日本経済新聞が報じた自動車部品メーカーの総合力ランキング(日本企業編)で、総合首位はデンソー、2位はNGK(旧日本ガイシ)だった。利益率は日本特殊陶業が上位10社で最も高く、NGKが続く。2社の売上の柱は、エンジン車向けの部品だ。

デンソーは売上高に対する研究開発費の割合(R&D率)の高さなどで総合首位となり、前回の2位から返り咲いた。NGKは前回は「―」(50位圏外や対象外など)だったが、収益力と成長力の指標がいずれも高く、今回は2位に入った。10月2日には、6位の日本特殊陶業が、デンソーからスパークプラグと排気センサーの事業を譲り受ける計画の中止を発表した。本稿は上位10社の数字を各社の有価証券報告書や決算資料と突き合わせ、何を作り、誰に納め、何で稼いでいるかを一覧にした。

自動車部品ランキングの首位はデンソー、R&D率9.2%は上位10社で最高

2026年10月3日に報じられた日本企業編は今回が3回目で、初回は2023年調査だった。前回の2024年調査では、電気自動車(EV)用タイヤなどの設備投資を増やしたブリヂストンが、デンソーを抜いて首位に立っていた。

調査は、日本に本社を置く上場自動車部品メーカーから売上高の上位50社を選び、5つの指標で順位を付ける。2025年度の売上高、売上高に対するEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の割合(EBITDA率)、売上高に対する設備投資の割合(CAPEX率)、R&D率、2026年7月末の時価総額だ。各指標の1位に50点、50位に1点を配り、合計が総合点になる(満点250点)。ランキングの表では、売上高とEBITDA率を「収益力」、CAPEX率とR&D率を「成長力」と呼んでいる。時価総額は株価から計算する値なので、本稿では数字を扱わない。

自動車部品の総合力、上位10社。デンソーが221点で首位、NGKが219点で2位、日本特殊陶業はEBITDA率26.1%で10社で最高
自動車部品の総合力、上位10社。デンソーが221点で首位、NGKが219点で2位、日本特殊陶業はEBITDA率26.1%で10社で最高

デンソーの総合点は221点だった。売上高は7兆5,399億円(2026年3月期)、R&D率は9.2%で、いずれも上位10社で首位だ。2位のNGKとの差は2点しかない。

総合点の差は小さいが、研究開発費の金額では他社を大きく引き離す。デンソーの連結の研究開発費は、資産計上分を含めて6,901億円だった(費用計上分は6,621億円)。2〜10位の9社の開示額を合計すると7,320億円で、デンソー1社でその約94%に当たる。上位10社の合計の48.5%をデンソーが占める計算だ。

上位10社の研究開発費。デンソー6,901億円、アイシン2,655億円、住友電気工業1,629億円、ブリヂストン1,264億円
上位10社の研究開発費。デンソー6,901億円、アイシン2,655億円、住友電気工業1,629億円、ブリヂストン1,264億円

日経は見出しで、デンソーが「E2E自動運転へ投資」すると伝えた。E2E(エンド・ツー・エンド)は、一般に、カメラなどで捉えた情報から運転操作までを、AIのモデルでまとめて学習・処理する方式をいう。デンソー自身は、運転支援システム(ADAS)製品の売上を2025年度の5,900億円から2030年度に1兆円へ増やす目標を統合報告書に掲げる。2027年3月期は研究開発費を7,050億円(売上高比9.2%)と計画しており、比率を保ったまま金額を増やす方針だ。

デンソーの売上高の54.8%に当たる4兆1,346億円は、トヨタ自動車とそのグループ会社向けだ(有価証券報告書の注記)。トヨタ自動車1社向けは1兆9,916億円で、売上高の26.4%に当たる。企業データベースのデンソーと銘柄ページ(6902)に、事業と開示の一覧がある。

各社の開示で検算、CAPEX率は会社発表の設備投資額と定義が違う

上位10社について、5つの指標のうち時価総額を除く4つを各社の開示から計算し直した。売上高は10社とも決算の数字と一致した。決算期は、ブリヂストン・住友ゴム工業・横浜ゴムの3社が2025年12月期、ほかの7社が2026年3月期だ。R&D率も、研究開発費を売上高で割ると10社とも表の値と一致した。

CAPEX率は、会社が発表する「設備投資額」ではなく、キャッシュフロー計算書の「有形固定資産の取得による支出」と「無形資産の取得による支出」の合計を売上高で割ると、表の値と一致する(スタンレー電気は長期前払費用の取得を含め、小糸製作所と住友電気工業は有形固定資産の取得だけで一致する)。デンソーの場合、この支出は4,342億円で、売上高比5.8%になる。会社が発表する設備投資額3,693億円を使うと4.9%だ。

差が最も大きいのは5位の住友ゴム工業だ。CAPEX率14.8%は上位10社で最も高いが、米グッドイヤーから取得した、欧州・北米・オセアニアで四輪タイヤに「ダンロップ」を使う商標権など(2025年5月、対価985億円)を含む。会社が発表する設備投資額628億円を使うと5.2%、商標権などの分を除いた支出の合計で計算しても6.7%で、上位10社では4番目の水準になる。CAPEX率で首位に立ったのは、ブランドの取得で一時的に押し上げられたためとみられる。

EBITDAは決算書に載る項目ではない。営業利益から「その他の収益・費用」を除いた本業の利益に減価償却費を足し、売上高で割ると、8社は表の値と一致した。ブリヂストンは0.1ポイント未満の差が残った。日本特殊陶業は、売上原価や販売費及び一般管理費に含まれる減損損失をさらに足すと一致する。同社が中期経営計画で使う定義(営業利益+減価償却費+減損損失)では25.6%で、表の26.1%には届かない。ランキングは各データを調整後の値としており、計算方法の詳細は確認できていない。

2位のNGK、売上の柱は排ガス浄化用のセラミックス

NGKは2026年4月1日付で、商号を日本碍子から「NGK株式会社」に変更した。「日本ガイシ」は1986年からの社名の表記で、登記上の商号ではなかった。2026年3月期の売上高は6,701億円で、上位10社では2番目に小さい。それでもEBITDA率22.6%、CAPEX率8.3%、R&D率4.7%と利益率と投資の比率がそろって高く、総合で2位に入った。

製品別に見ると、売上の最大の柱は自動車の排ガス浄化用部品で、3,007億円と全体の44.9%を占める。触媒を載せるハニカム構造のセラミックス「ハニセラム」や、ディーゼル車とガソリン車の排ガスから粒子状物質を取り除くフィルターだ。エンジン排ガス用の窒素酸化物(NOx)センサーなどが681億円(10.2%)で、両方を合わせると売上の55.0%になる。

NGKと日本特殊陶業の製品別の売上構成。NGKは排ガス浄化用部品とセンサーで55.0%、日本特殊陶業は自動車関連が80.3%
NGKと日本特殊陶業の製品別の売上構成。NGKは排ガス浄化用部品とセンサーで55.0%、日本特殊陶業は自動車関連が80.3%

2番目の柱は半導体製造装置用のセラミックヒーターや静電チャックで、1,433億円(21.4%)と前期の1,138億円から25.8%増えた。NGKは約700億円を投じて石川県に半導体製造装置用セラミックスの新工場を建て、2029年10月に生産を始める計画だ。セラミックヒーターや静電チャックが半導体の製造工程のどこで使われるかは、半導体の体系解説にまとめた。

NGKは2026年5月28日に公表した長期経営計画で、脱炭素とデジタル社会に関わる製品の売上比率を、2025年度の35%から2030年度に50%、2035年度に60%以上へ高める目標を掲げた。残りは計画の図で「内燃機関向け他」とされ、2025年度は売上の65%がこの区分だった。同じ計画では自動車向けの事業について、EVシフトの減速でエンジン車の需要は高い水準が続くとみて、中長期に安定して現金を生む事業と位置づけた。一方、脱炭素向けの製品として手がけてきた電力貯蔵用のNAS電池は、2025年10月に製造と販売を終えると決め、199億円の特別損失を計上した。

利益率首位の日本特殊陶業は売上の8割がエンジン関連、デンソーはプラグ事業の売却を中止

6位の日本特殊陶業(英文社名Niterra)のEBITDA率26.1%は、上位10社で最も高い。売上高7,312億円のうち、自動車関連が5,875億円で80.3%を占める。内訳はスパークプラグなどが3,907億円(53.4%)、排気センサーなどが1,968億円(26.9%)だ。会社は有価証券報告書で、売上高の約8割が内燃機関関連の事業だとしている。同社は、各国の規制の強化でエンジン車の新車販売は2030年代半ばから減るものの、スパークプラグは保有車両の補修用の需要に支えられ、売上高のピークは2040年ごろになるとみている。

日本特殊陶業は2023年7月、デンソーのスパークプラグ事業と排気センサー事業を譲り受ける基本合意を結んだ。排気センサーは酸素センサーと空燃比センサーに限る。2025年9月1日に事業譲渡契約を結び、取得額は2026年3月31日を基準日として1,806億円と定めた(実行日までの日数に応じて減額し、価格調整を経て確定する条件)。目的は「内燃機関製品の供給責任を果たす」ことで、国内外の競争当局の承認などを実行の条件にしていた。

両社は2026年10月2日、この計画を取りやめると発表した。日本特殊陶業の発表によると、市場環境の変化や対象事業の今後の方針の見直しを背景に、デンソーが契約の解約を申し入れた。日本特殊陶業は、交渉を続ければ事業の先行きが見通せない期間が長引き、譲り受けの効果も薄れるため、経営資源の配分と資本効率の面から交渉の継続は適切でないと判断し、申し入れを受け入れた。2027年3月期の業績予想への影響は軽微とし、2025年11月に公表した中期経営計画の目標値も大きくは変えない見込みだが、成長投資を含む資本配分は改めて精査するとしている。

デンソーも同日、電動化が進む一方で、地域ごとに異なるエネルギー事情や規制を背景に、エンジンを含む多様な動力源への需要が当初の想定より長く続くとして、対象事業を続けることが最適と判断したと発表した。スパークプラグと、酸素センサー・空燃比センサーは、デンソーの事業として残る。

ほかの上位企業も、エンジン車やハイブリッド車の需要を取り込む姿勢を示している。8位のアイシンは、駆動ユニットの品ぞろえを生かしてガソリン車の需要を取り込み、シェアを上げる方針を掲げる。エンジン車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車への「揺り戻し」の需要についても、情報をいち早くつかんで対応するとしている。10位の住友電気工業は5月の社長説明資料で、EV需要の減速が続く一方、日本の自動車メーカーのハイブリッド車は堅調だと説明した。

上位10社の製品と納入先、トヨタ向けが過半を占めるのはデンソーとアイシン

上位10社の主な製品と納入先を、各社の有価証券報告書と決算資料から一覧にした。ランキングの表は主な製品を1〜2語で示すだけだが、実際には各社とも自動車以外の事業を持つ。

社名自動車向けの主な製品自動車以外の主な製品主な納入先と依存度
デンソーカーエアコン、熱交換器、インバーター、電子制御ユニット(ECU)、ミリ波レーダー、カメラ、燃料噴射装置、スパークプラグ、排気センサー産業用ロボット、QRコードの読み取り機、農業用ハウス、ヒートポンプ給湯機トヨタグループ向け54.8%(トヨタ自動車1社向けは26.4%)
NGK排ガス浄化用ハニカム(ハニセラム)、粒子状物質の除去フィルター、NOxセンサー半導体製造装置用セラミックヒーター・静電チャック、がいし、電子部品売上の10%以上を占める顧客なし
ブリヂストン乗用車・トラック・バス用タイヤ、空気ばね鉱山・建設車両用タイヤ、航空機用タイヤ、油圧ホース、免震ゴム、ゴルフ用品、自転車売上の10%以上を占める顧客なし
スタンレー電気ヘッドランプなど自動車用ランプ、二輪車用ランプ、車載液晶・操作パネルLED、液晶用バックライト、照明(岩崎電気を2026年4月に子会社化)売上の10%以上を占める顧客なし。ホンダが筆頭株主(13.62%)
住友ゴム工業「ダンロップ」「ファルケン」ブランドのタイヤ、パンク応急修理剤ゴルフ・テニス用品、制振ダンパー、医療用ゴム売上の10%以上を占める顧客なし
日本特殊陶業スパークプラグ、グロープラグ、排気センサー半導体製造装置用部品、ICパッケージ、切削工具、窒化ケイ素の放熱基板、医療用酸素濃縮器売上の10%以上を占める顧客なし
横浜ゴム乗用車・トラック・バス用タイヤ、アルミホイール、自動車用ホース農業機械や建設・鉱山車両などのオフハイウェイタイヤ(3,711億円、売上の30.0%)、コンベヤーベルト、航空部品売上の10%以上を占める顧客なし
アイシン自動変速機、無段変速機、ハイブリッド用変速機、電動駆動装置「イーアクスル」、ブレーキ、パワースライドドア、運転者の監視システムガスヒートポンプエアコン、家庭用燃料電池トヨタグループ69.7%(会社が示す数字)
小糸製作所LEDヘッドランプ、標識灯、LiDAR鉄道車両の制御機器・シート、道路交通信号トヨタ自動車1社向け13.6%
住友電気工業ワイヤーハーネスと自動車電装部品(2兆2,817億円、連結売上の44.6%)、防振ゴム・ホース(住友理工)光ファイバー、光デバイス、インジウムリン(InP)基板、送配電用ケーブル、超硬工具売上の10%以上を占める顧客なし

アイシンのトヨタ依存度は、数え方によって変わる。トヨタ自動車1社向けは29.5%で、有価証券報告書の主要な顧客の注記では「トヨタ自動車及びそのグループ会社」が60.8%だ。売上の内訳表の「トヨタグループ」は69.7%で、会社はこの数字を依存度として使っている。注記と内訳表では範囲が違うが、その定義は書かれていない。

自動車以外の事業が利益を左右する会社もある。住友電気工業の情報通信部門は、生成AI向けデータセンターで光配線製品や光ケーブル、光デバイスの需要が増え、2026年3月期の営業利益が774億円と前期の199億円から約3.9倍になった。全社の営業利益の増加分975億円のうち、約6割を情報通信部門が占めた。ランキングの表ではワイヤーハーネスの会社とされるが、利益を伸ばしたのはAI向けの光部品だ。自動車向けの事業が利益を押し下げた例もある。小糸製作所は、LiDAR事業(買収した米セプトンののれんを含む)や中国事業などで計215億円の減損損失を計上した。

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