外債で集めた100億ドルを、スターゲート計画の建設単価で設備の量に直すと、17万5,000〜20万キロワット分にとどまる。これまでの出資646億ドルを全部足しても、両社が掲げた10ギガワットの1割強である。

ソフトバンクグループ(SBG)は9月24日、ドルとユーロの外貨建て社債の発行条件を決めた。総額は約111億ドル相当(約1兆7,632億円)で、資金使途は米オープンAIへの追加出資の払い込みと一般事業資金である。10月1日には、追加出資の第3弾100億ドルをこの資金で実行したと開示した。資金の流れだけを見れば、AIの覇権争いの中心に日本企業の資金が流れ込む構図である。本稿は、その資金をオープンAIの計算基盤に置き直すとどれだけの量になるのかを、両社の開示から数える。

第3弾の100億ドルは、つなぎ融資ではなく外債で払い込まれた

SBGの9月24日の開示によると、ドル建ては3.5年債、5.5年債、7.5年債の3本で総額100億ドル、ユーロ建ては4年債と6年債の2本で総額10億ユーロである。払込期日は9月29日の予定とした。同社の換算(1ドル158.30円、1ユーロ180.19円)では、ドル建てが約1兆5,830億円、ユーロ建てが約1,802億円で、合計は約1兆7,632億円になる。9月21日に報じられた条件概要書(タームシート)から、本数と総額に変更はない。当時の報道は、ドル建てを約1兆5,700億円、ユーロ建てを約1,800億円、総額を1兆7,500億円規模と伝えていた。

300億ドルの出資と資金の出どころ
300億ドルの出資と資金の出どころ

図1 — 追加出資300億ドルの払い込みと、つなぎ融資から社債への入れ替え

発端は2月の契約である。SBGは2026年2月27日、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2を通じてオープンAIに300億ドル(4兆6,743億円)を追加出資する最終契約を結んだと開示した。100億ドルずつ3回に分けて払い込み、4月1日に第1弾(1兆5,887億円)、7月1日に第2弾(1兆6,273億円)、10月1日に第3弾(1兆5,796億円)を実行した。これで追加出資は完了し、累計出資額は646億ドル、持分比率は約13%になった。

払い込みの資金は当初、借りてまかなった。SBGは3月27日、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースから総額400億ドル(6兆3,840億円)を上限に借りられるつなぎ融資(ブリッジローン)の契約を結んだ。担保はなく、最終返済日は2027年3月25日である。第1弾と第2弾の日には、それぞれ100億ドルをこの枠から借り入れた。報道によると、SBGは枠のうち300億ドルを使い、第1弾と第2弾の投資などに充てた。

9月9日、SBGはつなぎ融資の残高259億ドル(約3兆9,819億円)を15日付で全額返すと開示した。借りた300億ドルとの差の41億ドルは、それまでに返していた分である。4月に出した外貨建て社債の資金使途には、つなぎ融資の一部返済が入っている。報道は、返済の原資をマージンローン(保有資産を担保にした借り入れ)や別の銀行ローンと伝えたが、SBGの9月9日の開示に原資の記載はない。SBGは残る100億ドルの借入枠を9月30日付で解約した。借り入れた分は9月15日に返済を終えており、つなぎ融資はこれで完済となった。SBGは第3弾につなぎ融資を使わず、社債で調達した資金を充てた。

オープンAIへの100億ドルは、スターゲートの単価で0.2ギガワット分の計算基盤にあたる

資金を計算基盤の量に置き直すには、1ギガワット(100万キロワット)あたりの建設費が要る。ここではオープンAI自身の数字を使う。オープンAI、オラクル、ソフトバンクは2025年1月、米国のAI向けデータセンター計画「スターゲート」に総額5,000億ドル・10ギガワットの投資を約束した。オープンAIは同年9月23日、新たな5拠点を加えて計画容量が7ギガワット近くになり、今後3年間の投資額は4,000億ドルを超えると発表している。

2つの数字から1ギガワットあたりの投資額を出すと、5,000億ドルを10ギガワットで割って500億ドル、4,000億ドルを7ギガワットで割って571億ドルになる。同じ会社が8か月の間に出した2つの数字が、1割強の幅に収まっている。

出資額を計算基盤の容量に換算
出資額を計算基盤の容量に換算

図2 — 出資額をスターゲートの1ギガワットあたり投資額で割った容量

この単価で割ると、外債で払い込んだ第3弾の100億ドルは0.175〜0.2ギガワット、つまり17万5,000〜20万キロワット分にあたる。追加出資の300億ドル全体でも0.53〜0.6ギガワットである。オープンAIの発表によると、ソフトバンクと組んだオハイオ州ローズタウンとテキサス州ミラム郡の2拠点は、18か月で最大1.5ギガワットまで広げられる。第3弾の100億ドルは、その2拠点だけでも12〜13%にしかならない。

置き直した量がどんな設備かは、同じ発表から分かる。テキサス州アビリーンの旗艦拠点では、オラクルが2025年6月にエヌビディアの GB200 を積んだラックの納入を始め、オープンAIの学習と推論に使い始めた。オープンAIが言う計算基盤とは、この種のラックと、それを冷やし電気を送る建屋と送電設備の合計である。出資金はオープンAIの資本になるもので、建設費にそのまま回るわけではない。本稿の換算は、同じ単価で量の見当を付けるための置き直しである(記者の換算)。

累計646億ドルでも、10ギガワット計画の1割強にとどまる

SBGの累計出資646億ドルを同じ単価で割ると、1.13〜1.29ギガワットになる。スターゲートが約束した10ギガワットの11〜13%である。

この比率は、SBGが開示したオープンAIの持分比率約13%とほぼ同じ大きさになる。日本企業の資金がAIの中心に流れ込むという見立ては当たっているが、流れ込んだ量を計算基盤に置き直すと、大きさは1割強である。

計算基盤の量は、AIの作り方そのものを左右する。モデルをどれだけ大きく学習させ、どれだけの利用者に推論を返せるかは、手元にある計算基盤で決まる。資金の流れが変わると知能の育ち方も変わるという問題提起は、ギガワットの単位で読むとこの関係を指している(記者の見立て)。

第3弾に充てた外債はダブルBプラス、ドル建ての利率は年8.625〜9.750%

今回の外債は、S&Pグローバル・レーティングとフィッチ・レーティングスから「ダブルBプラス」を取得した。投資適格の下限より1段低い格付けである。募集は日本を除く海外市場で行い、担保も保証も付けていない。募集の相手は海外の投資家で、SBGは集めた資金のうち100億ドルを第3弾の出資に充てた。

利率は9月24日に決まった。ドル建ては3.5年の10億ドルが年8.625%、5.5年の45億ドルが年9.250%、7.5年の45億ドルが年9.750%である。ユーロ建ては4年の5億ユーロが年7.125%、6年の5億ユーロが年8.000%だった。

9月24日の外貨建て社債発行額利率4月16日の同年限債の利率
ドル建て 3.5年10億ドル8.625%7.625%
ドル建て 5.5年45億ドル9.250%8.250%
ドル建て 7.5年45億ドル9.750%発行なし
ユーロ建て 4年5億ユーロ7.125%6.375%
ユーロ建て 6年5億ユーロ8.000%7.000%

SBGは4月16日にも外貨建て社債の条件を決めており、S&Pの格付けは同じダブルBプラスだった。同じ年限で比べると、今回の利率は4月より、ドル建ては3.5年と5.5年がともに1ポイント、ユーロ建ては4年が0.75ポイント、6年が1ポイント高い。4月はこのほかにドル建ての10年債5億ドル(年8.500%)とユーロ建ての8年債4.5億ユーロ(年7.375%)も出した。4月のドル建ては合計15億ドルで、今回の100億ドルはその6.7倍の規模である。

ドル建て100億ドルの利払いは年9億4,125万ドル、同社の換算レートで約1,490億円になる。発行額で加重平均した利率は年9.41%である(いずれも記者の計算)。

同じ会社でも、国内では格付けが違う。SBGが9月17日に払い込みを受けた第70回無担保普通社債は1兆円、7年、年4.75%で、日本格付研究所の格付けは A である。ただし資金使途は国内社債の償還とABBのロボット事業の買収の一部で、オープンAI向けではない。ムーディーズの格付けについては、SBGは2020年3月25日に依頼を取り下げており、ムーディーズが公表した格付けは勝手格付けだと8月28日に抗議している。

SBGは2月の開示で、LTV(調整後の純有利子負債を保有株式の価値で割った比率)を平時は25%未満、異常時でも35%を上限に管理する財務方針は変えないとした。オープンAIへの出資は保有株式の価値を押し上げ、社債は純有利子負債を押し上げる。両方が同時に動くので、この比率がどこに落ち着くかは、次の決算の開示で確かめるしかない。

SBGの出資はスターゲート計画の1割強、第3弾に充てた外債の利率は平均で年9%台

オープンAIへの第3弾100億ドルは、外債で払い込まれた。その金額を、オープンAIが示したスターゲートの単価で計算基盤に置き直すと0.2ギガワットに届かず、SBGの累計646億ドルでも10ギガワット計画の1割強である。第3弾には、海外市場で募集したダブルBプラスの格付けの外債の資金が充てられた。ドル建て100億ドルの利率は、発行額で加重平均すると年9.41%である。

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