米メタが9月8日に公開したミューズ(Muse)は、商品や宿を比べて予約し、使い捨てのカード番号で支払いまで済ませるAIだ。発表から2週間後、顧客が乗り換えないことで稼いできたとされる会社の株が売られた。

米証券大手チャールズ・シュワブは2026年4〜6月期、傘下の銀行で預かる顧客の預金(平均残高2,463億ドル)に、年0.19%の金利しか払っていなかった。同じ期間の利付資産(利息を生む資産)の平均利回りは3.47%だった。顧客が預け先を見直さないことが、同社の利ざやの源になっている。米メタのミューズは、比較や予約、支払いを利用者に代わって引き受ける。9月22〜23日には、トリップアドバイザーやシュワブなど、旅行予約と金融サービスの銘柄が売られた。ミューズに証券口座の資金を動かす機能はまだないが、AIがこうしたサービスを代替し、顧客が離れるとの懸念が市場に広がった。

ミューズは質問に答えるだけでなく、ブラウザーを開いて予約と支払いまで進める

メタの9月8日の発表によると、ミューズは米国で iOS と Android のアプリ、ウェブの muse.ai から使える。ネットでの買い物や映画チケットの購入、テニスレッスンの予約、学校に出す書類の記入などを利用者に代わってこなす。ブラウザーを開いて入力フォームに記入し、利用者に代わって交渉もする。アプリを閉じても作業を続け、重要な操作の前には利用者に承認を求める。利用者から目標を聞いて計画を立て、作業を最後まで進めるのが、質問に答えるだけの対話型AIとの違いだ。

ミューズの基盤は、メタ・スーパーインテリジェンス研究所(MSL)が開発したAIモデル「Muse Spark」だ。メタは2026年4月8日にこのモデルを発表し、先代の Llama 4 Maverick と同等の性能に、10分の1以下の計算量で到達したと説明した。メタは2025年12月、AIエージェントの新興企業マナスの買収を発表しているが、ミューズとの関係は公表していない。

ミューズは無料で使える。報道によると、メタはヘルプページで、無料で使える上限を週1億トークン(トークンはAIが文章を処理する単位)と案内している。月20ドルの「Power」は週5億トークン、月100ドルの「Maximum」は週30億トークンまで使える。

利用は急速に広がった。ロイターが9月23日に報じた調査会社センサータワーの推計では、公開から2週間で280万回ダウンロードされ、最初の10日間は1日のダウンロード数が前日比で平均55%伸びた。米国のアプリストアでは、無料アプリの首位で ChatGPT を抜いた。9月23日の年次開発者会議「メタ・コネクト(Meta Connect、以下コネクト)」では、MSL を率いるアレクサンダー・ワン氏がカナダでの提供開始を明らかにし、ほかの国にも順次広げるとした。日本での提供時期は示していない。

ミューズを支えるのは、利用者ごとの仮想コンピューターと、外部との通信を管理する「センチネル」

AIに買い物を任せるには、パスワードやカード番号を預けても悪用されない仕組みが要る。メタが公開した安全設計の説明によると、利用者ごとにクラウド上の専用の仮想コンピューターが1台用意され、利用者とミューズが共用する。連携したサービスのデータと認証情報もこの仮想コンピューターに置く。ただし、ミューズが動く実行環境はその中のコンテナで隔離し、認証情報の保管庫やセンチネルはコンテナの外で動かす。コンテナの中の管理者権限は、外側では権限の小さい一般ユーザーとして扱われる。

ミューズの仕組み。利用者ごとの仮想コンピューターの中で、ミューズは隔離した実行環境で作業し、外部への通信はすべてセンチネルが許可・拒否・利用者への確認に振り分ける。本物の認証情報は実行環境の外の保管庫に置く
ミューズの仕組み。利用者ごとの仮想コンピューターの中で、ミューズは隔離した実行環境で作業し、外部への通信はすべてセンチネルが許可・拒否・利用者への確認に振り分ける。本物の認証情報は実行環境の外の保管庫に置く

中心にあるのが、操作を許可するかどうかを判断する「センチネル」という仕組みだ。ミューズは操作を提案できるだけで、実行するかどうかはセンチネルが決める。連携先のサービスへの操作も、インターネットへの通信も、センチネルが宛先やポート番号、プロトコル、送信内容まで調べ、「許可」「拒否」「利用者に確認」の3つに振り分ける。

AIには、閲覧したページやメールに埋め込まれた指示に従ってしまう弱点がある。この弱点を突く攻撃は「プロンプトインジェクション」と呼ばれる。メタはこれに3つの対策を講じた。1つ目は、利用者のデータを読み込んだ処理に目印を付け、自動承認の対象から外すことだ。Linux の中核部分(カーネル)で動く eBPF という技術で、データの流れを追う。2つ目は、ミューズに本物のパスワードや認証用の鍵を渡さず、ダミーの値だけを持たせることだ。センチネルが外部に送る直前に本物に差し替える。3つ目は、承認を求める表示を、会話の中ではなくアプリの専用画面に出すことだ。メタは、AIがだまされてもパスワードなどが漏れにくく、会話に紛れ込んだ指示では本人の承認を偽装できない設計だと説明している。

ブラウザーの機能も制限している。ミューズはページの構造を写し取ったデータを読み、ページの JavaScript を実行しない。支払いには、米ストライプの決済サービス「Link」が発行する使い捨てのカード番号を使い、決済のたびに本人の承認を取る。メタは脆弱性を見つけた人への報奨金を最大30万ドルとし、利用者1人に影響するプロンプトインジェクションの手口を報告した人にも最大13万ドルを払う。利用者本人しか復号できない暗号化も今後導入し、メタ自身も中身を読めないようにするという。

メタは7月30日に提出した四半期報告書(10-Q)でも、AIエージェントのリスクとして、プロンプトインジェクション、安全策の回避、想定外の動作を挙げている。支払いまで任せられるかどうかは、モデルの性能に加え、こうした許可の仕組みが左右する。

依頼、利用者のデータを読んだ処理、プロンプトインジェクション、支払いの4つの場面で、通信がセンチネルでどう振り分けられるかは、次の3Dモデル(試作版)で動かして確かめられる。

ミューズの仕組みの3Dモデル (試作版)。場面を選ぶと、通信がセンチネルを通って許可・拒否・利用者への確認に振り分けられる様子が動く

売られたのは、顧客が乗り換えないことで稼ぐとされる会社だった

ブルームバーグは9月22日、売られた銘柄の共通点を「消費者の惰性」と表現した。ほかに有利な選択肢があっても、習慣で同じものを使い続ける傾向を指す。ゴールドマン・サックスのトレーディング部門は、継続して課金する業種、価格を交渉できる業種、付帯料金で稼ぐ業種は収益が圧迫される恐れがあると指摘した。そのうえで、影響を受けうる銘柄として AT&T、Tモバイル、オールステート、プログレッシブ、ネットフリックス、パラマウント・スカイダンス、エクスペディア、ブッキング・ホールディングスを挙げた。9月22〜23日には、トリップアドバイザー、ブッキング、シュワブ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴなどの株価が下がった。一方で、ミューズと組む側に回った企業もある。ショッピファイやペイパル、ストライプ、チケットマスターは連携を発表した。

シュワブが売られた理由を市場は明示していないが、収益の構造を見ると、顧客が預け先を比べ始めたときに細る部分が分かる。同社の四半期報告書によると、2026年4〜6月期の純営業収益70億7,200万ドルのうち、47%にあたる33億5,700万ドルが純金利収入だった。顧客の現金を低い金利で預かり、貸し出しや債券で運用して得る利ざやが、収益の半分近くを占める。

シュワブ (4〜6月期)平均残高年率
銀行預金に払う金利2,463億ドル0.19%
顧客預り金に払う金利1,088億ドル0.22%
利付資産の平均利回り4,449億ドル3.47%
純金利マージン―3.00%

同社は四半期報告書で、金利が急に上がる局面では、顧客が現金を利回りの高い債券やマネー・マーケット・ファンドへ移す場合があると説明している。顧客が資金を移せば、利ざやは縮む。仮に、銀行預金の金利が短期の市場金利並みまで上がったとする。短期金利の目安に、同社が現金同等物で得た利回り3.58%を使うと、4〜6月期の利払いは約21億ドル増える。増加分は純金利収入の62%にあたる。預金金利だけを動かした単純な試算で、業績の予想ではない。

比較や手続きの窓口がエージェントに移れば、旅行予約サイトの集客と証券会社の預金の利ざやが揺らぎうる
比較や手続きの窓口がエージェントに移れば、旅行予約サイトの集客と証券会社の預金の利ざやが揺らぎうる

旅行予約サイトの弱点は別のところにある。集客を検索に頼っていることだ。ブッキングの4〜6月期の売上高73億5,200万ドルに対し、広告宣伝費は23億7,100万ドルで、32.2%にあたる。同社は四半期報告書で、その大半が検索エンジン(主にグーグル)などへの成果報酬型の広告だと説明している。トリップアドバイザーも、ホテル事業はグーグルなど検索エンジンからの流入に大きく頼り、検索結果の表示が変わって流入が減ったと記している。利用者がエージェントに「一番安い宿を取って」と頼むようになれば、検索広告を経ない予約が増えうる。検索エンジンは広告収入を、予約サイトは顧客との直接の接点を失う恐れがある。

アマゾンはミューズを締め出し、エクスペディアは連携先に加わった

影響を受ける企業の対応は分かれた。アマゾンは米国時間9月20日夜から、自社の通販サイトでミューズが買い物をできないようにした。ギークワイヤーなどによると、アマゾンは、メタから事前の連絡がなかった、ミューズがAIエージェントだと名乗らずにサイトを閲覧している、顧客の認証情報を保存しているとみられる、の3点を理由に挙げた。

アマゾンが挙げた理由とは別に、広告収入を守る狙いもあるとみられる。同社の広告サービスの売上高は、年次報告書によると2025年12月期に686億3,500万ドル、四半期報告書によると2026年4〜6月期に198億900万ドルだった。広告は、利用者が商品を探す画面に表示される。エージェントが代わりに買えば、利用者はその画面を見ない。

逆の道を選んだのがエクスペディアだ。ゴールドマン・サックスが影響を受けうる銘柄に挙げた会社だが、メタが9月23日に発表した18社の新しい連携先に入った。ウォルマート、ベストバイ、セフォラ、ウェイフェア、インスタカート、ペイパル、ショッピファイの「Shop Pay」なども並ぶ。エージェントを締め出せば顧客を失いかねず、受け入れれば顧客との接点をエージェントに握られる。小売りや旅行の各社は、どちらを選ぶかを迫られている。

コネクトで発表したミューズ・チャームは、スマートフォンを介さずにミューズを呼び出す端末になる

メタは9月23日のコネクトで、新しい端末をまとめて発表した。ミューズ専用の小型端末「ミューズ・チャーム(以下チャーム)」は手のひらほどの大きさで、音声で話しかけて操作する。メタは、チャームが最先端のリアルタイム音声モデルを使い、利用者がミューズと声でやり取りできると説明している。ブルームバーグによると、約2インチの有機ELディスプレー、5Gの通信機能、指紋センサーを備え、前面と背面にカメラを搭載する。ミューズのために開発した新しい基本ソフトで動く。価格はスマートウオッチ並みを想定し、年末商戦に合わせて12月に発売する予定だという。ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はチャームについて「眼鏡をかけていないときに、ミューズに話しかけたり周りの様子を見せたりする一番速い方法になる」と話した。

同じ場では、メタ VR グラスも発表した。重さは約100グラムで、同社のゴーグル型端末「クエスト3」の5分の1になる。価格は1,299ドル99セントで、2027年春に発売する。AIグラスでは、レイバン・メタの第3世代と、カメラを搭載しない音声専用のAIグラスを加えた。ミューズは今後、AIグラスからハンズフリーで呼び出せるようになる。WhatsApp や、パソコンの操作を代行できる Mac 版からも使え、利用者はミューズ専用のメールアドレスも持てる。

メタが自社の端末に力を入れる背景は、同社の開示からもうかがえる。メタは決算発表で、スマートフォンの基本ソフトを他社が握っていることや、広告配信に使うデータを他社の仕組みに頼っていることを、業績を左右するリスクに挙げている。アップルやグーグルの基本ソフトの上で動くアプリは、その会社の規則に縛られる。ザッカーバーグ氏は2025年7月30日に公開した「個人の超知能」と題する文書で、利用者が見聞きするものをAIと共有する眼鏡のような身に着ける端末が、主に使うコンピューターになると書いた。自社の基本ソフトで動くチャームは、スマートフォンを介さずに利用者とミューズを結ぶ。

チャームの部品調達先は公表されていないが、東京市場では半導体・電子部品関連の4銘柄が買われた

ロイターによると、9月24日の東京株式市場では、チャームの発表を受けてイビデン、ソシオネクスト、メイコー、ウシオ電機の株価が大きく上がった。作成者の記載がない投資家向けの図解が出回り、4社をチャームの部品や製造工程に結びつけていた。図解は、頭脳にあたる半導体をソシオネクスト、それを載せるパッケージ基板をイビデン、部品どうしをつなぐメイン基板(プリント基板)をメイコー、半導体製造装置の光源をウシオ電機に当てはめていた。ただ、メタは半導体を含む部品の調達先を明らかにしていない。部品をつくる3社はいずれもチャームへの採用を公表しておらず、ウシオ電機は端末の部品ではなく、工場で使う光源を作る。

小型のAI端末は、一般に次のような部品でできている。中心は、計算、AI、画像の処理と通信の制御を1つにまとめた半導体で、SoC(システム・オン・チップ)と呼ぶ。SoC のチップはパッケージ基板に載せて封止する。パッケージ基板は、チップの細かい端子の間隔をメイン基板に合う幅まで広げる役目を持つ。メイン基板には、カメラ、声を拾うマイク、音を出すスピーカー、画面、通信用の部品、電池がつながる。チャームについて報道で確認できる仕様は、前述の画面、カメラ、5G、指紋センサーにとどまる。声で操作する端末なので、マイクとスピーカーも備えるとみられる。無線LAN(Wi-Fi)やブルートゥースへの対応、電池の容量は分かっていない。

小型のAI端末の一般的な部品構成と、東京市場で買われた4銘柄。破線の札は作成者の記載がない投資家向けの図解が4社に当てはめた役割で、4社ともチャームとの取引は公表していない
小型のAI端末の一般的な部品構成と、東京市場で買われた4銘柄。破線の札は作成者の記載がない投資家向けの図解が4社に当てはめた役割で、4社ともチャームとの取引は公表していない

4社が、図解の挙げた種類の製品を実際に手がけていることは、2026年3月期の有価証券報告書(有報)で確かめられる。一方、売上を支える用途はデータセンター、車載、スマートフォン、映像機器などで、小型のAI端末を挙げた会社はない。

会社 (証券コード)図解が当てはめた役割有報で確かめた事業売上高 (連結)
ソシオネクスト (6526)SoC顧客専用の SoC の設計。製造は外部に委託2,008億円
イビデン (4062)パッケージ基板電子事業 (パッケージ基板など) 2,433億円4,162億円
メイコー (6787)メイン基板電子回路基板。車載やスマートフォン向けなど2,406億円
ウシオ電機 (6925)製造装置の光源映像事業839億円、光源と装置の事業771億円1,792億円

ソシオネクストは工場を持たず、顧客の製品に合わせて専用の SoC を設計し、製造と組み立て・検査は外部の受託会社に任せる。注力分野には、自動運転を含む車載、データセンター・ネットワーク、アクションカメラのような小型の電子機器の3つを掲げ、ほかに産業機器なども手がける。中国向けに出荷した売上高は807億円で、全体の約4割を占める。顧客別では、電子部品商社の加賀FEIを通じた販売が最も多く(439億円)、その先の納入先は示されていない。次いで多いのは、中国の電気自動車メーカー、シャオペン(小鵬汽車)の子会社(372億円)だ。ソシオネクストは、案件を獲得してから量産品の売上が立つまでに、通常2年以上かかるとしている。

イビデンの売上高の約6割は、パッケージ基板を扱う電子事業が占める。最大の顧客はエヌビディア(1,225億円)で、インテル(753億円)が続く。同社の有報によると、生成AI用サーバー向けの受注は堅調だった一方、パソコン向けは想定を下回った。需要の中心は、データセンター向けの高性能な半導体に使う基板だ。

メイコーは、スマートフォン向けの基板そのものを作る。車載向けのほか、スマートフォン・タブレット向けや衛星通信などの情報通信向けの基板、SSD や通信部品に使うモジュール基板を手がける。2026年3月期は衛星通信向けが大きく伸び、スマートフォン・タブレットでも上位機種の基板が増えた。需要の伸びが見込める分野として、スマートフォンのほか、衛星通信とAIサーバーを挙げる。パッケージ基板も手がけるが、半導体市況の悪化で立ち上げが計画より遅れている。生産の中心はベトナムで、有形固定資産の約6割が同国にある。

ウシオ電機の売上高で最も大きいのは、映画館向けなどのプロジェクターを扱う映像事業(839億円)だ。半導体や基板、液晶パネルの工場などで使う光源と装置の事業は771億円で、このうち回路を焼き付ける露光装置向けのランプが155億円、露光装置が272億円を占める。ランプは消耗品で、パソコンやスマートフォンの需要が緩やかに回復し、顧客の工場で装置の稼働が堅調だったため販売が増えた。露光装置の売上は顧客の設備投資に左右され、同社の有報は、半導体や基板の分野で設備投資の抑制が続いたとしている。図解が挙げたエキシマランプは、液晶パネルや半導体の製造工程で表面の汚れを紫外線で落とす同社の製品だが、有報はこれを製品区分として分けて示していない。端末が売れても、同社の売上に表れるのは、顧客の工場の稼働が上がってからになる。

チャームの販売台数の見通しは公表されていない。今のところ業績を左右しているのは、ソシオネクストではデータセンターや車載、イビデンではデータセンター、メイコーではスマートフォン、衛星通信、車載の需要だ。ウシオ電機の業績は、映像事業と、顧客の工場の稼働や設備投資に左右される。チャームが部品をつくる3社の売上につながるかどうかは、メタが部品の調達先を明かすか、各社が取引を開示するまで分からない。ウシオ電機への影響は、顧客の工場の稼働を通じて間接的に表れる。

広告で稼ぐメタは、ミューズでは取引の手数料で稼ぐ考えを示した

メタの2026年4〜6月期の売上高は608億100万ドルで、そのうち広告が593億6,300万ドル、97.6%を占めた。フェイスブックやインスタグラム、WhatsApp などの1日あたりの利用者数は、6月の平均で36億人にのぼる。メタは、利用者の大半から料金を取らず、広告を出す企業から収入を得てきた会社だ。

ザッカーバーグ氏はコネクトで、ミューズについて「多くのトークンを無料で使えるようにし、いずれは取引ごとにわずかな手数料を得て利益を出すつもりだ」と話した。ミューズには広告を表示しないとしている。手数料の率も、誰が負担するかも公表していない。店の側が負担するとの報道もある。メタは発表で、ミューズとの会話や仮想コンピューターの中のデータを広告配信に使わないとしている。

ネットで物を探す消費者を店や予約サイトに送り込む役は、これまで主に検索広告が担ってきた。利用者が最初に話しかける相手がエージェントになれば、検索広告に流れていたお金の一部が、エージェントの取引手数料に移る可能性がある。自社のアプリを毎日使う36億人と自社の端末を足場に、この窓口を押さえることがメタの狙いとみられる。

一方で、AIへの投資の負担は重い。メタの4〜6月期の設備投資は310億8,000万ドルで、営業キャッシュフロー318億6,000万ドルをほぼ使い切った。フリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから設備投資を引いた額)は7億8,400万ドルにとどまる。本誌が決算発表の2つの数字から計算しても、ほぼ同じ額になる。2026年の設備投資は1,300億〜1,450億ドルを見込む。眼鏡型端末などを手がけるリアリティー・ラボ部門は、4〜6月期も46億1,900万ドルの営業損失を出した。

他社のエージェントは有料会員向けに始まり、メタは基本無料で出した

2026年に各社が出した代行型のエージェントを並べると、違いは誰が、どう料金を払うかにある。

会社エージェント発表使える人と料金
メタミューズ9月8日米国とカナダで基本無料。多く使う人は月20ドルか100ドル
グーグルGemini Spark5月19日米国の AI Ultra 会員 (月100ドルか200ドル)
オープンAIChatGPT Work7月9日有料の Pro などから順に提供。職場の作業が中心
xAIGrok Bot8月11日月30ドルの SuperGrok に含む (試験版)

仕組みは似ている。グーグルの Gemini Spark はクラウド上の専用の仮想コンピューターで24時間動き、xAI の Grok Bot もクラウド上のコンピューターで動く。グーグルと xAI は有料会員向けに、オープンAIは有料の Pro や企業向けから提供を始めた。これに対しメタは、基本無料で出し、取引の手数料で稼ぐ考えを示した。

ザッカーバーグ氏は同じ文書で、業界の他社が超知能を一元的に管理し、「価値を生む仕事をすべて自動化すること」に使おうとしていると指摘した。そのうえで、メタは一人ひとりが自分の望みのために使う、個人のための超知能を目指すとした。メタはこの考え方を、広告で稼ぐ自社の事業に合わせ、基本無料で提供する形にした。

メタはミューズで、比較から予約、支払いまでを利用者に代わって引き受ける。自社のアプリを毎日使う36億人を足場に、基本無料で提供する国を広げようとしている。預け先を見直さない顧客に支えられてきたシュワブの利ざやや、検索広告で顧客を集める旅行予約サイトの集客の仕組みは、比較と手続きの窓口がエージェントに移れば揺らぎかねない。手数料の率と負担者、日本での提供時期は、まだ明らかになっていない。

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