外債で集める100億ドルを、スターゲート計画の建設単価で設備の量に直すと、17万5,000〜20万キロワット分にとどまる。これまでの出資646億ドルを全部足しても、両社が掲げた10ギガワットの1割強である。
ソフトバンクグループ(SBG)は、100億ドル(約1兆5700億円)を超える外貨建て社債を発行する準備を始めた。ドルとユーロで総額1兆7500億円規模を集め、米オープンAIへの追加出資の払い込みなどに充てる。9月21日に分かった。資金の流れだけを見れば、AIの覇権争いの中心に日本の資金が流れ込む構図である。本稿は、その資金がオープンAIの計算基盤に置き直すとどれだけの量になるのかを、両社の開示から数える。
第3弾の100億ドルは、つなぎ融資ではなく外債で払い込まれる
条件概要書(タームシート)によると、ドル建ては3.5年債、5.5年債、7.5年債の3本で総額100億ドル、ユーロ建ては4年債と6年債の2本で総額10億ユーロ(約1800億円)を出す。発行価格は24日に決め、29日に決済する見通しである。欧州中央銀行の9月18日の参照相場(1ドル157.89円、1ユーロ180.94円)で円に直すと、ドル建てが1兆5,789億円、ユーロ建てが1,809億円で、合計1兆7,598億円になる。報道の数字と合う。
図1 — 追加出資300億ドルの払い込みと、つなぎ融資から社債への入れ替え
発端は2月の契約である。SBGは2026年2月27日、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2を通じてオープンAIに300億ドル(4兆6,743億円)を追加出資する最終契約を結んだと開示した。完了すると累計出資額は646億ドル、持分比率は約13%になる。100億ドルずつ3回に分けて払い込み、4月1日に第1弾(1兆5,887億円)、7月1日に第2弾(1兆6,273億円)を実行した。第3弾は10月1日に払い込む。7月の開示は、オープンAIの株式の上場が合理的に見込まれる場合には払い込みが前倒しになりうると書いている。
払い込みの資金は当初、借りてまかなった。SBGは3月27日、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースから総額400億ドル(6兆3,840億円)を上限に借りられるつなぎ融資(ブリッジローン)の契約を結んだ。担保はなく、最終返済日は2027年3月25日である。第1弾と第2弾の日には、それぞれ100億ドルをこの枠から借り入れた。報道によると、SBGは枠のうち300億ドルを使い、第1弾と第2弾の投資などに充てた。
9月9日、SBGはつなぎ融資の残高259億ドル(約3兆9,819億円)を15日付で全額返すと開示した。借りた300億ドルとの差の41億ドルは、それまでに返していた分である。4月に出した外貨建て社債の資金使途には、つなぎ融資の一部返済が入っている。報道は、返済の原資をマージンローン(保有資産を担保にした借り入れ)や別の銀行ローンと伝えたが、SBGの9月9日の開示に原資の記載はない。条件概要書によると、SBGは残る100億ドルの枠を使わない。第3弾は借り直しではなく、社債で払い込まれる。
オープンAIへの100億ドルは、スターゲートの単価で0.2ギガワット分の計算基盤にあたる
資金を計算基盤の量に置き直すには、1ギガワット(100万キロワット)あたりの建設費が要る。ここではオープンAI自身の数字を使う。オープンAI、オラクル、ソフトバンクは2025年1月、米国のAI向けデータセンター計画「スターゲート」に総額5,000億ドル・10ギガワットの投資を約束した。オープンAIは同年9月23日、新たな5拠点を加えて計画容量が7ギガワット近くになり、今後3年間の投資額は4,000億ドルを超えると発表している。
2つの数字から1ギガワットあたりの投資額を出すと、5,000億ドルを10ギガワットで割って500億ドル、4,000億ドルを7ギガワットで割って571億ドルになる。同じ会社が8か月の間に出した2つの数字が、1割強の幅に収まっている。
図2 — 出資額をスターゲートの1ギガワットあたり投資額で割った容量
この単価で割ると、外債で払い込む第3弾の100億ドルは0.175〜0.2ギガワット、つまり17万5,000〜20万キロワット分にあたる。追加出資の300億ドル全体でも0.53〜0.6ギガワットである。オープンAIの発表によると、ソフトバンクと組んだオハイオ州ローズタウンとテキサス州ミラム郡の2拠点は、18か月で最大1.5ギガワットまで広げられる。第3弾の100億ドルは、その2拠点だけでも12〜13%にしかならない。
置き直した量がどんな設備かは、同じ発表から分かる。テキサス州アビリーンの旗艦拠点では、オラクルが2025年6月にエヌビディアの GB200 を積んだラックの納入を始め、オープンAIの学習と推論に使い始めた。オープンAIが言う計算基盤とは、この種のラックと、それを冷やし電気を送る建屋と送電設備の合計である。出資金はオープンAIの資本になるもので、建設費にそのまま回るわけではない。本稿の換算は、同じ単価で量の見当を付けるための置き直しである(記者の換算)。
累計646億ドルでも、10ギガワット計画の1割強にとどまる
SBGの累計出資646億ドルを同じ単価で割ると、1.13〜1.29ギガワットになる。スターゲートが約束した10ギガワットの11〜13%である。
この比率は、SBGが開示したオープンAIの持分比率約13%とほぼ同じ大きさになる。日本の資金がAIの中心に流れ込むという見立ては当たっているが、流れ込んだ量を計算基盤に置き直すと、大きさは1割強である。
計算基盤の量は、AIの作り方そのものを左右する。モデルをどれだけ大きく学習させ、どれだけの利用者に推論を返せるかは、手元にある計算基盤で決まる。資金の流れが変わると知能の育ち方も変わるという問題提起は、ギガワットの単位で読むとこの関係を指している(記者の見立て)。
その1割強を、SBGはダブルBプラスの格付けで借りた資金でまかなう
今回の外債は、S&Pグローバル・レーティングとフィッチ・レーティングスから「ダブルBプラス」を取得する予定である。投資適格の下限より1段低い格付けになる。
利率は24日に決まるため、まだ分からない(未取得)。手がかりはSBGが4月16日に条件を決めた外貨建て社債である。ドル建ては3.5年の4億ドルが年7.625%、5.5年の6億ドルが年8.250%、10年の5億ドルが年8.500%だった。ユーロ建ては4年の7億ユーロが年6.375%、6年の6億ユーロが年7.000%、8年の4.5億ユーロが年7.375%で、S&Pの格付けは同じBB+だった。今回のドル建て100億ドルは、4月のドル建て合計15億ドルの6.7倍の規模になる。
| 4月16日に決まった外貨建て社債 | 発行額 | 利率 |
|---|---|---|
| ドル建て 3.5年 | 4億ドル | 7.625% |
| ドル建て 5.5年 | 6億ドル | 8.250% |
| ドル建て 10年 | 5億ドル | 8.500% |
| ユーロ建て 4年 | 7億ユーロ | 6.375% |
| ユーロ建て 6年 | 6億ユーロ | 7.000% |
| ユーロ建て 8年 | 4.5億ユーロ | 7.375% |
4月と同じ年7.625〜8.500%が付けば、ドル建て100億ドルの利払いは年7億6,250万〜8億5,000万ドル、9月18日の相場で約1,204億〜1,342億円になる(推定)。
同じ会社でも、国内では格付けが違う。SBGが9月17日に払い込みを受けた第70回無担保普通社債は1兆円、7年、年4.75%で、日本格付研究所の格付けは A である。ただし資金使途は国内社債の償還とABBのロボット事業の買収の一部で、オープンAI向けではない。ムーディーズの格付けについては、SBGは2020年3月25日に依頼を取り下げており、同社の公表は勝手格付けだと8月28日に抗議している。
SBGは2月の開示で、LTV(調整後の純有利子負債を保有株式の価値で割った比率)を平時は25%未満、異常時でも35%を上限に管理する財務方針は変えないとした。オープンAIへの出資は保有株式の価値を押し上げ、社債は純有利子負債を押し上げる。両方が同時に動くので、この比率がどこに落ち着くかは、次の決算の開示で確かめるしかない。
日本の資金が賄うのはスターゲート計画の1割強で、その資金は年8%前後の借金である
オープンAIへの第3弾100億ドルは、外債で払い込まれる。その金額を、オープンAIが示したスターゲートの単価で計算基盤に置き直すと0.2ギガワットに届かず、SBGの累計646億ドルでも10ギガワット計画の1割強である。AIの中心に流れ込む日本の資金は、計算基盤の1割強を、ダブルBプラスの格付けで年8%前後の利率が付く借金として賄っている。
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