米国は単独なら世界の国内総生産 (GDP) の26.0%だが、ブリンケン前米国務長官が挙げた同盟国と合わせると59.6%になる。国際通貨基金がまとめた2025年の名目GDPで計算した。日本の国際特許出願は米国の91%の件数だ。

アントニー・ブリンケン氏は、バイデン政権で2021年1月から2025年1月まで国務長官を務めた。2026年5月19日、米ワシントンのシンクタンク、アメリカ進歩センターの年次会議で外交の討論会に登壇し、中国と1対1で競えば米国は負けかねないと述べた。同盟国と組めば世界経済の5〜6割を占め、中国も無視しにくくなるという主張だ。同氏が挙げた数字を国際機関の統計で確かめると、GDPの比較はほぼ合う一方、製造業の差は同氏が言う3倍より小さかった。同盟の重要な一角を占める日本では、半導体製造装置大手の東京エレクトロンの売上高に占める中国の比率が2年で44.4%から34.1%に下がったが、地域別では今も最大だ。

ブリンケン氏は討論会で、中国と1対1なら負けうると答えた

アメリカ進歩センターのウェブサイトによると、討論会は米東部時間の5月19日午後1時すぎから約30分間開かれた。登壇したのはアンディ・キム上院議員 (民主党)、リンダ・トーマスグリーンフィールド元米国連大使、ブリンケン氏の3人で、司会はバイデン政権で大統領報道官を務めたジェン・サキ氏だった。単独の講演ではなく、ブリンケン氏は討論会の登壇者の1人だった。

公開されている発言録によると、サキ氏はトランプ大統領が前週に訪中から戻ったことに触れ、米国が中国と単独で競えば負ける側に回りかねないというブリンケン氏の過去の演説の一節を引き、米中関係の現状と処方箋を尋ねた。ブリンケン氏はまず、トランプ氏は世界を大国の勢力圏に分けて見ており、中国が周辺地域で好きに振る舞うことを認めがちだと批判した。そのうえで中国を、国際秩序を自国の利益と価値観に沿って作り替える意図と能力を併せ持つ唯一の国と位置づけた。

1対1では負けうる理由として、同氏は中国の市場の大きさ、米国の3倍の規模の製造業、購買力平価で米国を上回る経済規模、論文と特許の多さ、米国を上回る規模の海軍を挙げた。逆に欧州・日本・韓国・インド・オーストラリア・カナダと組めば、世界のGDPに占める割合は米国単独の約25%から50〜60%に上がるという。ただし同氏は、米国は国内だけでなく世界でも支持を失っており、他国をまとめる力は大きく落ちたとも述べた。主張の力点は、同盟国と合わせた数字そのものより、その数字を生かす米国の力が大きく落ちている点にあった。

同盟国と合わせると世界のGDPの59.6%、述べた幅の上限に当たる

国際通貨基金が2026年10月に公表した世界経済見通しで、2025年の名目GDPを比べた。世界全体の約118兆ドルのうち、米国は約31兆ドルで26.0%を占め、同氏の言う約25%とほぼ一致する。中国は約20兆ドルで16.6%だった。

国・地域2025年の名目GDP (億ドル)世界に占める割合
米国308,61326.0%
欧州連合 (EU)212,97818.0%
日本44,5313.8%
英国40,1223.4%
インド39,0903.3%
カナダ23,2122.0%
韓国18,8171.6%
オーストラリア18,4081.6%
合計 (8か国・地域)705,77159.6%
中国196,26216.6%
世界1,184,853100.0%

同氏の言う欧州をEUと英国とみて8か国・地域を合わせると約70兆6,000億ドルで、世界の59.6%になる。英国を除いても56.2%、2026年の見通しで計算し直しても58.6%で、いずれも50〜60%の範囲に収まる。8か国・地域の合計は中国の3.6倍だ。日本は2025年に3.8%を占め、米国、EUに次いで3番目に大きい。2026年の見通しでは3.4%に下がる。

購買力平価 (各国の物価水準の違いを調整した換算レート) で比べると、2025年の中国は約41兆3,000億ドル相当で、米国の1.34倍になる。この点は同氏の主張どおりだ。

製造業の付加価値で比べると、中国は米国の3倍ではなく1.65倍だった

中国の製造業が米国の3倍という数字は、付加価値 (生産額から原材料などの中間投入を引いた額) で比べると裏づけられなかった。世界銀行の統計では、2025年の中国の製造業の付加価値は4兆8,227億ドルで、世界全体 (17兆6,011億ドル) の27.4%を占める。米国の値は世界銀行の統計に2021年までしか載っていないため、米商務省経済分析局が四半期ごとに出す季節調整済みの年率換算値を使った。2025年は1〜3月期が2兆8,529億ドル、4〜6月期が2兆9,100億ドル、7〜9月期が2兆9,791億ドル、10〜12月期が2兆9,784億ドルで、平均すると2兆9,301億ドルになる。中国は米国の1.65倍で、2倍にも届かない。

2つの統計は作成機関が異なるため、倍率には誤差が残る。それでも1.65倍と3倍の開きは大きい。同氏は3倍が何を基準にした数字かを示していない。中間投入を含む生産額で比べれば差は広がりうるが、本稿では確かめていない。

一方、艦艇の数では同氏の主張どおりだった。米議会調査局は2025年4月の報告書で、国防総省の推計を引き、中国海軍の戦闘艦艇を370隻以上とし、2025年に395隻、2030年に435隻に増えると見込んでいたことを紹介した。米海軍の戦闘艦艇は2024年9月30日時点で296隻だった。

国際特許出願は中国が首位、日本は米国に迫る4万7,922件

特許の件数は、国際特許出願で比べた。特許協力条約に基づく国際出願は、1件の出願で複数の国に出願したのと同じ効果が得られる制度だ。世界知的所有権機関が2026年3月6日に公表した推計値によると、2025年の出願は合計27万5,900件で、前年より0.7%増えた。出願人の国別では中国が7万3,718件で首位だった。米国は5万2,617件で4年連続の減少、日本は4万7,922件で3年連続の減少だった。

ブリンケン氏が挙げた同盟国の件数を足すと、中国を上回る。米国と日本だけで10万539件となり、中国の1.36倍だ。韓国・ドイツ・フランス・英国・インド・カナダ・オーストラリアを加えると16万2,762件で、中国の2.2倍になる (ドイツとフランス以外のEU加盟国は含めていないため、実際はこれより多い)。日本の件数は米国の91.1%に当たり、差は4,695件しかない。同盟国の合計で見ると、特許では日本は米国に次ぐ大きな柱だ。

企業別の順位 (公開された出願の件数による) にも日本企業が並ぶ。首位は中国のファーウェイ (7,523件) だが、6位にパナソニックの知的財産の管理会社 (2,094件)、10位に三菱電機 (1,835件)、13位にNTTドコモ (1,435件) が入った。上位100の出願人のうち、日本の企業・機関は32だった。半導体製造装置では東京エレクトロンが37位で609件と、前年の464件から31.3%増えた。同業の米アプライド・マテリアルズは25位で951件だった。半導体材料のレゾナックも46位で481件だった。

装置の輸出管理で、日本政府は米国への追随ではないと説明した

キム上院議員は同じ討論会で、半導体や製造装置で他国に協力を求めようにも、ホワイトハウスが中国向けの半導体の輸出をどう扱うのかが分からないと述べた。同盟国の協調が具体的に問われる分野の1つが、半導体製造装置の輸出管理である。

安全保障貿易情報センターの解説によると、経済産業省は2023年3月31日、半導体製造装置23品目を外為法に基づく輸出管理の対象に加える省令の改正案を公表した。成膜装置が11品目と最も多い。ほかに洗浄・熱処理・露光・エッチング・検査の装置があり、極端紫外線露光向けの塗布・現像装置も対象になる。輸出先は全地域で、友好国など42か国・地域を除く約160か国・地域への輸出に個別の許可を求める。中国もこの中に入る。改正省令は2023年5月23日に公布され、7月23日に施行された (政府の法令検索の改正履歴による)。

西村康稔経産相 (当時) は改正案の公表時の会見で、米国やオランダを含む同盟国・同志国と意見交換を重ね、一定の理解を得たと説明した。同時に、米国の2022年10月の規制に追随したものではなく、特定の国を対象としていないとも述べた。ブリンケン氏の国務長官時代の措置だが、日本政府は米蘭などと事前に意見交換したうえで、米国への追随ではなく全地域向けの自国の措置と位置づけた。

東京エレクトロンの売上高に占める中国の比率は、2年で44.4%から34.1%に下がった

東京エレクトロンは有価証券報告書で、売上高を顧客の所在地別に開示している。2024年3月期は売上高1兆8,305億円のうち中国が8,133億円で44.4%を占めた。比率は2025年3月期に41.7%、2026年3月期には34.1%に下がった。

地域2025年3月期 (百万円)2026年3月期 (百万円)前年比
中国1,015,060832,555(-18.0%)
韓国409,009543,858(+33.0%)
台湾410,627499,853(+21.7%)
日本189,979239,427(+26.0%)
北米242,964166,446(-31.5%)
合計2,431,5682,443,533(+0.5%)

2026年3月期の中国向けは前期より約1,825億円減った。韓国と台湾の増加は合わせて約2,241億円で、中国の減少を上回り、売上高全体は0.5%増えた。有価証券報告書の主要な顧客の情報によると、韓国のサムスン電子 (グループ会社を含む) 向けが3,681億円で売上高の15.1%、台湾積体電路製造 (TSMC) 向けが3,158億円で12.9%を占める。

同社は決算説明会で、中国向けの売上高と比率が下がった理由を説明している。2026年4月30日の説明会では、先端向けの投資の伸びがより大きかったため、1〜3月期の中国向けの比率が前四半期より5.0ポイント低い26.8%になったと述べた。2月6日の説明会の質疑では、2023〜2024年に投資した中国の新興の顧客が歩留まりの向上に力を入れて投資を控え、中国向けの売上高が減ったと答えた。2025年10月31日の説明会の質疑では、中国への新たな輸出規制について問われ、現時点で業績に影響する追加の規制は出ていないと答えている。ただし、2026年4月30日の説明会の質疑では、2025年のエッチング装置のシェア低下の要因の1つに「規制による顧客の納期調整」を挙げた。

中国は比率が下がっても、地域別では今も最大だ。2026年7月30日の決算説明資料によると、4〜6月期の売上高7,323億円のうち、中国向けは2,229億円で30.4%を占め、台湾 (1,861億円) と韓国 (1,524億円) を上回った。同社は2027年3月期の通期の中国向け比率を30%台前半と想定している。同じ説明会で同社は、中期経営計画を立てた時点では想定していなかった事象の1つに、米中対立に伴う規制や関税を挙げた。同社の企業概要は東京エレクトロンの企業ページに、米中の休戦が日本企業への措置にどう響くかは米中休戦と東京エレクトロンの記事にまとめている。

※2026年10月19日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。当初の記事ではブリンケン氏を「国務長官」と書きましたが、同氏は2025年1月に退任した元国務長官で、発言はアメリカ進歩センターの討論会でのものでした。「統一戦線」の語は発言になかったため削除しました。同盟国の顔ぶれは発言どおり欧州・日本・韓国・インド・オーストラリア・カナダに、「世界のGDPの半数以上」は約25%から50〜60%へ上がるという内容に改めました。2024年の米大統領選を先の出来事とした点やトランプ政権を「前政権」とした点、出所を確かめられない先端パッケージングの市場の数字などは削除しました。

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