シティがまとめたHBMの需要予測は「エヌビディアが需要を牽引する」と説明する。ところが最終年に最も多くのHBMを使うのは専用半導体の側で、差は64、比率にして0.16%。増加分の54.0%も1社に集中する。

この予測は1Gb換算の百万個を単位に、HBMの総需要が2021年の736から2028年の12万6990まで、7年で172.5倍に伸びる姿を描く。伸びの大きさそのものはシティ自身が最初に挙げたとおりで、争う余地がない。読み方が分かれるのは、その数量を誰が使うかである。

数字を使う前に、内訳と合計のつじつまが合うかを確かめた。6社の内訳を足すと、2021年から2028年までの8年すべてで公表の合計と±1に収まる。2028年は12万6991となり、公表の12万6990との差は1にとどまる。2024年と2026年は差がゼロで完全に一致する。世代と積層別の13種類を足した場合も同じで、2026年は4万6409と合計に一致し、2028年は12万6989で差は1にとどまる。HBMがDRAM全体に占める比率も、2028年の12万6990を63万35で割ると20.156%となり、公表の20.2%と合う。2025年も2万965を30万5484で割ると6.863%で、公表の6.9%に重なる。丸めによる差を超えるずれはない。

6社の内訳を足すと、2028年に最大になるのはブロードコムである

エヌビディア向けは2021年512、2022年1024、2023年1728、2024年4160と積み上がり、2025年に8400、2026年に2万2003、2027年に3万2503、2028年に4万939へ達する。ブロードコム向けは2021年96、2022年154、2023年365、2024年1440と小さく始まり、2025年3840、2026年9002、2027年1万3001を経て、2028年に4万1003になる。

残る4つの内訳も同じ集計に含まれる。グーグル向けは2021年51、2022年256、2023年576、2024年1728から、2025年2765、2026年4702、2027年1万300、2028年1万4003へ。AMD向けは2021年64、2022年128、2023年384、2024年832から、2025年2160、2026年4200、2027年7000、2028年8200へ。AWS向けは2021年6、2022年45、2023年144、2024年640から、2025年1512、2026年2501、2027年2802、2028年6391へ。その他は2021年6、2022年58、2023年154、2024年1296から、2025年2288、2026年4001、2027年9550、2028年1万6455へ動く。

HBM需要の顧客別内訳。2028年はブロードコム向けが最大になる
HBM需要の顧客別内訳。2028年はブロードコム向けが最大になる

2028年のエヌビディア以外の合計は8万6051で、全体の67.8%にあたる。2021年の同じ計算は224で30.4%だったから、7年で立場が入れ替わる。DRAM全体の需要も1Gb換算で2021年19万1673、2022年19万3221、2023年19万282、2024年24万6759、2025年30万5484、2026年39万57、2027年51万101、2028年63万35と見込まれ、HBMの比率は0.4%、0.9%、1.8%、4.1%、6.9%、11.9%、14.7%、20.2%と上がる。なおシティの集計には総需要を示す数字が2か所あるが、8年とも同じ値で、HBMの総需要は一度だけ数えられている。

2028年に増える5万1833のうち、2万8002はブロードコム1社分である

規模を比べるより、増加分の配分のほうが性格をよく表す。2027年から2028年にかけてHBMの総需要は12万6990から7万5157を引いた5万1833増える。このうちブロードコム向けの増加は4万1003から1万3001を引いた2万8002で、増加分の54.0%を1社が占める。

同じ期間のエヌビディア向けの増加は8436で、増加分に占める比率は16.3%にとどまる。その他が6905で13.3%、グーグルが3703で7.1%、AWSが3589で6.9%、AMDが1200で2.3%と続く。伸び率で見ると、市場全体が69.0%増えるなかで、ブロードコムは215.4%、エヌビディアは26.0%と、全体を挟んで上下に大きく離れる。

2027年から2028年にかけての増加分の内訳
2027年から2028年にかけての増加分の内訳

その前年は配分がまったく違う。2026年から2027年にかけて最も伸びるのはその他の138.7%で、グーグルが119.1%、AMDが66.7%、エヌビディアが47.7%、ブロードコムが44.4%と続き、AWSは12.0%で止まる。1年ごとに主役が入れ替わり、どの年を切り取るかで見える構図が変わる。

エヌビディアの比率は2026年に47.4%へ上がってから32.2%へ下がる

シティの説明は、エヌビディアの比率が2025年のおよそ40%から2028年のおよそ32%へ下がると書く。両端だけを見ればそのとおりで、2025年は8400を2万965で割って40.1%、2028年は4万939を12万6990で割って32.2%になる。

ところが途中に山がある。2026年は2万2003を4万6409で割って47.4%で、2025年より7.3ポイント高い。2027年も3万2503を7万5157で割って43.2%あり、2025年をなお上回る。比率が2025年の水準を割り込むのは最終年だけである。さかのぼると2021年は69.6%、2022年61.5%、2023年51.6%、2024年41.2%と下げ続けており、2026年の上昇はその流れが一度止まることを意味する。両端を結んだ「下がる」という一言は、間にある反転を覆い隠す。

ブロードコムの比率も一本調子ではない。2025年18.3%、2026年19.4%、2027年17.3%と横ばいに近い動きを続け、2028年に32.3%へ跳ねる。順位の入れ替わりは徐々に進むのではなく、最後の1年で起きる。

ブロードコム自身の見通しは毎年ほぼ2倍で、予測が後半に偏る形と食い違う

この最後の1年に集中する形を、会社側の開示と突き合わせた。ブロードコムが2026年9月2日に米証券取引委員会へ出した決算発表資料によれば、2026年8月2日に締めた第3四半期の売上高は295億9100万ドルで86%増、このうちAI半導体は167億ドルで前年同期比221%増・前四半期比54%増だった。第4四半期はAI半導体が217億ドル(236%増)、全社が348億ドル(93%増)になる見通しを示している。同じ時期の決算説明会では、AIの売上高を2026年度580億ドル、2027年度およそ1150億ドル、2028年度およそ2300億ドルと示した。

会社の見通しを倍率に直すと、2027年度は1.98倍、2028年度は2.00倍で、2年続けてほぼ2倍の伸びになる。一方シティの予測でブロードコム向けのHBMは、2027年が1.44倍、2028年が3.15倍と後半に偏る。2年をまとめれば会社が3.97倍、予測が4.55倍で近い水準に収まるから、食い違っているのは到達点ではなく年ごとの配分である。

会計年度の区切りが11月初めである点を差し引いても、この差は無視できない。会社の計画どおりに2027年度が2倍で進むなら、1万3001という2027年の数量は低く見積もられていることになる。逆に予測の形が正しければ、2027年は専用半導体1個あたりのHBM搭載量が減るか、売上高の伸びがHBM以外の部分から生まれることになる。どちらになるかは2027年前半の決算で見極められる、というのが当サイトの見立てである。ブロードコムエヌビディアAMDの事業構成は企業データベースに収めている。

16段積みはHBM4を飛ばし、HBM4eから始まる想定になっている

世代別の並びには、もう1つ確かめるべき前提が入っている。HBM3は2024年6560、2025年6598、2026年1601、2027年1364と細り、HBM3Eの8段は2024年1680、2025年3840、2026年6104、2027年1005、12段は2024年518、2025年1万526、2026年2万5313、2027年1万4153、2028年1万2628と動く。HBM4の8段は2026年2316、2027年6056、2028年4330、12段は2026年1万1075、2027年3万2107、2028年4万7379。HBM4eは8段が2027年1万1305・2028年2万1170、12段が2027年7011・2028年3万3756、16段が2027年2154・2028年4557で、HBM5の16段は2028年の3169だけに数字がある。古い世代はHBM1が2021年368・2022年832、HBM2が2021年368・2022年832・2023年1104、HBM2Eが2023年2246・2024年1338である。

構成比も同じ形をなぞる。HBM1は2021年と2022年がともに50%、HBM2は2021年50%・2022年50%・2023年33%、HBM2Eは2023年67%・2024年13%。HBM3は2024年65%・2025年31%・2026年3%・2027年2%、HBM3Eの8段は2024年17%・2025年18%・2026年13%・2027年1%、12段は2024年5%・2025年50%・2026年55%・2027年19%・2028年10%。HBM4の8段は2026年5%・2027年8%・2028年3%、12段は2026年24%・2027年43%・2028年37%。HBM4eの8段は2027年15%・2028年17%、12段は2027年9%・2028年27%、16段は2027年3%・2028年4%で、HBM5の16段は2028年2%である。

世代・積層別の需要と構成比。HBM4の16段はどの年も需要が見込まれていない
世代・積層別の需要と構成比。HBM4の16段はどの年も需要が見込まれていない

目を引くのは、HBM4の16段がどの年も0%で、需要が一度も見込まれていないことである。16段積みが現れるのはHBM4eの2027年からになる。ところがSK hynixは16段積みのHBM4を公表しており、容量48GB・帯域は毎秒2テラバイト超で、2026年の量産を計画している。同社は2025年9月12日にHBM4の開発完了も公表し、入出力を2048本、1本あたり毎秒10ギガビット超、電力効率を40%超改善したとしている。HBM4Eについても試作品を2026年後半に出し、2027年に量産へ入る計画を示した。供給側が16段のHBM4を用意する一方で、需要の予測はそれを織り込んでいない。どちらが外れるかで、2027年の積層構成は変わる。

単位が1Gb換算である点も、数量の読み方を左右する。同じ個数の製品でも、8段が12段になれば換算後の数は1.5倍になる。2028年にHBM4eの3種を足すと5万9483で総需要の46.8%を占めるが、公表の構成比を丸めたまま足すと17%・27%・4%で48%になり、1.16ポイント膨らむ。数量の伸びのうちどれだけが個数の増加で、どれだけが段数の増加かは、公表された数字からは分けられない。SK hynixが2026年第1四半期のHBMで売上高シェア56.4%と首位、HBMを含むDRAM全体で29.1%と2位にあることは、同社が2026年7月10日に米証券取引委員会へ出した目論見書がIDCの調査として記している。

数量が3.59倍に増える2年で、金額は2.61倍にとどまる

数量の話と金額の話は、同じ向きに動いていない。シティの予測でHBMの総需要は2025年の2万965から2027年の7万5157へ3.59倍になる。年あたりに直すと89.3%の伸びにあたる。一方、SK hynixの目論見書が引くガートナーの見通しでは、HBMの売上高は2025年の330億ドルから2027年の860億ドルへ2.61倍で、年あたりの伸びは60.5%である。

両者の対象が同じHBM市場であることを前提に割ると、1Gb換算1個あたりの金額は2025年が1.57ドル、2027年が1.14ドルとなり、2年で27.3%下がる。ビットが増えることと売上高が増えることは、別々に動く。

数量と金額の伸びの差、および1Gb換算1個あたりの金額
数量と金額の伸びの差、および1Gb換算1個あたりの金額

同じ目論見書によれば、ガートナーはメモリー半導体市場全体を2025年の2160億ドルから2026年の6330億ドルへ192.7%増と見込み、DRAM全体の売上高は2025年の1430億ドルから2027年の4010億ドルへ年67.3%で伸びるとする。単価が跳ねるのはDRAMとNANDの平均であって、HBMの1Gb換算あたりではない。長期の契約で決める価格と、需給で振れる一般のDRAMとでは、動き方が違う。

需給そのものは締まったままである。シティの予測でDRAMの総需要は2026年に27.7%増えるが、IDCは同じ年のDRAM供給の伸びを16%と見込む。差は11.7ポイントで、この開きが一般のDRAMの単価を押し上げている。

HBMの数量は7年で172.5倍に増え、DRAM全体に占める比率は0.4%から20.2%へ上がる。その数量を誰が使うかは、最終年に入れ替わる。2028年のブロードコム向け4万1003とエヌビディア向け4万939の差は64しかないが、増加分の54.0%が1社に集中するという事実のほうが、日本の部材と装置の供給者にとって重い。数えるべき相手は画像処理半導体の出荷台数ではなく、クラウド各社が独自に設計する半導体の数と、そこに載る段数である。

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