米国務省は9月3日、製造業の起業家や技術者を育てるファウンドリー・スクールを始め、講師の出身国に日本を挙げた。開催校には、ホンダが寄付を重ねるオハイオ州立大学や、日本の電池会社と人材育成で連携するカンザス大学が入る。

発足式で、マルコ・ルビオ米国務長官は、冷戦の終わりのころの米国が「どこで作っても関係ない」と考えたのは大きな誤りだったと述べた。日本は戦後、中国との経済関係を深めてきた。1979年から約3兆6,600億円の対中政府開発援助 (ODA) を供与し、日本企業は中国での生産を広げた。日本の対中直接投資は2025年に2021年の約7分の1まで減ったが、日本の輸入の23.6%は今も中国からで、2000年の14.5%より高い。

ルビオ長官は冷戦の終わりのころの考えを誤りとし、重要鉱物の加工と製造業の立て直しを挙げた

ルビオ氏は、国務省の改革は世界の変化の速さに合わせて動ける役所にするためだったと切り出した。経済の動きの多くは国境を越えており、この取り組みは省庁を横断する課題だとした。そのうえで、冷戦の終わりのころの米国の指導者は、最も効率のよい場所で最も安く作れば企業の利益が増え消費者の負担も下がると考え、どの国も市場経済の民主主義国になり米国に似てくるという幻想を抱いたと述べた。実際には国民国家もナショナリズムも国境も意味を失わず、各国は常に自国の利益に沿って動いた。その結果、米国は製造業の空洞化が進み、大きな機械だけでなく21世紀の経済を支える基本的な部品の一部まで作れなくなったと語った。

ルビオ氏によると、米国は数年前、経済だけでなく安全保障や国の存立に欠かせない多くの物を、他国に危ういほど頼っていると気づいた。誤りを正すのは複数の政権にわたる仕事だが、今の政権は中枢が自ら取り組み始めたとし、方法を2つ挙げた。1つは原材料の確保で、重要鉱物そのものだけでなく、それを加工する能力にも力を入れる。もう1つは製造業を国内に取り戻すことで、21世紀の製造業は20世紀より多くの技能を要し、働き手は職業人生で何度も学び直す必要が出てくることも多いと述べた。

大学の役割について、ルビオ氏は、米国の高等教育は画期的な研究を生み、米国の技術革新と経済力を支えてきた最大の強みだが、生み出したものの多くが海外で作られているのは残念だと述べた。既にある大学を、働き手が技能を得る場に作り替えればよいという。米国の若者は、借金をして大学を出ても次の学位に進む資格が得られるだけか、学位が無くても就けた仕事にしかつながらないのではと疑問を抱いている。ルビオ氏は、この課程を修めればすぐに高給で安定した仕事に就ける技能が身に付くと訴えた。働き手を求める企業、技能を教える大学、政策で後押しする政府の3者が連携するとし、事業は2年や2年半で終わるものではなく、1世代をかけて続ける必要があると強調した。ニューヨーク連銀によると、学生ローンの残高は2026年4〜6月期に1兆6,500億ドルで、新卒の失業率は約5.6%、学位に見合わない仕事に就く新卒の比率は42%だった。

米国の統計では、製造業全体の実質付加価値は増えており、大きく減ったのは働く人の数だった。米労働統計局によると、米国の製造業の雇用は1979年6月の1,955万3千人がピークで、2026年8月は1,263万8千人 (速報) と約690万人減った。ただし冷戦の終わった直後は減っておらず、1991年12月の1,691万7千人から2000年1月は1,728万4千人だった。大きく減ったのは2000年から2010年2月 (1,143万9千人) の間だ。米経済分析局によると、製造業の名目付加価値の国内総生産 (GDP) に占める比率は1997年の16.1%から2025年は9.4%に下がったが、実質付加価値は1兆3,790億ドルから2兆3,960億ドルへ約74%増えた。

バンス副大統領は「産業の安全保障は国家安全保障」とし、設備投資の減税と手を動かす仕事の価値を説いた

J・D・バンス米副大統領は、ルビオ氏の話に同意したうえで、ミシガン大学を入れずにオハイオ州立大学を入れるなら話すとヘルバーグ氏に伝えたと冗談を言い、母校の参加を喜んだ。原則を3つ挙げた。1つ目は、産業の安全保障は国家安全保障だということだ。過去20〜30年で、国内で十分に作れなければ敵対国につけ込まれ、国が弱くなると思い知ったと述べた。敵対国だけでなく世界的な感染症でも同じことが起き、新型コロナウイルスの流行の間、国内で医療用ガウンやマスクを十分に作っておらず、手術が取りやめになったと語った。解決するには米国内に製造業を取り戻すしかないとした。

2つ目の原則は、西側の経済は製造業から金融とサービス中心に移るという考えが根本から誤っていたことだ。バンス氏は金融やサービス業を否定するわけではないとし、金融は資金を有望な産業に振り向けるのに欠かせないが、経済の土台はものづくりだと述べた。会場は米国平和研究所の建物で、国務省は2025年12月からここを「ドナルド・J・トランプ平和研究所」と呼んでいる (報道)。バンス氏もこの名で呼び、ワシントンには「自国で十分に作らなくても経済は回る」という超党派の合意があったが中西部などの地方には無く、トランプ大統領がこれを変えたと述べた。約1年半前に成立した税法で設備投資を促し、米国で生産する国や企業は政策で優遇する一方、雇用を国外に移す企業や、供給網を不安定で敵対的な国に頼る企業は優遇しないとした。

3つ目の原則は、産業だけでなく働き手に投資することだ。バンス氏は、西バージニア州の炭鉱の町で育ち米航空宇宙局 (NASA) の技術者になったホーマー・ヒッカム氏の自伝「ロケット・ボーイズ」(映画「遠い空の向こうに」) を挙げ、15歳で将来が見えない子どもを見限らず、教育に投資したから才能が開花したと述べた。自身がオハイオ州立大学やイェール大学の法科大学院にいたころは、稼ぎたければ法律家になるか、金融や銀行に進めと言われた。バンス氏は、ファウンドリー・スクールを通じて、ものづくりの仕事は収入の面でも誇りの面でも将来性があると若い世代に伝えるとした。テレビ番組「ダーティ・ジョブズ」で知られ親交のあるマイク・ロウ氏の問題意識を紹介し、数十万ドルの学生ローンを抱えても製造業で働くための技能を持たない人が多いのは、手を動かす仕事は劣ると教えてきたからだとした。手を動かす人は頭を使っていないという考えは、米国の指導者が子どもたちに言ってきたことの中でも、とりわけ愚かな考えだと述べた。

2人の発言と国務省の資料を、一次資料と照らした結果は次の通り。

発言一次資料照合
冷戦の終わりのころから製造業が空洞化した (ルビオ氏)雇用は1979年の1,955万3千人から約690万人減、減少は2000年代に集中。実質付加価値は1997〜2025年に約74%増雇用の減少は2000年代
2033年までに380万人の技能人材が要る (国務省の資料)元はデロイトと製造業研究所の2024年4月の報告で、2024〜2033年に製造業の全体で最大380万人、190万人が埋まらない恐れ業種を限った数ではない
約1年半前に成立した税法 (バンス氏)2025年7月4日に成立で約1年2か月前。設備の即時償却を恒久化、製造用の建物の即時償却は2029年より前の着工に限る時期が食い違う
マスクやガウンが足りず手術が取りやめ (バンス氏)米政府の2020年3月18日の勧告は防護具・病床・人工呼吸器の温存を理由に挙げた。国内生産の比率はガウンや手袋で低く、N95マスクで高かったガウンは一致、マスクは一部
数十万ドルの学生ローン (バンス氏)連邦の学生ローンで10万ドル以上の借り手は約8%、20万ドル以上は約2.6% (120万人)借り手全体では少数

ヒッカム氏は1943年に西バージニア州コールウッドで生まれ、1981年から1998年まで NASA のマーシャル宇宙飛行センターで航空宇宙技術者を務めた。自伝は1998年に刊行され、映画は1999年2月に公開された (西バージニア百科事典)。ロウ氏は2008年に熟練労働の地位を高めるための財団を設立した。バンス氏は国外に生産を移す企業を優遇しないと述べたが、関税などの具体策には触れなかった。

ファウンドリー・スクールは大学8校で17回、講師は日本などパックス・シリカの参加国・地域からも招く

米国務省のファクトシート (9月3日) によると、ファウンドリー・スクール (Foundry School) は、起業家・技術者・技能者・産業界のリーダーを育てる人材育成講座だ。英語の foundry はもともと鋳物工場を指す。ジェイコブ・ヘルバーグ経済担当国務次官が発足式を主催し、スタンフォード大学がカリキュラムを作る。アリゾナ州立大学、ジョージア工科大学、オハイオ州立大学、ペンシルベニア州立大学、カンザス大学、バンダービルト大学、セントルイスのワシントン大学の7校も講座を開く。スタンフォード大学を含む8校で計17回の講義があり、先端製造業の創業者や最高経営責任者 (CEO) が講師を務める。2026年9月から7校で各1回、工場の設計、材料と供給網、組立ラインの設計、工場の採算、規制と許認可、大規模な人材育成などを扱う。2027年1月からはスタンフォード大学で精密工具、工場の自動化、品質管理、新製品の立ち上げ、製造のデジタル化、資本財、エネルギー、立地選定、防衛装備品の生産、失敗した製造事業の教訓の10回を開く。アリゾナ州立大学は、国務省と労働省の共同事業だと発表した。

講師は、米国と、日本・韓国・台湾・インドなどパックス・シリカ (Pax Silica) の参加国・地域から招く。パックス・シリカは米国が主導する経済安全保障の枠組みで、AI 産業を支える供給網と生産基盤を強めるため、各国の政府・企業・大学を結ぶ。国務省はファウンドリー・スクールを、その中核となる取り組みと位置づけた。議会と組んで参加国・地域の受講を支えるという。2025年12月11日に山田重夫駐米大使が日米の共同声明に署名し、日本は翌12日にワシントンで開かれたパックス・シリカ・サミット (日本からは赤堀毅外務審議官が出席) で、米国・豪州・イスラエル・韓国・シンガポール・英国とともに宣言に署名した (外務省)。宣言は戦略分野に先端製造を挙げる。国務省の初回の資料は、参加国の企業としてソニー・日立・富士通を挙げた。講座の構想は2026年6月26日の2回目のサミットで初めて示され、参加国・地域の大学が自国で採用できるカリキュラムとされた。講師を出す日本企業の名前は、9月27日時点で国務省も大学も公表していない。

発足式には、米メタのディナ・パウエル・マコーミック社長 (オハイオ州立大学の発表) や、独シーメンスの米国法人のアン・フェアチャイルド CEO (ペンシルベニア州立大学の発表) が出席した。パックス・シリカと日本株の関係は、米国務省が「AIは米側か中国側か」を迫るパックス・シリカの記事に詳しい。

開催校の州にはホンダ・パナソニック・日本製鉄などの工場があり、パナソニックは大学と人材育成で連携する

開催校8校のうち少なくとも6校の州に、日本の上場企業の工場がある。オハイオ州立大学はホンダ (7267)と1988年から関係を築き、同社からの寄付と受託研究は1億3,000万ドル超、研究案件は400件超に上る (同大学工学部、2025年11月2日)。ホンダのオハイオ州の累計設備投資は169億ドル、従業員は1万5,500人で、自動車の年産能力は46万台だ (ホンダの州別資料)。韓国の LG エナジーソリューションとの合弁会社 L-H バッテリーは、オハイオ州ジェファーソンビルの工場で7月6日に蓄電用の電池セルの量産を始めた。投資は44億ドル超、従業員は1,000人超だ。ホンダの米国事業はホンダの企業ページにまとめている。

パナソニック ホールディングス (6752)の電池子会社パナソニック エナジーは、2025年7月14日にカンザス州デソトの新工場で量産を始めた。年産能力は将来約32ギガワット時、直接雇用は最大4,000人で、同社はカンザス大学などと専門人材の育成で連携するとしている。開催校と日本企業が人材育成での連携を明記しているのを一次資料で確かめられたのは、パナソニック エナジーとカンザス大学の1件だった。工場の概要はパナソニック エナジーのページにある。ペンシルベニア州ピッツバーグに本社を置く USスチールは日本製鉄 (5401)が2025年に買収し、2028年までに全社で約110億ドルを新たに投じる。テネシー州 (バンダービルト大学) には日産自動車の3工場があり、従業員は1万1,000人超、累計の投資は149億ドルに上る。アリゾナ州 (アリゾナ州立大学) では富士フイルムが2022年に半導体材料の工場の拡張を発表し、ジョージア州 (ジョージア工科大学) にはホンダの変速機工場がある。

開催校州の日本企業規模 (各社の開示)
オハイオ州立大学ホンダ (大学に寄付と受託研究)累計投資169億ドル、従業員1万5,500人
カンザス大学パナソニック エナジー (大学と人材育成で連携)年産約32ギガワット時、雇用最大4,000人
ペンシルベニア州立大学日本製鉄 (USスチール)USスチール全体に2028年までに約110億ドル
バンダービルト大学日産自動車累計投資149億ドル、従業員1万1,000人超

米経済分析局によると、米国への直接投資の残高は2025年末に5兆8,600億ドルで、日本は最終投資国ベースで8,271億ドル、直接投資国ベースで7,763億ドルと、ともに首位だった。2025年に新たに行われた対米直接投資の初年度支出2,322億ドルのうち、日本は505億ドルで最大だった。業種別では製造業が全体の52.5%を占めた。日本は対米直接投資の残高でも新規の投資でも最大の出し手だった。

日本の対中直接投資は2021年の約7分の1に減ったが、輸入の2割超は今も中国から

日本は1972年9月29日の日中共同声明で中国と国交を正常化し、中国は日本への戦争賠償の請求を放棄した。1978年8月12日には日中平和友好条約に署名した。外務省によると、1979年に始まった対中 ODA は円借款約3兆3,165億円、無償資金協力約1,576億円、技術協力約1,858億円で、3つの合計は約3兆6,600億円 (2020年度時点、編集部の合算) になる。外務省は、ODA が日本企業の中国での投資環境の改善や日中の民間経済関係の進展にも大きく寄与したとしている。対中 ODA は2018年度で新規の採択を打ち切り、2021年度末にすべての事業が終了した。

ジェトロの集計 (国際収支ベース) によると、日本の対中直接投資は1990年の4億ドルから2005年に66億ドル、2012年に135億ドルに増えた。2014年以降の統計では2021年の125億ドルが最も多く、その後は2022年に54億ドル、2023年に34億ドル、2024年に23億ドル、2025年は17億ドルと、2021年の約7分の1になった (2013年以前と2014年以降は統計が連続しない)。対外直接投資に占める中国の比率は2012年の11.0%から2025年は0.76%に下がり、2025年の米国向けは607億ドルだった。外務省の調査では、中国 (香港・マカオを含む) の日系企業の拠点は2019年に3万2,887、2020年に3万3,341、2024年に3万2,364で、2025年は2万6,273と1年で6,091減った。このうち6,035は上海総領事館の管内で、外務省は理由を示しておらず、実際に撤退した数とは限らない。

日本の対中直接投資は2012年の135億ドル、2021年の125億ドルから2025年に17億ドルへ。日本の輸入に占める中国の比率は1979年2.7%、2000年14.5%、2010年22.1%、2020年25.7%、2025年23.6%
日本の対中直接投資は2012年の135億ドル、2021年の125億ドルから2025年に17億ドルへ。日本の輸入に占める中国の比率は1979年2.7%、2000年14.5%、2010年22.1%、2020年25.7%、2025年23.6%

輸入での中国依存は下がっていない。財務省の貿易統計によると、日本の輸入に占める中国の比率は1979年に2.7%、2000年に14.5%、2010年に22.1%、2020年は25.7%で、並べた年の中で最も高かった。2024年は22.5%、2025年は23.6% (26兆6,999億円) だった (いずれも編集部の計算)。レアアースの中国依存度は、経済産業省によると、リサイクルや代替技術、鉱山の開発で2010年の約9割から2018年に約6割に下がった。ただし化合物に限れば、2025年も重量で92.6%を中国から輸入している (財務省の貿易統計、編集部の集計)。中国は2026年に入り、軍民両用品を日本の軍事用途向けに輸出することを禁じ、日本の企業・団体計80を輸出管理規制リストと注視リストに加えた。赤沢亮正経済産業相は1月9日、レアアースの供給で日本経済がかなり大きな影響を受けることは間違いないと述べた。対日措置の詳細は米中の貿易休戦の延長の記事へ。

日本の製造業の比重は米国の約2倍を保つが、就業者は1992年から約34%減った

生産額で見た製造業の比重は、日本は米国ほど下がっていない。内閣府の国民経済計算によると、名目 GDP に占める製造業の比率は1990年の26.5% (旧基準) から2000年22.2%、2010年20.9%、2020年19.8%、2024年は18.8%と、下がり方は緩やかで、米国の9.4%の約2倍を保つ。総務省の労働力調査によると、製造業の就業者は1992年の1,569万人がピークで、2000年に1,321万人、2010年に1,060万人、2025年は1,033万人だった。2010年代以降は1,000万人台前半で横ばいだが、ピークからは536万人、約34%少ない (2003年の分類の変更による約20万人の断層を含む比較)。統計の種類と期間は違うものの、米国のピークからの減り方 (約35%) と近い。

製造業の名目 GDP 比率は日本が1990年26.5%から2024年18.8%、米国が1997年16.1%から2025年9.4%。製造業で働く人は日本が1992年1,569万人から2025年1,033万人、米国が1979年1,955万人から2026年8月1,264万人
製造業の名目 GDP 比率は日本が1990年26.5%から2024年18.8%、米国が1997年16.1%から2025年9.4%。製造業で働く人は日本が1992年1,569万人から2025年1,033万人、米国が1979年1,955万人から2026年8月1,264万人

人手不足は既に統計に表れている。ものづくり白書2026年版によると、中小企業の従業員数の過不足を示す指数は2025年にマイナス17.9で人手が足りず、人材育成の問題には62.8%が「指導する人材が不足している」と答えた。九州経済産業局によると、九州の半導体産業ではオペレーターや生産技術職を中心に年1,000人程度が不足する見込みで、2022年3月に設けた九州半導体人材育成等コンソーシアムは152機関に広がった。対象は違うが、日本には技術者を若いうちから育てる高等専門学校 (高専) が国公私立で58校あり、約6万人が学ぶ (文部科学省)。

国家安全保障戦略は中国の対外姿勢を「最大の戦略的な挑戦」とし、補助金は国内の半導体へ

日本の国家戦略の書きぶりも変わった。2013年の国家安全保障戦略は、中国の対外姿勢や軍事動向を国際社会の懸念事項としつつ、あらゆる分野で「戦略的互恵関係」を築くとした。2022年12月の戦略は、中国の対外姿勢や軍事動向を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置づけ、特定の国への過度な依存を下げ、レアアースなど重要な物資の安定した供給を確保するとした。同時に、中国とは主張すべきは主張し、共通の課題では協力する「建設的かつ安定的な関係」を築くともしている。2025年10月31日に韓国・慶州で開いた高市早苗首相と習近平国家主席の会談でも、両首脳は戦略的互恵関係を推し進めることを確認した (首相官邸)。ただ、高市首相が11月に台湾をめぐって国会で答弁した後、中国は水産物の輸入停止や日本への渡航を控える呼びかけ、対日の輸出規制を重ね、首脳会談は2026年に開かれていない。中国外務省は、首相の台湾をめぐる言動が関係の障害だとしている。

政策の手当ても重なった。2022年5月に成立した経済安全保障推進法の下で、政府は半導体や永久磁石、重要鉱物など16の特定重要物資を指定し、約2兆5,600億円の予算で164件、最大助成額約1兆7,900億円の計画を認定した (内閣府、2026年9月11日時点)。台湾積体電路製造 (TSMC) の熊本県菊陽町の第1工場に最大4,760億円、第2工場に最大7,320億円を助成し、ラピダスには2026年度までに委託費と出資で約2兆5,800億円を措置している (編集部の集計)。2020年に始めた生産拠点の国内回帰などを支える補助金の予算は計約5,273億円だった。日本の補助は、工場の建設と先端半導体の開発に集中している。

米国と比べた日本の違いは3つ、ホンダやパナソニックの州で講座が開く中、輸入の中国依存と人手不足が残る

米国の取り組みと日本の現状には、違いが3つある。1つ目は人材育成の形だ。米国は政権の中枢が旗を振り、企業・大学・政府が組んで人を育てる講座を始め、1世代をかけて続ける必要があるとした。日本の半導体の支援は工場ごとの助成が中心で、人材の育成は九州などの地域のコンソーシアムや高専が担っている。2つ目は依存の度合いだ。日本の対中直接投資は2021年の約7分の1になったが、輸入に占める中国の比率は2000年より高い。3つ目は日本の立ち位置だ。国務省は講師の出身国に日本を挙げたが、講師を出す日本企業はまだ名乗り出ていない。

ルビオ氏の言う誤りは、どこで作っても関係ないと考えて自国の製造業を細らせたことだった。日本は製造業の比重を米国の約2倍に保ち、対中直接投資も大きく減った。一方で、輸入の23.6%を中国に頼る構造は変わらず、製造業の就業者はピークから約34%少ない。ホンダはオハイオ州、パナソニック エナジーはカンザス州、日本製鉄は USスチールを通じてペンシルベニア州で工場を動かしており、いずれも開催校と同じ州にある。両氏は国名を挙げなかったが、米国が挙げた重要鉱物の加工と製造業の人材は、日本でもレアアースの対中依存と製造業の人手不足として数字に表れている。

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