演算装置のラックを光でつなぐ部品の市場が、1年で8億1,900万ドルから30億8,700万ドルへ膨らむという予測が出た。ところが同じ表を検算すると、ラックの台数は5.6%しか増えない。伸びの正体は別の場所にある。

香港のGF証券が公表したエヌビディア向けNPOの出荷予測が、光部品の投資家の間で回覧されている。NPOはニア・パッケージド・オプティクスの略で、光に変える装置を演算チップの真横の基板に置く方式を指す。従来の着脱式部品より電気で運ぶ距離が短く、チップと同じ封止材に一体化するCPOほど製造の危険を伴わない中間の解である。

この予測表は、数字が互いに噛み合っているかを検算できる形で作られている。実際に当たってみると、表に書かれていない前提が3つ逆算でき、そのうち2つは市場の読み方を変える。さらに材料の側まで降りると、この予測が中国の輸出管理の上に乗っていることも見えてくる。先に、言葉の意味を確かめておきたい。

用語とは何か
NPOとは光に変える装置(光エンジン)を、演算チップと同じ封止材に入れず、すぐ隣の基板上に置く方式。電気で運ぶ距離を縮めつつ、高価な演算チップへ光部品を恒久的に接合する製造上の危険を避けられる
CPOとは光エンジンを演算チップと同じ封止材へ一体化する最終形。電力は最小になるが、壊れると基板ごとの交換になり、製造の難度も高い
光エンジン (OE) とは電気信号を光に、光を電気に変える部品。1つのNVSwitchトレイに複数個が載る
TIA・ドライバとは光エンジンに付随する半導体。ドライバはレーザーを駆動し、TIA(トランスインピーダンス増幅器)は受け取った微弱な光電流を電圧へ変える。この記事でいう市場規模は、この2部品の合計を指す
インジウムリン (InP) とはインジウムとリンの化合物半導体。シリコンは自ら光を出せないため、光通信用のレーザーはこの材料で作る。代替が事実上ない
CSPとはクラウドサービス事業者。アマゾン、マイクロソフト、グーグル、メタなどを指し、近年は演算装置のラックを自社で設計・調達する動きが強まっている

予測表を検算すると、書かれていない前提が3つ出てくる

まず予測の中身を数字のまま並べる。ラック内部の結合に使うNPOについて、ラックの出荷台数、1ラックあたりのNVSwitchトレイ数、NPOの採用率が与えられている。

項目2026年2027年2028年
NVL72の出荷 (千台)759060
NVL144の出荷 (千台)0035
NVSwitchトレイ数 / NVL72999
NVSwitchブレード数 / NVL14412
NPO採用率 / NVL720%20%30%
NPO採用率 / NVL1440%0%15%
NPO搭載トレイ (千枚) NVL720162162
NPO搭載ブレード (千枚) NVL1440063

ここで最初の検算ができる。2027年のNVL72は9万台×9枚×20%で162,000枚。2028年は6万台×9枚×30%で、やはり162,000枚。NVL144は3万5,000台×12枚×15%で63,000枚。表の3つの数字は、いずれもぴたりと一致する。少なくとも計算の筋は通っている。

次に光エンジンの数を見る。エヌビディア向けの出荷は2027年に580万個、2028年に810万個。これをトレイ枚数で割ると、2027年は162,000枚で580万個、2028年は225,000枚で810万個となり、いずれも1トレイあたり36個という同じ数字が出る。表のどこにも書かれていないが、この予測は「NVSwitchトレイ1枚に光エンジンが36個載る」という前提で組まれている。市場規模を自分で組み直したいときに、まずこの係数を押さえる必要がある。

3つ目が、市場規模の計算である。TIAとドライバの平均単価は、エヌビディア向けが65ドル、CSP向けが80ドルと与えられている。

トレイの枚数に36を掛け、さらに単価を掛ける。エヌビディア向けは2027年が3億7,900万ドル、2028年が5億2,650万ドルとなり、表の数字と一致した。CSP向けも550万個と3,200万個にそれぞれ80ドルを掛ければ、4億4,000万ドルと25億6,000万ドルで合う。

合計は8億1,900万ドルと30億8,700万ドル。伸び率277%も表のとおりである。

予測表の検算 ― 3つの数字はすべて噛み合い、1トレイあたり36個という前提が逆算できる
予測表の検算 ― 3つの数字はすべて噛み合い、1トレイあたり36個という前提が逆算できる

増えているのはラックの台数ではなく、1台あたりに載る光の量である

検算が通ったところで、この予測が何を言っているのかを読み解く。

ラックの出荷台数を合計すると、2026年が7万5,000台、2027年が9万台、2028年が9万5,000台になる。2027年から2028年の増加はわずか5.6%である。ところが同じ期間に光部品の市場は277%増える。台数がほとんど増えないのに市場が4倍近くになるのだから、伸びの源泉は台数ではない。

源泉は採用率にある。NVL72のNPO採用率は0%、20%、30%と上がり、2028年にはNVL144が15%で加わる。1台のラックに載る光部品の割合が増えることで、台数が横ばいでも部品の出荷は積み上がる。

ここに、あまり指摘されない打ち消し合いがある。NVL72の出荷は2027年の9万台から2028年の6万台へ33%減る。にもかかわらずNPO搭載トレイは162,000枚のまま動かない。台数の減少を、採用率の20%から30%への上昇がちょうど打ち消しているためである。エヌビディア向けのNPO出荷が2028年に増えるのは、NVL144という新しい構成が加わるからであって、NVL72が売れるからではない。

投資の観点では、光部品の需要をラックの販売台数で追っても当たらない。見るべきはラック1台あたりに光をどれだけ入れるかという設計の選択であり、それは性能要求と製造の成熟度で決まる。

エヌビディアの取り分が46%から17%へ落ちる

CSP向けが482%増えるという数字は広く引用されている。だが、その裏側にある構成比の変化までは、あまり語られない。ここが投資判断で最も効く。

2027年の内訳は、エヌビディア向けが3億7,900万ドルで全体の46%、CSP向けが4億4,000万ドルで54%。ほぼ半々である。ところが2028年になると、エヌビディア向けは5億2,700万ドルで17%まで落ち、CSP向けが25億6,000万ドルで83%を占める。市場は4倍近くに膨らむが、エヌビディア向けの取り分は3分の1近くまで縮む。

光エンジンの出荷数で見ると差はさらに大きい。エヌビディア向けは580万個から810万個へ1.4倍。CSP向けは550万個から3,200万個へ5.8倍である。この予測が描いているのは「エヌビディアの成長」ではなく、クラウド事業者が自前でラックを設計し、自前で光部品を調達する動きが本格化する姿である。

単価にも差が出ている。エヌビディア向けが1個65ドルなのに対し、CSP向けは80ドルと23%高い。まとめ買いの規模で勝るエヌビディアが安く買い、自社設計に踏み出したばかりのCSPが高く買う。部品を供給する側から見れば、伸びる需要のほうが単価も高いことになる。

市場は4倍近くに膨らむが、エヌビディアの取り分は46%から17%へ縮む
市場は4倍近くに膨らむが、エヌビディアの取り分は46%から17%へ縮む

ラックの遅れが、CPOではなくNPOを当面の解にした

なぜ2027年から2028年にかけてNPOが急に立ち上がるのか。技術の必然だけでなく、開発計画の遅れという事情がある。

半導体の調査で知られるセミアナリシスは、エヌビディアの次世代ラック構成であるKyber NVL144について、ラック内部の演算装置をつなぐ基板の歩留まりの問題で12か月以上遅れ、量産が2028年へずれ込むと報じた。エヌビディアはこの報道を否定している。同社はまた、NVL72を2つ並べる代替設計を取りやめている。配置の使い勝手と保守費用の高さを理由に、クラウド事業者側が受け入れなかったためである。さらにNVL576という大型構成で全面的なCPOが間に合うかどうかも見通せていない。

こうした遅れが重なると、完成度の読めないCPOを待つより、実績のある製造工程で電力と信号品質の改善を先に取りにいく判断が合理的になる。NPOが「当面の現実解」として選ばれるのはこの文脈である。2027年から2028年に投入が見込まれるRubin Ultra NVL576では、ラック間の接続にCPOを使いながら、ラック内部は銅の配線を残す設計とされる。1つの装置の中で、光と電気、そしてCPOとNPOが用途ごとに使い分けられている。

エヌビディアの計画が遅れることは、競合には時間の余地を生む。次世代の演算装置が出そろうまでの間、AMDのMI500XやグーグルのTPUとの性能差は縮まる。光電融合の4方式と各社の量産計画は別稿で整理した。この予測表が描く2028年は、その移行の途中を切り取った一枚にすぎない。

予測を支えているのは、中国が7割を握る金属である

ここからが、日本の報道にもほとんど出てこない部分になる。

30億ドルの市場という予測は、光エンジンが計画どおり作れることを前提にしている。その光エンジンの中核が、レーザーを作る材料であるインジウムリンだ。シリコンは自ら光を出せないため、光源は例外なくこの化合物半導体で作る。代替材料は事実上ない。

そしてインジウムは、世界生産の約70%を中国が握る。しかも単独で採掘される金属ではなく、亜鉛を製錬する過程の副産物として回収される。つまり供給量は亜鉛の生産計画に従属し、光部品の需要が急増しても短期間では増やせない。

中国はこの構造を制度で固めつつある。2025年2月にインジウムリンを輸出管理の対象品目へ正式に加え、2026年6月にはインジウム金属そのものの通関審査を厳格化した。金属側はまだ正式なリストに載っていないが、審査は即日から数日へ延び、買い手には所在地を含む最終需要家の情報開示が求められるようになった。禁輸ではなく、いつでも締められる状態を作るという設計である。これはレアアースで先に起きたことと同じ運び方である。レアアース30銘柄の記事で扱った「握られているのは採掘ではなく精製の工程だ」という構造が、そのまま当てはまる。

供給の目詰まりは既に始まっている。ルメンタムの経営陣は、インジウムリンの不足が記憶装置の不足より深刻になると警告し、製造設備と材料の供給が顧客の必要量を約30%下回っていると述べた。製造の側にも壁がある。現行のインジウムリンのウエハーは直径3〜4インチで、シリコンの300ミリメートルと比べれば桁違いに小さい。その上に結晶の層を育てる工程は温度と圧力と気体を細かく制御しなければならず、歩留まりが安定するまでに年単位の経験が要る。資金を投じれば来月から増える、という性質の材料ではない。

予測の土台にある材料の目詰まり ― インジウムから光部品市場までの連鎖
予測の土台にある材料の目詰まり ― インジウムから光部品市場までの連鎖

エヌビディアが2026年3月2日にコヒレントとルメンタムへそれぞれ20億ドル、合計40億ドルを出資し、複数年の購入契約と製造能力の優先確保を組み合わせたのは、この目詰まりへの手当てである。コヒレントは米テキサス州シャーマンで6インチのインジウムリン基板の生産線を持ち、レーザー用半導体の生産量を12か月で2倍にする計画を掲げる。3〜4インチから6インチへの大口径化は、1枚のウエハーから取れる素子数を倍以上に増やす。設備を増やすより、口径を上げるほうが速いという判断である。

アプライド・オプトエレクトロニクスが恩恵を受けるのも同じ理由による。同社はレーザーを内製しており、この移行で足を引っ張るのがレーザーの入手であって、組み立ての能力ではないからだ。同社は毎秒1.6テラビットの光部品で2億ドルを超える受注を2026年10〜12月期から立ち上げ、別に毎秒800ギガビットで1億2,400万ドルの受注を確保している。需要が自社の製造能力を大きく上回っており、経営陣は不足が少なくとも2027年半ばまで続くとみる。信号を整え直すリタイマーや接続部品、光エンジンを供給するマーベルやブロードコムにも、同じ追い風が及ぶ。

材料の側で稼ぐ日本 ― レアアースではなく、亜鉛製錬の副産物である

ここからは、材料の側に立って投資先を見ていく。

最初に、用語の混同をほどいておきたい。インジウムはレアアース(希土類)ではなく、レアメタル(希少金属)である。レアアースはネオジムやジスプロシウムなど17元素の総称で、磁石や研磨材に使われる。インジウムはその17元素に含まれない。供給が中国に偏り、精製工程が急所になるという構造は同じでも、対象となる企業も技術も、まったく別のものになる。この記事で並べるべきは、レアアース関連ではなく非鉄の製錬と化合物半導体の企業になる。レアアース側の30銘柄については役割別の一覧で整理した。

日本勢の持ち場は、3つの層に分かれる。

製錬の層では、DOWAホールディングス(5714)が中核にある。同社の秋田製錬は年間およそ20万トンの電気亜鉛を生産し、その過程で鉱石に含まれるインジウムを回収する。世界のインジウム供給者として、韓国のコリア・ジンク、カナダのテック・リソーシズ、ベルギーのユミコアと並んで名前が挙がる企業である。同社は使用済み製品からのインジウム回収にも取り組んでおり、鉱石に頼らない供給源を持つ。非鉄の製錬という一見地味な事業が、光部品を作れるかどうかを左右している。

基板の層では、JX金属(5016)がインジウムリン基板で世界シェアの約1割を持つ。同社は4年間で1,200億円を投じ、生産能力を7倍から10倍へ引き上げる計画を公表した。

素子の層では、住友電気工業(5802)が連続波レーザーと電界吸収型変調器を集積したレーザーを生産し、エヌビディアの公式なCPO供給者の一覧に名前がある。同社は1,000億円を投じ、2028年までに生産量を12倍へ引き上げる計画を示している。

このほか、光部品と実装の周辺には、フジクラ(5803)、古河電気工業(5801)、浜松ホトニクス(6965)、京セラ(6971)、三菱電機(6503)が並ぶ。半導体パッケージ基板ではイビデン(4062)、ウエハーを切り分ける工程ではディスコ(6146)が入る。

見落としてはいけない点もある。日本にもインジウムの回収能力はあるものの、世界の7割を握る中国に対して量が小さく、輸入への依存が続いている。JX金属と住友電工の増産計画が示す倍率が7倍から12倍と極端なのは、現在の能力がそれだけ小さいことの裏返しでもある。増産が計画どおり進むかどうかは、設備の完成時期だけでなく、原料であるインジウムを確保できるかに左右される。

予測の前提が崩れる場所は、需要の側ではない

この予測表を材料として扱うときの実務的な手順を、最後に整理しておく。

見るべき変数は3つある。第1に採用率で、NVL72の20%から30%への上昇が実際に起きるか。ラックの台数はほとんど増えないため、ここが外れれば市場規模はそのまま外れる。第2にCSPの自社設計で、550万個から3,200万個へという5.8倍の予測は、クラウド事業者がエヌビディアの完成品ではなく自前のラックを本格的に量産することを前提にしている。第3にインジウムリンの供給である。前の2つが需要の読み違いなのに対し、これだけは供給の側から予測を崩す。

2028年の30億8,700万ドルという数字は、光エンジンを4,000万個作れて初めて成り立つ。作れなければ、需要がいくら強くても市場規模はそこまで届かない。予測が外れるとすれば、AIの投資が止まるからではなく、亜鉛の副産物として回収される金属が足りないから、という道筋がありうる。その可能性は、表のどこにも書かれていない。表の外側にある前提を数えることが、この予測を投資判断に使う側の仕事になる。