米JPモルガン・チェースが強気とした海外のメモリー5社とメモリーの生産で競う日本の上場企業は、キオクシア1社だ。DRAMの上位7社に日本企業はなく、キオクシアは台湾の南亜科技に約774億円を出資してDRAMを買う側に回った。

JPモルガンのアジア太平洋株式調査部門は10月1日付で、米マイクロン・テクノロジーの決算を分析したメモリー市場のリポートをまとめた。表題は、マイクロンが2031年分まで長期契約を協議しており、需給の逼迫が2028年にかけて続くという趣旨だ。顧客向けのリポートの要約によると、JPモルガンは韓国のSKハイニックスとサムスン電子、マイクロン、キオクシアホールディングス、台湾の南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)、米サンディスクの6社の投資判断を「オーバーウエート(強気)」とし、当面は株主還元の手厚いSKハイニックスをサムスン電子より有望とみている。リポートとマイクロンの決算の中身は前回の記事で検証した。

6社のうち東京証券取引所に上場するのはキオクシアだけだ。各社の開示資料と調査会社の集計をもとに、残る5社と同じ製品で競う日本の上場企業を社ごとに調べた。DRAMでは1社も見つからず、NAND型フラッシュメモリーでもキオクシアだけだった。そのキオクシアも、5社のうち3社とは出資や合弁、社債を通じても結びついている。

DRAMの上位7社に日本企業はなく、国内の量産拠点はマイクロンの広島工場

台湾の調査会社トレンドフォースによると、2026年4〜6月期の世界のDRAM売上高は1,547億2,600万ドルで、1〜3月期の970億ドルから59.5%増えた。首位はサムスン電子で、シェアは39.4%。SKハイニックスが24.9%、マイクロンが23.3%で続き、上位3社で9割近くを占める。4位は中国CXMTの9.5%、5位は南亜科技の1.7%だった。順位に載った7社に日本企業はない。7社と「その他」を編集部で合計すると1,547億2,800万ドルで、公表された合計との差は200万ドルで、四捨五入による誤差の範囲に収まる。

順位DRAM(売上高・シェア)NAND(売上高・シェア、上場企業のみ)
1サムスン電子 609億8,100万ドル・39.4%サムスン電子 230億5,900万ドル・29.3%
2SKハイニックス 385億9,000万ドル・24.9%SKハイニックス 142億7,300万ドル・18.2%
3マイクロン 360億ドル・23.3%マイクロン 118億5,000万ドル・15.1%
4中国CXMT 146億2,400万ドル・9.5%キオクシア 107億2,300万ドル・13.6%
5南亜科技 26億1,200万ドル・1.7%サンディスク 89億6,500万ドル・11.4%
6華邦電子 9億9,800万ドル・0.6%-
7力晶積成電子製造 1億1,500万ドル・0.07%-
2026年4〜6月期の売上高シェア。DRAMはサムスン電子39.4%、SKハイニックス24.9%、マイクロン23.3%、中国CXMT9.5%、南亜科技1.7%。上場企業だけのNANDの順位はサムスン電子29.3%、SKハイニックス18.2%、マイクロン15.1%、キオクシア13.6%、サンディスク11.4%
2026年4〜6月期の売上高シェア。DRAMはサムスン電子39.4%、SKハイニックス24.9%、マイクロン23.3%、中国CXMT9.5%、南亜科技1.7%。上場企業だけのNANDの順位はサムスン電子29.3%、SKハイニックス18.2%、マイクロン15.1%、キオクシア13.6%、サンディスク11.4%

日本のDRAMメーカーはエルピーダメモリが最後だった。マイクロンの年次報告書によると、エルピーダは2012年2月27日に東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請した。マイクロンは2013年7月31日に全株式を取得して買収を完了し、直径300ミリのウエハーでDRAMを生産する広島工場も傘下に収めた。マイクロンは2025年8月期の年次報告書で、広島工場を極端紫外線(EUV)露光でDRAMを生産できるよう改修中だと説明し、経済産業省から最大5,000億円の支援を追加で受けるとした。国内にDRAMの量産工場はあるが、所有するのは米国企業だ。

ほかの国内上場企業にも、DRAMで競う会社はない。ルネサスエレクトロニクスにはメモリーの事業区分がなく、DRAMは生産していない。富士通系のメモリー会社だったRAMXEED(ラムシード)は非上場で、強誘電体メモリー(FeRAM)など特殊用途の製品を手がける。

海外のDRAM大手4社は、いずれも売上高と利益が急増した。南亜科技の4〜6月期の売上高は前年同期の約7.8倍の825億4,900万台湾ドル(684.2%増)、営業利益は608億2,600万台湾ドルだった。前四半期と比べると、平均販売価格は6割超上がり、ビット換算の出荷量は横ばいだった。トレンドフォースによると、南亜科技のDRAM売上高は前四半期比68.3%増えた。DDR4やDDR3の契約価格の上昇が寄与した。サムスン電子のメモリー事業の売上高は120兆8,000億ウォンで、メモリーを含む半導体部門の営業利益は89兆2,000億ウォンだった。SKハイニックスの売上高は79兆3,000億ウォン、営業利益は60兆5,000億ウォンに達した。マイクロンの6〜8月期の売上高は前年同期の約4.8倍の542億ドルだった。

NANDではキオクシアが上場企業で4位、4〜6月期の売上収益は前年同期の約5.2倍

NANDでは日本勢が1社残る。トレンドフォースが上場企業だけを対象にまとめた順位によると、4〜6月期の売上高はサムスン電子が230億5,900万ドルでシェア29.3%、SKハイニックスが142億7,300万ドルで18.2%だった。SKハイニックスの数字には米国の子会社ソリダイムを含む。マイクロンが15.1%で3位、キオクシアが107億2,300万ドルでシェア13.6%の4位、サンディスクが11.4%で5位に入った。トレンドフォースの集計では、キオクシアの売上高は前四半期比79.9%増えた。

キオクシアの決算短信によると、4〜6月期の売上収益は1兆7,671億円で、前年同期比415.5%増と約5.2倍になり、前四半期比では76.2%増えた。訴訟の引当金や株式報酬などを除いた同社独自基準の営業利益は1兆3,262億円で、営業利益率は75.0%に達した。国際会計基準(IFRS)の営業利益は1兆2,700億円だった。差の大半は、米国の特許侵害訴訟の評決を受けて計上した引当金366億円と、株式報酬費用194億円だ。用途別ではデータセンター向けを含むSSDとストレージが1兆1,747億円と全体の66%を占め、スマートフォン向けなどが5,257億円、その他が667億円だった。

伸びの大半は値上がりによる。前四半期と比べ、ビット換算の出荷量は1ケタ台前半の伸びにとどまり、平均販売価格はドル建てで約70%上がった。同社は7〜9月期に売上収益2兆3,900億円、同社独自基準の営業利益1兆9,000億円を見込む。4〜6月期と比べ、売上収益は35.2%、営業利益は43.3%増える見通しだ。想定為替レートは1ドル=162円で、予想は幅を持たせず1つの数字で示した。

海外5社のうち競合にとどまるのはサムスン電子とマイクロン、残る3社とは出資や合弁でも結びつく

キオクシアは5社のうち3社と、出資や合弁、社債を通じた関係がある。

南亜科技には出資した。キオクシアは3月25日、南亜科技の第三者割当増資を引き受け、新株7,000万株を156億7,300万台湾ドル(1台湾ドル=4.94円換算で約774億円)で取得し、DRAMの長期供給契約を結ぶと発表した。払込日は4月8日だった。SSDに搭載するDRAMを中長期で安定して確保する狙いだ。キオクシアは南亜科技の株主となり、DRAMの買い手にもなった。

サンディスクとは工場を共有する。両社は四日市工場(三重県)と北上工場(岩手県)を合弁で運営している。キオクシアは1月30日、四日市工場の合弁契約を2029年末から2034年末まで5年延長したと発表した。この合意で、サンディスクは製造サービスと製品の供給の対価として11億6,500万ドルを2026〜29年に5回に分けて支払う。北上工場の合弁契約は、すでに2034年末までとなっている。NANDで4位と5位の両社は、同じ工場で作った製品を分け合っている。

SKハイニックスは筆頭株主を通じて関わる。キオクシアの筆頭株主は、米投資ファンドのベインキャピタルが運営する特別目的会社(SPC)のビーシーピーイー・パンゲア・ケイマン2で、8月3日時点で議決権の14.19%を持つ。キオクシアの有価証券報告書によると、SKハイニックスはこのSPCが発行した社債を持ち、転換すればSPCの議決権のある株式のほぼすべてを得られる。SKハイニックスは、キオクシアの同意がない限り、2028年までキオクシアの議決権の15%を超えて持たないことで合意している。報告書の時点で社債は株式に転換されておらず、キオクシアは、この合意のほかに特段の契約はなく、SKハイニックスが経営に影響を及ぼすことはないとの認識を示している。

キオクシアと海外5社の関係。サムスン電子とマイクロンとはNANDで競う。SKハイニックスとはNANDで競う。SKハイニックスは、キオクシアの筆頭株主である特別目的会社の議決権株に転換できる社債を持つ。南亜科技にはキオクシアが約774億円を出資し、DRAMを長期契約で調達する。サンディスクとはNANDで競い、四日市と北上の工場を合弁で運営する
キオクシアと海外5社の関係。サムスン電子とマイクロンとはNANDで競う。SKハイニックスとはNANDで競う。SKハイニックスは、キオクシアの筆頭株主である特別目的会社の議決権株に転換できる社債を持つ。南亜科技にはキオクシアが約774億円を出資し、DRAMを長期契約で調達する。サンディスクとはNANDで競い、四日市と北上の工場を合弁で運営する

JPモルガンが強気とした6社について、日本で競う上場企業とキオクシアとの関係を表にまとめた。

会社主な製品日本で競う上場企業キオクシアとの関係
SKハイニックスDRAM、HBM、NANDDRAMはなし、NANDはキオクシア筆頭株主のSPCの議決権株に転換できる社債を持つ
サムスン電子DRAM、HBM、NANDDRAMはなし、NANDはキオクシアNANDで競う
マイクロンDRAM、HBM、NANDDRAMはなし、NANDはキオクシアNANDで競う。広島でDRAMを生産
南亜科技DRAMなしキオクシアが約774億円を出資し、DRAMを長期契約で調達
サンディスクNAND、SSD、メモリーカードNANDはキオクシア、店頭ではバッファローとエレコム四日市と北上の工場を合弁で運営
キオクシアNAND、SSD国内に同業の上場企業はない-

キオクシア株は東芝が売却し、同社は自社株買い、日経平均にも採用

キオクシアは2024年12月18日に東証プライム市場に上場した。上場時の流通株式比率(市場で売買できる株式の割合)は28.09%で、プライム市場の上場維持基準である35%を下回っていたが、2025年9月末に36.13%となり基準を満たした。日経平均株価には2026年4月1日から採用された。

大株主は株を売り続けた。キオクシアの開示によると、東芝の議決権比率は2025年10月15日の22.87%から、2026年3月17日に19.80%、8月3日に14.12%へ下がった。日本経済新聞によると、東芝は市場で売却しており、変更報告書によると9月7日時点の保有割合は12.84%だった。ベインキャピタルは傘下のファンドが持つ株を2025年11月に約3,600万株売却し、26年2月にも売った。ブルームバーグ通信は7月、ベインの幹部が既に株を保有していないと述べたと報じた。筆頭株主のSPCはベインが運営しているが、前述のとおり議決権株に転換できる社債はSKハイニックスが持つ。

キオクシアは自社株買いにも動いた。7月31日に8,000億円を上限とする自社株買いを決め、8月10日までに1,613万3,500株を7,999億9,768万円で取得を終えた。9月30日を基準日に1株を3株に分割し、10月1日に効力が生じた。中間配当は0円、期末配当は未定とした。決算説明会では、余剰キャッシュフローの半分程度を株主還元に回す案を例に挙げ、有価証券報告書では累進配当の検討を始めたとした。5月には米国預託株式を米国の取引所に上場する準備を始めると発表したが、9月には時期も上場先も決まっていないと説明している。

店頭でサンディスクと競うバッファローとエレコムは、値上げなどで利益を確保

サンディスクはSSDやUSBメモリー、SDカードを店頭でも販売する。日本でこれらを自社ブランドで売る上場企業は、メモリーを作る側ではなく買う側にいる。

バッファロー(旧メルコホールディングス)の4〜6月期の売上高は前年同期比16.1%減の262億9,200万円、営業利益は3.4%減の28億6,900万円だった。減収減益は空気清浄機の国内販売契約が2025年8月に終わったためで、この事業を除く継続事業では売上高が1.6%増、営業利益が93.5%増だった。メモリー・ストレージ機器の売上高は104億5,100万円と18.2%増えた。同社は4月1日にフラッシュメモリー製品104品目の希望小売価格を4.4〜252.6%引き上げるなど、2026年に入って価格を5回改定した。決算短信では、販売単価が上がる一方、原価の上昇は想定を下回ったと説明した。決算説明資料によると、SSDなどは値上がりで販売台数が減り、半導体などの調達価格は今後も上がる見通しだ。9月11日には通期の営業利益予想を従来の62億円から86億円に上方修正した(38.7%増)。

エレコムの4〜6月期の売上高は前年同期比18.4%増の339億1,800万円、営業利益は28.6%増の38億7,200万円だった。メモリーなどの調達価格の上昇は値上げや原価管理で吸収したが、家電量販店などで売るストレージ・メモリー製品は、原価が高騰する中で利益を重視したため販売が伸び悩んだ。一方、子会社のハギワラソリューションズが手がける産業機器向けメモリーの売上高は大幅に増えた。同事業の売上規模は2026年3月期で約90億円(社内管理の参考値)だ。

アイ・オー・データ機器は2022年6月16日に上場を廃止しており、決算を開示していない。同社は2026年4月にUSBメモリーを最大224%値上げするなど、SSDやメモリー製品の価格を相次いで引き上げた。サンディスクの「SanDisk Professional」ブランドのSSDも扱っており、競争相手であると同時に同社製品を販売する立場でもある。

東京エレクトロンとアドバンテストはメモリー大手の取引先、メモリー向けが伸びた

メモリー大手との取引で恩恵を受ける日本企業は、半導体製造装置のメーカーに多い。東京エレクトロンの4〜6月期は、新規装置売上高のうちDRAM向けが32%、不揮発性メモリー向けが11%で、合わせて43%と前年同期の36%を上回った。2026年3月期の有価証券報告書によると、売上高の15.1%をサムスン電子向けが占めた。アドバンテストの4〜6月期のメモリー向け検査装置の売上高は480億円と、前年同期の335億円から43.3%増えた。同社はメモリー向け検査装置の通期の売上高予想を2,270億円に引き上げた。メモリー市場の拡大の恩恵が装置メーカーとメモリーメーカーにどう分かれるかは、東京エレクトロンとキオクシアを比べた別の記事で取り上げた。

JPモルガンが強気とした6社のうち、日本の株式市場で買える銘柄はキオクシアホールディングスの1社に限られる。DRAMで競う上場企業は国内になく、NANDで唯一競うキオクシアも、南亜科技からDRAMを買い、サンディスクとは工場を合弁で運営する。筆頭株主のSPCの議決権株に転換できる社債は、SKハイニックスが持つ。日本株でメモリー不足の恩恵が及ぶのは、キオクシア、メモリー大手に装置を納めるメーカー、値上げで利益を守る周辺機器メーカーの3つに分かれる。

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