IMVは第3四半期決算で通期予想を据え置いた。前期も同じ時期に据え置き、決算発表の前日に引き上げている。今期は9か月間の受注高が170億円と前年同期並みで、21.8%の増収は前期までに受注した防衛向けなどが支えたとみられる。

製品に振動を加えて耐久性を確かめる振動試験装置で国内首位(自社調べ)のIMV(東証スタンダード上場)は2026年8月5日、2026年9月期の第3四半期決算を発表し、通期の業績予想を据え置いた。第3四半期累計(2025年10月〜2026年6月、以下9か月間)の営業利益は19億8,900万円で、通期予想24億円の82.9%に達している。予想どおりなら、7〜9月の営業利益は前年同期比41.0%減となる計算だ。同社は据え置きの理由を説明していない。

そこでIMVの決算短信、決算説明資料、有価証券報告書、中期経営計画と8〜9月の発表資料をもとに、受注高と受注残高、売上高の関係から据え置きの背景を探った(資料は2026年10月1日時点)。

IMVは前期も進捗率83%で予想を据え置き、決算発表の前日に上方修正した

決算短信によると、9か月間の売上高は155億1,000万円(前年同期比21.8%増)、営業利益は19億8,900万円(22.9%増)、経常利益は22億2,700万円(25.1%増)、純利益は15億4,500万円(12.0%増)だった。通期予想は売上高200億円、営業利益24億円、経常利益24億円、純利益18億5,000万円で、2025年11月の公表から変えていない。前期の実績は売上高179億4,100万円、営業利益23億1,500万円、経常利益25億6,900万円、純利益19億3,500万円だった。今期の予想は、経常利益と純利益が前期を下回る。

進捗率は累計の実績を通期予想で割った値で、第3四半期時点の水準は前期とほぼ同じだった。

決算期売上高の進捗率営業利益の進捗率その後
2025年9月期77.2%83.0%売上高は予想を8.7%上回った
2026年9月期77.6%82.9%通期決算は未発表

前期は第3四半期の時点で、売上高165億円、営業利益19億5,000万円の予想を維持した。修正を発表したのは、期末を過ぎた2025年11月6日、通期決算の前日だった。実績は売上高が従来予想を8.7%、営業利益が18.7%上回った。

今期の予想から9か月間の実績を引くと、7〜9月の売上高は44億9,000万円、営業利益は4億1,100万円となる。前年同期の売上高52億400万円、営業利益6億9,700万円に比べ、それぞれ13.7%、41.0%少ない。

前期は9か月間の実績が、売上高で通期の71.0%、営業利益で69.9%を占めた。今期も同じ比率になると仮定すると、通期の売上高は約218億円、営業利益は約28億5,000万円と試算できる。実際にそうなるかは、7〜9月に売上高に計上できる受注残高がどれだけあるかによる。

経常利益の進捗率は92.8%に達した。為替差益を2億4,400万円計上したためだ。同社は予想の前提となる為替レートを1ドル130円、1ユーロ145円としている。純利益の伸びが12.0%にとどまったのは税負担が増えたためで、税負担率(税引き前利益に対する法人税等の割合)は前年同期の23.1%から30.4%へ7.3ポイント上がった。

受注高は170億円で横ばい、IMVの増収を支えたのは前期末までの受注残高か

受注高は期間中に新たに受けた注文の額、受注残高は受注したがまだ売上高に計上していない額を指す。IMVの9か月間の受注高は170億200万円で、前年同期の169億8,500万円から0.1%しか増えていない。装置の製造・販売と保守を担う主力事業(振動シミュレーションシステム)に限っても133億8,100万円で、0.8%増だった。

前期末(2025年9月末)の受注残高は154億6,300万円で、9か月間の売上高155億1,000万円とほぼ同じ額だった。2026年6月末の受注残高は169億5,500万円で、前年同月末の158億9,500万円を6.7%上回った。四半期末の残高としては、比較できる2023年12月末以降で最も多い。ただし前年同月末比の伸び率は、2025年9月末の32.8%、2026年3月末の14.3%から鈍化している。

IMVの受注高、売上高、受注残高の比較。9か月間の受注高は169.9億円から170.0億円へ0.1%増、売上高は127.4億円から155.1億円へ21.8%増、6月末の受注残高は159.0億円から169.6億円へ6.7%増
IMVの受注高、売上高、受注残高の比較。9か月間の受注高は169.9億円から170.0億円へ0.1%増、売上高は127.4億円から155.1億円へ21.8%増、6月末の受注残高は159.0億円から169.6億円へ6.7%増

受注高を売上高で割った倍率は、2024年9月期の1.27倍、2025年9月期の1.21倍から、今期の9か月間では1.10倍に下がった。1倍を超えているので受注残高はなお増えているが、積み上がるペースは鈍っている。6月末の受注残高は通期の売上高予想200億円の10.2か月分にあたり、その95.0%を振動シミュレーションシステムが占める。

顧客から受け取った前受金などを示す契約負債は、2024年9月末の14億6,800万円から2025年9月末に35億400万円、2026年6月末に43億6,000万円へ増えた。2年足らずで3.0倍になった。納入前に代金の一部を受け取る大型案件が増えたためとみられる。

直近の3か月(4〜6月)に絞ると、売上高は39億9,900万円で前年同期より24.5%増えたが、受注高は55億6,400万円で1.4%減り、営業利益は1億1,600万円で16.5%減った。売上総利益率は32.5%と、前年同期の37.7%から5ポイント余り下がった。中間期(2025年10月〜2026年3月)は38.9%で、同社は利益率の高い大型案件の比率が上がったと説明していた。四半期ごとの利益率は、その期に売上高に計上した案件の構成によって振れやすい。予想から逆算した7〜9月の営業利益4億1,100万円は、4〜6月の実績の約3.5倍にあたる。

9か月間の販売費・一般管理費は23.7%増えた。同社は研究開発と人材への投資を理由に挙げる。

振動試験装置の受注は防衛が自動車を抜き、売上高への反映は約1年遅れた

振動試験装置は、製品に振動を加え、輸送中や使用中の揺れに耐えられるかを確かめる装置だ。試験の条件どおりに揺れを制御する振動制御器、信号を大きな電流に変える電力増幅器、電磁力で試験品を揺らす振動発生機の3つからなる。IMVは有価証券報告書で、この3つをすべて自社で開発していると説明する。温度や湿度と振動を同時に加える複合環境試験の装置も手がける。同社の調査では、IMVの振動試験装置の販売シェアは国内で61%、世界で24%だった(2025年11月の決算説明資料)。国内2位の企業は28%、世界では中国の2社が17%と15%で続く。

振動試験装置の3つの構成要素とJAXAの設備更新の範囲。振動制御器から電力増幅器、振動発生機へ信号が流れ、加速度信号が制御器へ戻る。2026年9月に発表した更新は電力増幅器、システム制御部、振動制御部が対象
振動試験装置の3つの構成要素とJAXAの設備更新の範囲。振動制御器から電力増幅器、振動発生機へ信号が流れ、加速度信号が制御器へ戻る。2026年9月に発表した更新は電力増幅器、システム制御部、振動制御部が対象

事業は3つある。装置の製造・販売と保守を担う振動シミュレーションシステムは、9か月間の売上高が116億9,200万円(前年同期比25.8%増)だった。同社は決算短信で、増収の要因に国内外の航空宇宙産業と自動車産業の設備投資を挙げた。振動試験や電磁両立性(EMC)試験を請け負うテスト&ソリューションサービスは30億2,000万円(20.5%増)、地震計などのメジャリングシステムは7億9,800万円(14.5%減)である。

2026年5月の決算説明資料によると、振動シミュレーションシステムの中間期の売上高は87億2,700万円(24.6%増)で、日本国内と米国向けが好調だった。防衛産業向けが大きく伸び、増収をけん引した。同社は、AIサーバー関連向けの販売が続き、建設機械や農業機械など大型の機械にも電動化の流れがあるとして、大型装置や特殊装置の需要が旺盛だと説明する。AIサーバー向けは2025年5月の資料でも、アジアを中心に引き合いが複数あったと記していた。金額と台数は開示していない。

受注を産業別にみると、この2年で首位が自動車から防衛に代わった。決算説明資料によると、振動試験装置の受注に占める防衛向けの比率は2023年9月期が13%、2024年9月期が14%で、2025年9月期に29%へ上がった。自動車向けは34%、44%、23%と推移し、2025年9月期に防衛が自動車を上回った。2026年9月期の中間期も防衛29%、自動車28%だった。2025年9月期までは保守などのサービスを除いた構成比で、中間期の資料はサービスを含むかどうかを明記していない。国内に限ると、2025年9月期の受注は防衛が41%、自動車が27%だった。

売上高に占める防衛向けの比率は2024年9月期まで10%で、2025年9月期に16%、2026年9月期の中間期に26%となった。自動車向けは38%、40%、41%と推移し、中間期に36%へ下がった。2025年9月期の受注の変化が、約1年遅れて売上高に表れた形だ。

IMVの振動試験装置の受注と売上高に占める防衛と自動車の比率。受注の防衛比率は13%、14%、29%、29%、自動車は34%、44%、23%、28%。売上高の防衛比率は10%、10%、16%、26%、自動車は38%、40%、41%、36%
IMVの振動試験装置の受注と売上高に占める防衛と自動車の比率。受注の防衛比率は13%、14%、29%、29%、自動車は34%、44%、23%、28%。売上高の防衛比率は10%、10%、16%、26%、自動車は38%、40%、41%、36%

同社は産業別の受注額を開示していない。構成比の分母は保守などのサービスを除いた装置の受注額だが、この額も公表しておらず、金額は分からない。伸び率だけを試算する。2025年9月期の振動シミュレーションシステムの受注高は前の期より12.1%増えた。装置の受注も同じ率で増えたと仮定すると、防衛向けの受注額は2024年9月期の約2.3倍、自動車向けは約4割減となる。同社は2025年9月期について、車載用電池を中心に電気自動車関連の受託試験が堅調だったと説明している。それでも装置の受注では、自動車向けの比率が下がった。

納入先として同社が公表しているのは、掲載の許可を得た企業や機関に限られる。2025年11月時点の一覧には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、デンソー、TDK、欧州のエアバスなどが並ぶ。防衛省の名前は載っていない。

防衛予算の契約額は2023年度に2.4倍、IMVの防衛向け受注は1年半遅れて増えたか

防衛向けの受注が増えた時期を、国の防衛予算や三菱重工業の受注高と比べた。防衛省の予算を契約ベース(その年度に新たに結ぶ契約の額)でみると、2022年度の3兆8,388億円から2023年度に9兆823億円へ2.4倍に増えた。防衛装備で国内最大手の三菱重工業は、防衛・宇宙事業の受注高が2022年度の5,571億円から2023年度に1兆8,781億円へ3.4倍になった。数字は三菱重工業の2025年度決算説明資料による。予算額は防衛省の公表値である。

年度防衛予算(契約ベース)三菱重工業の防衛・宇宙の受注高IMVの装置受注に占める防衛の比率
20223兆8,388億円5,571億円—
20239兆823億円1兆8,781億円13%
20249兆4,691億円1兆8,768億円14%
20258兆5,353億円1兆6,826億円29%

国と三菱重工業の年度は4月から翌年3月まで、IMVの決算期は10月から翌年9月までで、表のIMVの欄は各年の9月期を指す。2022年9月期の比率は、IMVの決算説明資料に記載がない。国の予算と三菱重工業の受注が急増したのは2023年度で、その半ばは2023年10月にあたる。IMVの防衛比率が上がった2025年9月期の半ばは2025年4月で、1年半の開きがある。年単位の比較なので、実際の時間差には幅がある。装備品の契約が結ばれ、開発と量産の準備が進んでから試験設備の発注が出るとすれば、1年半の遅れは説明がつく。ただしIMVは防衛向けの受注先を公表しておらず、国の契約との関連は確認できていない。

防衛予算の契約額と三菱重工業の受注高は、すでにピークを過ぎた。契約ベースの防衛予算は2024年度の9兆4,691億円が最大で、2026年度は8兆2,607億円と、2024年度を12.8%下回る。三菱重工業は2026年度の防衛・宇宙の受注高を1兆4,000億円と見込む。2024年度の実績を25.4%下回る水準だ。現行の防衛力整備計画(2023〜27年度)の契約額は43.5兆円程度で、参議院の調査資料によると、2026年度までにその81%が予算に計上された。防衛省は2027年度の概算要求で、安全保障関連3文書の改定に左右される事業を、金額を示さない事項要求とした。IMVの国内の防衛向け受注が次に増えるのは、改定後の計画に基づく契約が結ばれた後になる公算が大きい。防衛力整備計画と三菱重工業の受注の経緯は三菱重工の防衛受注と次期計画で、契約の実績は防衛調達のデータで、三菱重工業の開示は銘柄ページで確認できる。

IMVの国内の防衛向け受注が伸び悩めば、海外の受注で補えるかが焦点になる。IMVの2025年11月の決算説明資料によると、欧米の受注高(ユーロ建てで開示)は、2025年9月期に欧州が2,170万ユーロ、米国が1,840万ユーロだった。米国は2021年9月期の550万ユーロから3.3倍になった。大型装置の受注は大半が航空宇宙・防衛産業向けで、IMVは欧州の衛星大手タレス・アレーニア・スペースのイタリア法人への納入も始めた。IMVは需要が続く根拠として、北大西洋条約機構(NATO)が国防費の目標を2035年までに国内総生産(GDP)比5%へ引き上げることを挙げる。

JAXAの設備更新は2028年9月期の売上高に、IMVの2027年9月期の計画は205億円にとどまる

第3四半期決算の後、IMVからは受注に関する発表が相次いだ。9月17日には、試験・検査・認証を世界で手がける米エレメント社と、振動試験装置の納入と保守に関する包括契約を結んだと発表した。期間は2026年5月から2029年5月までの3年間で、金額は公表していない。エレメントは航空宇宙、防衛、自動車などの企業から試験を請け負う。IMVは2026年3月、米カリフォルニア州に保守拠点を開設した。

9月28日には、JAXAが保有する大型振動試験設備の更新を、主契約者の三菱重工機械システムから受注したと発表した。最大8トンの試験品を載せ、垂直方向に800キロニュートンの力を加えられる設備で、電磁力で動かす方式としては国内最大級という。人工衛星やロケットが打ち上げ時の振動に耐えられるかを地上で確かめるのに使う。電力増幅器、システム制御部、振動制御部(振動制御器にあたる)を更新し、振動制御部にはIMVの「K2+」を採用する。売上高への計上は2028年9月期の予定で、今期の業績への影響は軽微という。IMVはJAXAの宇宙戦略基金(第2期)にも採択されており、研究開発を進める方針だ。

IMVは国内各地とタイ、ベトナムの試験所で試験を請け負う。受託試験は、装置の定期点検や校正と並ぶ継続的な収益源だ。10月1日以降に発行する見積書から料金を引き上げた(8月31日発表、改定幅は非公表)。エネルギー費と、新しい規格に対応する試験環境の維持費が増えたためだ。一方、9月29日には、タイの試験所が大雨で浸水したため試験を当面休止すると発表した。受託試験の受注残高は6月末で4億3,700万円と、前年同月末の9億200万円から51.5%減っていた。

同社の売上高の計画は慎重だ。2025年11月に修正した中期経営計画では、2027年9月期の売上高を205億円とし、今期予想の200億円から2.5%の増加にとどめた。利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)は今期予想の31億5,000万円から36億円へ14.3%増やす計画である。3年間の設備投資は59億2,000万円で、大阪本社に建てる「先進技術センター(仮称)」は2027年1月ごろの稼働を目指す。大型装置を検査する場所の不足を解消する狙いがある。財務面では、配当は1株30円の予想を維持し、6月末の自己資本比率は51.8%だった。

IMVの今期の増収は、前期までに防衛向けを中心に受注した案件が売上高に計上された結果とみられる。受注高が増えないまま売上高が伸び続ければ、売上高が受注高を上回った時点で受注残高は減少に転じ、増収は続きにくくなる。7〜9月の受注高が前年同期の47億7,200万円を上回るか、装置受注の防衛比率が29%からどう動くかは、11月に見込まれる通期決算の発表と決算説明資料で明らかになる。据え置いた予想を前期と同じく決算発表の直前に引き上げるかどうかも、そこで分かる。前期の通期決算は11月7日、決算説明資料は11月19日に公表された。

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