米H&Hインターナショナル・インベストメントが持つエヌビディアの株数は、2026年3月末に約1384万株と前年9月末の23.2倍に増え、6月末に約628万株へ減った。中国メディアは同社を、著名投資家の段永平氏の会社と報じている。
H&Hは米カリフォルニア州パロアルトに本拠を置く投資顧問会社で、米証券取引委員会 (SEC) に四半期ごとに保有株の報告書「13F」を出している。2026年3月末時点の13Fでは、エヌビディアはアップル、バークシャー・ハサウェイに次いで評価額が3番目に大きかった。ところが8月14日に提出された6月末時点の13Fでは、株数は半分以下に減り、順位も5番目に下がった。エヌビディアに基板や検査装置を納める日本のイビデンとアドバンテストは、2026年3月期の有価証券報告書に同社との取引額を載せている。
エヌビディア株は半年で23.2倍、次の四半期に半分以下
SECの電子開示システムで、H&Hの13Fを、最初の2018年12月末時点から2026年6月末時点まで31回分すべて調べた。2024年12月末までの25回分には、エヌビディアは載っていない。初めて載ったのは2025年3月末で、約65万株と11銘柄のうち評価額で9番目だった。
| 四半期末 | 株数 | 評価額の順位 |
|---|---|---|
| 2025年3月末 | 645,100 | 11銘柄中9位 |
| 2025年6月末 | 964,800 | 10銘柄中7位 |
| 2025年9月末 | 597,800 | 11銘柄中8位 |
| 2025年12月末 | 7,237,100 | 14銘柄中3位 |
| 2026年3月末 | 13,843,775 | 19銘柄中3位 |
| 2026年6月末 | 6,280,675 | 18銘柄中5位 |
2025年9月末の株数は6月末より38.0%少なく、ここから積み増しが始まった。12月末の株数は9月末の12.1倍、2026年3月末はさらに1.9倍で、9月末からは23.2倍に増えた。エヌビディアが保有銘柄の評価額の合計に占める割合は、12月末の7.7%から3月末に12.1%へ上がった。
4〜6月期には一転して株数が減った。2026年6月末の株数は3月末から54.6%減り、2025年12月末 (約724万株) と比べても13.2%少なかった。評価額の合計に占める割合は6.6%に下がり、アップル (41.1%)、バークシャー・ハサウェイ (24.2%)、中国の通販大手PDDホールディングス (10.0%)、テスラ (7.4%) に次ぐ5番目になった。
13Fに載るのは四半期末の買い持ちだけ、プットの売りは載らない
SECの説明では、13Fの対象となる米国株などを1億ドル以上運用し、その投資判断の権限を持つ機関は、四半期末から45日以内に13Fを出さなければならない。載るのは四半期末に買い持ちしている株などで、空売りは含まない。米国外の取引所だけで売買される株も載らない。いつ、いくらで売り買いしたかも書かれておらず、株数の増減から分かるのは四半期末どうしの差だけだ。
SECによると、自ら売ったオプションは13Fに載せない。プットオプション (決まった値段で株を売る権利) を売った側は、株価が下がって権利が行使されれば、その値段で株を買い取る。中国の経済メディア、界面新聞によると、段永平氏は2026年7月23日、投資家向け交流サイト「雪球」で利用者の質問に答えた。エヌビディア株の持ち高は今の規模を維持し、プットは期限が来ればまた売るという趣旨だった。プットの売りは、権利が行使されて株を買い取るまで13Fに出てこない。6月末の株数の減少が、エヌビディアへの投資そのものを縮めたことを意味するのかは、13Fからは判断できない。
2024年12月末時点の13Fは、最初に出た版と訂正版で記載が違う。2025年2月14日に提出された最初の版では、8銘柄すべてがプットオプションとして記載されていた。同じ日に訂正版が出され、その記載が外れて普通株の保有に改められた。株数は両方の版で同じで、訂正の理由は書類に書かれていない。最初の版だけを見ると、株を持つのではなく売る権利を持っていると誤解しかねない。
13Fに段永平氏の名前は無く、香港の届け出でH&Hの支配株主が分かる
H&Hの13Fの表紙で署名しているのは最高コンプライアンス責任者のエリック・フー氏で、段氏の名前は無い。一方、H&HはSECに投資顧問業者として登録している。2026年9月17日に出した登録届出書の改訂版には、会社の所有者と役員として2人が記されている。1人は2018年2月から所有者の地位にある個人で、届け出の時点で持ち分は75%以上、会社を支配する立場にある。氏名はローマ字で、姓のつづりは段氏と同じだが、名は前半の「ヨン」にあたる部分までしか書かれていない。もう1人はフー氏で、役員として載り、持ち分は5%未満だ。
香港取引所に出された大株主の届け出には、より詳しい記載がある。中国の玩具大手、泡泡瑪特 (ポップマート) の株について2026年9月5日に出された届け出では、届け出た個人のローマ字の氏名が、姓と名が段永平氏の中国語の読み (ドゥアン・ヨンピン) どおりに書かれている。この個人が99%を支配する会社としてH&Hが載り、所在地はSECの登録届出書と同じパロアルトの住所だ。H&Hを通じた持ち分は、デリバティブの分を含めてポップマートの発行済み株式の8.01%にあたる。漢字の氏名の欄は空欄で、この個人が段永平氏本人かを書類だけで確かめることはできない。
この届け出の理由は、株を買い取る義務を負うデリバティブを持つか、売るか、発行したことで持ち分が増えたことだった。書類の区分はこの3つをまとめたもので、どれにあたるかは書かれていない。プットの売りであれば、13Fには載らない取引が香港の届け出では持ち分に数えられたことになる (編集部の推定)。中国の金融情報サイト、財聯社は2024年2月、雪球の利用者の投稿を引き、H&Hを段氏が支配する投資会社と伝えた。界面新聞も2026年5月、3月末時点の13Fを、段氏が運用するH&Hの報告書として報じた。
4〜6月期はTSMC株が一覧から消え、アルファベット株も半分近く減った
6月末の13Fを3月末と比べると、減ったのはエヌビディアだけではない。台湾積体電路製造 (TSMC) の米国預託証券は2025年12月末の約122万株から2026年3月末に約15万株へ減り、6月末には一覧から消えた。同じ4〜6月期に、グーグルの親会社アルファベットの株 (議決権の無いC株) は約371万株から約197万株へ46.9%、マイクロソフトは約102万株から約75万株へ25.8%減った。アップルも6.4%減った。一方、PDDホールディングスは約1975万株から約2502万株へ26.7%増えた。2025年12月末まで載っていて3月末には無かったアリババ集団も、約30万株で再び載った。理由は13Fからは分からない。
イビデンとアドバンテストの2026年3月期の有報で、エヌビディアが最大の販売先に
H&Hがエヌビディア株を積み増した2025年10月〜2026年3月は、日本企業の多くにとって2026年3月期 (2025年4月〜26年3月) の後半にあたる。この期の有価証券報告書で、エヌビディアを主な販売先に挙げた日本の上場企業に、ICパッケージ基板のイビデンと半導体検査装置のアドバンテストがある。
イビデンの有報の「主な相手先別の販売実績」によると、2026年3月期のエヌビディア向けは約1225億円で、売上高の29.4%を占めた。2025年3月期の約751億円 (20.3%) から63.1%増え、インテル向け (約753億円、18.1%) を抜いて首位になった。有報はエヌビディア向けを基板などの電子事業に分類しており、同事業の外部顧客向け売上高 (約2433億円) の50.3% (2025年3月期は38.1%) に当たる。
アドバンテストの有報の連結財務諸表の注記によると、2026年3月期に売上高の10%以上を占めた販売先は、エヌビディアのグループ (約2437億円) とTSMC (約1249億円) の2社だった。連結売上高 (約1兆1286億円) のうち、エヌビディアのグループ向けは21.6%を占める。同じ有報の「主な相手先別の販売実績」には、エヌビディアのグループ会社1社 (エヌビディア・インターナショナル) 向けの約2283億円 (20.2%) が載っている。2025年3月期の欄には10%に満たない販売先は載らず、エヌビディアの名前も無い。2025年3月期の連結売上高 (約7797億円) の10%は約780億円で、この期のエヌビディアのグループ向けはこれに届かなかった。2026年3月期の約2437億円は、この水準の3.1倍を超える。
H&Hが株数を半分以下にした2026年4〜6月期も、2社はGPU向けなどの需要が強いとしている。イビデンの電子事業は売上高775億円、営業利益214億円で、同社は画像処理半導体 (GPU) と高性能CPUの需要が堅調だったと決算説明会資料に記した。アドバンテストでは、システム・オン・チップ (演算などの機能を1つにまとめた半導体) 向けテストシステムの売上高が2596億円となり、2025年4〜6月期の1913億円から35.7%増えた。同社はGPU向けで高水準の販売が続き、ASIC (特定の用途向けに設計した半導体) 向けも伸びたと明らかにした。エヌビディアの2026年2〜4月期決算と2社の関係は、別の記事で詳しく書いた。
H&Hの株数と2社の売上高を結びつける数字は、13Fにも2社の有報にも無い。H&Hの株数は半年で23.2倍になり、次の四半期に半分以下へ減った。その間も、エヌビディアに基板と検査装置を納める日本の2社は有報で同社を最大の販売先に挙げ、その後の四半期もGPU向けの需要が強いと示していた。13Fの株数は1つの運用会社が四半期末に買い持ちしていた株の記録で、製品の需要を測るものではない。プットの売りも載らないため、株数の減少が投資の縮小を意味するとも限らない。
※2026年10月21日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版の株数と倍率は13Fと一致しました。あわせて、2026年6月末時点の13F (8月14日提出) で株数が54.6%減ったことを加えました。H&Hを段永平氏が「管理する」と断定した記述は、13Fに同氏の名前が無く、SECの登録届出書と香港の大株主の届け出の氏名もローマ字だけで漢字の記載が無いため、「段永平氏の投資会社とされる」に改めました。かぎかっこで引いた段氏の投資哲学の言葉、「中国のバフェット」という呼び名、その考え方が変わったとする分析は、出所を確かめられないため削除しました。調査会社ジョン・ペディ・リサーチの「シェア88%」は、同社の発表資料で確かめられず、パソコン向けグラフィックスボードの集計でもあるため削除しました。保有株の評価額 (ドル建て) は外し、日本企業の社名を並べた部分は2社の有報の数字に差し替えました。
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