光SSDを開発するNEDOの事業で、キオクシアが見込む総事業費は当初の約25億円から約14億円に縮み、国の補助も約19億円から約10億円に減った。光部品は京セラとアイオーコアが担い、キオクシアは事業化を2029年頃とみる。

光SSDは、記憶装置のSSDとサーバー本体の間を、銅の配線ではなく光ファイバーで接続する製品である。キオクシアは2024年8月、米国の記憶装置の展示会で試作機を初めて公開した。2025年4月8日には京セラ、アイオーコアと連名で、高速の接続規格PCIe 5.0での動作を発表した。PCIeは信号の通り道を何本か束ねて使い、1本を「レーン」と呼ぶ。発表したのは第5世代のPCIe 5.0を4レーン使う構成で、キオクシアの試作SSDに、アイオーコアの光送受信器 (光トランシーバー)「IOCore」と、京セラの光電気集積モジュール「OPTINITY」を組み合わせた。光電気集積モジュールは、光と電気の部品を1つの基板にまとめた部品である。開発は新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) のグリーンイノベーション基金事業の一部で、各社はNEDOに提出した計画書 (事業戦略ビジョン) で予算と日程を数字で示している。計画書の各版を2026年2月の講演資料と並べると、試作機の性能が上がる一方で、キオクシアの計画の金額は2024年に小さくなっていた。

光SSDの読み出しの速さは電気接続の98%だった

キオクシアの光SSDは、SSD本体に光部品を作り込んだ製品ではない。同社が2026年2月27日、ストレージの業界団体のセミナーで示した資料によると、光と電気の信号を変換するモジュールを載せた基板 (ブリッジボード) を、データセンター向けSSDで広く使われる接続端子に差して光接続にしている。

同社は同じ講演で、SSDをサーバー本体 (ホスト) のCPUと光ファイバーで接続した場合と、電気で直結した場合の性能を比べた。大きなデータをまとめて読む連続読み出しは、光が毎秒14.21GB、電気が毎秒14.50GBで、光は電気の98.0%だった。連続書き込みは光が毎秒3.59GB、電気が毎秒3.58GBで、小さなデータを飛び飛びに読み書きするランダムの読み書きもほぼ同じ値だった。PCIe 5.0の4レーンで理論上、流せるデータの量は、信号の符号化に使う分を除くと毎秒約15.8GBになる。光接続はその約90%、電気接続は約92%を出した計算だ。キオクシアは2025年10月時点の計画書で、最初の試作機の連続読み出しを毎秒約13.9GBとしていた。講演資料の値とは異なり、測定の条件はどちらの資料にも書かれていない。

接続の形も広がった。キオクシアは電気信号で切り替えるPCIeスイッチを介して、光SSD 4台とサーバー本体を1世代前のPCIe 4.0で結び、この構成を2025年10月のシーテック2025で実際に動かして展示した。講演資料の表では、この構成の連続読み出しは毎秒6.43GBだった。入出力が各64口の光スイッチを介し、光SSD 8台とサーバー本体をPCIe 5.0で結ぶ試験も行い、各台で毎秒14.1GBの連続読み出しを確かめた。

光を使う理由として、キオクシアは距離を挙げる。一般的なサーバーはCPUや画像処理半導体 (GPU)、SSDを同じ箱に入れ、部品の間は数十センチで済む。CPU、メモリー、SSDをそれぞれ別の棚にまとめ、処理に必要な分だけ組み合わせる「ディスアグリゲーション」では、数メートルから数十メートル以上を高速で結ぶ必要がある。一方、電気の配線はPCIeの世代が上がるほど届く距離が短くなると同社は説明する。キオクシアは2025年4月の自社の記事で、40メートルの光ファイバーで接続したコンセプトモデル (試作機) を動かし、電気で接続した場合と比べたことも示している。帯域400Gbpsの従来の構成で290ワット、512Gbpsの光SSDの構成で112ワットという消費電力の見積もりは、光SSDの電力を部品ごとに検算した記事で検証した。

国の事業で広帯域SSDの予算は7テーマで最小、キオクシアの計画はさらに縮んだ

研究の枠組みは、NEDOの「次世代グリーンデータセンター技術開発」である。2022年2月に採択され、富士通が幹事を務める。2026年1月に更新された参加企業の一覧では、NEDOが2025年度で終了とする日本ゼオンを除くと、富士通、1FINITY、NEC、アイオーコア、古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ、京セラ、キオクシアの7社で、3社だけの事業ではない。研究期間は2021年度から最長2028年度まで。NECが担っていた省電力アクセラレーター (特定の計算を肩代わりする半導体) の開発は、同社の申し出で2022年度に終了した。

NEDOは2021年10月の公募で、7つの研究テーマごとに国が負担する額の上限を示した。合計は892億円で、最も大きいのは富士通が担う省電力CPUの502億円 (全体の56%) だった。キオクシアが担う広帯域SSDは19億円 (2.1%) で、7テーマで最も小さい。広帯域SSDは、一定時間に送れるデータの量 (帯域) を大きくしたSSDを指す。光電融合デバイスは、電子回路と光の部品を組み合わせ、電気の配線を光に置き換える部品である。

研究テーマ担当 (2026年1月時点)国の負担の上限
省電力CPU富士通502億円
光スマートネットワークカード1FINITY、古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ、京セラ110億円
省電力アクセラレーターNEC (2022年度で終了)90億円
不揮発メモリー日本ゼオン (NEDOの一覧では2025年度で終了)65億円
光電融合デバイスアイオーコア56億円
ディスアグリゲーション技術NEC50億円
広帯域SSDキオクシア19億円
合計7テーマ892億円

2021年10月の公募の上限で、成果に応じて上積みされる分 (インセンティブ) を含む。経済産業省が2026年3月18日に改めた計画では、取りやめた2テーマの使われなかった分 (約77.8億円と約33.1億円) を差し引き、上限の合計を781.1億円としている。不揮発メモリーの終了の時期は、NEDOの一覧が2025年度、経済産業省の計画の日程表が2024年度と記し、食い違う。

キオクシアの計画は、そこからさらに縮んだ。同社は事業開始時点の計画書で、2028年度までの総事業費を約25億円、うち国の負担を約19億円、自己負担を約6億円としていた。2023年3月の版も同じ額だったが、2024年4月の版でそれぞれ約14億円、約10億円、約4億円に改め、2025年10月時点の版も同じ額を示す。総事業費は4割強、国の補助はほぼ半分に減った。同社は計画書で減額の理由を金額と結び付けて説明していない。ただ、額を縮めた2024年4月の版で「事業開始当初は想定できなかったいくつかのプロセスを見直すことにより、成果目標を変えずにより効率的な開発を実施。」との文を加えている。

会社担当総事業費うち国の負担自己負担事業化と投資回収の見通し
キオクシア広帯域SSD約14億円 (当初は約25億円)約10億円 (当初は約19億円)約4億円2029年頃に事業化、2032年頃に回収
アイオーコア光電融合デバイス約180億円 (2029年度以降を含む)約56億円約124億円2025年以降に順次事業化、2035年頃に回収
京セラ光と電気の部品を1つにまとめる技術43億円30.5億円12.5億円2030年頃に事業化、2035年頃に回収

各社の2025年10月時点の計画書の資金計画の表から作成。「当初」は事業開始時点の計画書の値。国の負担は、インセンティブを全額受け取った場合の額。京セラは同じ計画書の本文で、事業期間中の自社費用を17.7億円としている。アイオーコアの回収の時期は計画書の図の値。

キオクシアの会社全体と比べると、この研究の規模の小ささが分かる。8年間の総事業費14億円は、キオクシアホールディングスの2026年4〜6月期 (3か月) の研究開発費394億円の3.6%にあたる。年平均に直すと約1.8億円で、四半期の研究開発費の0.4%ほどになる。自己負担の約4億円に限れば、394億円の1.0%である。2026年3月期の研究開発費は通期で1,411億円だった。同じ4〜6月期のSSD・ストレージ向けの売上高 (売上収益) は約1兆1,750億円で、全体の約1兆7,670億円の66%を占め、AIサーバー向けの需要を受けて過去最高を更新した。キオクシアが2026年5月15日の通期決算説明会で使った説明原稿付きの資料にも、7月31日の第1四半期の説明資料と質疑応答集にも、光SSDの記述はない。2026年8月に同じ米国の展示会への出展を発表した際に挙げた10の製品と技術にも、光SSDは入っていない。

光SSDが狙うのは省電力でなく帯域、国の事業の省エネ目標は40%から35%に

キオクシアが光SSDで目指すのは、消費電力の削減ではなく帯域の拡大である。同社は2025年10月時点の計画書で、2030年のデータセンターの電力のうち、空調などIT機器以外が36%、CPUが27%、ネットワークが15%、DRAMが10%、SSDが1%などを占めると推計した。SSDの電力はわずかで、それを削るより帯域を広げてサーバーの効率を上げる方が効くとみたためだ。

具体的には、連続読み出しの速さを研究の開始時 (2021年度) のPCIe 3.0世代の8倍にし、2028年に複数のSSDを束ねた装置全体で1,024GT/sに引き上げる。GT/sは1秒あたりに信号を送る回数 (単位は10億回) で、1,024GT/sはデータ量にすると、符号化に使う分を含めて毎秒約128GBにあたる。同社は事業開始時点の計画書では、同じ目標を2028年に装置全体で毎秒128GBと表し、2021年時点の一般的なSSDの帯域を毎秒4GBとしていた。当時は、2025年頃に広まるとみていたPCIe 6.0の4レーンのSSDでも1台では毎秒32GBまでと見込み、これを複数台束ねる計画だった。計算上は4台で毎秒128GBになる。

2026年2月の講演資料にある、光スイッチで8台を結んだ構成は、この目標に接続規格の数字の上で並ぶ。PCIe 5.0の4レーンは1台あたり128GT/s (32GT/sの4本分) で、8台なら1,024GT/sと目標値と同じになる。ただし1台ずつの実測の連続読み出しは毎秒14.1GBで、キオクシアは8台を同時に動かしたときの合計の性能を示していない。

国の事業全体の目標も変わった。NEDOは2021年の公募で、2030年までに当時普及していたデータセンターより電力を40%以上減らす目標を掲げ、各社も2025年10月時点の計画書で40%以上としていた。経済産業省は、この事業について定める「研究開発・社会実装計画」を2026年3月18日に改め、目標を35%以上とした。途中で取りやめた省電力アクセラレーターと不揮発メモリーの研究の分を除いた目標だと注記している。NEDOは10月時点で、事業の紹介ページに「2021年度に普及のデータセンターと比較して、35% 以上の省エネ化を目指します」と記す。キオクシアも2026年2月27日の講演で使った資料 (2026年3月時点の情報と記す) で、35%以上としていた。

PCIe 6.0対応の光部品は開発が遅れ、京セラは台湾企業と組んだ新製品を発表

PCIe 3.0世代の8倍という目標値は、PCIe 6.0世代の速さにあたる。その世代に対応する部品の開発は、2025年10月時点で計画より遅れていた。キオクシアは同じ時点の計画書で、PCIe 6.0対応の光電変換モジュールを載せてPCIe 5.0で動かす2次試作機について、進み具合を、ほかの2つの開発に付けた計画どおりの「○」ではなく「△」とし、その欄にモジュールの仕様の見直しと書いた。残る課題にはこのモジュールの開発の遅れを示し、アイオーコアと協議を続けているとした。

アイオーコアも同じ時点の計画書で、PCIe 6.0対応の光モジュールを組み上げて動きを調べている段階だとし、高速で動くかの確認を、計画どおりを示す「○」ではなく「△」とした。キオクシアは2026年2月の講演でも、PCIe 6.0に対応する試作機をつくることを今後の課題とし、製品にするには小型化とコストの引き下げ、歩留まり (良品の割合) の改善が要ると説明した。同社は事業開始時点の計画書で、光電変換チップの発熱でSSDの動作の速さが抑えられ、帯域が下がるおそれがあることも、課題として示していた。

京セラは2026年3月10日、OPTINITYの新製品として、PCIe 6.0の16レーンに対応する着脱式のモジュールを開発したと発表した。共同開発の相手は台湾のオーセンエックス (AuthenX) で、シリコンの基板に光の回路を作り込む技術 (シリコンフォトニクス) を手がける。京セラは2025年12月に自社のベンチャー投資ファンドを通じて、オーセンエックスに出資した。新しいモジュールは、接続できる距離を電気配線の10メートル以下から数百メートル以上に延ばし、信号を整え直す部品 (リタイマー) を不要にするという。京セラはこの成果もNEDOの同じ事業によるものだと記す。2025年4月の光SSDの発表では、京セラのモジュールはアイオーコアの光トランシーバーと組み合わせて使われていたが、今回のPCIe 6.0対応品は台湾企業と共同で開発した。キオクシアの光SSDに使うかどうかは、京セラもキオクシアも示していない。

光電融合の部品を担うアイオーコアと京セラは、キオクシアより自己負担が大きい

アイオーコアは、技術研究組合の光電子融合基盤技術研究所から研究成果の知的財産権と技術の一部を受け継ぎ、2017年に設立された。5ミリ角の光トランシーバーを手がけ、セ氏100度の環境で動く光モジュールを作れるのは自社だけだと説明している。同社の計画書によると、必要な資金は合計約180億円で、国の負担が約56億円、自社の負担が約124億円になる。このうち研究開発への投資は約78億円で、自社の負担には2029年度以降の量産技術や設備への投資を含む。2028年度までの研究開発投資から国の負担を差し引いても約22億円になり、キオクシアの自己負担の約4億円を大きく上回る。計画書では、国内の主なコネクターメーカー3社が株主として出資しているとする。投資を回収できる時期の見通しは、事業開始時点の計画書の2031年頃から、2025年10月時点の計画書の図では2035年頃に延びた。同じページの箇条書きには、研究開発費を2031年度に回収する予定とする記載も残る。

技術面では、PCIe 5.0の光モジュールでセ氏105度でも信号の品質を示す波形 (アイ波形) を得た。光源には、高温でも光り方が安定する量子ドットレーザー (直径約10ナノメートルの半導体の粒を使うレーザー) を使い、QDレーザと緊密に連携しているという。同じ計画書では、レーザーを2社から買い、費用を下げて安定した供給を図るとも記す。QDレーザは2023年4月、アイオーコアから量子ドットレーザー6万個を量産受注したと発表し、量子ドットレーザーを量産できるのは世界で自社だけだと説明している。アイオーコアはさらに、130度を超えて連続で動くことを目指す新しい構造のレーザーの開発で、短く点滅させる動かし方 (パルス動作) により200度でもレーザー光が出ることを確かめた。

京セラが国の事業で受け持つのは、データセンターのラックの間や外部の回線を光で直結するネットワークカード (光スマートネットワークカード) のうち、光と電気の部品を1つの基板にまとめるパッケージング技術である。計画書の資金計画の表では、総事業費は43億円で、国の負担30.5億円、自己負担12.5億円と、事業開始時点から変わっていない。ただ、同じ計画書の末尾では、事業期間中に投じる自社費用を17.7億円 (事業開始時点は12.5億円) としており、計画書の中で数字が食い違う。京セラは8年間の研究の後、2030年頃に事業化し、2035年頃に投資を回収するとみる。2035年度までの売上高は関連事業を含めて合計4,000億円とし、高性能計算やAIのサーバーを結ぶ光伝送モジュールで世界シェア15%を目標に掲げる。一方で、光と電気の部品を一体にする技術 (光電集積) や光の技術の蓄積が足りないこと、光伝送モジュールの事業を持たないことを自社の弱みとしている。同社は2023年12月に完成したクリーンルームに、光の通り道を作り込んだ基板 (光導波路基板) と光電集積モジュールの試作ラインを設けた。

京セラが現在、光の分野で稼いでいるのは別の部品である。同社は2026年3月期の決算説明会で、AIデータセンター向けでシェアの高い製品に、光送受信用のセラミック基板と、光通信や光スイッチの部品を収めるセラミック製の容器 (パッケージ) を挙げた。光トランシーバーのメーカーなどを経由して、米国の大手IT企業が手がけるAIデータセンター向けの採用を強化し、高速光通信用のパッケージに重点的に投資するという。京セラの研究開発費は2026年3月期が1,157億円で、前期の1,161億円からわずかに減った。2027年3月期は1,200億円を見込む。光電集積の研究の総事業費43億円を8年で割ると年約5.4億円で、2026年3月期の研究開発費の約0.5%にあたる。光電融合に関わる日本企業の全体像は、光電融合の業界地図の記事にまとめた。

光SSDの試作機は、電気で接続した場合とほぼ同じ速さを出した。ただ、キオクシアの計画では事業化は2029年頃で、その前にPCIe 6.0に対応する光部品の開発が控える。光電融合の部品で事業化を目指すアイオーコアと京セラは、キオクシアより自己負担が大きく、投資の回収にも長い時間を見込む。

※2026年10月4日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版で光SSDが「省エネ40%を実現する」とした記述は、国の事業全体の目標を指しており、2026年3月の計画改定で、中止した2テーマを除いて35%以上となっているため、その旨に改めました。旧版の、2026年後半から国内の主要データセンターなどで実地の試験が始まり2027年以降の設計基準に組み込まれる見通しとした記述と、「光通信は伝送損失がほぼゼロ」「光の軸を1マイクロメートル未満の精度で固定」とした記述は、出典を確認できなかったため削除しました。アイオーコアを産業技術総合研究所発とした記述は、技術研究組合光電子融合基盤技術研究所の技術を引き継いだ会社に改めました。3社の国家プロジェクトとした記述は、富士通を幹事とする7社の事業に改めました。

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