日本への輸入許可件数は2025年に約2億2,700万件と2019年の約4.9倍に増え、92%が課税価格1万円以下の貨物だった。税関の統計には中国系の通販の広がりが表れるが、ティームーの運営会社の開示に日本の売上はない。

中国系の通販サイトで買った衣類や化粧品の多くは、小包で海外から届く。財務省関税局によると、2025年の日本への輸入許可件数のうち約2億900万件は、課税価格の合計が1万円以下の貨物だった。1万円以下の貨物には、原則として関税も消費税もかからない。政府はこの免税を使った販売が広がったとみて仕組みを改め、2028年4月1日から、海外から日本の消費者に発送する1万円以下の商品の通信販売に、販売の時点で消費税を課す。仲介する取引の額が一定の水準を超える通販サイトの運営会社は、国税庁長官の指定を受け、出店者に代わって納税する。財務省は主な個人向け通販サイトとして、ティームー、シーイン、アリエクスプレス、キューテンの4つを挙げた。

1万円以下の輸入は2025年に約2億900万件、中国からの品は平均価格が7割ほど下がった

関税・外国為替等審議会の関税分科会に財務省が示した資料によると、日本への輸入許可件数は次のように増えた。

年輸入許可件数2019年比
2019年4,640万件1.0倍
2024年1億8,973万件4.1倍
2025年約2億2,700万件4.9倍

2019年と2024年は有識者の作業部会の中間とりまとめ (2025年11月) の図表の値、2025年は2026年6月と10月の分科会資料の値である。倍率は編集部が件数から計算し直し、財務省の「約4.1倍」「約4.9倍」と一致することを確かめた。全体の件数は2025年に前年比で約19.5%増えた。課税価格が1万円以下の貨物の割合は2024年が91.3%、2025年が92.4%だった。2024年の1万円以下の件数を割合から計算すると約1億7,300万件で、2025年の約2億900万件は前年比で約2割増えた。1年を365日として1日当たりに直すと約57万件になる。

財務省は、輸入の大半が通販で買われた品だと説明している。2026年1〜6月の輸入許可件数の約93%が通販の貨物で、そのうち約98%が1万円以下だった。同じ期間の通販の貨物を品目別に見ると、衣類が35%、化粧品・美容品が22%、生活雑貨が5%、収納・家具が4%を占めた。衣類やバッグなどファッション関連の品が4割強に上る。品目は、通販サイト上位9社の品名から財務省関税局が推計したものだという。

課税価格20万円以下の少額輸入貨物を原産地別 (1件に複数の品目があれば品目ごとに集計) に見ると、件数の1位は中国、2位は韓国、3位は米国である。中国を原産地とする貨物のうち課税価格が1万円以下のものの割合は、2019年から2024年の5年間で86%から98%に上がった。財務省の図表では、中国を原産地とする少額輸入貨物の平均価格は、2019年の9,100円前後から2024年には2,600円前後へと、7割ほど下がった (図の目盛りから編集部が読んだ概数)。米国を原産地とする貨物は8,000円前後で大きく変わっていない。作業部会はこうした傾向から、中国・韓国に関連する越境EC (国境を越えた電子商取引) のサイトの利用拡大が、少額輸入貨物の増加の背景にあるとみている。

財務省が挙げた4つのサイトの概要は次のとおりである。ティームーは、財務省が中国企業として挙げるPDDホールディングスが運営する。2022年に始まり、2023年に日本に参入した。2024年には米アップルのアプリ配信サービスで、日本の無料アプリのダウンロード数が2位だった。シーインは2008年創業で、2020年に日本語版のサイトを開き、160以上の国・地域で展開する。アリエクスプレスはアリババグループが2010年に開設し、同じ年に日本でも始めた。キューテンはイーベイジャパンが運営し、韓国製の化粧品や衣類、美容家電を多く扱う。会員は2,500万人 (2025年3月時点) である。買う側の支出も増えた。総務省の家計消費状況調査によると、2人以上の世帯のネットショッピングの支出額は2024年に月平均24,928円で、2018年の12,610円の約2倍になった。利用する世帯の割合も2015年の27.6%から2024年は55.3%に上がった。

2028年4月から1万円以下の海外通販に消費税、年50億円超を仲介する運営会社が納める

制度を改める「所得税法等の一部を改正する法律」は、2026年3月31日に参院本会議で可決・成立し、同日公布された。財務省の解説によると、1万円以下の輸入貨物の関税と消費税を免除する少額免税制度は、消費税の導入に合わせて1989年に始まった。個人で使う輸入品については、課税価格を海外の小売価格の0.6倍とする特例 (1980年導入) があり、小売価格16,666円 (1万円÷0.6) までの品が免税の対象になっていた。この特例も、別に成立した関税定率法などの改正により、2028年3月末で廃止される。

2028年4月1日からは、海外から日本の消費者に向けて発送する通信販売のうち、1点の対価が1万円以下の商品の販売を国内の取引とみなし、販売した事業者に消費税の納税義務を課す。1万円以下かどうかは、販売している商品1個ごとに判定する。注文を分けて発送し、免税の範囲に収める租税回避を防ぐためだ。国内の取引と同じく、課税売上高1,000万円以下の事業者は納税義務を免除される。販売時と輸入時の二重課税を防ぐため、販売者を登録する制度も設ける。登録した事業者の商品は、輸入時の消費税が免除される。国内に拠点のない海外の事業者は、税務代理人による代理権限の証書などを添えて登録を申請する。

もう1つの柱が、プラットフォーム課税である。海外の事業者による日本での物品の販売と、1万円以下の通信販売が通販サイトを通じて行われ、その対価の合計が課税期間 (通常は1年) に50億円 (税込み) を超える場合、国税庁長官はそのサイトの運営会社を指定する。指定を受けた運営会社は、販売者に代わって消費税を納める。1万円以下の通信販売については、国内の事業者が売る分も対象になる。制度の開始に備えた経過措置もある。2027年1〜3月の対価の合計を4倍した額が50億円を超える運営会社は、同年6月30日までに届け出なければならない。3か月の額に直すと12億5,000万円超に当たる。最初の指定は2028年4月1日から効力を持つ。

輸入の時点で課税する案は見送られた。財務省は、件数と金額が年々増えるなかで少額免税を廃止して輸入時に課税するのは現実的でないと説明する。登録のない事業者の商品を輸入時に課税する欧州連合 (EU) の方式も、通関業者や税関の体制から実施は難しいとした。選んだのは、年間の課税売上高が7万5,000豪ドル以上の事業者に登録を義務付け、1,000豪ドル以下の商品の税を販売者に課すオーストラリアの方式に近い形である。2025年5月の主要7カ国の財務相・中央銀行総裁会議の声明も、少額貨物の大幅な増加が税関の管理や関税・租税の徴収の処理能力を超え、悪用される恐れがあると認めていた。一方、今回の改正で変わるのは消費税の扱いで、関税の少額免税と少額輸入貨物の簡易税率は、関税・外国為替等審議会が2025年12月の答申で引き続き検討すべき課題とした。

ティームーを運営するPDDは、日本での売上を開示していない

PDDホールディングスはケイマン諸島で設立され、本社をアイルランドのダブリンに置く。同社が米証券取引委員会 (SEC) に提出した2025年12月期の年次報告書によると、ティームーは2022年9月に米マサチューセッツ州ボストンで立ち上げられた。2025年末時点で、米国や日本、ドイツ、英国、フランス、カナダ、イタリアなどでサービスを展開している。同社は、中国国内向けの通販サイト「ピンドゥオドゥオ」もティームーも主に中国の出店者を相手にしており、2025年12月期の売上高のほぼすべてを中国の出店者から得たと説明している。

2025年12月期の売上高は約4,318億元で、出店者向けの広告などが50.4%、取引に伴う手数料が49.6%を占めた。年次報告書に国別やサイト別の売上高の内訳はない。日本の消費者がティームーでどれだけ買ったのかは、運営会社の開示からは分からない。編集部が確認した財務省の資料にも、サイトごとの件数は載っていない。経済産業省も電子商取引に関する市場調査で、日本の消費者が越境ECで米国と中国の事業者から買った額を推計している。ただ、前年の推計値に成長率を掛けて出す推計で、物販のほかサービスやアプリなどデジタルの購入も含み、サイトごとの数字もない。

同社は年次報告書で、米国の少額免税の廃止にも触れた。米関税法321条による関税などの免除は、中国・香港からの輸入で2025年5月2日に、すべての国からの輸入で同年8月29日に廃止された。他の国・地域でも免税の上限の引き下げなどが検討されているとして、事業上のリスクに挙げている。米国が廃止したのは輸入時の関税などの免除で、日本の改正は消費税の課し方を変える。

ピンドゥオドゥオの創業者は会長を退いたが、24.8%を持つ筆頭株主のまま

ピンドゥオドゥオ (現PDDホールディングス) は2021年3月17日、創業者の黄崢 (コリン・ホアン) 氏が会長を退任し、陳磊 (チェン・レイ) 氏が後任に就くと発表した。黄氏の株主への書簡は会長の交代を即日としたが、翌18日にSECに提出した書類は、黄氏の会長と取締役の退任を同年5月17日付としている。黄氏の株式に付いていた1株10個の議決権は、退任に伴って廃止された。黄氏は議決権の行使を取締役会に委ね、株式の売却を制限する期間をさらに3年延ばした。

書簡は理由を2つ挙げた。1つは、規模と効率で競う従来のやり方には限界があり、10年後も同じ質と速さで成長するには次に何をすべきかを探る必要があるという点で、黄氏はその役目を会社の外に出て担うとした。もう1つは、コロナ禍で力をつけた新しい経営陣に会社を任せるべきだという点だ。黄氏は退任後、食品科学と生命科学の研究に取り組むと書いた。2025年12月期の年次報告書によると、いずれも創業メンバーの陳磊氏と趙佳臻 (ジャオ・ジアジェン) 氏が、2025年12月から共同で会長と最高経営責任者 (CEO) を務めている。取締役と執行役員の一覧に黄氏の名前はない。

ただ、黄氏は今も筆頭株主だ。2026年3月18日時点で、黄氏が信託を通じて保有する会社が約14億974万株を持ち、発行済み株式の24.8%を占める (発行済み株式約56億9,359万株で割った編集部の検算では24.76%)。2位は中国のネット大手テンセントの関連会社で13.8%。黄氏が唯一の取締役を務める会社も6.5%を持つ。1株に複数の議決権が付く種類株は発行されていない。

ソフトバンクGのアリババ株は5%未満に、アリババは海外通販で自ら売る方式も

馬雲 (ジャック・マー) 氏らが創業したアリババグループでは、2020年11月3日、関連会社のアント・グループの上場が延期された。アリババがSECに提出した書類によると、アントは上海証券取引所の新興企業向け市場「科創板」への上場を延期すると規制当局から通知を受け、同時に予定していた香港取引所への上場も延期になった。理由は、アントの実質的な支配者と会長、CEOが規制当局に呼び出されて事情を聴かれたことと、フィンテックを巡る規制環境が変わったことにより、上場や情報開示の要件を満たさない可能性があるというものだった。

アリババの2022年3月期の年次報告書では、5%以上を持つ株主はソフトバンクグループだけで、アリババの集計による2022年7月15日時点の持ち株比率は23.9%だった。ソフトバンクグループは2022年8月10日、先渡売買契約を前倒しで現物決済することで、同社の集計によるアリババ株の実質的な保有比率が同年6月末の23.7%から14.6%に下がる見込みだと発表した。厳しい市場環境が長引く可能性もあるとし、早めに決済すれば将来の資金流出の懸念をなくし、契約にかかるコストも減らせると説明した。子会社を通じた先渡売買契約は2024年1月と7月に決済を終え、ソフトバンクグループは単体決算でそれぞれ1兆2,592億円と5,461億円の投資有価証券売却益を計上した。連結決算ではグループ内の取引にあたるため、売却益を計上していない。

アリババの2026年3月期の年次報告書では、5%以上を持つ株主を載せる主要株主の表に取締役と執行役員しか名前がなく、その持ち分は合わせて1.9%だった。2026年5月18日時点で、ソフトバンクグループは5%以上の株主として載っていない。年次報告書は馬氏を創業者として紹介しているが、主要株主の表に馬氏の名前はない。一方、会長の蔡崇信 (ジョセフ・ツァイ) 氏は1999年の創業メンバー、CEOの呉泳銘 (エディ・ウー) 氏は共同創業者の1人と記している。同社は売上高のほぼすべてを中国国内で得ているとして、国・地域別の内訳を示していない。事業別には、アリエクスプレスなどを含む海外の小売り通販の売上高を2026年3月期に約1,177億元 (前年比9%増) と開示している。

アリババは同じ年次報告書で、海外の通販事業に新しい方式を取り入れたと説明した。1つは、出店者の商品の価格設定や販売促進、決済、物流、顧客対応、返品に運営会社が関わる方式。もう1つは、運営会社が商品の所有権を持ち、自ら消費者に売る方式だ。アリエクスプレスは2026年3月期に、30か国超の在庫を使う販売方式も始めた。日本でこれらの方式を使っているかどうかは明らかにしていない。アリエクスプレスなどの手数料は、主に中国の出店者が払っている。日本の新制度に当てはめると、運営会社が海外から1個1万円以下の商品を自ら売れば、2028年4月からは販売者として消費税を納める立場になる。出店者が売る取引では、仲介する取引額が50億円を超えて国税庁長官の指定を受ければ、運営会社が納める。日本国内の倉庫から売る商品は、海外の事業者による国内での販売として、今も消費税の納税義務がある。

PDDとアリババは、どちらも国別の売上高を開示していない。日本で確認できるのは、税関が集計した年2億件を超える輸入許可件数などの政府の統計で、サイトごとの数字はない。政府は輸入時に1件ずつ課税する方式を見送り、販売の時点で課税し、取引を大きく仲介する運営会社に納税させる仕組みを選んだ。最初の指定は、2027年6月30日までの届け出をもとに国税庁長官が行う。届け出がなくても、要件に当たると認めれば長官は指定できる。ピンドゥオドゥオの国内物流は、中国の宅配便の単価を扱った記事で取り上げた。

※2026年10月17日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版は中国の起業家像の変化を論じる記事でしたが、日本の税関の統計、財務省による税制改正の解説、運営会社が米証券取引委員会に提出した書類、ソフトバンクグループの開示をもとに、中国系通販による少額輸入と消費税の新しい制度に主題を改めました。旧版にあったティームーとティックトックの月間利用者数、海外売上が国内を上回る中国の上場企業の数、内部資料に基づくバイトダンスの半導体の記述は、一次資料で確かめられないため削除しました。アント・グループの上場延期について、「史上最大」の上場が「批判の直後」に差し止められたとした記述は、アリババの開示に基づく内容に改めました。中国の起業家が政府の統制を恐れて表に出なくなったとした記述は、ピンドゥオドゥオの創業者の退任について会社が開示した理由と合わないため改めました。ソフトバンクグループの投資判断についての推測は、同社の開示に置き換えました。ティームーを日本の中小企業の新たな販路とした記述は、運営会社が主な出店者は中国の事業者だと開示しているため削除しました。

投資家向けの個別銘柄レポートと技術デューデリジェンスのご相談は、編集部のお問い合わせ窓口までお寄せください。