ドローンの屋内飛行は航空法の規制を受けない。リベラウェアのドローン事業の売上高は2026年7月期に約8億2,100万円、ブルーイノベーションは点検事業が約5億7,700万円だった。微分智飛 (杭州) は2回で2億元近くを調達した。

中国のドローンといえば深センのDJI (大疆) だが、2026年5月に中国のIT専門紙、IT時報が取り上げた杭州の新興企業2社のうち1社は、DJIが強い屋外の市場には最初から追随しなかったと語っている。2社が開発するのは、GPS (衛星測位) も通信も届かない設備の内部やトンネルの中を、人の操縦なしに飛んで点検を済ませる機体である。同じ用途の需要は日本にもある。日本では、自社開発の小型ドローンを持つリベラウェア (東証グロース上場、登記上の社名はLiberaware) と、スイス製の球体ドローンを輸入するブルーイノベーションがこの用途を担っている。両社の決算資料を読むと、上場2社の売上の規模と採算が数字で分かる。中国の飛行ロボットが日本市場に入るとき何が障害になるかは、航空法の通達と中国商務部の公告に書かれている。

杭州の2社は通信も衛星測位も届かない空間を狙い、1社はDJIが強い屋外を最初から避けた

IT時報の記者、孫永会氏の記事は、2026年5月20日に中国のニュースサイト36Krと虎嗅に転載された。記事が「飛行ロボット」と呼ぶのは、人が遠隔で操縦するドローンではなく、機体に搭載したコンピューターだけで未知の空間を探索し、地図を作りながら点検を終えるドローンである。

微分智飛 (杭州) 科技 (以下、微分智飛) は2024年7月の設立で、創業者は浙江大学の高飛教授 (1993年生まれ) である。同氏の飛行ロボットの研究は、米科学誌サイエンス・ロボティクスの表紙を飾った。製品は自律探索型のP300と産業用のP300 Proの2機種である。IT時報によると、P300は搭載したコンピューターだけで、人の操作も事前の地図などの情報もなしに探査・測量・点検を終えられるという。中国のベンチャー投資情報サイト、投資界が2025年5月に伝えた用途は、鉱山、林の中、トンネル、電力設備など、衛星測位や通信が切れる場所である。公表された資金調達は4つの時期に分かれ、ラウンドの数はA2までで少なくとも6回ある (IT時報はA1までで6回とする)。

表1 微分智飛の資金調達

時期ラウンド金額主な投資家 (主導した社を先頭に)出所
2025年5月エンジェルとエンジェル+合計数千万元光速光合が主導、五源資本・百度のベンチャー投資部門なども出資会社の発表 (投資界)
2025年9月プレAとプレA+合計2億元近くプレAは東方富海と洪泰基金、プレA+は華映資本が主導法律顧問の徳恒律師事務所 (中国の法律事務所)
2026年5月以前A1数億元 (IT時報。会社の発表では未確認)記載なしIT時報
2026年9月A2数億元普華資本が主導、深セン市創新投資集団など既存株主が追加出資会社の発表 (中国の金融情報サイト、瑞財経)

出所: 投資界 (2025年5月14日)、徳恒律師事務所 (2025年9月18日)、IT時報 (2026年5月20日)、瑞財経 (2026年9月7日)。

同社はA2ラウンドの資金を、飛行ロボット向けのAI基盤モデルの開発と、現場向けの製品改良、量産と納入の拡大に充てるとした。IT時報の記事はA1ラウンドまでの累計調達額を5億元超と伝えるが、会社と法律顧問の発表で確認できるのは上の表の範囲にとどまる。

もう1社の硅行智能 (杭州) は設立から約1年の会社である。創業者の任勝韋氏は軍用ドローンの開発に携わった経歴を持ち、創業メンバーは清華大学と上海交通大学の出身者である。製品は、屋内や狭い空間の点検に向けた「零籠」シリーズである。同社はエンジェルラウンドの資金調達を終えた (金額は非公表)。任氏は、DJIが得意とする屋外の市場は十分に成熟しているため、最初から追随せず、違うことをしたかったと語っている。IT時報によると、同社は画像など複数の種類のデータを扱う自社開発のAIモデル「辰行・智巡」により、衛星測位が使えず暗い場所や電磁波の干渉が強い環境でも作業でき、原子力発電所と地下鉄トンネルの点検を中国で他社に先駆けて行った。同社は外装部品を取り外せる構造にして消耗部品の保守費を抑えた。飛行時間を延ばした機種と、ロボットアームを付けた機種を計画している。任氏は、飛行型はクローラー型の点検ロボットや固定カメラより柔軟に動けると述べた。

政府系研究機関は2035年に1兆元と予測、投資家は実際の顧客と売上高を求め始めた

2社が手がけるフィジカルAI (ロボットなどの体を持ち、現実の空間で動くAI。中国語では「具身智能」) の市場について、中国の政府系シンクタンクである国務院発展研究センターは『中国発展報告2025』で、2035年に1兆元を超えるとの見通しを示した。新華社系の経済紙、経済参考報 (2025年11月24日) は、同じ報告書が2030年に4,000億元に達すると見込んでいるとも伝えている。ただし新華社系の週刊誌、瞭望 (2025年12月30日) は、2035年の1兆元超を同センターの見通しと書く一方、2030年については市場調査機関の予測として「1,000億元規模」を挙げている。2030年の数字は、金額もどの機関の予測かも、資料によって異なる。経済参考報が伝えた2030年の数字を基準にすれば、4,000億元から1兆元へは5年で2.5倍、年率20.1%の伸びになる。

資金の出し手の姿勢は、予測の大きさとは裏腹に慎重になっている。杭州で開かれた之江ロボット創業・ベンチャー投資コンテストには、西湖区の政府系投資会社、杭州西湖区科創股権投資 (西湖科創投) や恒旭資本、普華資本、電科基金など10社を超える投資会社が審査に加わった。入賞企業は総額10億元超の産業ファンドから投資を受けられる。一方で、西湖科創投の張康平総経理 (社長) は浙江省のニュースサイト、潮新聞の取材に、以前はチームと試作品だけで資金を集められたが、今は実際の現場と顧客、売上高の3つが求められると述べた。IT時報が匿名を条件に取材した投資家は、投資の重心をロボット本体から中核部品へ移しているとし、ロボットの関節部品では粗利益率が20〜30%に下がり、従来の製造業並みになったと語った。同じ記事には、バブルがはじける前に流行に乗ってもう少し投資しておく、という投資家の本音も載っている。

日本では屋内の飛行に航空法が及ばず、煙突やトンネルの内部も屋内として扱う

中国の2社が狙う屋内や狭い空間の点検は、日本では制度の面で参入しやすい分野だ。国土交通省航空局の通達「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」(2015年11月17日制定、2026年4月1日最終改正) の第9項は、建物内等の屋内での飛行には航空法上の各規制が適用されないと定める。屋内と見なす空間は2種類ある。1つは、開口部はあるが内部と外部が明確に区別された空間で、通達はトンネル内部、地下道内部、煙突内部、窓や扉の開いた建物を例に挙げる。もう1つは、ドローンより目の細かいネットや金網で囲われ、飛行範囲を外れないようにした空間である。開口部に近づく経路では、屋外へ飛び出さないようにする措置を講じることが求められる。

煙突の扱いは、2020年の国土交通省の回答と現行の通達で異なる。2020年1月17日の規制改革推進会議の作業部会で、国土交通省は、屋内が航空法の適用外であることは制度開始当初から通達に定めていると説明した。一方、上部が開いた煙突の内部については、機体に異常が起きると垂直に急上昇してから落下する場合も想定されるため、人口集中地区などで飛ばすなら許可や承認が必要と考えると回答していた。2026年4月改正の現行の通達は、煙突内部を屋内の例に挙げている。いつの改正で加わったかは確認できなかった。

屋外で飛ばす機体には登録の義務がある。無人航空機の登録制度は2022年6月20日に始まり、100グラム以上の機体に製造者・型式・製造番号などの登録を義務付ける。登録数は、2025年6月から3年の有効期間が切れる機体が出て一時減ったが、航空局の資料では2026年5月末時点で37万9,177機である。この数には個人の趣味用も含まれる。

リベラウェア、国産IBISのドローン事業は売上高8.2億円、IBIS2は53セットを販売

2024年7月に東証グロースに上場したリベラウェアは、屋内点検専用のドローンを自社開発している。2025年7月期の有価証券報告書によると、同社の小型ドローン「IBIS (アイビス)」は20センチ四方程度の大きさで、製鉄所の現場で検証を重ねて開発された。暗く狭い空間や鉄粉が舞う高温の環境でも飛べる防じん性と耐熱性を持ち、天井裏やボイラー内、配管内のように人が立ち入れない場所を人に代わって調査・点検する。同社は2016年から日本製鉄の製鉄所で実証を重ねて機体を開発し、2022年7月に日本製鉄の製鉄所内の大型設備で運用を始めた。2023年6月に後継機のIBIS2を発売した。

2026年7月期の決算短信 (2026年9月14日) によると、売上高は前期比13.4%増の15億9,512万円で、このうちIBISを使う「ドローン事業」が8億2,088万円を占める。内訳は、同社が機体を飛ばして撮影画像を提供する点検ソリューションが2億2,386万円 (前期2億8,553万円)、機体の販売とレンタルからなるプロダクト提供サービスが5億9,702万円 (同5億2,187万円) である。残りは、3次元データの処理やデジタルツイン (設備を仮想空間に再現する技術) の事業が3億1,305万円、JR東日本グループ向けの開発案件や福島第一原子力発電所の原子炉調査などのソリューション開発事業が4億212万円、新規領域が5,908万円だった。決算説明資料によると、IBIS2の機体販売は2026年7月期に53セットと前期の49セットから増えた。1セットは原則2台で、同社は平均単価を1セット800万円としている。レンタル中のセット数は2026年7月末で35だった。点検ソリューション (関連するデータ処理・解析を含む) の売上高のうち、2期続けて発注した顧客の分は2026年7月期に69%と前期の59%から上がったが、同社は案件数の減少と小型化が売上高に響いたとしている。2025年7月期の主な販売先は関連会社のCalTa (カルタ、売上高の21.7%) と東京電力ホールディングス (同11.3%) だった。

2026年7月期の営業損失は23億9,730万円に広がった (前期は15億8,870万円の損失)。国の中小企業向け研究開発支援制度 (SBIR) に基づく研究開発費17億600万円を販売費及び一般管理費に計上する一方、営業外収益に補助金15億7,412万円 (うちSBIR分15億3,800万円) を計上するためで、経常損失は8億749万円、純損失は8億1,156万円だった (前期は補助金16億338万円を営業外収益に計上し、経常利益4,698万円)。SBIR分の補助金が研究開発費を1億6,800万円下回るのは、受け取りが翌期にずれたためだと同社は説明する。売上高については、無償の下水道調査や小規模な案件が多く点検ソリューションが計画を大きく下回ったとし、損失の拡大については、鉄道向けドローンや次世代IBISの研究開発費と、人材・事業基盤への先行投資の増加を理由に挙げている。2025年1月の埼玉県八潮市の道路陥没事故を受けて下水道の点検需要が増えているとして、自治体と連携した下水管の調査を2026年1月末までに累計40か所以上で行い、IBIS2の国内販売店は5社になった。

ブルーイノベーションはスイス製ELIOSの導入先が300か所超、点検事業の売上高は5.8億円で横ばい

東証グロース上場のブルーイノベーションは2018年3月にスイスのフライアビリティと提携し、機体を球状の保護枠で覆った屋内点検用ドローン「ELIOS」の販売を始めた。2019年9月にELIOS 2、2022年6月にELIOS 3の取り扱いを始めた。フライアビリティ製品の国内販売契約は1年ごとに更新しており、直近の更新は2025年1月17日だ。ELIOS 3はLiDAR (レーザーで距離を測るセンサー) とカメラを使い、自己位置の推定と地図作成を同時に行いながら、GPSなど衛星測位の電波が届かない空間を飛ぶ。2025年6月に発売した大容量バッテリーは、容量が99ワット時から187ワット時へ1.89倍に増え、標準のLiDARを積んだ場合の飛行時間は9分10秒から13分30秒へ1.47倍に延びた (会社の説明は約1.5倍)。

ELIOSの導入先は2024年時点で、プラントや発電所、下水道などを中心に300か所を超えていた。東北電力グループの東日本テクノサーベイが導入した例では、水力発電所の水路約100メートルの点検は丸1日かかる箇所もあったが、1時間程度で済むようになった。火力発電所の地震後の緊急点検は、仮設足場の設置と撤去を含めて2〜3週間、数百万円かかっていたが、1日で済んだという (ブルーイノベーションの2024年7月の発表)。2025年4月には、ELIOS 3を使う設備点検技術が、経済産業省所管の製品評価技術基盤機構が発行する「スマート保安技術カタログ (第18版)」に掲載された。

2025年12月期の有価証券報告書によると、売上高は前期比14.0%減の約10億5,100万円、営業損失は約5億4,800万円だった。4つの事業区分のうち点検ソリューションは1.4%増の約5億7,700万円で、売上高に占める割合は46.5%から54.8%に上がった。ほかの3区分 (ドローンポート、教育、新規事業の検証) が減ったためだ。ただし、この点検ソリューションには屋内のELIOSのほかに、東京電力などと開発した屋外の送電線点検「BEPライン」と、無人搬送車を使う発電所や鉄道車両向けの自動巡回点検「BEPサーベイランス」が含まれており、屋内点検だけの売上高は開示されていない。同社は、下水道を中心に公共インフラの点検案件は増えたものの、顧客ごとの仕様への対応や供給体制の制約で一部の売上の計上が翌期にずれ込んだと説明する。商品の仕入高は約1億7,300万円から約2億6,900万円へ1.56倍に増え、期末の在庫 (商品・製品) は約4,700万円から約1億1,200万円へ2.37倍に膨らんだ。仕入れた商品の一部を売上に計上できず、在庫として抱えたとみられる。供給の制約で計上がずれ込んだという会社の説明と合う。

表2 屋内点検に関わる上場3社の業績 (▲は損失)

指標リベラウェア (2026年7月期)ブルーイノベーション (2025年12月期)ACSL (2026年1〜6月)
売上高15億9,512万円10億5,146万円16億4,821万円
うち点検関連8億2,088万円5億7,652万円2億6,186万円
営業損益▲23億9,730万円▲5億4,805万円▲3億7,521万円
経常損益▲8億749万円▲5億6,127万円▲3億6,168万円
売上総利益率42.4%39.0%33.2%
機体国産 (IBIS)スイス製 (ELIOS)国産 (SOTENなど)

出所: 各社の決算短信・有価証券報告書・決算説明資料。「うち点検関連」は、リベラウェアがIBISを使うドローン事業、ブルーイノベーションが点検ソリューション (屋外の送電線点検と無人搬送車を含む)、ACSLが社会インフラ維持・管理 (物流と点検の合算) の区分。リベラウェアとACSLの営業損益は国家プロジェクト (SBIR) の研究開発費を含み、対応する補助金は営業外収益に計上される。売上総利益率は、各社が開示した売上高と売上原価から本稿で算出した。

ブルーイノベーションは有価証券報告書の「事業等のリスク」で、ELIOSはフライアビリティの製品のため、契約が更新されなければ販売権を失う恐れがあると記す。より優れた屋内点検用ドローンが現れれば切り替えはできるが、ソフトウエアの調整や安定した調達に時間がかかる可能性があるとしている。同社は自社の強みを、機体ではなく、衛星測位の電波が届かない空間で複数のセンサーを組み合わせて自己位置を推定する技術と、機種を問わず連携できるソフトウエアだと説明しており、特定の機種に頼らない方針だ。

ACSL、社会インフラ向けは上期2.6億円に減少、北米が売上の6割を占める

国産ドローンメーカーのACSLは点検を含む社会インフラ向けを事業区分の1つとするが、2026年の業績をけん引しているのは北米事業だ。2025年12月期の売上高は約26億円で前期比2.1%減、営業損失は約18億4,000万円だった。2026年12月期第2四半期決算短信によると、1〜6月の売上高は16億4,800万円で前年同期比68.9%増、営業損失は3億7,500万円 (前年同期は7億5,400万円の損失)、売上総利益率は8.6%から33.2%に改善した。事業別では、北米事業が前年同期 (4,300万円) の23.9倍の10億1,800万円に増え、売上高の61.8%を占めた。防衛・安全保障は45.1%減の2億3,400万円、物流や点検の顧客向けの「社会インフラ維持・管理」は12.3%減の2億6,200万円だった。同社の資料には、屋内点検だけの売上高の開示はない。

小型空撮ドローンSOTENの販売は、2025年12月期が20億700万円 (1,276台) で、うち海外は9億2,100万円 (500台) だった。2026年1〜6月は11億1,200万円 (634台) のうち海外が10億1,800万円 (600台) を占め、国内は9,300万円 (34台) にとどまった。同社は、北米で売上高が伸びた理由を中国製ドローンからの置き換え需要だと説明する。米国は国防権限法で中国製ドローンの政府調達を禁じている。国防総省は2022年10月にDJIを中国軍の関連企業に指定した。2025年12月には米連邦通信委員会が外国製ドローンと主要部品を規制対象のリストに加えた。SOTENは国防権限法の基準を満たし、必要な認証も取得しているため、米国で販売を続けられる。DJIとACSLの製造原価の差は2機種を分解して部品原価を比べた記事で扱った。

同社は社会インフラ向けで、日本郵便と共同開発した長距離飛行型ドローンPF4の量産、第一種型式認証を取得したPF2-CAT3の販売、SOTENと2次元・3次元の地図作成ソフトを組み合わせた提案、用途に応じたカメラなど搭載機器を使う点検を進めていると説明する。同社は2026年12月期の売上高を40億円 (53.9%増) と予想する。売上総利益の見通しは8億5,000万円から11億円へ上方修正した一方、国家プロジェクトの費用を除く営業損失は7億6,000万円で据え置いた。6月末の受注残高は13億1,600万円、現預金は28億8,500万円だった。

中国製の点検ドローン、日本で採用を左右するのは航空法ではなく経済安全保障

海外製の機体には、航空法とは別の手続きがある。ブルーイノベーションは有価証券報告書で、ドローンは操縦に電波を使うため無線機器として技術基準適合証明 (技適) が必要で、海外製の機体を輸入する場合は技適を申請しなければならないと記している。ただし技適は国産機にも必要な手続きで、中国製の機体を締め出すものではない。財務省の貿易統計によると、日本が2025年に輸入したドローンは台数の97.8%が中国からで、金額では約4割を占める。台湾製ドローンの輸入が周波数の違いと認証の取得で伸び悩んだ経緯は台湾製ドローンの輸入が45機にとどまった記事で扱った。

採用を左右するのは経済安全保障である。日本政府は無人航空機を経済安全保障推進法の特定重要物資に指定し、国産化を促している。2020年9月14日の関係省庁申合せ「政府機関等における無人航空機の調達等に関する方針について」は、国の行政機関や独立行政法人などが、防衛や犯罪捜査、国民保護法の生活関連等施設の点検、救難などに使う無人航空機の調達のうち、サイバーセキュリティ上のリスクを特に考慮すべきと判断したものについて、情報の漏洩や乗っ取りを防ぐために内閣官房と協議したうえで必要な措置を講じるよう定めた。リベラウェアは2026年7月期第2四半期の決算短信で、同じ趣旨の要請が民間の調達にも広がる傾向にあると説明している。一方、中国商務部は2026年6月29日の公告 (第28号) で、軍民両用品の最終用途と最終使用者を確認できないとして日本の20の企業・団体を注視リストに加えた。この中にテラドローンとACSLも入っている。中国の輸出企業はこれらの企業・団体向けに包括許可を使えず、個別に許可を申請する際はリスク評価報告書と、日本の軍事力の向上に使わないとの誓約書が必要になる。ACSLは第2四半期決算短信で、中国からの軍民両用品の輸出審査が厳しくなるため、部材の調達への影響を精査し、他国からの調達や設計変更を進めていると説明した。当面の事業運営に重大な影響は見込まないという。通期では、この対応を含む供給網の強化で販管費の見通しを2億5,000万円引き上げた。日本のドローン会社が中国製部材への依存を減らそうとしているなか、日本の発電所や化学プラントが中国製の点検用ドローンを新たに採用する際には、性能のほかに調達先の安全性も問われる。

日本の屋内点検ドローンの市場全体を示す統計はない。手がかりとして、屋内点検を主な事業とする上場2社の関連売上高を足すと、リベラウェアのドローン事業が2026年7月期に約8億2,100万円、ブルーイノベーションの点検ソリューションが2025年12月期に約5億7,700万円で、約14億円になる。期の異なる2社の和で、屋外の送電線点検などを含む一方、画像処理や原子炉調査は含まない目安である。微分智飛が2025年9月の2回の調達で集めた2億元近くは、米セントルイス連銀が公表する2026年10月9日の為替 (1元=23.66円) で換算すると47億円近くで、この2社の点検関連の売上高の合計の3倍あまりにあたる。杭州の2社はまず、投資家が求める顧客と売上高の実績を、中国国内の原子力発電所や地下鉄で積み上げる段階にある。企業情報はACSL、テラドローン、ロボット産業の一覧にまとめている。

※2026年10月19日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版 (2026年5月21日公開) にあった、中国の企業情報サービス「企査査」のデータとする関連企業の新規登録388社 (115.6%増) は、元の資料を確認できなかったため削除しました。中国ホライズン・ロボティクス (地平線機器人) の車載半導体「征程5」や、ブラック・セサミ・テクノロジーズ (黒芝麻智能) の車載半導体が飛行ロボットに転用されているとする記述と、中芯国際集成電路製造 (SMIC) の製造工程に関する記述は、出所を確認できないため削除しました。国務院発展研究センターの予測については、2030年に4,000億元とする数字がどの機関の予測か、資料によって食い違うことを明記しました。日本企業の記述は、社名を並べただけの内容を改め、航空法の通達や登録制度、リベラウェア・ブルーイノベーション・ACSLの開示資料に基づく数字で書き直しました。

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