東京エレクトロンは今期の連結営業利益が前期比87%増の1兆1690億円になるとの見通しを示した。米国の半導体株は10月に大きく下げたが、同社は業績の拡大が続くとみる。過去3回の株安では、減益はいずれも翌年度に表れた。

同社は10月30日、今期(2027年3月期)の通期予想を初めて公表し、売上高と営業利益、純利益がいずれも過去最高になるとした。東京エレクトロンの決算短信を2018年3月期までさかのぼると、米国の半導体株が大きく下げた年度(19年3月期、23年3月期、25年3月期)は、3回とも営業増益だった。いずれも翌年度に減益に転じた。

10月の下げには、いくつかの理由が重なった。ロイター通信は13日、中国のメモリー大手チャンシン・メモリー・テクノロジーズ(CXMT)の技術開発が進んでいるとの報道と、AI投資への不安を下落の理由に挙げた。ブルームバーグ通信は16日、AIインフラへの投資が膨らみすぎて回収が難しくなるとの懸念と、金利と物価の高止まりによる資金調達コストの上昇を挙げた。米インテルが29日に示した10〜12月期の売上高見通しは、ロイター通信によると市場予想を10億ドル以上下回った。同社の最高財務責任者(CFO)は、パソコン市場の減速が少なくとも来年前半まで続くとの見方を示した。30日は世界の半導体株に売りが広がった。

東京エレクトロン、今期の営業利益は初めて1兆円を超える見通し

東京エレクトロンが10月30日に発表した2026年4〜9月期の連結決算は、売上高が前年同期比41.3%増の1兆6674億円、営業利益が67.2%増の5067億円だった。売上高、営業利益とも4〜9月期として過去最高だった。通期の売上高は前期比51.4%増の3兆7000億円を見込む。

部品や保守サービスを除いた新規の半導体製造装置の販売が増収をけん引した。新規装置の売上高は4〜9月期が1兆2657億円で、下期は1兆5600億円を見込む。通期では前期比59%増となる見通しだ。河合利樹社長は決算説明会で、AIサーバー向けの需要を背景に「顧客からの納期前倒しや追加購入の要請が続いています」と述べた。同社は下期の売上高が2兆円を超えるとみており、それに見合う生産能力を確保したという。

過去3回の半導体株安、東京エレクトロンの減益はいずれも翌年度に

東京エレクトロンの営業利益の推移。米国の半導体株が大きく下げた年度(2019年3月期、23年3月期、25年3月期)はいずれも増益で、翌年度に減益となった。27年3月期は87.1%増の見通し
東京エレクトロンの営業利益の推移。米国の半導体株が大きく下げた年度(2019年3月期、23年3月期、25年3月期)はいずれも増益で、翌年度に減益となった。27年3月期は87.1%増の見通し

1回目は2018年の下落だ。その前の18年3月期の営業利益は前期比80.6%増だった。米国の半導体株が下げた19年3月期も10.5%の増益を確保したが、伸びは大きく鈍った。同社は19年3月期の決算短信で、下期からメモリー向けの設備投資が調整局面に入ったと説明した。20年3月期は23.6%の減益になった。

2回目は2022年の下落だ。22年3月期の営業利益は86.9%増え、18年3月期を上回る伸びだった。米国の半導体株が下げた23年3月期は3.1%の増益にとどまった。24年3月期は減収減益に転じ、売上高は前期比17.1%減、営業利益は26.1%減だった。

3回目は2024年夏からの下落だ。米国の半導体株が下げた25年3月期の営業利益は、前期比52.8%増の6973億円と大きく伸びた。26年3月期は10.4%減の6249億円と減益に転じた。売上高は0.5%増とほぼ横ばいだった。売上高が伸びないなか、研究開発費は前期の2500億円から2778億円に増えた。

3回とも、米国の半導体株が下げた年度の決算は増益だった。その年度の決算だけを見れば、株価の下落は業績とは無関係な売りに見える。だが、いずれも翌年度に減益に転じた。装置メーカーの売上高は、半導体メーカーが設備投資を決めてから遅れて計上される。このため、顧客の投資の絞り込みは遅れて決算に表れる。

装置市場は2027年も3割増の予想、AI向けのメモリー投資が拡大

東京エレクトロンは、2027年も装置市場が伸びるとみる。同社は前工程の半導体製造装置の世界市場が2026年に1600億ドル程度になると予想した。27年は2100億ドル以上に拡大するとみる。7月末の予想を見直し、両年とも前年比30%程度の伸びを見込む。

海外の同業大手も業績を伸ばしている。米ラムリサーチの7〜9月期の売上高は前年同期比約54%増(編集部の計算)の82億1940万ドルだった。10〜12月期は86億ドル前後を見込む。米KLAの7〜9月期の売上高は約29%増(同)の41億3600万ドルで、10〜12月期は47億ドル前後を見込む。蘭ASMLのフーケ最高経営責任者(CEO)は、今の生産計画のままでは2027年と28年は顧客の需要に供給が追いつかないとの見方を示した。

東京エレクトロンは、市場が伸びる理由としてAIの使われ方の変化を挙げる。人の指示を受けて複数の作業を自らこなすエージェント型AIが広がれば、AIが処理するデータの量は大きく増える。計算を担う画像処理半導体(GPU)や、GPUと組み合わせる広帯域メモリー(HBM)に加え、データの前処理や全体の制御を受け持つCPUも必要な数が増える。DRAMも一時的に保存するデータが増え、必要な容量が大きくなる。AIのモデルや大量のデータを保存するNAND型フラッシュメモリーも、サーバー1台あたりの搭載容量が増える。7〜9月期の新規装置の売上高のうち、DRAM向けは34%を占め、金額は4〜6月期より45%増えた。

個別の装置でも採用や受注が進んだ。DRAMで電気をためる部品(キャパシター)をつくる工程では、先端世代で加工の型となる膜(マスク)を削るエッチング装置が、顧客1社に採用された。NAND型フラッシュメモリーで、記憶素子を何層にも積み重ねた構造に深い穴を開ける極低温エッチング装置は、量産向けの受注が順調に進み、2027年と28年に向けた追加の引き合いも多いという。ウエハー上のチップの電気的な特性を検査するプローバーは、今期の出荷台数が前期より約60%増える見込みだ。

地域別では、7〜9月期の中国向け売上高が3399億円と全体の36.4%を占めた。比率は4〜6月期から6ポイント上昇した。同社は大手顧客の投資が活発だったと説明しており、通期の中国向けの比率は30%台前半になる見通しだという。韓国向けは1907億円、台湾向けは1804億円だった。日本向けは722億円で、全体の1割に満たない。中国向けの比率が高いだけに、米国の輸出規制の行方が業績を左右する。米中の貿易休戦の延長が日本企業に及ぼす影響は、東京エレクトロンとキオクシアに関わる規制をまとめた記事で詳しく取り上げた。

来期は増益率が縮小する公算、今期の利益水準が高く

東京エレクトロンの半期ごとの営業利益。26年3月期は上期3031億円、下期3217億円。27年3月期は上期5067億円(前年同期比67.2%増)、下期は6622億円の見通し(同2.1倍)
東京エレクトロンの半期ごとの営業利益。26年3月期は上期3031億円、下期3217億円。27年3月期は上期5067億円(前年同期比67.2%増)、下期は6622億円の見通し(同2.1倍)

来年の同じ四半期と比べる基準になる7〜9月期の営業利益は、前年同期比86.4%増の2953億円だった。営業利益率は31.6%と、4〜6月期から2.7ポイント上昇した。下期の営業利益は6622億円を見込み、前年同期の2倍を超える。

来期(28年3月期)は、比較対象となる今期の利益水準が高いため、増益率は縮小しやすい。東京エレクトロンは来期の業績予想をまだ示していない。市場には、半導体関連の企業は早ければ2027年7〜9月期に減益に転じるとの見方もある。会社の予想どおり27年の装置市場が3割伸びれば、来期も増益は続くが、増益率は今期より大きく縮小すると編集部はみる。今回に最も近いのは3回目だ。大きく伸びた25年3月期のうちに米国の半導体株が下げ、翌年度に減益となった。

日銀は金利を据え置き、ETFの売却を年8600億円に

2026年11月2〜7日の主な予定(日本時間)。3日は文化の日で東京市場が休場となり、米国では中間選挙がある。決算は4日早朝に米AMD、5日早朝に米コヒレント、5日に太陽誘電、6日早朝に米ルメンタム、6日15時30分にTOWAが発表する。6日夜に米雇用統計が出て、7日未明に日銀の植田和男総裁が講演する
2026年11月2〜7日の主な予定(日本時間)。3日は文化の日で東京市場が休場となり、米国では中間選挙がある。決算は4日早朝に米AMD、5日早朝に米コヒレント、5日に太陽誘電、6日早朝に米ルメンタム、6日15時30分にTOWAが発表する。6日夜に米雇用統計が出て、7日未明に日銀の植田和男総裁が講演する

日銀は10月30日の金融政策決定会合で、政策金利を1.25%程度に据え置いた。決定は8対1の賛成多数で、高田創審議委員が反対した。高田氏は基調的な物価上昇率が物価安定の目標に達したとして、政策金利を1.5%程度に引き上げる議案を出したが、反対多数で否決された。

日銀は同じ会合で、保有する上場投資信託(ETF)の年間の売却額を簿価で3300億円程度から8600億円程度に増やすことも決めた。時価に換算すると年2兆4600億円程度で、市場全体の売買代金に占める割合は0.05%程度から0.1%程度に上がる。増額した売却は2027年1月に始める。

5日午前8時50分には、9月17〜18日に開いた金融政策決定会合の議事要旨が公表される。日銀はこの会合で政策金利を1.25%程度に引き上げた。日本時間7日午前1時ごろには、植田和男総裁が米ワシントンの国際通貨基金(IMF)で講演する。10月の会合の「主な意見」は10日に、議事要旨は12月23日に公表される。日銀の利上げと円相場の関係は、利上げの後に円安が進んだ理由を解説した記事で詳しく取り上げた。

米国は3日に中間選挙、6日に雇用統計

米国では3日に中間選挙の投開票がある。下院は全435議席、上院は約3分の1の議席が改選される。大勢は日本時間4日以降に判明する見通しだ。半導体をめぐっては、米政府が通商拡大法232条に基づき、1月から一部の先端半導体に25%の関税を課している。対象品目を広げるかどうかの判断は先送りしている。米財務省は10月26日、懸念国への対外投資を規制する規則案を公表した。12月7日まで一般から意見を募る。

米連邦準備理事会(FRB)は10月27〜28日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の誘導目標を3.75〜4.00%に据え置くと決めた。決定は10対2の賛成多数だった。クック理事とハマック・クリーブランド連銀総裁は0.25ポイントの利上げを主張して反対した。FRBは9月に0.25ポイントの利上げを決めていた。次回のFOMCは12月8〜9日に開く。米労働省は6日午前8時半(日本時間同日午後10時半)に10月の雇用統計を発表する。12月のFOMCで利上げを再開するかどうかを占う材料になる。

米AMDと太陽誘電、光通信部品の米コヒレントと米ルメンタムが決算発表

会社発表(日本時間)会社の見通し直近の実績(4〜6月期)
米AMD4日早朝7〜9月期の売上高127億〜133億ドルデータセンター部門の売上高67億ドル(前年同期の2倍超)
米コヒレント5日早朝7〜9月期の売上高22億〜24億ドルデータセンター・通信部門の売上高16億1500万ドル(+58.6%)
米ルメンタム6日早朝7〜9月期の売上高12億2500万〜12億7500万ドル売上高10億630万ドル(前年同期の2倍超)
太陽誘電5日通期の営業利益450億円(前期の2.3倍)営業利益48億円(+53.3%)
TOWA6日15時30分通期の営業利益102億円(+48.0%)営業損益22億円の黒字(前年同期は赤字)

米AMDは、新型GPU「MI450」を搭載したラック型のAIサーバー「Helios」の出荷が2026年後半に本格化するとしている。米オープンAIと米メタとは、いずれも6ギガワット分のGPUを供給することで合意しており、最初の1ギガワット分の供給を26年後半に始める予定だ。米アンソロピックとは最大2ギガワット分の供給で合意し、AMDが同社に最大50億ドルを出資する予定だ。オープンAI向けの出荷が始まったかどうかは、まだ明らかにしていない。

太陽誘電の4〜6月期は、主力の積層セラミックコンデンサーの売上高が前年同期比14.7%増の690億円だった。AIサーバー向けなどが伸びた。同社は8月、2027年3月期の連結業績予想を上方修正し、売上高を前期比19.3%増の4240億円とした。

コヒレントとルメンタムは、データセンターでサーバー同士を光でつなぐ光通信部品の大手だ。レーザーには化合物半導体のインジウムリン(InP)を使う。コヒレントは米テキサス州シャーマンにあるインジウムリンの6インチウエハー工場を増強し、生産能力を4倍に引き上げる。ルメンタムは日本法人の日本ルメンタムを通じて国内でも生産している。ルメンタムのマイケル・ハーストンCEOは8月の決算説明会で、日本にある2カ所のインジウムリンのウエハー工場で生産能力を増強していると述べた。主力のレーザーの出荷量は、2026年10〜12月期に前年同期比50%超増える見通しだという。ルメンタムは米ノースカロライナ州グリーンズボロの工場でも、6インチのインジウムリンのウエハーで2028年半ばに量産を始める予定だ。ブルームバーグ通信は10月28日、米マーベル・テクノロジーがルメンタムの買収を協議していると報じた。11月2日時点で両社から正式な発表はない。

半導体の樹脂封止装置を手がけるTOWAの4〜6月期の売上高は、前年同期の2倍の161億円だった。4〜9月期は売上高320億円、営業利益51億円を見込む。

東京エレクトロンは、米国の半導体株が下げた今期も増益を見込む。過去3回の株安では、いずれも翌年度に減益に転じた。今回は、会社が2027年の装置市場を3割増と予想し、河合社長によれば顧客から納期の前倒しを求められている点が違う。AIサーバー向けの需要が27年も続くかどうかは、今週のAMDと光通信部品2社の決算が手がかりになる。

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