装着型ロボットHALを手がけるサイバーダインでは、工場などで使う作業支援用の腰タイプの売上が、2026年3月期に3,700万円にとどまった。1台あたりの売上は医療用の下肢タイプの約23分の1で、稼働台数も4年前とほぼ同じだった。

脚や腰の動きをモーターで補う外骨格 (装着型ロボット) を、スポーツ・アウトドア用品の大手が手がけ始めている。アウトドア用品ブランドのアークテリクスは2024年8月に電動パンツを公表し、米ナイキは2025年10月に電動シューズを発表した。ただ、2026年10月19日時点で、どちらも出荷は始まっていない。日本の上場企業サイバーダインの決算資料を見ると、製品レンタル等の売上の過半は今も医療用から上がっている。

ナイキのProject Amplifyは試作段階で、発売時期も価格も未公表

ナイキは2025年10月23日、走る・歩く人向けの電動シューズ「Project Amplify」を発表し、この用途では世界初だとした。共同で開発したのはロボット企業のデフィーである。軽量のモーター、駆動用のベルト、足首に付ける充電式の電池からなり、炭素繊維の板を入れたランニングシューズと組み合わせる。靴は駆動装置を外しても履ける。モーターの制御には、ナイキのスポーツ研究所で得た知見をもとにしたアルゴリズムを使う。

想定する利用者は、1マイル (約1.6キロメートル) を10〜12分、1キロメートルあたり約6分13秒〜7分27秒のペースで走る人である。記録を縮めたい競技者は対象にしていない。試験には400人を超えるランナーなどが参加し、延べ240万歩以上を記録した。ハードウエアの試作は9回を超える。ナイキは、装着すると1マイル12分のペースが10分になった人もいると説明している。これは一部の参加者の例で、参加者全体の平均値ではない。同社は今後数年のうちに一般向けに発売するとしているだけで、具体的な時期と価格は明らかにしていない。

アークテリクスのMO/GOは発表から2年、出荷は2027年夏に延びた

アークテリクスの電動パンツ「MO/GO」は、2024年8月29日に親会社のアメア・スポーツが発表した。アークテリクスと共同で開発したスキップは、米グーグルの研究部門Xから独立した会社である。電池で動くモーターが膝の動きを助け、登りでは脚の筋力を40%補い、下りでは膝を支えるとした。発表の時点では、出荷は2025年後半の予定だった。

スキップの製品サイトは、補助を最大40%と書いている。注記によると、40%は補助を最も強くしたときの値で、膝を曲げ伸ばしする力 (トルク) の最大値をもとに計算している。補助の大きさは体重によって変わる。

2026年10月19日時点で、同サイトの予約ページは総額4,999ドルで予約を受け付けている。予約の際に払う99ドルは出荷前なら全額返金され、残りは出荷の準備が整ってから請求する。出荷は2027年夏の予定で、予約は1,500件を超えたとしている。発表時の予定から少なくとも1年半遅れる計算になる。一方、同じサイトのよくある質問の欄は、2026年に出荷すると書いたままである。製品は医療機器ではなく、米食品医薬品局の承認も受けていないとも明記している。

消費者向けで先行するのは中国のハイパーシェル、日本ではKDDIが17万9,800円で販売

消費者向けで販売を広げているのは、2021年4月に上海で創業したハイパーシェルである。2023年3月にクラウドファンディングサイトのキックスターターで消費者向けの外骨格の支援を募り、1か月で2,638人から約123万ドルを集めた。2024年8月に量産と出荷を始め、2025年12月時点で、70を上回る国・地域で利用者が3万人を超えたとしている。同社は2026年5月に新しいXシリーズを発売し、AIを使った独自の制御で、坂の上り下りなど歩く状況に応じて補助の強さを変えると説明している。電池の容量は1個あたり5,000ミリアンペア時 (72ワット時) である。

日本ではKDDIが、auオンラインショップでハイパーシェルの「Hypershell X Pro」を税込17万9,800円で売っている。本体の重さは電池を除いて2キログラム、補助の出力は最大800ワットで、1回の充電で最大17.5キロメートルの距離を補助できる。KDDIは、AIで動きを学習して状況に合わせて補助する装着型の機器として紹介している。KDDIの販売台数は、公表資料では見つからなかった。

サイバーダインの製品売上の56%は医療用、作業支援用は1.8%

サイバーダインは、装着型ロボットを主力とし、売上を製品別に開示している日本の上場企業である。2026年3月期 (2025年4月〜2026年3月) の売上収益は38億4,600万円で、前の期から12.3%減った。営業損益は6億100万円の赤字で、赤字幅は前の期の9億2,600万円から縮んだ。研究開発費は10億円で、前の期から6.2%減った。

売上は3つの事業に分かれる。HALなどのレンタル (販売分を含む) からなる「製品レンタル等」が20億300万円、自社の施設で治療を行う「治療サービス等」が16億3,600万円、子会社の事業などをまとめた「その他」が2億700万円だった。治療サービス等のうち14億4,500万円は北米・中南米の売上である。製品レンタル等を製品別に分けると、次のようになる。

製品 (単位は百万円)2025年3月期2026年3月期2026年3月末の稼働台数
HAL下肢タイプ (医療用)9901,122558台
HAL下肢タイプ (非医療用)165147375台
HAL単関節タイプ243251710台
HAL腰タイプ (介護・自立支援)3182371,063台
HAL腰タイプ (作業支援)3837411台
移動ロボット7580180台
その他 (付属品・消耗品など)196128該当なし
合計2,0242,0033,297台

売上は決算補足説明資料の製品別内訳、稼働台数は有価証券報告書による。百万円未満を四捨五入しているため、各行の和と合計は一致しない。移動ロボットの台数は清掃ロボットと搬送ロボットの合計である。医療用の下肢タイプの売上は11億2,200万円で、製品レンタル等の56%を占めた。同社は、国内は小型モデルを含む下肢タイプと単関節タイプを中心に、海外はドイツを中心に医療用の下肢タイプの売上が増えたと説明している。工場などで働く人向けの腰タイプ (作業支援用) は3,700万円で、製品レンタル等の1.8%にとどまった。

1台あたりにならすと差がさらに開く。医療用の下肢タイプの売上を、期首 (527台) と期末 (558台) の稼働台数の平均である542.5台で割ると、1台あたり約207万円になる。作業支援用の腰タイプの売上を同じように平均の416.5台 (期首422台、期末411台) で割ると約8万9,000円で、医療用の約23分の1である。どちらも販売分を含むので、レンタル料そのものではない。医療用の下肢タイプの稼働台数には臨床試験用の機器も含まれると同社は有価証券報告書に書いており、1台あたりの値は目安である。それでも、医療用は1台あたりの売上がはるかに大きい。

稼働台数は4年で13%増え、作業支援用は横ばいだった

サイバーダインは、HALなどの稼働台数を経営上の重要な指標として取締役会に報告している。売上の柱がレンタルと保守であり、レンタルの期間にわたって計上するためである。2022年3月末の2,908台から2026年3月末には3,297台へ、4年で13.4%増えた。

増えたのは医療用である。医療用の下肢タイプは368台から558台へ51.6%増えた。558台のうち国内でレンタル契約を結んでいるのは120台である。この1年の台数の増加は、主にアジア太平洋向けのレンタルによる。単関節タイプも医療用が増え、492台から710台になった。一方、作業支援用の腰タイプは417台から411台へ1.4%減った。介護・自立支援用の腰タイプも1,143台から1,063台へ減った。

直近の2026年4〜6月期は、売上収益が10億2,700万円で前年同期から2.7%増えた。ただ、医療用の下肢タイプの売上は2億9,700万円で、前年同期の3億3,500万円から11.3%減った。作業支援用の腰タイプは900万円 (前年同期は800万円) だった。同社は2027年3月期の業績予想を公表していない。

医療用のHALは承認と保険適用の対象を広げてきた

医療用のHALは、2015年11月に神経・筋の難病8疾患を対象として厚生労働省の承認を受けた。2016年1月には中央社会保険医療協議会が公的医療保険の適用を決め、同年9月に保険診療が始まった。2022年4月の診療報酬改定で点数が上がった。同年10月にはHTLV-1関連脊髄症と遺伝性痙性対麻痺へ対象を広げる承認を受け、2023年10月に保険適用になった。2025年1月には、身長100〜150センチ程度の患者向けの小型モデルが承認された。

同社は有価証券報告書の「事業等のリスク」の項で、巨大なテクノロジー企業を含む多くの企業が商業用ロボットの分野に新たに参入するなど、競争環境が変わっていると指摘した。そのうえで、「医療機器認証の取得及び保険適用等を含む商用化には多大な時間と費用を要する」とし、成功する保証はないとしている。

ナイキの電動シューズは発売時期を示しておらず、MO/GOは出荷が2027年夏に延びた。日本でKDDIが売る消費者向けの外骨格は中国のハイパーシェルの製品である。サイバーダインの売上で伸びているのは病院や治療施設で使う医療用で、消費者向けの外骨格の広がりは、同社の決算資料にはまだ数字として表れていない。

※2026年10月19日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版は、ナイキとアークテリクスが相次いで外骨格を発表したと書きましたが、アークテリクスのMO/GOの発表は2024年8月、ナイキのProject Amplifyの発表は2025年10月でした。MO/GOを4年かけて共同開発し、AIが動きを予測するとした記述は各社の発表で確かめられず、削除しました。ナイキの試験でのペースの改善を全員の結果のように書いた記述は、発表に沿って改めました。MO/GOの価格は「数千ドル」から、予約ページに載る総額4,999ドルに改めました。出所を確かめられなかった世界の外骨格市場の規模、ハイパーシェルの資金調達額と電池のエネルギー密度、外骨格に使う半導体の製造工程と性能、日本の部品・素材会社が供給元になるとした記述は削除しました。

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