首都電力取引センターによると、2026年1〜4月に北京で直接取引された電気のうち、風力や太陽光などが63.6%を占め、取引量で初めて火力を上回った。北京が買ったグリーン電力は99.97%が新疆など14の省・自治区から届いた。

北京の電力取引機関である首都電力取引センターが2026年5月15日に明らかにし、新華社や人民日報、中国中央テレビが伝えた。ただ、発表の数字を確かめると、逆転したのは北京で使う電気全体ではなく、電力市場の直接取引の中での話だ。しかもそのグリーン電力のほぼ全量は、北京の外から送電線で運ばれてきた電気だった。遠くの風力や太陽光の電気を送電線で首都に集める中国と、九州で余った太陽光の電気を本州へ送り切れずに発電を抑えている日本は対照的だ。

火力と比べた範囲は北京の電力消費全体ではなく、直接取引の中だけ

首都電力取引センターの発表によると、北京で2026年1〜4月に直接取引されたグリーン電力は188億キロワット時で、前年同期から82.5%増えた。直接取引とは、発電会社と、工場などの大口需要家や小売電気事業者が、取引機関を通じて量と価格を決めて電気を売買する仕組みである。グリーン電力がこの直接取引全体に占める割合は63.6%で、取引の規模が初めて火力を上回ったという。

割合から逆算すると、直接取引全体は約295億キロワット時、グリーン電力以外の電気は約107億キロワット時になる。前年同期のグリーン電力は約103億キロワット時だった計算で、1年で約85億キロワット時増えた。火力の取引量そのものの数字は発表にない。グリーン電力以外の約107億キロワット時がすべて火力だとしても、火力はグリーン電力の6割に満たない。

同センターは、1〜4月の取引で二酸化炭素の排出を約1500万トン減らしたとも説明した。188億キロワット時で割ると、1キロワット時あたり約0.8キログラムになる。中国生態環境部などが公表した2024年の全国平均の排出係数は1キロワット時あたり0.5777キログラムで、発電所の運転だけでなく燃料の調達から送配電まで含めた、いわゆるカーボンフットプリントの値 (二酸化炭素換算) である。同センターの数字はこの係数より約4割高く、どの係数を使ったかは発表に書かれていない。

発表の「火力」は石炭火力に限らず、北京市内の発電はガス火力が担う

発表の原文は、比べた相手を「火電」と書いている。火電はガス火力も含む火力発電全体を指し、石炭火力 (煤電) とは別の語である。

北京は市内の石炭火力発電所を全面的に止め、代わりに電気と熱を供給するガス火力発電所 (熱電併給) を4か所に整備した。人民日報社の中国能源報によると、市内に残っていた中国華能集団の北京の発電所は、2017年11月にガスタービン2基を備えた第3期の設備を稼働させ、第1期の石炭火力設備は停止して予備に回した。北京の市場で取引される火力の電気のうち、北京市外の電力網から送られる石炭火力の電気がどれだけあるかは、発表からは分からない。発表が裏づけるのは「直接取引でグリーン電力の取引量が火力を上回った」ことまでで、「グリーン電力が石炭火力を逆転した」とは言えない。

北京のグリーン電力はほぼ全量が14の省・自治区から送電線で届く

北京が市場で買ったグリーン電力のうち、北京市外との取引は99.97%を占めた。電源は中国北西部・華北・東北部の風力と太陽光で、新疆地区、チベット自治区、山西省、吉林省など14の省・自治区から送られてきた。2026年3月には、隣の河北省の石家荘・保定・衡水・滄州にある再生可能エネルギーの発電事業者19社の電気が、初めて北京に供給された。この取引で送られた太陽光と風力の電気は計1919万キロワット時で、北京の17の需要家が買った。

同センターは取引の手続きも変えた。王立副総経理 (副社長) によると、企業の需要に合わせて取引の間隔を大幅に縮め、複数年の契約は月ごとに、省をまたぐ取引は長くても10日に1回、北京・天津・河北北部を結ぶ電力網の中の取引は週ごとに手続きできるようにした。企業は必要なグリーン電力を、以前より早く買えるようになったという。北京は2026年に北京市外から受け入れるグリーン電力を450億キロワット時にする計画で、1〜4月の188億キロワット時はその41.8%にあたる。ただし、この450億キロワット時が市場取引以外の電気を含むかどうかは示されていない。

送り元を含む中国全体でも、風力と太陽光の設備が増えている。2026年4月末の全国の発電設備容量は39.9億キロワットで、前年同月末より14.2%多い。太陽光が12.5億キロワット (26.2%増)、風力が6.6億キロワット (22.0%増) で、合わせて47.9%を占める。

全国のグリーン電力取引は3.2%増、北京の82.5%増とは数字が合わない

北京の伸びを全国の統計と並べると、食い違いが出る。中国の国家エネルギー局によると、2026年1〜4月の全国の電力市場の取引量は2兆4307億キロワット時で、前年同期比25.6%増えた。省をまたぐ取引は4851億キロワット時で12.2%増だった。編集部の計算では、市場の取引量は同じ期間の中国全体の電力消費量 (3兆3345億キロワット時、5.4%増) の72.9%にあたる。同局は1〜4月のこの割合を発表しておらず、発表している2025年通年の割合は64.0%だ。期間の長さが違うため、二つはそのまま比べられない。

市場の取引量のうち、グリーン電力取引は1053億キロワット時で、伸びは3.2%にとどまった。2025年通年は3285億キロワット時で38.3%増えており、2026年に入って伸びが鈍った。北京の188億キロワット時が全国の1053億キロワット時と同じ区分なら、北京1市で全国の17.9%を買った計算になる。同じ区分なら、北京の増加分 (約85億キロワット時) は全国の増加分 (約33億キロワット時) の2.6倍で、北京以外では約52億キロワット時減ったことになる。全国では、グリーン電力取引が市場の取引量に占める割合は4.3%で、北京の63.6%とは桁が違う。

国家発展改革委員会と国家エネルギー局が2024年にまとめた規則は、グリーン電力取引を、電気とその環境価値をまとめて売買し、国が発行するグリーン電力証書を付ける取引と定めている。この取引は年や月などの単位で前もって結ぶ中長期取引の一種で、規則は省内の取引について、需要家や小売電気事業者が直接取引の形で発電会社から買うものとしている。同じ発表を伝えた中国中央テレビは、北京の63.6%を全国の統計と同じ「グリーン電力取引」の語でも説明している。北京の数字と全国の数字が合わない理由は、どちらの発表にも説明がない。

日本の非化石証書は電気の流れと結びつかない

日本では、再生可能エネルギー (再エネ) の環境価値は「非化石証書」として、電気とは切り離して売買される。日本卸電力取引所が開く再エネ価値取引市場では、固定価格買取制度 (FIT) の電気に付く証書 (FIT非化石証書) を、小売電気事業者だけでなく企業などの需要家も直接買える。資源エネルギー庁の資料によると、2025年度の約定量は第1回が210億キロワット時、第2回が152億キロワット時で、第2回は前年度の第2回 (116億キロワット時) より約30%多かった。

FIT非化石証書の価格は低い。同庁の資料によると、その約定加重平均価格は、グラフが示す2021年度以降、代替調達が発動した2024年度第4回を除いて、下限価格 (いまは1キロワット時あたり0.4円) の近辺にとどまっている。一方、小売電気事業者に非化石電源の比率を義務づける高度化法の義務達成市場 (FIT以外の電源の証書) では、直近1年の4回のうち3回で約定価格が上限の1.3円に達した。再エネ価値取引市場の1回の約定量は、北京の1〜4月の188億キロワット時と同じ程度だが、証書を買っても電気の送り先は変わらない。日本で電気そのものを遠くの地域から運べる量は、地域間連系線の容量に左右される。

九州は太陽光・風力の5.8%が出力制御、関門連系線の増強は2039年3月に完成予定

電気は需要と供給を常に一致させる必要がある。晴れた春の昼に太陽光などの発電量が需要を上回り、ほかの手を尽くしても電気が余ると、一般送配電事業者 (九州では九州電力送配電) が発電事業者に発電を一時的に抑えるよう指令する。これを出力制御という。国の優先給電ルールでは、火力発電の抑制や揚水発電・蓄電池の活用、連系線を使った他の地域への送電、バイオマス発電の抑制を先に行い、それでも余る場合に太陽光・風力を抑える。全国で出力制御が最も多いのは九州エリアだ。資源エネルギー庁が2026年8月6日の審議会に示した資料によると、九州エリアの太陽光・風力の出力制御は次のとおりだった。

年度太陽光・風力の出力制御量 (億キロワット時)出力制御率
2023年度12.98.3%
2024年度7.54.8%
2025年度9.85.8%

出力制御率は、太陽光・風力の出力制御量を、出力制御量と太陽光・風力の発電量の合計で割った値で、水力・地熱・バイオマスは分母に入らない。全国の出力制御量は2023年度が18.9億キロワット時、2024年度が16.0億キロワット時、2025年度が20.2億キロワット時で、2025年度は九州が48.5%を占めた。2025年度の東京エリアの出力制御率は0.09%にすぎない。2026年度は4〜6月だけで全国で20.7億キロワット時 (速報値を含む) に達した。同庁は、2026年春に九州エリアで出力制御が増えた理由として、揚水発電所の補修による停止の増加、域外への送電量の減少、好天による太陽光の発電量の増加を挙げている。九州エリアの太陽光と風力の接続量は2026年3月末で1347万キロワットで、九州電力送配電は2026年度の出力制御率を6.9%と試算している。同社によると、九州本土の2025年4〜7月の出力制御率は8.8% (5.7億キロワット時) だった。

関門連系線は、九州の電気を本州へ送る送電線である。九州電力送配電は2025年度の見通しで、関門連系線の利用率 (送電に使える容量に対する実際の送電量の割合) を80%と想定したが、4〜6月に出力制御を実施した日の実績は95% (日によって49〜100%) だった。連系線の空きがほとんどない状態で発電を抑えていた日が多かったことになる。

関門連系線の増強は、2025年10月に電力広域的運営推進機関の広域系統整備計画として決まった。九州から本州へ最大で送れる量を約278万キロワットから100万キロワット程度増やし、本州から九州へも約23万キロワットから同じ程度増やす。直流の海底ケーブル (525キロボルト) を54キロメートルの区間に2本敷き、九州と本州を新たに結ぶ。需要や電源の動き次第で、増える容量が100万キロワットを下回る時間帯もありうるという。概算工事費は4412億円で、事業者が示した4549億円 (物価変動などを含まない額) を同機関が検証して137億円減らした。計画は別に予備費を441億円とし、物価上昇で工事費が567億円増える可能性があるとしている。概算工事費を九州から本州へ増える100万キロワットで割ると、編集部の計算で1キロワットあたり約44万円になる。工事の完了は、速やかな着工を前提に2039年3月 (工期13年6か月程度) とされた。事業者の3社は工期を11年程度に縮められるかを検討し、同機関は2030年度末を目途に完了時期を見直すかどうかを検討する。

事業を担うのは、九州電力傘下の九州電力送配電、中国地方を地盤とする中国電力傘下の中国電力ネットワーク、電源開発傘下の電源開発送変電ネットワークの3社で、いずれも東証プライム上場企業の全額出資の子会社である。

増強分の100万キロワットだけで2025年度の九州の出力制御量9.8億キロワット時を送るには、目いっぱい使っても980時間 (1年の約11%) かかる。出力制御は晴れた日の昼に集中する。資源エネルギー庁は、複数のエリアで同時に出力制御を実施すると域外へ送れる量が減ると説明している。連系線を増強しても、出力制御がなくなるわけではない。それでも、本州へ送れる分だけ、止めずに済む電気は増える。九州の出力制御と系統用蓄電池の関係は、日米の系統用蓄電池の事業を比べた記事と蓄電事業の体系解説で扱っている。

北京の直接取引でグリーン電力が火力を上回った背景には、14の省・自治区の風力と太陽光を市場で買い、送電線で運び込む仕組みがある。日本では需要地の東京エリアで出力制御がほとんど行われない一方、九州エリアでは毎年、太陽光・風力の発電が出力制御されている。本州へ送れる量を100万キロワット程度増やす工事は、完成まで12年余りかかる見通しだ。

※2026年10月24日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版は期間を「2024年1-4月」としていましたが、首都電力取引センターの発表は2026年1〜4月の数字です。旧版の題と本文の「石炭火力を初めて逆転」は、発表が比べた相手が火力全体 (北京市内はガス火力が中心) のため、「火力を初めて上回った」に改めました。中国が国家戦略として半導体・AIの電力を守る狙いがあるとした記述と、日本ガイシ・住友電気工業・村田製作所への影響の記述は、裏づけとなる資料がないため削除しました。

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