米中が貿易休戦を2027年1月10日まで延ばしても、中国の対日措置は残る。休戦で停止した中国の輸出規制は日本向けにも及ぶ一方、軍民両用品の対日輸出禁止 (軍事用途向け) や2つのリスト、ジクロロシランへの反ダンピング調査は続く。

ベッセント米財務長官が9月23日、米フォックス・ニュースの報道番組「スペシャル・リポート」で、休戦を1月10日まで延ばすことで中国と合意したと明かした。中国外務省が9月26日に公表した米中の合意事項は期限の延長に触れたが、米中とも公式文書に期日は無い。中国外務省の郭嘉昆報道官は9月24日、2か月の延長に同意したのかと問われ、中国の担当部門に問い合わせるよう促すにとどめた。一方、中国は2025年11月以降、日本を名指しした措置 (対日措置) を重ねてきた。2026年に入ってからは、軍民両用品の対日輸出禁止 (軍事用途向け)、日本の企業・団体を載せた2つのリスト (輸出管理規制リストと注視リスト)、信越化学工業などが輸出するジクロロシランへの反ダンピング (不当廉売) 調査の仮決定を打ち出した。いずれも米中の休戦の対象外だ。東京エレクトロンとキオクシアは、どちらのリストにも名前が見当たらない。両社に関わりうるのは、休戦で止まっている中国のレアアース規制 (公告第61号) のほうだ。

延長の期日1月10日は長官の発言にしか無く、米中の公式文書には無い

長官は会談の結果として、「釜山合意」と呼ぶ貿易休戦を延長することで合意したと述べた。期限は11月10日だったが1月10日まで延ばし、経済面の交渉に充てる時間を確保するという。9月20日の協議も当日朝の会談も「非常に生産的だった」とし、延長はあと2か月だと述べた。

米中の公式文書は期日を書いていない。中国商務省の何亜東報道官は9月24日の定例会見で、ニューヨークの協議の議題として、関税の相互引き下げ、貿易委員会と投資委員会の設立とともに、貿易休戦の期限の延長を挙げた。報道官は多くの点で合意したと述べたが、期日には触れていない。中国外務省が9月26日に公表した8項目の合意事項も、第5項で300億ドル分の品目の相互の関税引き下げに続けて、期限の延長に触れるだけだ。ホワイトハウスが9月25日に公表したファクトシートには、延長の記述そのものが無い。米国側では、財務省・ホワイトハウス・通商代表部・連邦官報のどれにも、9月27日時点で1月10日を示す文書は無い。

呼び名も米中で食い違う。2025年10月30日に韓国の釜山で開いた首脳会談で、両首脳はその直前にマレーシアのクアラルンプールで閣僚がまとめた合意を確認した。米国は首脳会談の開催地にちなんで「釜山合意」と呼び、中国は閣僚協議の開催地にちなんで「クアラルンプール経済貿易協議の共同の取り決め」と呼ぶ。

放送は9月23日 (米東部時間) の夜で、習近平国家主席がワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地に着いた直後だった。新華社によると、習氏は同日午後に到着し、トランプ大統領夫妻が駐機場で出迎えた。司会は「10年以上ぶりの訪問」と紹介した。国賓としての訪米は2015年9月以来11年ぶりだが、習氏は2023年11月14〜17日にアジア太平洋経済協力会議 (APEC) の首脳会議でサンフランシスコを訪れている (中国外務省、2023年11月15日)。

ベッセント氏はこの日、中国の貿易交渉を率いる何立峰副首相と予定外の会談を開いた。長官によると、2人は9月20日 (日) にもニューヨークで約12時間協議したが、課題が残っていた。9月23日の会談は、小さな案件を積み重ねるのではなく、より包括的な合意ができるかを探るためだったという。ニューヨークの協議にはグリア米通商代表部代表も加わった。中国商務省はこれを米中の経済貿易協議の「第8回」と呼ぶ。何氏の訪米は9月19〜23日だった。協議が約12時間に及んだことや、9月23日の会談が世界銀行で開かれたことは長官の発言と報道でしか確かめられず、米財務省は会談の概要を公表していない。

司会は「中国は2年を望み、米国は2か月を求めた」との報道を挙げ、その間に包括的な合意ができるのかと尋ねた。長官は、包括的な合意になるか、今の休戦を続けるだけかは分からないと答えた。そのうえで、履行の不十分な約束について中国に期待を伝えたと述べた。中国が2年を望んだとする報道の出所は明らかでない。香港の英字紙ザ・スタンダードは、市場は6か月程度の延長を見込んでいたと報じている。

中国のレアアース規制の停止は日本にも及ぶ、東京エレクトロンとキオクシアに関わるのは公告第61号

延長の対象とみられるのは、2025年11〜12月に米中がそれぞれ1年を期限に止めたり延ばしたりした措置だ。延長される措置を列挙した公式文書は無い。期限は米国側が11月9日、中国側が主に11月10日だ (米国を名指しした公告第72号の停止は11月27日まで)。一方、中国の対日措置と、2025年4月からの中・重希土類の輸出許可制は、停止の対象に入っていない。

措置期限根拠の文書
米商務省: 関連会社ルールの適用2026年11月9日連邦官報 (2025年11月12日)
米通商代表部: 通商法301条の造船などへの措置2026年11月9日連邦官報 (2025年11月13日)
米通商代表部: 301条の関税の適用除外178件2026年11月9日連邦官報 (2025年12月1日)
中国: 対米追加関税のうち24%2025年11月10日から1年国務院関税税則委員会 (2025年11月5日)
中国: レアアースなどの輸出規制6件2026年11月10日商務省・税関総署 公告第70号 (2025年11月7日)
中国: 中・重希土類7種の輸出許可制停止の対象外商務省・税関総署 公告2025年第18号 (2025年4月4日)
中国: 軍民両用品の対日輸出禁止 (軍事用途向け)停止の対象外商務省 公告2026年第1号 (1月6日)
中国: 日本の企業・団体計40を輸出管理規制リストに追加停止の対象外公告2026年第11号 (2月24日)・第27号 (6月29日)
中国: 日本の企業・団体計40を注視リストに追加停止の対象外公告2026年第12号 (2月24日)・第28号 (6月29日)
中国: 日本産ジクロロシランへの反ダンピング調査の仮決定停止の対象外 (9月8日から保証金)商務省 公告2026年第37号 (9月7日)

関連会社ルール (いわゆる50%ルール) は、米商務省産業安全保障局 (BIS) の輸出規制の対象企業が50%以上を出資する子会社にも、同じ規制を広げる規則をいう。通商法301条は、不公正な貿易慣行に対して制裁関税などを課すことを認める条項だ。301条の措置の停止は米東部時間の11月9日23時59分までと定められている。中国の追加関税は24%分を止めたもので、10%は課したままだ。中国の公告第70号は、2025年10月9日に出した公告第55〜58号と、商務省公告第61・62号の輸出規制を、公告日から2026年11月10日まで停止すると定めた。条文に国の限定は無く、停止は日本向けの輸出にも及ぶ。米国を名指しした措置は、中国が2025年11月9日の公告第72号で別に止めた (ガリウム・ゲルマニウム・アンチモンなどの対米輸出を原則として認めない措置を2026年11月27日まで停止)。米国がフェンタニル対策や相互関税の名目で課していた追加関税は、米最高裁が2026年2月20日に国際緊急経済権限法 (IEEPA) では関税を課せないと判断したのを受け、同日の大統領令14389で廃止された。このため11月の期限の対象には入らない。

米中の休戦とは別に、日本に課されていた相互関税15%も同じ大統領令で2月24日に徴収が止まった。7月24日からは通商法301条に基づき、日本からの輸入品に既存の関税 (最恵国税率) を含めて12.5%の関税が課されている。自動車と自動車部品には、通商拡大法232条に基づく15%の関税が続く (米通商代表部の告示、ジェトロ)。赤沢亮正経済産業相は7月24日、2025年の日米関税合意を超える追加関税は日本に課されないことを確認したと述べた。関連会社ルールの停止が切れて適用が再開されれば、米国の輸出規制の対象となる品目を扱う日本の輸出企業も、取引先の出資比率を確かめる必要が出てくる (ジェトロ)。

東京エレクトロンとキオクシアに直接関わりうるのは、停止中の6件のうち公告第61号だ。第1項は、中国産のレアアースを価額ベースで0.1%以上含む海外製の規制対象の品目を輸出する場合にも、中国の許可を求める。2025年12月1日から施行する予定だった。第4項は、規制対象の品目の最終用途が次のいずれかに当たる輸出の申請を、個別に審査すると定める。14ナノメートル以下のロジック半導体や256層以上のメモリーの研究開発・生産と、それらの製造装置・試験装置・材料の研究開発・生産、軍事に転用される恐れのある AI の研究開発だ。

キオクシア (285A)は2025年2月に332層の第10世代 BiCS FLASH を発表し、2026年7月3日にサンプル出荷を始めた。NAND 型フラッシュメモリーはデータを記憶する素子を縦に積む層の数で世代が進み、332層は第4項の「256層以上」に入る。東京エレクトロン (8035)は、成膜・エッチング・塗布現像など前工程の製造装置の大手だ。規制が再び効けば、中国や第三国から該当する品目を買う場合、キオクシアのメモリーや東京エレクトロンの装置の生産に使う品目が、この審査の対象になりうる。両社がこうした品目をどれだけ国外から調達しているかは開示されていない。規制が止まっている今は、この審査は無い。延長が1月10日までなら、規制が再び効くかどうかの節目は当初の11月10日から2か月先に延びるだけで、前回のように1年延ばした場合と比べてずっと早く来る。両社の事業の全体は企業データベースのキオクシアと東京エレクトロンのページにまとめている。

2026年5月〜2027年1月の米中の日程。5月13〜15日トランプ氏が訪中、9月20日ニューヨークで閣僚協議、9月23〜25日習氏が国賓訪問、11月9日に米国の措置の停止が期限、11月10日に中国のレアアース輸出規制の停止が期限、11月18〜19日APEC首脳会議、12月14〜15日G20首脳会議、延長後の期限は2027年1月10日
2026年5月〜2027年1月の米中の日程。5月13〜15日トランプ氏が訪中、9月20日ニューヨークで閣僚協議、9月23〜25日習氏が国賓訪問、11月9日に米国の措置の停止が期限、11月10日に中国のレアアース輸出規制の停止が期限、11月18〜19日APEC首脳会議、12月14〜15日G20首脳会議、延長後の期限は2027年1月10日

対日措置は相次ぐ一方、日中首脳会談は2025年10月が最後

高市早苗首相が2025年11月、台湾をめぐって国会で答弁した後、中国は対日措置を重ねてきた。商務省は2026年1月6日の公告第1号で、軍民両用品 (軍事にも民生にも使える品目) を日本の軍事ユーザーや軍事用途、日本の軍事力の向上に役立つあらゆる最終用途に輸出することを禁じ、第三国を経由した移転にも法的責任を問うとした。2月24日と6月29日には、日本の企業・団体を2つのリストに加えた。軍民両用品の輸出を禁じる輸出管理規制リストには、三菱重工業の防衛・航空の子会社、川崎重工業の航空宇宙部門、IHI や NEC のグループ会社、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)、防衛大学校など計40の企業・団体が並ぶ。輸出の審査を厳しくする注視リストに載った40の企業・団体には、スバル、ENEOS、三菱マテリアル、TDK、トーキン、日東電工、住友重機械工業、三井E&S などが入った。商務省の報道官は6月29日、日中の正常な経済・貿易には影響せず、法令を守る日本企業は心配する必要はないと述べた。9月7日には、半導体の成膜に使うガスの日本産ジクロロシランについて、反ダンピング調査で仮決定を出し、9月8日から信越化学工業を含む日本企業の製品の輸入者に一律99.2%の保証金を求めた。東京エレクトロンとキオクシアは、どちらのリストにも名前が見当たらない。輸出管理規制リストの顔ぶれは輸出管理規制リストに載った日本の40の企業・団体の記事にまとめている。

対日措置の後、輸入の統計にも変化が出ている。国連の貿易統計データベースに収録された財務省の貿易統計を編集部で集計すると、レアアース (希土類) の化合物の輸入のうち中国からの分は、2025年は重量で92.6%を占めた。2026年の1〜3月と5〜7月の6か月 (4月と8月は未収録) では、中国からの輸入量が前年同期より41.6%減り、中国の比率は前年同期の93.0%から85.9%に下がった。中国税関総署の統計を引用した報道によると、6月の中国の対日輸出はガリウム・ジスプロシウム・テルビウム・イットリウムがゼロだった。香港紙によると、8月のレアアース磁石の対日輸出は212トンで、前年同月を17.1%下回った。

首脳・閣僚の対話は途絶えている。最後の日中首脳会談は2025年10月31日の韓国・慶州で、2026年には開かれていない。7月22日のマニラでは、茂木敏充外相と中国の王毅外相の正式な会談は見送られたと報じられた。中国外務省の郭嘉昆報道官は9月15日、「高市首相の台湾に関する誤った言動が日中関係の最大の障害だ」と述べた。中国外務省は2025年11月19日に日本の水産物の輸入停止について説明し、中国人に日本への渡航を控えるよう求める呼びかけを2026年3月26日までに4回出した。どちらも解除の発表は見当たらない。赤沢経済産業相は1月9日、日本だけを狙った措置は決して許容できず極めて遺憾だとし、米国や主要7か国 (G7) と連携すると述べた。高市首相は9月22日 (日本時間23日) にニューヨークでトランプ大統領と会談し、米中首脳会談も念頭に、中国をめぐる課題で緊密に連携することで一致した (外務省)。ただ、9月26日の米中の8項目の合意事項は日本に触れていない。8項目の合意事項が日本に触れていない以上、対日措置は米中の休戦の延長では解けない。

首脳会談は年4回の可能性、11月の深センと12月のマイアミ近郊は出席の意向どまり

司会は、今回の会談で大統領が具体的な成果として示せるものは何かと尋ねた。長官は、今回が今年2度目の対面の会談だと答えた。世界最強の国と世界第2の経済大国の首脳が、史上初めて年4回会う可能性があるという。5月の北京、今回のワシントン、11月の深セン、12月にマイアミ近郊のドラルで開く主要20か国・地域 (G20) 首脳会議の4回だ。

トランプ大統領の国賓としての訪中は2026年5月13〜15日だった (中国商務省、5月20日)。ホワイトハウスは5月17日のファクトシートで、米大統領の訪中は2017年以来だとした。APEC 首脳会議は2026年11月18〜19日に深センで開く (中国国際テレビ、CGTN)。G20 首脳会議は12月14〜15日に、トランプ氏が所有するゴルフ場「トランプ・ナショナル・ドラル」で開くと報じられている。ホワイトハウスは9月25日の同じ文書で、両首脳は互いが主催する首脳会議に「出席する意向」だと書き、中国外務省の9月26日の発表も「出席する意向がある」とする。11月と12月の会談は、どちらも決まったわけではない。

300億ドル分ずつの品目の関税は撤廃でなく優遇、細目のリストは未公表

長官は、北京会談で始めた取り組みの一つとして、米中が300億ドル分ずつ、重要度の低い品目の関税を撤廃できるかを探ると述べた。司会が「それが貿易委員会か」と確かめると、長官は「そうだ、30対30と呼んでいる」と答えた。

公式文書の書き方は長官の言葉と少し違う。ホワイトハウスの9月25日のファクトシートは、安全保障に関わらない品目について、米中が300億ドル分ずつ関税を優遇する案をまとめることで合意したと書く。米国から中国へ出す品目は農産品・魚介類・丸太と木材・化粧品・医療機器、中国から米国へ入る品目は小型家電・玩具・季節の装飾品・チャイルドシートだ。中国商務省は5月20日の解説で、規模はそれぞれ300億ドル以上で、最恵国税率以下の税率を適用する見込みだとした。どちらも「撤廃」とは書いていない。貿易委員会は5月の北京会談で設けた協議の場で、ホワイトハウスは今回これを本格的に始動させたとする。9月27日時点で、対象品目の関税分類番号の細目のリストも連邦官報の告示も出ておらず、「30対30」という呼び方は公式文書に無い。9月20日のニューヨークの協議の時点で詰めていた品目と関税の水準は、米中協議の関税引き下げの記事に詳しい。

長官は、金融サービスや農産物の購入についても、おそらく発表があると述べた。9月25日のファクトシートと中国の8項目の合意事項には、金融サービスの項目も、新たな農産物の購入額の約束も無い。農業に関して盛り込まれたのは、農産物の市場開放を話し合う作業部会の設置と、中国が2027年と2028年に米国産の石炭を少なくとも1,000万トンずつ輸入することだった。

大豆は約束の2,500万トンに対し出荷1,194万トン、170億ドルの農産物は長官が「やや遅れ」

司会は、農産物の購入はこれまでも聞いてきた話で、農家も同じ思いだと指摘し、11月の中間選挙の前に政治的な成果として示せるのかと迫った。長官は、中国が約束を守っているかを確かめたいとし、中国は今年ここまで約束をよく守っていると答えた。大豆は2,500万トンの購入で合意し (長官は最初に「2,500万ドル」と言い、トンに言い直した)、中国はきちんと履行しているという。一方で、ほかに約170億ドルの農産物の約束があり、予定よりやや遅れているとみており、巻き返しを促しているとも述べた。

約束の中身はホワイトハウスの発表で確かめられる。2025年11月1日のファクトシートは、中国が2025年の最後の2か月に1,200万トン、2026年から2028年まで毎年2,500万トン以上の米国産の大豆を買うとした。2026年5月17日のファクトシートは、大豆とは別に、2028年まで毎年170億ドル以上の米国産の農産物を買うとした。2026年分は日割りで計算する。

米農務省の輸出成約報告を2026年1月8日の週から9月17日の週まで足すと、中国向けの大豆の出荷は1,194万トンで、2,500万トンの47.8%だった。成約から取り消しを引いた純成約は1,557万トンで、62.3%に当たる。純成約のうち547万トンは2025年秋に収穫した旧穀、1,010万トンは2026年秋に収穫する新穀だ。9月17日時点で、中国向けの新穀の未出荷の成約は940万トンある。未出荷の940万トンが年内にすべて出荷されれば、出荷済みの1,194万トンと合わせて2,134万トンとなり、約束の85%に当たる (編集部の計算)。このほか仕向け地が決まっていない純成約が300万トンあり、一部は中国向けの可能性がある。米国の大豆の輸出は新穀が出回る秋から冬に集中するため、9月の時点で出荷が5割に届かなくても、遅れているとは限らない。2025年末の1,200万トンについては、12月25日の週までの中国向けの成約合計が642万トンで、約束の約54%だった。170億ドルの進み具合は、公表資料では確かめられなかった。

日本にとって、米国は大豆の最大の調達先だ。財務省の貿易統計を編集部で集計すると、日本の2025年の大豆の輸入は331.2万トンで、うち米国産は228.2万トンだった。2026年1〜7月は数量で70.2%を米国産が占める。中国が約束した2,500万トンは、日本が2025年に米国から買った量の約11倍に当たる。ホワイトハウスは2025年9月5日のファクトシートで、日本がトウモロコシや大豆などの米国産農産物を年80億ドル分買うとしている。

中国向けの米国産大豆。2026年の約束2,500万トンに対し、純成約1,557万トン (62.3%)、出荷1,194万トン (47.8%)。2025年11〜12月の約束1,200万トンに対し、12月25日の週までの成約642万トン
中国向けの米国産大豆。2026年の約束2,500万トンに対し、純成約1,557万トン (62.3%)、出荷1,194万トン (47.8%)。2025年11〜12月の約束1,200万トンに対し、12月25日の週までの成約642万トン

米中は AI 対話とホットラインの設置で合意、中国は放送の3日後に文書で確認

司会は、米国が中国と AI を巡る新たな対話の枠組みを設けたと切り出した。大統領が AI を「超知能」と呼んでいることに触れ、何かあったときのホットラインのようなものだが、中国政府が公に同意したとはまだ聞いていないと述べた。長官は、中国は同意すると思う、中国は AI を巡る米国との対話に非常に意欲的だと答えた。米国が大きく先行し、中国はそれに次ぐが、ほかのどの国よりもはるかに先を行っているという。中国側の発表には、米国の優位を認める記述は無い。

ホワイトハウスが5月17日に出した北京訪問のファクトシートには、AI の記述が無かった。9月20日のニューヨークの協議で、米国が AI 対話と、重大な問題が起きたときに互いに通報するホットラインを提案したと、米経済専門局の CNBC が報じた。中国中央テレビは9月21日、双方が AI の問題について対話したとだけ伝えた。ベッセント氏は同じ9月21日の CNBC で、米中の AI 対話を正式なものにし、おそらく2か月後に深センで再び会うことで合意したと述べた。トランプ大統領は9月22日の国連総会の演説で、AI を今後は正式に「超知能」と呼ぶと宣言した。中国商務省は9月24日、何副首相とベッセント長官が、米中の経済貿易協議の枠組みの下で AI について初めて対話したと説明した。

9月25日の首脳会談で、習氏は「米中はともに人工知能の大国だ」と述べ、AI の対話を続けていける、人間が AI の技術を管理し続けなければならないとした (中国外務省)。同日のホワイトハウスのファクトシートは、両首脳が「超知能」という語を使うことで合意し、米国が「超知能対話」と呼ぶ米中の AI 対話を設け、次の協議を2026年11月までに開くと書く。両首脳は、超知能を巡って不測の事態が起きたときの緊急時の直通回線 (ホットライン) を設けることでも合意したとしている。中国が文書で同意を示したのは、放送の3日後の9月26日だ。中国外務省が公表した8項目の合意事項の第7項 (新華社も同じ内容を配信) が、AI 対話を設けて11月に次の対話を開くこと、AI を巡る不測の事態の連絡の経路を設けることを挙げる。中国外務省の報道官は同じ9月26日、「超知能」という呼び名について、米側の立場を重視し、米側の言い方も尊重すると述べた。中国側は自国の文書では「人工知能」と書いている。

長官は、最も深刻なリスクが何かを中国と詰めていると述べ、制御できない AI エージェントや、非国家主体が AI を悪用したサイバー攻撃・生物兵器による攻撃を挙げた。ホットラインの用途はまだ決まっていないが、実際に起きた事案、特に被害が国境を越えた事案について話し合いたいという。米中の公式文書はリスクの中身を具体的に挙げておらず、「リスクと利益」と書くにとどまる。3つの類型は長官の口頭の説明だ。米中は2024年5月14日にジュネーブで AI のリスクと安全を話し合う政府間の対話を開き (米国家安全保障会議の声明)、同年11月16日のリマでの首脳会談では、核兵器の使用の判断は AI でなく人間が下すことで合意している。

米スタンフォード大学の AI インデックス2026年版は、米中の AI モデルの性能の差は事実上なくなり、2026年3月時点で首位の米アンソロピックのモデルと中国勢の差は2.7%にとどまるとした。民間の AI 投資では米国が2,859億ドル、中国が124億ドルと大きく開いている。半導体では、米商務省が2026年1月13日、米エヌビディアの H200 と米 AMD の MI325X の中国向けの輸出を、条件付きで個別に審査する方式に改めた。エヌビディアは8月26日に出した四半期報告書で、中国向けの販売はデータセンター部門の売上高の1%未満だとしている。AI の性能の比べ方や米中のモデルの違いはAI 技術の体系解説にまとめている。

日本は、米中の超知能対話にもホットラインにも加わっていない。日中の政府間の AI 対話も確認できない。日本が2026年7月14日に閣議決定した AI 基本計画の第Ⅱ期は、エージェント型 AI が自律的に実行するサイバー攻撃、化学・生物・放射性物質・核・爆発物 (CBRNE) を使うテロ、責任の所在の曖昧化をリスクに挙げ、サイバー攻撃と生物兵器の点で長官が挙げた類型と重なる。リスクの見方は近いが、民間の投資額は米国と大きく開いている。AI インデックスでは、日本の民間 AI 投資は2025年に11億1,000万ドルで14位と、米国の約260分の1だった。日本の AI セーフティ・インスティテュート (AISI) は4月時点で31人 (併任を含む) で、首相は英国並みの200人体制を指示した (内閣府、4月7日)。

司会は、長官が、大統領が新たに置く AI 政策の司令塔の有力候補の1人だとの報道を取り上げた。長官は、おそらくフェイクニュースだと否定し、政権の AI 政策には引き続き携わるが、AI 政策を率いるのはトランプ大統領1人だと述べた。報道は米ニュースサイトのセマフォーが9月22日に出したもので、ほかの候補に大統領府科学技術政策局のクラツィオス局長と人事管理局のクーパー局長を挙げていた。トランプ氏は9月19日の投稿で、「AI フォース」の創設と担当者の人選の発表を予告していた (報道)。9月25日の投稿では、ベッセント氏がこの役に就くことはない、そもそも本人が望んでいないと書いた。この分野を担っていたデービッド・サックス氏は、2026年3月26日に AI・暗号資産の担当を退き、大統領科学技術諮問会議の共同議長に移っている (報道)。

司会はさらに、長官が「責任を負うのは人間で、AI ではない」と語ったことを取り上げ、AI を巡る企業の賠償責任の問題も、結局は人間の責任だということかと尋ねた。長官は、100%人間の責任だと答えた。AI とエージェントを作るのは人間で、責任は人間にあるという。長官は9月21日の CNBC でも同じ趣旨を述べ、米ハギング・フェイスを巡る事案を挙げて米オープンAI の経営陣に責任があるとし、企業が責任を政府に転嫁することは認めないと語っていた。ホワイトハウスが2026年3月20日にまとめた AI 関連の立法に向けた提言は、第三者の違法な行為について AI の開発者を州が罰するべきではないとし、際限のない責任を負わせないとしている。開発者の責任を限定する点で、長官の発言とは力点が異なる。日本の総務省と経済産業省が3月31日に改めた AI 事業者ガイドライン第1.2版に法的拘束力は無く、責任の所在は事業者どうしの契約や自主的な取り組みで明確にするとしている。

長官は AI の話の締めくくりに、米マサチューセッツ工科大学 (MIT) の AI 研究機関の1つを率いるダニエル・ハッテンロッカー氏の論説を薦めた。先週の米ニューヨーク・タイムズに載ったとし、「全面的に同意する」と述べた。実際には、論説が載ったのは米ウォール・ストリート・ジャーナルのオピニオン面で、日付は2026年9月16日、題は「AI の失敗の責任は人間にある」だった。ハッテンロッカー氏は、2019年に MIT シュワルツマン・コンピューティング・カレッジの初代学部長に就いた。

原油の数字は先物でほぼ一致、実質賃金は統計と食い違う

番組は、トランプ大統領が5月の北京訪問中に司会の取材に答えた映像も流した。司会がガソリン価格はなお家計を圧迫するほど高いと問うと、大統領はバイデン時代より安く、海峡が開けばガソリンとエネルギーの価格は下がると答え、多少の痛みは伴うと述べた。このインタビューの放送は5月15日だった。全米のレギュラーガソリンの平均価格は5月11日の週に1ガロン4.500ドルと、第2次トランプ政権で最も高かった (米エネルギー情報局)。9月21日の週は4.478ドルで、全米自動車協会 (AAA) の9月26日の値は4.487ドルだった。バイデン政権の4年間の平均は3.457ドル、最高は2022年6月13日の週の5.006ドルで、「バイデン時代より安い」は最高値と比べれば当たり、平均と比べれば当たらない。

司会は、この日の原油価格は1バレル約92ドルでじりじり上がっていると述べ、原油が100ドルを超えた日数をオバマ政権308日、第1次トランプ政権0日、バイデン政権83日、第2次トランプ政権24日と示した。9月23日のニューヨーク商業取引所 (NYMEX) の WTI (米国産の標準油種) の期近の先物は、始値89.89ドル、終値92.16ドルだった。100ドル超えの日数を WTI の期近の先物の終値で数えると、オバマ政権307日、第1次トランプ政権0日、バイデン政権83日、第2次トランプ政権24日 (3月30日〜5月19日の間の17日と9月10〜18日の7日) で、ほぼ一致する。WTI の現物で数えるとオバマ政権297日・バイデン政権87日・第2次トランプ政権31日、北海ブレントの現物ではオバマ政権859日になり、どちらも合わない。

長官は、インフレには総合とコアの2種類があり、2月に始まったイランとの戦争による供給ショックは総合に表れているが、コアには広がっていないと説明した。コアは2.4%で5年ぶりの低さだと司会が補うと、長官も同意した。オハイオ州やミシガン州の家計の実感は違うと司会が迫ると、長官は経済は非常に強いと答え、放送当日の9月23日に出た購買担当者景気指数 (PMI) を挙げた。PMI は企業の購買担当者への調査で景気を測る指標で、50を上回ると拡大を示す。長官は民間の雇用が100万人以上増え、実質賃金が伸びているとし、バイデン政権では賃金の伸びがマイナスだったと述べた。

エネルギー価格について、長官は供給ショックを乗り越えれば、大統領の見方と同じく原油価格は大幅に下がるとし、イランとの戦争が収まれば購買力が戻ると述べた。今年だけで供給が大幅に増えたとも語った。戦争が無ければインフレ率は今ごろ目標に戻っていたとし、イランが核兵器を持てば、ガソリンは1ガロン6〜8ドルになりうると警告した (長官は最初に「バレル」と言いかけ、ガロンに言い直した)。核を巡る金額は仮定の話で検証できないが、名目の過去最高値 (1ガロン5.006ドル) を上回る水準だ。

司会は11月の投票の前に有権者に見てほしい数字を尋ね、長官は2つを挙げた。賃金の中央値が3.5〜3.7%上がっていることと、米国人の雇用が130万人生まれ、今も増えていることだ。製造業の復活は緒に就いたばかりで、ようやく加速してきたとも述べた。

これらの発言を、消費者物価指数 (CPI)、PMI、個人消費支出 (PCE) 物価指数などの統計と照らし合わせると次のようになる。

長官の発言統計照合
コアは2.4%、5年で最低8月のコア CPI 2.4% (7月2.5%)、2021年3月以来の低さ。総合は3.4% (9月11日公表)一致
PMI は2021年以来の強さ9月の総合58.4は2021年7月以来、サービス業58.7。製造業57.0は2022年5月以来。仕入れ価格の上昇は4年ぶりの速さ総合なら一致
民間の雇用が100万人以上増えた2025年1月から104万1,000人増。2024年12月からなら96万5,000人増起点しだい
実質賃金が伸びている8月の実質平均時給は前年比0.3%減。伸びているのはフルタイムの週給の中央値 (4〜6月期に前年比0.5%増) だけ食い違う
賃金の中央値は3.5〜3.7%増アトランタ連銀の指標は5月3.5%、6月3.6%、7月3.8%、8月4.1%5〜6月の値
米国人の雇用130万人該当する統計は見当たらない。非農業部門全体は80万7,000人増確かめられず
戦争が無ければ米連邦準備制度理事会 (FRB) の目標に戻った開戦前のコア PCE は1月3.10%、2月3.05%、目標は2%裏付け無し
今年だけで供給が大幅に増えた世界の石油の在庫は今年4億バレル減った (米エネルギー情報局、9月9日)裏付け無し

イラン制裁、長官の説明は財務省の発表や報道と3点で食い違う

司会は、米政府が1か月前にイランに対する「経済版 D デー」を始めたが、原油は今も約100ドルで、ホルムズ海峡の通航は細り、通るタンカーの多くが攻撃されていると指摘した。約100ドルは北海ブレントの値に当たり、9月23日の先物の終値は103.08ドル、前日の現物は114.89ドルだった。WTI の現物は9月22日に96.41ドルだった。

長官は、タンカーは撃たれても航行を続け、イランは3〜6機の無人機で追うが、米海軍が防いでいると答えた。長官によると、海峡からは日量1,000万〜1,500万バレル、多い日は1,700万バレルが出ている。開戦前は2,000万バレルだった。別の経路の約300万バレルを合わせると1,300万〜2,000万バレルになり、原油は春の高値から下がったという。米エネルギー情報局によると、2024年の海峡の石油の通過量は日量2,000万バレルで、海峡を通らずに出せるパイプラインの余力は約260万バレルだ。日量1,000万〜1,700万バレルという数字は、公表資料では確かめられなかった。民間の分析には、通過量を開戦前の60〜70%とするものがある。海峡の通航と日本の海運・エネルギー株への影響はホルムズ海峡の通航問題の記事で扱った。

日本は2025年、原油輸入の約93%を、ホルムズ海峡を通って運ばれるペルシャ湾岸の産油国に頼っていた (資源エネルギー庁、7月24日)。政府は国家備蓄の約50日分の放出を決め、民間の石油備蓄の義務日数を70日分から55日分に引き下げた。調達先も変わり、7月の石油統計速報では、原油輸入に占める中東からの割合 (中東依存度) は58.9%で前年同月より28.7ポイント低く、輸入先の首位は米国 (434万キロリットル) だった。

長官は、「エコノミック・アウトキャスト (経済ののけ者)」と名付けた作戦でイランをかつてなく締め付けており、イランの国外への航空便の8〜9割超が止まったと述べた。資金を出す者、商取引をする者、イランに物を売る者について、企業と銀行口座を日々追及していくと世界に明言したという。航空便の数字は確かめられなかった。米財務省は9月8日に航空会社27社を制裁したと報じられている。

司会は、中国は今もイラン産の原油の最大の買い手なのに、中国の大手銀行は制裁していない、中国と交渉中だから外したのかと尋ねた。長官は、中国とは非常によい話し合いをした、国によっては公の場より非公開で話す方がよいと答えた。米エネルギー情報局によると、2023年にイランの原油とコンデンセートの輸出の約90%を中国が買った。長官は公表した例として、アラブ首長国連邦 (UAE) の協力でエジプト第2の銀行の支店を閉じ、トルコの協力でトルコで30番目に大きい銀行を閉じたと挙げ、ロシア第2の銀行の国外の拠点にも制裁を科したと述べた (発言はここで途切れた)。トルコでは9月18日に、イランのメッラト銀行のイスタンブール支店の免許も取り消された (トルコの報道)。作戦を始めた8月24日から9月22日までの米財務省のイラン関連の発表に、日本企業の名前は出てこない。茂木外相は8月25日の会見で、米国の新たな対イラン制裁について、特に日本に関わる問題は出てこないのではないかとの見方を示した。

なぜイランは持ちこたえるのかと問われ、長官はイランを追い詰められた獣にたとえた。6週間の軍事行動、海上封鎖、そして長官の言う「金融の酸素」を断つかつてない規模の制裁という順に進めており、1週間か1か月か2か月かは分からないが、イランは音を上げると述べた。開戦は2026年2月28日で、国防総省の監察官は2月28日〜4月7日に3万6,000回の戦闘出撃があったと報告したと報じられている。報告の対象期間は38日 (約5.4週) で、長官の言う6週間に近い。

長官は、目指す結末は次の3つのいずれかだとした。政権の内紛、イラン国民の蜂起、そしてイランが合意を望むなら今度は必ず守らせることだ。国民の蜂起については、政権がおそらく自国民を約5万人殺しており、非常に難しいとした。長官は、8月初めにトランプ大統領がイランはまだ合意の準備ができていないと述べたこと、6月3日に覚書による合意を試みたが、イランは数週間後にホルムズ海峡で船に発砲したことも挙げた。これらの説明を米財務省の発表や報道と照らし合わせると次のようになる。

長官の説明米財務省の発表と報道照合
1か月前に経済版 D デーを開始8月24日に「経済版 D デー」の作戦を発表一致
18億ドルを流したエジプトの銀行の支店を閉鎖8月28日、バンク・ミスルの UAE 拠点が2024年1月〜2026年6月に103社の約18億ドルを処理したと指摘。閉鎖の記述は無く、別のエジプトの銀行が支店を引き継ぐことを UAE の中央銀行が認めた (報道)金額は一致、閉鎖は確かめられず
数十億ドルを送ったトルコで30番目の銀行を閉鎖9月4日、ゴールデン・グローバル投資銀行を指定。取引額は「数千万ドル規模」。9月16日にトルコの銀行監督庁が株主の権利を預金保険基金に移した (報道)金額が食い違う。30番目かは確かめられず
ロシア第2の銀行を制裁9月14日、ロシア対外貿易銀行 (VTB) を追加で指定。表現は「ロシア最大級の金融機関の1つ」おおむね一致
6月3日に覚書で合意を試みた覚書の署名は6月17日、6月25日に商船が攻撃された (報道)日付が食い違う
8月初めに大統領が「合意の準備ができていない」大統領の発言は8月21日 (報道)日付が食い違う
政権はおそらく自国民を約5万人殺した人権団体「人権活動家通信 (HRANA)」の確認は2月に7,002人以上。イラン政府の発表は1月21日に3,117人。見つかった推計の最大は約3万6,500人確かめられず

東京エレクトロンとキオクシアに関わる規制は延長なら1月まで停止、対日措置は休戦の延長では解けない

ベッセント長官が示した延長は2か月で、1月10日という期日は長官の発言にとどまる。延長の対象に中国のレアアース輸出規制の停止が含まれるなら、11月10日に切れるはずだった停止も1月10日まで続き、256層以上のメモリーやその製造装置の生産に使う品目の輸出を個別審査とする条項も、それまで止まったままになる。一方、軍民両用品の対日輸出禁止 (軍事用途向け)、日本の企業・団体を計80載せた2つのリスト、ジクロロシランへの反ダンピング調査の仮決定は、米中の休戦とは関係なく続いている。

米中の合意からは、日本への示唆が3つ読み取れる。1つ目は、米中の合意事項が日本の懸案を取り上げていないことだ。8項目は日本に触れず、対日措置は休戦とは別の公告で積み上がった。休戦の期日を待つだけでは、日本企業の調達の制約は解けない。2つ目は、延長が2か月と短く、長官が中国の約束の履行を見たいと述べていることだ。大豆の出荷のように数字で追える約束もある。日本も、レアアースの輸入量を貿易統計で追い、対日措置の影響を数字で示せる。3つ目は、AI の安全を巡る枠組みが米中の2国間で先に動き出したことだ。日本の基本計画が挙げるリスクは長官が挙げた類型と重なるが、日本の民間 AI 投資は米国の2,859億ドルに対し11億1,000万ドルで、AISI は200人の目標に対し4月時点で31人にとどまる。

日本の打ち手は、企業・政府・調達・AI の4つの面から考えられる。企業にとっては、長官の言う1月10日という休戦の期日と、終わりの見えない対日措置を分けて考え、調達の経路ごとに影響を点検することが課題になる。政府にとっては、11月18〜19日に深センで開く APEC 首脳会議で、2025年10月以来の日中首脳会談を開けるかが焦点になる。調達では、豪ライナスが中・重希土類の生産の75%を日本向けに回す契約に改め (双日、3月13日)、海洋研究開発機構 (JAMSTEC) が1〜2月に南鳥島沖の水深5,569メートルからレアアース泥の連続揚泥に成功し約50トンを回収した (7月24日発表)。南鳥島沖の泥は2027年2月に大規模な実証試験を控える段階で、当面は豪州など中国以外の調達先が頼りになる。AI では、首相が指示した AISI の200人体制がいつ整うかが次の課題になる。東京エレクトロンとキオクシアにとっての次の節目は、中国商務省が11月10日までに公告第70号の停止の延長を公告で示すかと、延長の場合に1月10日を前に停止がさらに延びるかだ。

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