国は出力2,000キロワット未満の設備を高圧の配電線につなげると定める。NTTの全額出資子会社の蓄電所は10か所中8か所がその1キロワット手前に出力を合わせ、上場企業の蓄電容量ランキングで4位に入った。次は大型の設備も加わる。
1,999キロワットという半端な数字は、偶然ではない。資源エネルギー庁の系統連系のガイドラインは、高圧の配電線につなげる設備の大きさを「原則として2,000キロワット未満」と定めている。NTTの全額出資子会社であるNTTアノードエナジーは、この上限の1キロワット手前に出力を合わせ、容量だけを変えた蓄電所を北海道から九州まで並べてきた。上場企業の蓄電所を独自に集計している個人の台帳 (蓄電池おじさん調べ) は、2026年9月22日版でこの10か所を初めてすべて稼働中に数え、NTTを51社中4位に置いた。
本稿は、同社の発表7本と、発表に載った「自社蓄電所の構築状況」の地図、国のガイドライン、同社の決算公告、NTTの有価証券報告書を2026年9月23日に確認し、同じ仕様が並ぶ理由と計画の中身、NTTの業績に対する大きさを検証した。同社の事業の概要はNTTの蓄電事業のページにまとめている。
NTTアノードエナジーの蓄電所10か所のうち8か所は、出力1,999キロワットで容量8,000〜1万キロワット時に収まる
集計者によると、NTTアノードエナジー (株主はNTT株式会社100%) は自社で開発・運用する蓄電所が全国で10システムあると公表しているのに、集計者の台帳はその大半を稼働中として拾えていなかった。今回すべてを台帳に加えた。10か所の運転開始の時期と大きさは次のとおりで、いずれも同社の発表の値で、10か所の出力を足すと18,517キロワットになる。時間は容量を出力で割った値で、満充電から出力いっぱいで放電し続けられる長さを示す。
| 蓄電所 | 運転開始 | 出力 (キロワット) | 容量 (キロワット時) | 時間 |
|---|---|---|---|---|
| 香春町 (田川蓄電所) | 2023年7月 | 1,400 | 4,200 | 3.0 |
| 埼玉和光 | 2025年1月 | 1,124 | 5,304 | 4.7 |
| 福岡若松 | 2025年4月3日 | 1,999 | 8,226 | 4.1 |
| 埼玉三芳 | 2025年4月 | 1,999 | 9,992 | 5.0 |
| 嬬恋 | 2025年5月15日 | 2,000 | 9,300 | 4.65 |
| 埼玉鶴ヶ島 | 2025年5月 | 1,999 | 9,992 | 5.0 |
| 石川津幡 | 2025年9月 | 1,999 | 7,992 | 4.0 |
| 北海道函館 | 2026年2月 | 1,999 | 8,226 | 4.1 |
| 香川観音寺 | 2026年3月 | 1,999 | 8,226 | 4.1 |
| 福岡門司 | 2026年3月 | 1,999 | 9,992 | 5.0 |
香春町と埼玉和光を除く8か所は、出力が1,999キロワットか、嬬恋の発表にある2.0メガワットで揃い、容量は7,992キロワット時から9,992キロワット時の間に収まる。容量の違いは、出力を変えずに蓄電池の量を4時間分から5時間分の範囲で変えた結果である。福岡若松の8,226キロワット時は、パワーエックスが岡山県玉野市の工場で造る蓄電池「Mega Power」(1台2,742キロワット時) 3台分に等しい。電池はリン酸鉄リチウムイオン電池で、設計と施工は西部電気工業が担った。北海道函館と香川観音寺も同じ8,226キロワット時だが、発表は製品名を記していない。
同社は8,226キロワット時を「一般家庭約720世帯分の1日の電力使用量に相当」と説明する。発表の世帯数で容量を割ると、1世帯1日あたり約11.4キロワット時になり、他の蓄電所の説明 (7,992キロワット時で約700世帯、9,992キロワット時で約870世帯、5,304キロワット時で約460世帯) も同じ前提で計算が合う。集計者は「1カ所ずつは大きくない蓄電所に見える」と書いている。
最初の香春町は性格が違う。同社は2023年7月19日、九州電力、三菱商事との連名で、福岡県田川郡香春町の出力1.4メガワット、容量4.2メガワット時の蓄電システムの「本格的な運用を開始」したと発表した。太陽光発電の出力制御を減らす検証が目的で、試験運用中の2023年4〜6月に47回、累計26万キロワット時の充放電をした。国と自治体の補助も入っている。埼玉三芳と埼玉鶴ヶ島は東京都の「令和5年度 系統用大規模蓄電池導入促進事業」に、石川津幡は資源エネルギー庁の「令和5年度 系統用蓄電池等導入支援事業」に採択された。
1,999キロワットは、国が高圧の配電線につなげる上限と定める2,000キロワットの1キロワット手前である
発電所や蓄電所を送電網につなぐことを系統連系という。資源エネルギー庁の「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」(令和6年12月1日改定) は、つなぐ先の区分を設備の大きさで分けている。一設置者当たりの電力容量が原則50キロワット未満なら低圧の配電線、原則2,000キロワット未満なら高圧の配電線、それ以上は特別高圧の電線路で、区分が上がるほど満たすべき技術要件も変わる。
このガイドラインが対象とする「発電等設備」は、発電設備と蓄電設備を指す。2022年5月の法改正で、系統用の大型蓄電設備が電気事業法上の発電事業に位置づけられたためである。設備の大きさは受電する電力の容量と出力容量のいずれか大きい方で測り、蓄電池のように直流を交流に変える電力変換装置 (パワーコンディショナー) を使う設備では、その装置の定格出力が出力容量になる。NTTアノードエナジーの発表が出力の欄にこの装置の出力 (1,999キロワット) を書くのはこのためで、2,000キロワットに1キロワット届かない値に合わせれば、設備は高圧の区分にとどまる。
ガイドラインが区分に使うのは出力 (キロワット) だけで、容量 (キロワット時) には上限を設けていない。出力を1,999キロワットに固定したまま電池を足せば、区分をまたがずに1か所で扱える電力量を増やせる。10か所の容量が4時間分から5時間分に散らばっているのは、この余地の中で電池の量を決めた結果とみられる。
嬬恋の出力は発表で「2.0メガワット」と書かれている。2,000キロワットちょうどなら特別高圧の区分に入るが、NTTアノードエナジーは後述の地図で嬬恋を高圧の10システムに含めている。記者の見立てでは、2.0メガワットは2,000キロワット未満の値を小数1桁に丸めた表記で、10か所のうち8か所が同じ上限の手前に揃えた設備である。
会社の数え方は発表同士で矛盾がなく、共同出資の嬬恋も10システムに入る
集計者は、システム数が会社の発表同士で辻褄が合っていると指摘する。石川津幡の2025年9月1日の発表は、同蓄電所を「7システム目」とした。集計者が拾えた発表で津幡より前に運転を始めたのは、香春町、埼玉和光、福岡若松、埼玉三芳、嬬恋、埼玉鶴ヶ島の6か所である。北海道函館の2026年3月2日の発表は「全国で8システム」、香川観音寺と福岡門司の2026年4月1日の発表は「全国で10システム」とした。
嬬恋蓄電所は、東京電力ホールディングスとNTTアノードエナジーが2023年11月28日に50%ずつ出資して設立した嬬恋蓄電所合同会社の設備で、2025年5月15日に商業運転を始めた。容量市場には2027年度から参加する予定である。集計者は、嬬恋を入れないと津幡が7システム目にならないことから、会社は共同出資の嬬恋も自社の10に数えていると推測した。2026年4月1日の発表に載った同社の地図は、嬬恋村の地点に「他社との共同運営」の注記を付けて運用中の10システムに含めており、この推測を裏づける。
同じ地図は、運用中の10システムの容量を81メガワット時と記す。発表の値を足した81,450キロワット時と一致し、集計者がNTTに計上した81.45メガワット時とも合う。一方、2025年9月1日の発表の地図は、運用中を「7システム・58メガワット時」としていた。津幡までの7か所の発表値を足すと55,006キロワット時で、地図との間に3.0メガワット時の差がある。この差の理由は発表からは確認できなかった。
計画の23システムは、高圧21か所の180メガワット時と、2028年度の特別高圧2か所の160メガワット時からなる
集計者の見立ては、NTTは大きな1か所で勝負するより、同じくらいの大きさの蓄電所を全国に並べて増やしていく会社だというものだ。同社は2028年度までに23システムの運用を始める予定と書いており、集計者は「1カ所ずつの発表は小さなニュースでも、10カ所を足し上げれば話は別」とみる。
23システムの中身は、同社の地図に書かれている。見出しは「系統用蓄電所 (高圧) 計180メガワット時」と「系統用蓄電所 (特高) 計160メガワット時」の2つである。高圧は運用中の10システム・81メガワット時に、2026年度に運用を始める予定の11システム・99メガワット時を足したもので、予定地は北海道士別市、青森県三沢市、秋田県能代市、石川県能美市、滋賀県米原市、広島県三次市と庄原市、香川県高松市、和歌山県海南市、三重県松阪市、静岡県島田市である。11か所の平均は9.0メガワット時で、運用中の設備と同じ大きさが続く。
特別高圧の2システムは北海道苫小牧市と栃木県那須塩原市で、運用開始は2028年度の予定である。2か所で160メガワット時、1か所平均で80メガワット時となり、高圧の新設分の平均の約9倍にあたる。2か所だけで高圧21か所の180メガワット時の89%に達する。2025年9月の地図にも同じ「特高 計160メガワット時」の枠があり、大型の計画は少なくとも1年前から公表されていた。
計画どおりなら、同社の系統用蓄電所は2028年度に23システム・340メガワット時になる。現在の上場企業ランキングの首位 (113メガワット時) の3.0倍である。記者の見立てでは、集計者の読みは2026年度までの高圧の設備には当てはまるが、2028年度の計画では大型の2か所が計画容量の半分近くを占めており、同じ大きさを並べる段階から、特別高圧の大型設備へ移る段階に入る。
上場企業51社の蓄電容量ランキングでNTTが4位に入るのは、稼働件数が10件と他社を大きく上回るからだ
集計者の台帳は、電力会社の送電網に直接つないだ大型の蓄電池 (系統用蓄電所) のうち、稼働中の設備に一次資料で名前が出る上場企業を、蓄電容量の多い順に並べたものである。家庭用と自家消費用は入れない。共同で出資した蓄電所は出資比率で割らず、全量をそれぞれの会社に入れる。設計施工や機器の供給だけの会社は計上しない。
稼働中とは、商業運転か電力市場での取引の開始を一次資料で確認できたもので、受電開始や系統連系だけの設備は含まない。例外は*印の会社で、事業者が事前に告知した運転開始日で数えており、開始後の「開始した」という発表は確認できていない。容量が非公表か、一次資料で確認できない設備は合算に入れず、「+非公表分」「容量非公表」と表記する。「約」は公表値が概数であることを示す。件数は事業案件の単位で、複数の敷地を束ねた案件も1件と数え、対象は送電網に直接つないだ大型の蓄電池に限る。集計者は各設備の出典を、NTTの5本の発表 (2025年4月3日、5月15日、5月23日、9月1日、2026年4月1日) を含む各社の開示と報道として15群に分けて挙げている。
2026年9月22日時点の51社のうち、首位のオリックスと関西電力は稼働1件ずつの113メガワット時、3位のENEOSホールディングスも1件で88メガワット時である。4位のNTTは10件で81.45メガワット時、5位のサーラコーポレーションは2件で77.12メガワット時が続く。NTT以外で稼働件数が最も多いのは4件 (ヒューリック、みずほリース、ミツウロコグループホールディングス) で、NTTの1件あたりの平均は8.145メガワット時にとどまる。上位の顔ぶれは1か所の大型設備を持つ会社が占め、NTTだけが件数で順位を上げている。
集計の決まりは順位を左右する。51社の合算を足すと1,409.722メガワット時、稼働件数を足すと90件になるが、共同事業の設備は出資者の数だけ重ねて数えるため、実在する設備の容量と数はこれより少ない。NTTの81.45メガワット時には嬬恋の全量9.3メガワット時が入っており、30位の東京電力ホールディングスの9.3メガワット時も同じ嬬恋の全量である。嬬恋を出資比率50%で割るとNTTは76.8メガワット時となり、サーラコーポレーションの77.12メガワット時を下回って順位が入れ替わる。設備ごとの所在地や機器、運転の段階は、本誌の系統用蓄電所の設備台帳と上場企業ランキングで1件ずつ確認できる。
稼働中の10か所の年間売上は推定20億〜30億円で、NTTの連結営業収益の0.02%程度にとどまる
蓄電所1か所がどれだけ売上を生むかは、同じ高圧の設備を持つ上場企業の開示が手がかりになる。JALCOホールディングスは2026年8月31日、島根県雲南市の高圧系統用蓄電所 (8.14メガワット時) を取得したと開示し、需給調整市場に参入した後に通期で稼働した場合の売上高を2億円〜3億円と想定した。需給調整市場とは、送配電会社が電気の需要と供給を一致させるための調整力を調達する市場で、蓄電所の主な収入源になる。同社の参入は2027年8月の予定である。
この金額を容量に比例させて当てはめると、NTTアノードエナジーの10か所 (81,450キロワット時) の年間売上は20億〜30億円、2026年度に予定する高圧21か所 (180メガワット時) で44億〜66億円になる。いずれも本誌の推定で、実際の売上は市場の価格と上限価格、落札の状況、運用の方針で変わる。需給調整市場の上限価格は2026年に引き下げられており、その経緯は41社版のランキング記事で扱った。
NTTアノードエナジーの決算公告と比べると、推定売上の大きさが分かる。
| 決算 (億円) | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,362.8 | 1,345.5 |
| 営業損益 | −69.6 | −50.7 |
| 当期純損益 | −52.5 | 2.1 |
| 機械及び装置 | 429.1 | 448.2 |
2026年3月期の売上高は1,345億5,208万円、営業損失は50億6,625万円、当期純利益は2億1,313万円で、前期 (売上高1,362億8,298万円、営業損失69億6,063万円、当期純損失52億5,151万円) から損益が改善した。蓄電所の推定売上20億〜30億円は同社の売上高の1.5〜2.2%にあたる。同社は電力小売りや再生可能エネルギーの発電も手がけており、蓄電所はその一部にとどまる。
親会社のNTTから見ると、比率はさらに小さい。NTTの2026年3月期の有価証券報告書によると、連結の営業収益は14兆4,091億円 (国際会計基準) で、NTTアノードエナジーは「その他 (不動産、エネルギー等)」に属する資本金79億2,392万円、議決権100%の連結子会社である。同社の売上高は連結の営業収益の0.93%、蓄電所の推定売上は0.014〜0.021%にあたる。有価証券報告書の本文を全文検索すると、「蓄電所」「蓄電池」「系統用」はいずれも1回も出てこなかった。
記者の見立てでは、NTT株を持つ投資家にとって、蓄電所の10か所はランキングの順位ほどには業績を動かさない。集計者が言う「10カ所を足し上げれば話は別」は、蓄電所を持つ上場企業の中での話であって、NTTの連結業績の中での話ではない。蓄電所の拡大が数字に表れるのは、NTTアノードエナジーの決算公告の機械及び装置 (1年で429億1,326万円から448億1,932万円に増えた) と、2028年度の特別高圧2か所の進み具合である。
NTTアノードエナジーは、国が高圧の配電線につなげる上限の1キロワット手前に出力を揃え、容量だけを変えた蓄電所を10か所まで増やし、上場企業のランキングで4位に入った。同じ仕様の設備は2026年度に21か所となり、2028年度には1か所80メガワット時の特別高圧2か所が加わって計画の340メガワット時に達する。それでも稼働中の10か所が生む売上は推定で年20億〜30億円で、NTTの連結営業収益に対しては0.02%程度の規模である。
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