NVIDIAの2026年5-7月期決算が出た。出回る売上高962.2億ドル・粗利率75.0%は、同日にSECへ提出された四半期報告書と一致する。一方、同時に流通した指数の騰落率には、2つの値が入れ替わった要約が混ざる。

決算の夜は数字が最も速く、最も雑に流れる時間帯でもある。8月26日の米国市場については、通常取引の指数から経済統計、個別株の騰落、引け後のNVIDIA決算までが一続きの数字として流通した。本稿はそのすべてを、SECの提出書類とセントルイス連邦準備銀行の実測に1つずつ当てて確かめた。一致するもの、入れ替わっているもの、そもそも提出書類では確かめられないものを仕分ける。

指数の騰落率は、2つの値が入れ替わって流通している

同じ日の相場を伝える要約の間で、S&P500とナスダックの下落率が食い違って流通している。一方は「S&P500がマイナス0.02パーセント、ナスダックがマイナス0.08パーセント」、もう一方は「S&P500がマイナス0.08パーセント、ナスダックがマイナス0.02パーセント」と、2つの値が入れ替わっている。

実測で裁定できる。FREDの日次終値から計算すると、8月26日の前日比はS&P500がマイナス0.02パーセント、ナスダック総合がマイナス0.08パーセント、ダウ平均がマイナス0.21パーセントである。前者が正しく、後者は2つの指数の値を取り違えている。0.06ポイントの差は投資判断を変えないが、要約が要約を引き写す過程で数字が入れ替わる、という流通経路の癖は覚えておく価値がある。検証の手間は指数名と日付で実測を引くだけで、1分もかからない。

PCE・金利・耐久財は実測と一致する

経済統計の側は、確かめた範囲ですべて実測と整合した。7月の総合PCE物価指数は前年比プラス3.70パーセントで、「予想の3.6パーセントを上回る3.7パーセント」という伝え方と一致する。コアは前年比プラス3.34パーセント。前月比は総合がプラス0.16パーセント、コアがプラス0.25パーセントで、「ともにプラス0.2パーセント」という要約はコア側がやや切り下げ気味だが、丸めの範囲にある。物価の伸びが2パーセント目標へ収束しているとは言いにくい水準で、これが金利の押し上げ材料になった。米10年債利回りは8月21日に4.74パーセント、25日に4.64パーセントで、「4.65パーセント付近」という描写と整合する。

7月の耐久財受注は前月比プラス1.07パーセントで、「プラス1.1パーセント、予想プラス0.5パーセント」という数字と一致し、6月のプラス0.54パーセントが「前回プラス0.5パーセント」に対応する。輸送機器を除くプラス0.4パーセント、国防を除くプラス1.3パーセントという内訳は月次の発表資料の事項で、系列単位の実測では確かめていないが、主系列が合っている以上、疑う理由はない。個人所得プラス0.4パーセント、個人消費プラス0.2パーセント、実質ではほぼ横ばいという組み合わせは、物価は高止まりし実質の需要は強くない、という要約どおりの形である。

NVIDIAの決算数値は、同日提出の10-Qと一致した

引け後に出た決算の数字を照合する。エヌビディアは決算発表と同じ8月26日に四半期報告書(10-Q)をSECへ提出しており、出回る数字を実額と直接突き合わせられる。売上高962.2億ドルは、報告書の売上総利益721億4,200万ドルと売上原価240億7,900万ドルを合計した962億2,100万ドルと一致する。前年同期の467億4,300万ドルに対して105.9パーセント増、前四半期の816億1,500万ドルに対して17.9パーセント増。粗利率は75.0パーセントで、これも「Q2実績75.0パーセント」という数字と一致する。

NVIDIA決算と10-Qの照合
NVIDIA決算と10-Qの照合

1つだけ区分の注意がある。「EPS2.22ドル」は株式報酬費用などを除いた調整後の値で、報告書のGAAPベースの希薄化後EPSは2.46ドルとむしろ高い。純利益は596億8,800万ドル、営業利益は637億3,400万ドルで営業利益率66.2パーセントである。データセンター売上高890億ドル(前年比117パーセント増)は10-Qのセグメント注記の事項、売上高見通し1,080億ドル±2パーセント、粗利率74.0パーセント±0.5ポイント、中国向けデータセンターの売上高を見通しに織り込まない方針、次世代基盤Vera Rubinのフル生産移行は、いずれも発表資料の事項でXBRLには現れない。誤りという意味ではなく、確かめられる場所が違う。

粗利率の系列を実額で並べると、低下見通しの位置が測れる。1年前の72.4パーセントから73.4、75.0、74.9と推移し、今回が75.0パーセント、次が74.0パーセント見通しである。1.0ポイントの低下は、この1年の上げ幅2.6ポイントの中に収まる。市場が減点したのは水準そのものより、上がり続けた系列が初めて下を向く、という向きの変化である。

先行指標として追ってきた棚卸資産には続報が出た。2026年1月末の214億ドルから4月末に258億ドル(20.5パーセント増)、そして7月末は315億7,500万ドルで、さらに22.4パーセント増えた。2四半期の累計では47.5パーセント増になる。次世代品の部材積み増しと需要の鈍化は棚卸資産の数字だけでは区別できないが、売上高が前四半期比17.9パーセント増を続けている間は、積み増し側の説明が優勢である。この指標は前四半期の決算から追っており、次の四半期も同じ物差しで確かめられる。

決算前日の市場は、全面高でも全面安でもない

通常取引の個別株は、4つの選別がはっきり出た。半導体はマーベル・テクノロジーがプラス2.0パーセント、インテルがプラス0.9、マイクロンがプラス0.6、AMDがプラス0.4と買われる一方、ブロードコムがマイナス0.3、エヌビディア本体がマイナス1.6パーセント。決算前の利益確定は本体に集中し、SOX指数はプラス0.2パーセントとプラス圏を保った。半導体全体が売られたわけではない。

AIサーバー・光通信・電力設備は8社が揃って上がった。ルメンタムがプラス6.0パーセント、Arista Networksがプラス5.9、シエナがプラス4.2、ウエスタンデジタルがプラス4.0、ヒューレット・パッカード・エンタープライズがプラス3.4、バーティブがプラス3.2、デル・テクノロジーズがプラス2.7、イートンがプラス2.5パーセント。GPUの次の段にあたるネットワーク、光、記憶装置、電源冷却へ、決算前に先回りする資金の形である。

決算前日の4つの選別
決算前日の4つの選別

大型テックは選別が続く。アップルプラス1.2、メタ・プラットフォームズプラス1.1(未成年者の安全対策をめぐる州政府との和解が材料)、マイクロソフトプラス1.0に対し、アマゾンマイナス0.3、テスラマイナス1.3、アルファベットマイナス1.4パーセント。ソフトウェアではインテュイットが通期見通しの未達と、高性能AIが会計・税務ソフトの役割を代替するという警戒でマイナス3.2パーセント。ヘルスケアはモデルナがマイナス5.8、イーライリリーがマイナス3.6、メルクがマイナス2.1、ジョンソン・エンド・ジョンソンがマイナス1.2パーセントと主要セクターで最も弱く、ユナイテッドヘルスのプラス1.1パーセントだけが逆行した。騰落線はニューヨーク証券取引所で1.16対1、ナスダックで1.38対1の下落優勢、売買高は直近平均を下回り、様子見の1日だった。

日本株への接続と、次に確かめる点

決算後の時間外でエヌビディアがマイナス1パーセント台で推移した、という反応は、需要の強さと市場の要求水準の差を示している。売上高、EPS、見通しのすべてが予想を上回っても、粗利率の向きが下を向けば減点される。市場の物差しは「AIの需要があるか」から「その需要をどれだけ高い利益率と現金創出に変えられるか」へ移った。この物差しは日本の関連銘柄にそのまま持ち込まれる。

日本側の接続先は開示で確かめられる範囲に絞る。検査工程のアドバンテストは2026年3月期に営業利益率44.2パーセントで、増産の恩恵と利益率の両方を備える。パッケージ基板のイビデンは設備投資が営業利益を上回る先行投資の局面、光配線のフジクラと光計測のsantec Holdingsは、米国でルメンタムシエナが買われた流れの日本側にあたる。決算前の電線・光通信株の下げを開示で整理した別稿の区分が、そのまま使える。

次に確かめる点も挙がっている。決算説明会でのBlackwell UltraGB300の供給状況、Vera Rubinの出荷と売上高への計上時期、粗利率が74.0パーセントへ下がる理由の内訳、中国向け売上高の再開可能性。市場の側では、氷見野日銀副総裁の講演、米新規失業保険申請件数、ジャクソンホール会議、そして4.6パーセント台半ばの米10年債利回りの行方である。GPUからメモリー、光通信、半導体装置、電力設備へ資金が広がるかという問いは、8社が揃って上がった前日の値動きが先に答えの一部を示している。広がるかどうかではなく、広がった資金が決算後も残るかどうかが、次の確認点になる。個別の銘柄は銘柄レーダーから辿れる。