米ゴールドマン・サックスは10月18日、世界のサーバー市場の2028年予想を約1兆6,000億ドルへ45%引き上げた。引き上げ分のほぼすべてがAIサーバーで、AI半導体を個数でみると大半はASIC (特定用途向け半導体) だ。半導体検査装置大手のアドバンテストも7月、ASIC向けのテスター需要がGPU (画像処理半導体) 向けを上回る可能性を示していた。
ゴールドマン、サーバー市場の予想を27年は31%・28年は45%引き上げ
ゴールドマンがリポートで引き上げたのは金額でみた市場規模で、2027年の予想は従来より31%、28年は45%多い。26年は据え置いた。AIサーバーと汎用サーバーの両方の予想を引き上げ、理由には生成AI向けのインフラ投資の継続とサーバーの高性能化を挙げた。高付加価値品へのシフトとメモリー価格の上昇で、クラウド大手の設備投資が膨らむとみている。リポートをまとめたのは香港のアレン・チャン氏ら12人のアナリストで、うち1人は東京を拠点とする。
リポートの図によると、市場規模は2025年の約3,200億ドルから26年に約6,000億ドル、27年に約1兆1,100億ドル、28年に約1兆6,000億ドルへ拡大する。3年で約5倍になる計算だ (図の目盛りから読んだおおよその数字)。6月24日のリポートは2028年の市場規模を1兆1,000億ドルとしていた (中国の新浪財経と台湾の経済日報の報道)。これを1.45倍すると約1兆6,000億ドルで、今回のリポートの要約にある数字と一致する (当サイトの計算)。図では、引き上げ分は27年が約2,600億ドル、28年が約5,000億ドルで、どちらもほぼすべてがAIサーバーだ。金額では、汎用サーバーが2026年は前年比47%増、27年は15%増、28年は8%増、AIサーバーは26年が119%増、27年が123%増、28年が54%増になると見込んでいる。
引き上げの内訳は3つに分かれる。汎用サーバーは出荷台数と平均単価の両方の予想を引き上げ、金額の予想が2027年で17%、28年で11%増えた。出荷台数は2026年に前年比20%増、27年に12%増、28年に8%増を見込む。GPU72基を1つのラックに収めたラック型のAIサーバー (米エヌビディアの「NVL72」と米AMDの同型品) の出荷予想は、2027年を11万ラック、28年を16万4,000ラックと、それぞれ5%と1%引き上げた。GPUやASICを8基搭載するAIサーバーの出荷予想は、2027年を270万台、28年を330万台と、それぞれ10%と29%引き上げた。
AI半導体の需要は2028年に3,800万個、引き上げ分の大半はASIC
ゴールドマンはAIサーバーの新たな出荷予想をもとに、AI半導体の需要が2026年に1,800万個、27年に2,900万個、28年に3,800万個になると試算した。AI半導体に占めるASICの比率は、2028年に世界全体で約60%、クラウド大手向けに限ると約50%とみる。
6月24日のリポートは、10月のリポートの末尾にも関連リポートとして載っている。6月のリポートの表 (AIサーバーの台数からGPUとASICの個数を算出したもの) では、NVL72などラック型AIサーバーの出荷を2026年に5万5,000ラック、27年に10万5,000ラック、28年に16万3,000ラックと見込んでいた。今回の11万ラックと16万4,000ラックから引き上げ分を除くと約10万5,000ラックと約16万2,000ラックで、6月の表とほぼ一致する。8基搭載サーバーの330万台も29%の引き上げ分を除くと約256万台で、6月の表の255万8,000台と一致する (当サイトの計算。27年の270万台は端数を丸めた数字のため約2%の差が出る)。6月の表と10月の要約の数字を並べると、引き上げの内訳が分かる。
| 項目 (単位) | 2025年 | 2026年 | 2027年 | 2028年 |
|---|---|---|---|---|
| NVL72 (千ラック) 6月 | 19 | 55 | 105 | 163 |
| NVL72 (千ラック) 10月 | — | — | 110 | 164 |
| 8基搭載サーバー (千台) 6月 | 1,178 | 1,858 | 2,403 | 2,558 |
| 8基搭載サーバー (千台) 10月 | — | — | 2,700 | 3,300 |
| AI半導体 (千個) 6月 | 10,800 | 18,847 | 26,750 | 32,214 |
| うちGPU 6月 | 6,670 | 9,510 | 12,963 | 14,566 |
| うちASIC 6月 | 4,130 | 9,337 | 13,787 | 17,649 |
| ASIC比率 6月 | 38% | 50% | 52% | 55% |
| AI半導体 (千個) 10月 | — | 18,000 | 29,000 | 38,000 |
| ASIC比率 10月 | — | — | — | 約60% |
出所: ゴールドマン・サックスのリポート (6月24日の表、10月18日の要約)。注: 6月・10月はいずれも予想の時点。10月は要約にあるおおよその数字、「—」は要約に記載なし。
10月のAI半導体の需要予想を6月と比べると、2026年の1,800万個は6月の1,885万個とほぼ同水準だが、27年の2,900万個は約8%、28年の3,800万個は約18%、それぞれ6月の予想を上回る (当サイトの計算)。2028年の内訳をASICの比率60%で計算すると、ASICは約2,300万個となり、6月の予想 (1,765万個) を約30%上回る。GPUは約1,500万個で、6月の1,457万個とほぼ変わらない。今回の引き上げ分の大半はASICが占める (当サイトの計算。ASICの比率が数ポイント低ければGPUの引き上げ分も膨らむ)。
6月の表には、前回 (4月17日) のリポートの予想との差も載っていた。6月の時点でも、ゴールドマンは2027年のASICの予想を1,091万3,000個から1,378万7,000個へ26%引き上げていた。4月、6月、10月と、半年の間に2度続けてASICを中心に予想を引き上げたことになる。
当サイトは9月に、JPモルガンの予想をもとにASICの出荷がGPUを抜く見通しを取り上げた。JPモルガンは2027年までにASICの出荷個数がGPUを上回るとみていた。ゴールドマンの6月の表では、ASICの比率は2026年に50%とGPUにほぼ並び、27年には52%と上回る。両社が見込む逆転の時期はほぼ一致する。
トレンドフォースもサーバー市場は27年に1兆ドル超と予想、メモリー価格の上昇はメーカーの利益を圧迫
市場の拡大を見込むのはゴールドマンだけではない。台湾の調査会社トレンドフォースは10月14日、AIサーバーの出荷台数が2026年に前年比32.2%増、27年に約36%増になるとの予想を発表した。金額では、AIサーバーが2026年に約4,790億ドルでサーバー市場全体 (6,392億ドル) の約75%を占め、27年には約9,200億ドルで81%に達する。サーバー市場全体は27年に初めて1兆ドルを超えるとみる。ゴールドマンの予想 (約1兆1,100億ドル) とほぼ同水準だ。トレンドフォースは、クラウド大手9社の設備投資が2026年に前年比2.1倍の9,570億ドルに達し、27年には1兆5,000億ドルを超えると予想する。メモリーの供給不足と値上がりで、次世代のAIサーバー用ラックの平均単価は上がるとの見方も示した。
ゴールドマンが汎用サーバーの平均単価の予想を引き上げた背景にも、メモリー価格の上昇がある。汎用サーバーの2026年の金額は、6月時点の予想では前年比28%増だったが、今回は47%増に高まった。トレンドフォースは7月時点で、サーバー向けDRAMの大口取引価格が2026年7〜9月期に前期比13〜18%上昇すると予想し、9月末には10〜12月期も供給不足が続くとの見通しを示した。トレンドフォースによると、クラウド大手はAIエージェントの処理に使う汎用サーバー向けのメモリーモジュール (RDIMM) の調達を増やしている。エヌビディアも8月26日の決算説明会で、メモリー価格の高騰は想定を超えており、2027年はさらに上がるとの見方を示した。同社の5〜7月期の売上高は960億ドルで、このうちデータセンター向けが890億ドルだった。2026年11月〜27年1月期の粗利率 (売上高総利益率) は、8〜10月期の見通しの74%から71〜72%に低下する見込みだ。メモリーの値上がりはサーバー1台当たりの価格を押し上げる一方、半導体やサーバーのメーカーの利益を圧迫する。
AI半導体の需要が伸びるとの見方は、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造 (TSMC) の決算説明とも一致する。同社が10月15日に発表した7〜9月期の売上高は467億ドルで、2026年通期の売上高は前年比44%増を見込む。AI半導体の売上高は2024〜29年に年平均50%台半ばから後半の伸びになるとの見通しも示した。魏哲家董事長 (会長) 兼最高経営責任者 (CEO) は、需要は極めて強く、成長率はさらに高まる可能性が高いと述べた。同社は2026年の設備投資を600億〜640億ドルとする計画を据え置き、26〜28年の投資は過去3年を大きく上回るとした。ゴールドマンの予想をもとに計算すると、AI半導体の需要は2026〜28年に約2.1倍に増え、年平均約45%の伸びになる (当サイトの計算)。TSMCの数字は売上高で対象期間も異なるため単純には比べられないが、ゴールドマンが見込む個数の伸び率はTSMCが示した売上高の伸び率を下回る。
メモリー価格上昇の経緯は、ABF基板とメモリーの記事で詳しく取り上げている。
アドバンテストはSoC向けテスターの売上高予想を24%上方修正、ASIC向けの検査需要はGPU向けを上回る可能性も
ゴールドマンが投資判断を「買い」とする銘柄に日本企業は含まれていない。推奨する23社はすべて台湾と中国の企業で、サーバーを受託生産する鴻海 (ホンハイ) 精密工業、光通信部品の中際旭創 (イノライト)、半導体受託生産のTSMCなどが並ぶ。この推奨はゴールドマンの顧客向けの投資判断であり、当サイトの評価ではない。エヌビディアが年次報告書 (2026年1月期) で主な調達先に挙げる企業も、TSMC、韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米マイクロン・テクノロジー、鴻海、緯創資通 (ウィストロン)、光通信部品の受託製造を手がけるファブリネットで、日本企業は含まれていない。
それでも、ASICを中心にAI半導体が増えるというゴールドマンの予想に沿った動きは、日本企業の決算資料にすでに表れている。代表例がアドバンテストだ。同社は7月29日、2027年3月期のSoC (システム・オン・チップ) 向け検査装置 (テスター) の売上高予想を、4月時点の9,995億円から1兆2,435億円に24%上方修正した。前期 (2026年3月期) の実績7,674億円に比べ62%増となる計算だ。全社の通期予想も引き上げ、売上高は1兆4,200億円から1兆7,140億円に、営業利益は6,275億円から8,460億円にした。2026年4〜6月期の売上高は3,675億円で前年同期比39.3%増、営業利益は1,900億円で53.3%増だった。このうちSoC向けテスターが2,596億円、メモリー向けが480億円を占める。同社は2026年のテスター市場規模の見通しも、4月時点の109億〜122億ドルから130億〜145億ドルに引き上げた。内訳はSoC向けが105億〜115億ドル、メモリー向けが25億〜30億ドルとみている。
上方修正の理由を、同社は決算短信で「特に推論用AI半導体向けのテスト需要は、当社グループの2026年4月時点の想定を大きく上回ると見込んでいます」と説明した。決算説明会の質疑応答では、GPU、ASIC、CPUのいずれもテスター需要は非常に強いとしたうえで、「現時点ではGPU向けの市場規模が最大であるものの、将来的にはカスタムASIC向けテスタ需要がGPUと同等、あるいはそれを大きく上回る規模に成長する可能性がある」と述べた。この見方は、ゴールドマンが10月に示した、AI半導体の引き上げ分の大半をASICが占めるという予想と符合する。ただし同社は、テスター市場の拡大の大部分はCPU向けをはじめとする推論AI用途の拡大によるものだとも述べており、現時点でASIC向けが主役というわけではない。
アドバンテストはGPU向けとASIC向けの売上高を分けて開示しておらず、質疑応答でも「GPU、CPU、カスタムASICごとの寄与を明確に切り分けることは難しい」としている。ゴールドマンが予想するAI半導体の個数が同社の売上高にどう反映されるかは、公表資料からは読み取れない。同社は逆風の要因として「部材コストのインフレ圧力」、特にメモリー価格の上昇を挙げている。同社にとってメモリーの値上がりは部材のコスト増の要因だ。アドバンテストは7〜9月期決算を10月下旬に発表する予定だ。
イビデンは基板の値上がり、フジクラと古河電工は光通信部品の受注増で4〜6月期の利益が拡大
ゴールドマンの引き上げは、半導体の個数、ラックの台数、サーバー1台当たりの価格の3つの軸に分けて読める (当サイトの整理)。日本企業に当てはめると、この3つはそれぞれ別の会社の業績に表れる。
半導体の個数が増えれば、先端半導体向けのICパッケージ基板と後工程装置の需要が増える。イビデンの電子事業の2026年4〜6月期の売上高は775億円で前年同期比37.7%増、営業利益は214億円で52.4%増だった。同社は「生成AI用サーバー向け及び汎用サーバー向けの高機能ICパッケージ基板の受注が堅調」とし、質疑応答では業界全体の供給不足を背景に「基板自体の平均価格が想定以上に上昇」したと説明した。GPUと高性能CPUの需要は堅調に推移したとみており、AIサーバー向けと汎用サーバー向けに加え、スイッチIC向けの需要も拡大すると見込む。半導体ウエハーの切断・研削装置を手がけるディスコの4〜6月期の出荷額は1,359億円で22.3%増えた。売上高は1,143億円で27.1%増、営業利益は490億円で42.2%増だった。4〜9月期の出荷額は2,769億円を見込む。同社は「先端ロジックやHBMなどの高性能半導体向け需要が高水準で推移」とした。ディスコは7〜9月期決算を10月22日に発表する予定だ。
ラックの台数が増えれば、データセンター内でサーバー同士をつなぐ光通信部品の需要が増える。フジクラの情報通信事業の4〜6月期の売上高は2,644億円で83.9%増、営業利益は980億円で2.9倍だった。同社は「データセンタ向け需要の拡大を背景に、光コンポーネント製品を中心に伸長した」とし、米国以外でも新たなデータセンター案件で光通信部品を大量に受注したと説明した。2027年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比48.4%増の1兆7,550億円、営業利益が2.3倍の4,320億円だ。古河電気工業は8月6日、2027年3月期の光ソリューション事業の予想を上方修正し、売上高は2,400億円から2,650億円に、営業利益は270億円から430億円にした。同社は質疑応答で、光ファイバーの生産はほぼ能力の上限に達しており、「ボトルネックはファイバ」だと説明した。
サーバー1台当たりの価格を押し上げているのはメモリー価格の上昇だ。キオクシアの4〜6月期のSSD・ストレージの売上収益は1兆1,747億円で、26年1〜3月期の6,003億円からほぼ倍増した。同社は、生成AIに力を入れるデータセンター事業者の需要が強く、平均単価が大幅に上昇したためだと説明している。会社全体の売上収益は4〜6月期の1兆7,671億円から、7〜9月期は2兆3,900億円を見込む。キオクシアは決算を10月30日に発表する予定だ。
| 会社 | 関係する要因 | 2026年4〜6月期の実績 |
|---|---|---|
| アドバンテスト | 半導体の個数 (検査) | 全社の売上高3,675億円 (39.3%増) |
| イビデン | 半導体の個数 (基板) | 電子事業の売上高775億円 (37.7%増) |
| ディスコ | 半導体の個数 (切断・研削) | 出荷額1,359億円 (22.3%増) |
| フジクラ | ラックの台数 (光通信部品) | 情報通信事業の売上高2,644億円 (83.9%増) |
| 古河電気工業 | ラックの台数 (光ファイバー) | 光ソリューション事業の売上高600億円 (前年同期412億円) |
| キオクシア | サーバー1台当たりの価格 (メモリー) | SSD・ストレージの売上収益1兆1,747億円 (1〜3月期6,003億円) |
出所: 各社の決算短信と決算説明資料。括弧内は前年同期比の増加率 (古河電気工業は前年同期の実額、キオクシアは1〜3月期の実額)。
各社の詳しい情報は、アドバンテスト、イビデン、ディスコ、キオクシアの企業ページと、アドバンテストの銘柄ページにまとめている。ASICの仕組みは用語辞典で解説している。
ゴールドマンの引き上げの中心はASIC、アドバンテストは7月にASIC向け検査が拡大する可能性を示していた
ゴールドマンが10月に引き上げた世界のサーバー市場の2028年予想は、引き上げ分の約5,000億ドルのほぼすべてがAIサーバーだ。AI半導体の個数でみると、引き上げ分の大半はASICだ。投資判断が「買い」の銘柄に日本企業はないが、アドバンテストは7月、SoC向けテスターの売上高予想を24%上方修正し、ASIC向けの検査需要がGPU向けを上回る可能性があると説明していた。半導体の個数はイビデンとディスコ、ラックの台数はフジクラと古河電工、サーバー1台当たりの価格はキオクシアの業績に表れる。10月下旬から本格化する7〜9月期の決算発表で、AIサーバー需要の増加が各社の業績にどこまで表れているかが分かる。
個別銘柄の分析や技術面の精査 (デューデリジェンス) に関するご相談は、編集部の問い合わせ先までお寄せください。
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