装置を組み合わせる。カメラは1,700万画素で、前の世代の半分未満の数で上回る性能を出すとしている。ウェイモは複数のセンサーを積む理由を「安全を実証できるAIには、同じだけ堅牢な入力が要る」と説明し、厳しい冬の天候や高速道路の激しい水しぶきの中でも動くとする。

コストと規模の差は、生産の数字に表れる。テスラの2026年4〜6月期の決算資料によれば、無人タクシー専用車のサイバーキャブはテキサス工場で生産が始まり、設置済みの年産能力は12万5,000台超と記されている。量産車による公道での技術試験走行も同じ四半期に始まり、7月には工場の敷地内で従業員向けの乗車を始めた。ウェイモの側は、吉利系のジーカーが中国・寧波で造る車体に、アリゾナ州メサの工場で装置を載せる。その工場の能力は年に数万台とされる。

テスラは生産能力で、ウェイモは走行実績で先にいる
テスラは生産能力で、ウェイモは走行実績で先にいる

拡大の速さも確かめられる。決算資料はロボタクシーが米国の7つの大都市圏で営業していると記す。オースティンの開業から、この資料の日付である2026年7月22日までは395日である。オースティン、ダラス、ヒューストン、マイアミ、オーランド、タンパは監視なしの運行を拡大中、フェニックスとラスベガスは準備中とされ、7月にはフロリダ州の3都市で始めた。学習用の計算設備はコルテックス1が90メガワット超、コルテックス2が115メガワット超まで積み上がっている。

ただしシリコンバレーを含むサンフランシスコ湾岸は、カリフォルニア州の旅客運送の許可に基づいて安全運転者が同乗する形で、決算資料は運転者なしの地域に含めていない。2社が同じ街で営業していても、運転席に人がいるかどうかが違う。

運転者のいない走行は38万マイル対2億2,060万マイルで、580.5倍の開きがある

「FSDが無敵」という見方は、走った距離では裏づけられない。ウェイモの運転者のいない走行は2026年3月までで2億2,060万マイルに達した。地域別の内訳は次のとおりである。

地域運転者のいない走行全体に占める割合
フェニックス8,055万マイル36.5%
サンフランシスコ湾岸6,708万マイル30.4%
ロサンゼルス5,182万マイル23.5%
オースティン1,579万マイル7.2%
アトランタ538万マイル2.4%
合計2億2,061万マイル100.0%

5地域を足すと2億2,061万マイルで、公表の合計2億2,060万マイルと端数の範囲で合う。上位3地域で90.4%を占める。最も少ないアトランタの538万マイルでも、テスラの累計38万マイルの14.2倍にあたる。同社は人の運転と比べ、重傷以上の事故が94%、エアバッグが開く事故が82%、負傷を伴う事故が82%少ないと公表している。営業する都市は自社サイトで米国14都市を挙げる。

テスラの運転者のいない走行の累計は、2026年7月の決算説明会の時点で38万マイルだった。ウェイモはその580.5倍にあたる。市販車に載る監視付きのFSDについて、テスラ自身が決算資料に「運転者による能動的な監視が必要で、車両を自動運転にするものではない」と注記している。欧州ではオランダに続きリトアニア、エストニア、デンマーク、ベルギーで承認を得て、利用者の走行は7月時点で5,000万キロメートルを超えたが、これも監視付きの距離である。自動運転のレベルと製品名の食い違いはテスラの自動運転はレベル2にとどまるで扱い、カメラだけで走る仕組みそのものはFSDの技術解説にまとめてある。

事故報告はテスラ26件がすべてモデルYで、固定物との衝突が38.5%を占める

事故の中身は、米運輸省道路交通安全局への報告で比べられる。運転自動化システムを動かしている車の事故は、責任を問わず報告が義務づけられており、相手に当てられた事案も含む。2026年9月21日に取得した公表データでは、テスラの報告は46行で、同じ事案の更新を除くと26件だった。発生は2025年7月から2026年7月で、すべてテキサス州、内訳はオースティン23件、ダラス2件、ヒューストン1件である。同乗者の区分は「なし」が22件、車内が3件、遠隔が1件だった。

26件の車両はすべて2026年型のモデルYである。サイバーキャブの報告はまだ1件もない。つまり専用車の公道での実績は、公表データの上ではこれから積み上がる段階にある。

ウェイモの報告は1,219行、更新を除いて1,211件で、発生は2025年4月から2026年8月、同乗者「なし」が1,154件を占める。車両はI-PACEが1,181件、新型が30件、州別ではカリフォルニア732件、アリゾナ196件、テキサス166件、ジョージア65件、フロリダ30件である。事案の数はテスラの46.6倍だが、走行距離の開き580.5倍よりずっと小さい。

テスラの事故報告は、低速で動かない物に当たる形が多い
テスラの事故報告は、低速で動かない物に当たる形が多い

内訳には方式の違いが出ている。

切り口テスラ (26件)ウェイモ (1,211件)
固定物や柱・木との衝突10件 (38.5%)50件 (4.1%)
駐車場での事案7件 (26.9%)99件 (8.2%)
自車が後退中3件 (11.5%)15件 (1.2%)
自車が停止・駐車中11件 (42.3%)675件 (55.7%)
時速10マイル以下23件 (88.5%)976件 (80.6%)
けがの申告あり2件 (7.7%)123件 (10.2%)

テスラは動かない物に低速で当たる形が目立つ。固定物との衝突は38.5%で、ウェイモの4.1%と大きく違い、駐車場と後退中の比率も高い。当サイトの見立てでは、これはカメラだけの方式が苦手にする至近距離の認識と重なる。一方で、けがの程度はテスラが物損のみ22件、けがの申告なし2件、入院を伴わない軽傷1件、入院を伴う軽傷1件にとどまる。ウェイモには死亡2件、入院を伴う重傷4件、入院を伴う中程度9件が含まれ、過半の55.7%は自車が停止・駐車中に起きている。

率では比べられない点も書いておく。テスラは監視員が同乗した分を含むロボタクシー全体の走行距離を、決算資料では図でしか示していない。26件という標本も小さい。事故や行政の面でテスラに分があるかどうかは、いまの公表データでは判定できない。

サイバーキャブは、適合を自己認証した根拠を宣誓付きで問われている

投入規模の優位には、米国内で条件が付いた。テスラは2026年9月3日にサイバーキャブの商用運行を始め、同じ日に当局は監査照会を開いた。オースティンの開業から438日後である。9月10日には首席法務官ピーター・シムシャウザー氏の名で特別命令が出た。回答期限は20日後の9月30日で、責任ある役員の宣誓供述を付けなければならない。

命令によれば、当局の把握ではサイバーキャブは専用設計の車両で、テスラは適用されるすべての連邦自動車安全基準に適合すると自己認証した。質問は車両の自動化レベル、対象の台数、運行場所、運行設計領域から始まる。踏み込んでいるのは、仮に取り付けた人間用の運転装置で走れるのか、その装置を認証の根拠にしたのか、それを外すことが法律の禁じる安全装置の無効化にあたらないのか、という3問である。名指しされた基準は101の操作装置と表示、102の変速位置の表示、108の方向指示器、111の後方の視界、126の横滑り防止の表示、135のブレーキで、いずれも人が運転席に座ることを前提に書かれている。最後の質問は、適用除外を受けずにどう適合するのかの詳しい説明を求める。

応じない場合の民事制裁金は1日あたり最大2万7,874ドル、一連の違反で最大1億3,935万6,994ドルで、虚偽や隠蔽には罰金または15年以下の拘禁の刑事罰がありうる。報道によれば対象は約1,000台で、当局は欠陥の認定も運行停止の命令も出していない。ただし適用除外の道に回ると上限は年2,500台とされ、アマゾン傘下のズークスは2026年7月に8つの基準でこの除外を得ている。2,500台は年産能力12万5,000台の2.0%にあたる。生産能力の数字が意味を持つかどうかは、この回答で決まる。回答は期限前で、まだ公表されていない。

日本では、車両・運行・事業の3つの許可が別々に要る

同じ問題は日本でより強く出る。国土交通省の資料によれば、道路運送車両法は保安基準に適合しない自動車の運行を認めておらず、量産車は型式指定で認証する。保安基準の告示が2023年1月に改正・施行され、改正道路交通法が2023年4月に施行されて、レベル4は制度上可能になった。国内初のレベル4の車両の認可は2023年3月30日の福井県永平寺町である。

日本で無人タクシーを走らせるには、3つの許可が別々に要る
日本で無人タクシーを走らせるには、3つの許可が別々に要る

1つ目は車両である。自動運行装置には、定められた走行環境条件の外では作動しないこと、正常に作動しないおそれがあるときは車両を止めるリスク最小化制御を備えることが求められる。2024年6月公表の指針は、運送サービスに使うレベル4の車両について、危険の認知、回避の制御、冗長性の確保で必要な対応を明確にし、車両の性能だけに頼らず、走行環境の整備と周囲の理解の促進を合わせた三位一体の対策が有効だとしている。カメラだけの方式は、この冗長性の説明を自分で組み立てる必要がある。

2つ目は運行で、運転者がいない状態での自動運転、つまり特定自動運行には都道府県公安委員会の許可が要る。3つ目は事業で、客を乗せて運賃を取るには道路運送法のタクシー事業の許可と、運行管理や営業所の体制が要る。

これに加えて、テスラの強みである通信でのソフト更新にも許可が要る。通信を使って自動運行装置などのプログラムを書き換える改造は、令和元年5月の法改正で、あらかじめ国土交通大臣の許可を受ける制度になった。技術的な審査は自動車技術総合機構が行う。

ウェイモは事業の許可を持つ相手と組み、テスラの公道走行は未定のままである

ウェイモはこの3つを分担で越えようとしている。GOの発表によれば、3社は2025年から東京都内7区で公道の試験走行を続けており、現在は日本交通の乗務員が同乗する。役割は、GOが地域のタクシー事業者との連携とアプリ、ウェイモが自動運転技術と運用基盤、日本交通が現場の運行管理と営業所運営である。開始の時期は、安全性が認められ、道路交通法や道路運送法などが定める許認可の取得が終わった後に決まる。東京で使う車種、料金、遠隔監視の体制は発表に記載がない。

テスラの側は、東京・青山が9月11〜14日、大阪が9月17〜20日、名古屋が9月22〜23日、東京・新宿が9月26〜28日の4会場でサイバーキャブを公開している。テスラジャパンは実証試験を含め公道走行は未定としている。監視付きのFSDは2026年中の提供を目指すとされるが、開始日、価格、対象車種は公表されていない。4〜6月期の納車は日本を含む複数の市場で過去最高だったから、載せる車は国内に増えている。会社の基礎的な事実はテスラの企業ページにある。サイバーキャブのカメラの数や配置は、会社の公表資料では確認できていない。

テスラのロボタクシーが日本でやるべきことは、この比較からそのまま出てくる。当サイトの見立てでは、順番は4つある。第1に、約束した監視付きのFSDを年内に出し、国内の道路での走行実績を作ること。第2に、無人の運行はハンドルのあるモデルYで申請すること。オースティンの事故報告26件がすべてモデルYだったとおり、米国でも先に走ったのは専用車ではない。第3に、タクシー事業の許可を持つ事業者と組むこと。第4に、通信でのソフト更新について特定改造等の許可を先に取ること。政府は2030年度までに自動運転サービスの車両を1万台規模にする計画を示しており、年12万5,000台の能力は東京の100台の1,250倍にあたる。入り口を越えれば、投入規模の優位は日本でも働く。

テスラが勝っているのは造れる台数であり、ウェイモが勝っているのは運転者なしで走った距離と、許可を持つ相手との組み方である。ハンドルのない専用車は、米国で9月30日の回答を待つ段階にあり、日本では保安基準が前提にしてきた形の外にある。日本の道を先に走るのは、12万5,000台を造れる車ではなく、3つの許可を順に取りにいった100台になる。

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