UACJは、北陸電力の子会社が建てた太陽光発電所から約4.2キロの自営線で、福井製造所に20年間、電力の供給を受ける。量は製造所の電力の3%程度とみられるが、企業連合RE100の基準では15年の条件の対象外になる見込みだ。
アルミ圧延大手のUACJと北陸電力、北陸電力の子会社の北陸電力ビズ・エナジーソリューション (北電BEST、富山市) の3社は10月26日、福井県坂井市の太陽光発電所からUACJの福井製造所へ11月1日に電気を送り始めると発表した。3社が示した二酸化炭素 (CO2) の削減量の大半は、北陸電力が再生可能エネルギー (再エネ) 由来の電気として売る料金プラン (再エネ料金メニュー) の分とみられる。それでも、RE100が古い発電所の電気を原則として再エネと認めなくなったなかで、新しい発電所の電気を20年確保できる契約になる。
北陸電力の子会社、UACJ専用の太陽光の電気を約4.2キロの自営線で工場に送る
北電BESTとUACJは、太陽光発電の電力購入契約 (PPA) を結んだ。PPAは、発電事業者が発電設備を設置・保有し、需要家がその電気を長期にわたって買い取る契約をいう。発電所は福井県坂井市三国町新保にある県営の工業団地テクノポート福井 (B地区) にあり、北電BESTがUACJ専用に開発した。発電した電気は、同じ坂井市にあるUACJの福井製造所に送る。契約期間は20年。
送電には一般送配電事業者の送電網を使わない。北電BESTが自ら敷設し、維持・管理する専用の送電線「自営線」を、電柱81本を立てて約4.2キロにわたって引いた。3社の発表によると、北電BESTが自営線を使って敷地の外から工場に送る自家消費型の太陽光発電所としては、これまでで最大になる。
発電所には1枚645ワットの太陽光パネルを1万1520枚並べる。パネルの容量は合計7430キロワットになる。パネルが発電した直流の電気を交流に変える装置 (パワーコンディショナー) は40台で、出力は合計5000キロワット。敷地は7万5197平方メートルあり、年間の発電量は850万キロワット時を見込む。
パネルの容量は、パワーコンディショナーの出力の約1.5倍に設定した。パネルを多めに載せる「過積載」と呼ばれる手法で、晴れた日の昼はパワーコンディショナーの上限で出力が頭打ちになるが、日差しの弱い朝夕や冬の発電量を増やせる。年間の発電量を、パネルの容量に1年の時間 (8760時間) を掛けた値で割ると、パネルの容量を基準にした設備利用率は約13%になる。パワーコンディショナーの出力を基準にすれば約19%である。
パネルを支える架台には、UACJ製の再生アルミを使う。柱や斜めの補強材、パネルを固定する桟やレールに使い、将来撤去するときはUACJがリサイクルする予定だ。
UACJの2026年3月期の連結売上高は1兆1817億円だった。グループの従業員は約1万200人いる。福井製造所は1983年に操業を始めた主力工場で、従業員は850人いる。敷地は85万平方メートルある。アルミの鋳造から熱間圧延、冷間圧延、仕上げまでを一貫して手がける。
北電BESTは2017年3月、北陸電力の全額出資で設立された。同社がPPA向けに手がける太陽光発電所は、建設中を含めて2026年6月時点で136件ある。パネルの容量は合計約8万2000キロワットで、今回の1件だけでその約9%に当たる。
自営線なら託送料金はかからず、他社が持つ発電所からも工場へ電気を送れる
電気を送電網で送ると、その利用料である託送料金がかかる。福井製造所の受電電圧は公表されていないが、北陸電力送配電が特別高圧の利用者に適用する標準の料金は、契約電力1キロワットあたり月572円の基本料金と、1キロワット時あたり0.85円の電力量料金からなる。自営線を使えばこの料金はかからないが、電柱を立てて電線を張り、保守する費用は、線を持つ北電BESTが負う。
送電網を使う方法には「自己託送」もある。自社の発電所でつくった電気を、送電網を通じて自社の別の拠点へ送る仕組みで、再エネ賦課金はかからない。ただし託送料金はかかる。北陸電力送配電の特別高圧で、自己託送の利用者が選べる従量制の料金は1キロワット時あたり10.22円である。2024年2月の制度改正で、他社から借りたり譲り受けたりした発電設備は、完全子会社のものを除き、自己託送に使えなくなった。北電BESTはUACJの完全子会社ではないため、UACJが北電BESTから発電所を借りたり譲り受けたりしても、自己託送には使えない。
工場の敷地内にパネルを置くオンサイトPPAは、電気事業法の例外規定により国の許可なしで電気を供給できる。同法は、1つの建物の中や同じ構内で電気を供給する場合などを除き、他者に電気を供給する事業に経済産業相の許可や登録を求めている。今回は敷地の外から約4.2キロ送るため、この例外には当たらない。
再エネ賦課金がかかるかどうかは、供給が法律上どの形態に当たるかで変わる。再エネ特別措置法は、小売電気事業者などが電気の使用者に賦課金を請求できると定めている。2026年度の単価は1キロワット時あたり4.18円で、前年度の3.98円から上がった。北電BESTは小売電気事業者として登録しているが、今回の供給がどの形態に当たるかは発表に書かれておらず、賦課金の有無は確認できなかった。仮に賦課金がかからないなら、年850万キロワット時分で約3550万円を払わずに済む計算になる。
環境省の補助事業の事例集は、敷地の外の発電所から自営線で工場へ電気を送る例として2件を載せている。自然電力が北海道苫小牧市のダイナックスの工場へ引いた自営線は1100メートルの2系統だった。東京ガスエンジニアリングソリューションズが群馬県昭和村の藤森工業の工場へ引いた線は600メートルである。今回の約4.2キロは、これらの4〜7倍にあたる。同じ事例集には、オンサイトPPAに比べると自営線の敷設費がかかる分、電気の単価が高くなるという事業者の声も載っている。北電BESTとUACJは契約の価格を公表していない。
RE100の基準では、新設の発電所と結ぶ長期契約は運転開始15年を過ぎても再エネと認められる
RE100は、事業で使う電力を100%再エネでまかなうことを目指す企業連合で、国際環境NGOのクライメート・グループがCDPと共同で運営する。加盟企業が使った電気のうち、どれを再エネと認めるかの基準も定めている。
2026年9月に公表した2025年版の年次報告から、多くの加盟企業に「運転開始から15年以内の設備」という条件が初めて適用された。RE100は、運転開始から15年を超えた発電設備の電気を、原則として再エネと認めない。ただし、RE100の技術要件 (2025年3月版) は、いくつかの調達を対象から外している。送電網につながず自営線だけで送る発電所から買う場合と、自家発電がこれに当たる。送電網につながる発電所でも、運転開始時からその発電所の電気を長期契約で買う場合は対象外だ。このほか、古い設備の電気も電力使用量の15%までは認める。
UACJはRE100に加盟していない。発電所が送電網ともつながっているかは発表に書かれていないが、つながっていなければ自営線の例外に、つながっていても運転開始時から買う長期契約の例外に当たるとみられる。RE100の基準に当てはめれば、15年を過ぎても再エネと認められる調達になる。
日本ではこの条件の影響が大きい。RE100によると、加盟企業が日本で調達した再エネの電気は、運転開始年が分かる分でみると、発電設備の運転開始年が平均で2010年だった。世界平均の2015年より5年古い。報告書の棒グラフから読み取ると、日本で認められた再エネのおよそ半分は小売電気事業者との契約 (再エネ料金メニューなど) とみられる。電気と切り離して買う非化石証書などの証書は約36%で、PPAなどは約12%にとどまる。年数のたった発電所の電気に頼る企業ほど、15年の条件を満たさない分が年々増える。新しい発電所から長期契約で電気を買う調達が、その穴を埋める手段になる。
CO2削減量2万7694トンの大半は再エネ料金メニューの分、PPAは製造所の電力の3%程度と試算
3社の発表によると、今回のPPAと北陸電力の再エネ料金メニューを合わせて、UACJのCO2排出量は年2万7694トン減る見込みだ。使う電気に占める再エネの割合 (再エネ化率) は23.5%になるという。福井製造所はこれまでも北陸電力の再エネの電気を使ってきた。削減量の内訳や計算に使った排出係数、福井製造所の使用電力量は公表していない。
編集部は、環境省と経済産業省が公表する北陸電力の排出係数を使い、PPAの分の削減量を試算した。再エネ料金メニュー以外の電気に使う係数は1キロワット時あたり0.455キログラムで、PPAの年850万キロワット時に掛けると約3870トンになる。2万7694トンの約14%にとどまる。北陸電力全体の係数 (2024年度実績で0.431キログラム) を使っても約3660トンである。
同じ係数で2万7694トンを電力量に換算すると、約6090万キロワット時になる。発表は23.5%が何に対する割合かを明記していないが、福井製造所の電気に占める割合とみれば、製造所の年間の使用電力量は約2億5900万キロワット時と推定できる。PPAの分はその約3%にあたる。
UACJは2050年度に自社の排出 (スコープ1、2) を実質ゼロにする目標を掲げる。途中の2030年度には、生産量あたりのCO2排出量 (排出原単位) を2019年度比で30%減らす。2023年度にはオンサイトPPAや再エネ料金メニュー、非化石証書で、国内外合わせて約2億4600万キロワット時の再エネ電力を調達した。同社のサイトの実績欄によると、国内では20の事業場で使う電力をすべて再エネに切り替えている。この20事業場に福井製造所は入っていない。
RE100が認めた再エネ比率、日本企業は16社が88%以上
2026年3月末の加盟企業は世界で443社で、このうち日本企業は95社だった。年次報告で多くの企業が報告したのは2024年の電力使用量で、年度を4月から翌年3月までとする日本企業の多くは2024年度分とみられる。
年次報告に載る比率は企業の自己申告ではなく、RE100の基準を満たすと認められた分だけで計算した値だ。この比率が100%だった日本企業は、AESCグループ、旭化成ホームズ、ヒューリック、第一生命保険、城南信用金庫の5社である。88%以上の日本企業は16社あった。16社で最も低い島津製作所も88%だった。
前年の2024年版から比率が大きく上がった企業もある。第一三共は前年版の4%から80%に上がった。アルプスアルパインも11%から70%になった。ただ、前年版で両社が自己申告した比率は第一三共が72%、アルプスアルパインが64%だった。前年版の4%と11%は、開示で裏付けられた分だけで計算した値だった。両社とも、再エネの調達が数倍に増えたわけではないとみられる。
| 会社 | 前年版 裏付けあり | 前年版 自己申告 | 2025年版 RE100が認めた比率 | 自社の開示 |
|---|---|---|---|---|
| 第一三共 | 4% | 72% | 80% | 2023年度80.0%、2024年度79.8% |
| アルプスアルパイン | 11% | 64% | 70% | 2023年度63%、2024年度72% |
第一三共が開示する再エネ電力の比率は、2022年度に78.0%に上がった後はほぼ横ばいだ。前年版で再エネの大半が開示で裏付けられなかった理由は、RE100の報告書には書かれておらず分からなかった。アルプスアルパインの自社の比率は「再生可能エネルギー導入率」で、2024年度に9ポイント上がっている。
インフロニア・ホールディングスは89%で、前年版から31ポイント上がった。こちらは自社のデータでも増えている。同社の公表データから計算すると、2024年度のグループの再エネ電力の比率は約89.7%で、RE100の数字とほぼ一致する。電力消費量17万7698メガワット時のうち、15万9427メガワット時が再エネだった。主な事業子会社では、前田道路がほぼ100%だった。前田建設工業も100%を達成したとの報道があるが、インフロニアの公表データ (2024年度から集計の範囲を拡大) では約78%で、100%は確認できなかった。
インフロニアは2024年1月31日に日本風力開発を完全子会社にした。日本風力開発は2026年4月1日、神奈川県三浦市の東部処理区の下水道を運営する三浦下水道コンセッションに電気を売り始めた。千葉県にあるグループの風力発電所の電気に、発電所を特定できる「トラッキング付き非化石証書」を組み合わせて供給する。ただ、供給を始めたのは2025年版の対象期間より後で、89%には含まれていない。
加盟企業が日本で使う電力の再エネ比率は40%、韓国は12%、台湾は6%にとどまる
海外の主な企業では、米アップルが99.8%、米メタが99.6%と、ほぼすべてを再エネでまかなう。独BMWは80%だった。韓国のサムスン電子は31%、台湾積体電路製造 (TSMC) は14%にとどまり、東アジアの2社の低さが目立つ。
RE100は、加盟企業が使った電力を国・地域別にも集計し、再エネと認めた分の割合を公表している。日本で事業をする外国企業の拠点も含めた値で、日本は40%だった。前年版は36%だったが、15年の条件を導入する前の値で、そのまま比べることはできない。韓国は12%、台湾とシンガポールは6%にとどまる。再エネの調達が難しいと答えた加盟企業は韓国が78社と最も多かった。台湾は54社、シンガポールは53社だった。日本は43社である。
FIT証書の価格は下限近くに張り付き、国は下限を0.6円へ上げる案を示す
日本企業の再エネ利用は、非化石証書を買って再エネを使ったとみなす方法が多い。非化石証書は、発電時にCO2を出さない電気の「環境価値」を電気と切り離して証書にしたもので、日本卸電力取引所の非化石価値取引市場で売買される。固定価格買い取り制度 (FIT) の電源に由来する「FIT証書」と、それ以外の「非FIT証書」がある。
FIT証書の年間の約定量は2025年度に730.7億キロワット時となり、2021年度の13.5倍に増えた。それでも2025年度の加重平均の価格は1キロワット時あたり0.41円で、下限の0.4円にほぼ張り付いている。下限は2023年7月までは0.3円で、2021年度の加重平均の0.31円も当時の下限に近い。売り入札が買い入札を大きく上回るためだ。2025年度の最終回は、それまでの売れ残りを含む売り入札が約832億キロワット時あった。約定したのは180億キロワット時にとどまった。
一方、小売電気事業者がエネルギー供給構造高度化法の目標を達成するために買う非FIT証書は、品薄が続いている。再エネ由来の非FIT証書は、2025年度の第2回から第4回まで上限の1キロワット時1.3円で約定した。2026年度第1回は1.21円で、上限をわずかに下回った。
FIT証書の価格が上がるとすれば、足元の値動きではなく、国が示した制度の見直し案によるものだ。資源エネルギー庁は2026年3月4日の作業部会で、FIT証書の下限価格を2027年度に0.6円へ引き上げる案を示した。上限の4円は2028年度までになくす。非FIT証書についても、下限価格を2028年度に0.8円へ引き上げる案を示した。同庁の資料は、FIT証書が安く買えるためにPPAを結ぶ動機が弱まっているとの指摘を、見直しの理由に挙げた。2027年度以降の価格の見直しが正式に決まったかどうかは、確認できなかった。
RE100も報告書の日本の章で、日本の加盟企業などへの調査をもとに、非化石証書の課題として価格、国際基準との整合性、情報の透明性、市場の流動性を挙げ、経済産業省に伝えた。市場の約定価格は今も、高い非FIT証書でも1キロワット時1.3円が上限だ。ただ、国の案どおり下限価格が上がれば、古い設備の電気を原則として認めないRE100の条件と重なり、証書だけで再エネ比率を保つ費用と手間は増える。
日本の発電に占める再エネは23.1%、太陽光の発電量の伸びも鈍った
PPAを結べる発電所は増えにくくなっている。経済産業省がまとめた2024年度のエネルギー需給実績 (確報) によると、発電量に占める再エネの比率は23.1%で、前年度から0.2ポイント上がるにとどまった。発電電力量は9911億キロワット時だった。太陽光の発電量の伸びも鈍った。前年度からの増加量は、2015年度の118億キロワット時から2024年度は16億キロワット時に減った。固定価格買い取り制度などの支援を受けた住宅以外の太陽光の年間導入量も、2014年度の835万キロワットから2024年度は165万キロワットに減った。
太陽光発電所の新設にも制約が増えている。再エネ発電設備の設置を規制する自治体の条例は、2016年度の26件から2025年度には367件に増えた。環境影響評価 (アセスメント) が義務付けられる太陽光発電所の規模も、2027年4月から出力4万キロワット以上から2万キロワット以上に引き下げられる。地上設置型の事業用太陽光発電は、2027年度から固定価格買い取り制度などによる新たな支援の対象から外れる。今回の発電所は県営の工業団地に建ち、出力は5000キロワットと、環境影響評価法で評価が義務付けられる2万キロワットを大きく下回る。
洋上風力では、三菱商事が2025年8月27日、秋田県と千葉県沖の3海域で進めていた出力計170万キロワットの発電事業から撤退すると発表した。国の聞き取りに対し、三菱商事は建設費が公募に参加した時点の見込みの2倍以上に膨らんだと説明した。国は同年9月11日に事業計画の認定を取り消した。国は2026年6月5日に公募の運用指針を改めたが、3海域の再公募は10月28日時点で公示されていない。
国の支援を受けずに発電所を建てる事業者にとって、20年程度の長期にわたって電気を買い取る企業は、安定した売り先になる。経済産業省の資料に載った民間の調査によると、企業が敷地外の発電所と2024年の1年間に結んだPPAは約94万キロワット分だった。国は2040年度の発電量に占める再エネの比率を4〜5割程度とする見通しを示しており、企業との長期契約は、発電事業者が発電所を新設するための資金の裏付けになる。
UACJと北陸電力グループの自営線PPAは、RE100が求める新しい設備の電気を20年確保する型だが、量は福井製造所が使う電力の3%程度とみられる。RE100の加盟企業が日本で調達する再エネも、いまは再エネ料金メニューなど小売との契約と非化石証書が中心だ。それでも、古い設備の電気を原則として認めない基準の下で、新しい発電所の電気を運転開始時から長期契約で買う調達は、発電所が15年を過ぎても再エネと認められる。証書と料金メニューに頼る企業ほど、こうした契約を積み増せるかが再エネ比率を保つ鍵になる。
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