米バンク・オブ・アメリカの推計とされる数字で、AIサーバーの基板の搭載金額はH100の約2,500ドルからRubin Ultraで10万ドル超になる。三井金属の銅箔VSPの販売量は4〜6月に2024年度の約1.8倍になった。
AIの計算に使う半導体の値段に比べて、それを載せる板の値段は目立たなかった。プリント基板は、半導体や部品を載せて銅の配線でつなぐ板である。日本の投資家の投稿は、米バンク・オブ・アメリカ (BofA) の2026年9月18日のレポートを基に、エヌビディアのAIサーバー1台あたりのプリント基板の搭載金額が、H100の約2,500ドルからRubin Ultraで10万ドル超へ、単純比較で40倍超に増えると紹介した。基板の枚数と層の数が増え、材料も高くなるためだという。本稿はエヌビディアの公式資料でサーバーとラックの構成を確かめて数字の単位を推し量り、日本の上場企業4社の開示のどこに伸びが表れているかを調べた。
BofAの推計とされる数字、AIサーバーの基板はH100の約2,500ドルからRubin Ultraで10万ドル超
投稿が挙げる金額は、H100が約2,500ドル、GB200とGB300が2万〜3万ドル、Vera Rubinが6万〜8万ドル、Rubin Ultraが10万ドル超である。同じ4つの金額は、2026年7月2日に英語の有料ニュースレターが、中国の基板大手、勝宏科技 (ビクトリー・ジャイアント) を分析したBofAのレポートの数字として引用している。本稿はBofAのレポートの原文を入手できておらず、9月18日付のレポートに同じ数字があるかは確かめられなかった。
中国の基板製造装置とドリルのメーカーを扱ったBofAのレポートを要約した9月21日の中国語の記事は、ドルの金額ではなく倍率で、ほぼ同じ増え方を伝える。ラック1台あたりのプリント基板の搭載金額は、Vera RubinでGB200・GB300の約3倍になり、Rubin Ultraでさらに倍になるという。ラックは、GPUを載せた引き出し (トレー) を縦に積み上げた棚である。GB200 NVL72以降の主力製品は、ラック単位で出荷される。
GPU1基あたりに直すと、プリント基板の搭載金額が増え始めるのはVera Rubinから
ニュースレターの引用文には、金額が「サーバー1台」なのか「ラック1台」なのかが書かれていない。エヌビディアの公式資料では、HGX H100はGPU8基を載せたサーバー向けの製品で、GB200 NVL72はGPU72基とCPU36基を1つのラックにまとめた製品である。Vera Rubin NVL72も同じ72基の構成だ。H100の約2,500ドルをサーバー1台、GB200以降をラック1台の金額と読むと、GPU1基あたりの金額は表1のようになる。
表1 エヌビディアのAIサーバーのプリント基板の搭載金額 (BofAの推計とされる数字と、本稿の計算)
| 世代 | 単位 (本稿の読み) | 金額 | GPUの数 | GPU1基あたり |
|---|---|---|---|---|
| H100 | サーバー1台 | 約2,500ドル | 8基 | 約313ドル |
| GB200/GB300 | ラック1台 | 2万〜3万ドル | 72基 | 約278〜417ドル |
| Vera Rubin | ラック1台 | 6万〜8万ドル | 72基 | 約833〜1,111ドル |
| Rubin Ultra | ラック1台 (Kyberと仮定) | 10万ドル超 | 144基 | 694ドル超 |
1台あたりの金額は、H100からGB200で8〜12倍に増えたように見える。GPU1基あたりで見ると、ほぼ横ばいだ。GPU1基あたりの金額が増え始めるのはVera Rubinからで、H100の2.7〜3.6倍になる。この読みに立てば、投稿の「40倍超」(10万ドル÷2,500ドル) は、サーバー1台とラック1台という大きさの違う単位を比べた数字になる。表1のRubin Ultraは、エヌビディアが2026年3月に1ラック144基と説明した新しいラック「Kyber」のGPUの数で割った値で、Vera Rubinを下回る。同社はRubin Ultraを、72基のラック、144基のKyber、72基のラック8台をつなぐ構成の3通りで出すとしており、72基で割れば1,389ドル超になる。
ほかの推計でも、Vera Rubinでの増加ははっきりしている。本誌が9月に検算したモルガン・スタンレーの推計表では、ラック1台あたりのプリント基板の搭載金額は、GB300の3万7,491ドルからVR200 (Vera Rubin) で9万1,227ドル、その次のVR300で15万4,377ドルになる (モルガン・スタンレーの推計を検算した記事)。同社が2026年5月にまとめたVR200の部品表では、ラック1台のプリント基板の金額は、GB300の3万5,100ドルからVR200で11万6,730ドルへ233%増える。GB300とVera Rubinでは、BofAの数字はどちらの推計よりも低い。どの基板まで数えたかが資料ごとに違うとみられ、金額の水準は単純には比べられない。
Vera Rubinで基板の枚数と層数が増え、トレーの中のケーブルも基板に置き換わる
金額が増える理由の1つ目は、使う基板の枚数である。エヌビディアによると、GB200 NVL72は、GPUを載せたトレー (GPUトレー) 18台と、GPU同士を高速でつなぐ通信の規格NVLinkの切り替え用の半導体を載せたトレー (スイッチトレー) 9台を、ラックの背面にまとめた5,000本を超える銅のケーブルでつなぐ。Vera Rubin NVL72は背面の約5,000本の銅のケーブルを残す一方、GPUトレーの中のケーブルはなくした。トレーの中に置く「ミッドプレーン」と呼ぶプリント基板で、GPUとCPUを載せた部分と前面の通信用の半導体をつなぐ。エヌビディアは、トレー1台の組み立てにかかる時間が約2時間から5分に縮むと説明している。同社は3月時点で、Vera Rubin NVL72を2026年後半に出荷する予定だとしていた。ラックなど設備の基本は、AI計算資源の体系解説の設備編で扱っている。
投稿は、Vera Rubin NVL72ではGB300より1ラックあたり54枚の基板が増えるとするが、この数字の出所は確かめられなかった。モルガン・スタンレーの部品表で数えると、ラック1台の基板はGB300の153枚からVR200で198枚になる。新しく加わる基板は、ミッドプレーン18枚と、ネットワーク用の半導体ConnectXを載せる基板72枚の計90枚である。その他の周辺の基板が90枚から45枚に減るため、差し引きの増加は45枚にとどまる。
理由の2つ目は層の数だ。多層のプリント基板は、銅の配線を作り込んだ薄い板と絶縁材を交互に重ね、熱と圧力をかけて一体にして作る。24層や32層といった層の数は、銅の配線の面の数を指す。層が多いほど、狭い面積に多くの配線を通せる一方、穴あけや位置合わせが難しくなる。モルガン・スタンレーの部品表では、スイッチトレーの基板が24層から32層に増え、GPUトレーに44層のミッドプレーンが新しく加わる。投稿の「24層→32層→44層」は、スイッチトレーの基板とミッドプレーンという別々の基板の層数を並べたものとみられ、1枚の基板の層が順に増えていくという意味ではなさそうだ。銅箔を売る三井金属 (5706) は、2026年1月の説明会で、AIサーバーのスイッチ用の基板の層数が今の1.4倍になるとの見方を示した。時期は明らかにしていない。
Rubin Ultraの一部の製品から使う新しいラックKyberでは、前面に縦に並べた計算用のブレードと背面のスイッチのブレードを、ケーブルを使わずにミッドプレーンでつなぐ。BofAのレポートを要約した中国語の記事によると、Rubin Ultraでは78層、場合によっては100層を超える基板が使われるとみられる。米IT専門メディアのトムズ・ハードウェアは2026年7月6日、米調査会社セミアナリシスの見立てとして、Kyberの出荷はミッドプレーンの製造が難しいため2028年にずれ込むと報じた。同メディアは、Kyberのミッドプレーンを26層の基板3枚を貼り合わせた78層と紹介している。エヌビディアは「ロードマップは変わらない」とだけ答えている。基板の材料の課題はRubin UltraのKyberと基板の材料を扱った記事に詳しい。
三井金属のAIサーバー向け銅箔VSP、4〜6月の販売量は2024年度の約1.8倍に
理由の3つ目が材料だ。高い周波数の信号は銅の配線の表面近くを流れるため、表面の凹凸が大きいと信号が弱まる。凹凸を小さくした銅箔は「HVLP」と呼ばれ、HVLP2、HVLP3と数字が大きい等級ほど信号の損失が少ない。台湾の調査会社トレンドフォースは2025年11月、Vera Rubinのミッドプレーンなどの基板にHVLP4の銅箔が使われると伝えた。HVLP4は性能を上げると歩留まりが約5割下がるという。
三井金属 (2025年10月に三井金属鉱業から社名変更) は、高周波基板用電解銅箔VSPを「AIサーバー向け電解銅箔」と呼ぶ。決算説明資料によると、VSPの月平均の販売量は、2024年度 (2025年3月期) の370トンから2025年度 (2026年3月期) に550トン、2026年4〜6月に660トンへ増えた。4〜6月の販売量は2024年度の約1.8倍である。同社は2026年1月の説明会で、HVLP4にあたる品種 (表面の凹凸の高さが0.5マイクロメートル) を量産し、さらに上の等級のHVLP5も少量生産を始めたと説明した。HVLP2以上のシェアは60%、HVLP5は80%と自社で推定している。VSPの販売量のうちHVLP4以上が占める比率は、2026年度上期の約45%から下期に約60%へ上がる見込みだ。同社は2025年10月と2026年7月の2回、VSPを値上げした。
VSPだけの売上高は開示されていない。パッケージ基板向けの極薄銅箔なども含む銅箔全体の売上高は、2026年3月期に1,350億円となり、前の期の932億円から45%増えた。2026年4〜6月も410億円と、前年同期の299億円から37%増えている。銅箔を含む機能材料の部門は、2026年3月期の売上高が3,284億円、営業利益が675億円だった。2026年4〜6月は売上高1,006億円、営業利益183億円で、営業利益は前年同期の129億円から約4割増えた。同社は2026年3月期の決算短信で、プリント配線板用の電解銅箔について「AIサーバー用途を中心とした通信インフラ向け多層基板の需要」が堅調だったと説明した。
同社は2025年11月、約60億円を投じてVSPの生産能力を2028年9月までに月1,200トンへ増やすと発表した。2026年8月7日には70億円を追加し、2030年に台湾で月960トン、マレーシアで440トンの計1,400トンにする計画を発表した。足元の販売量の約2倍にあたる。一方、同社は8月、2026年度のVSPの販売量の見通しを、マレーシア工場で顧客の認定が想定より遅れているとして月780トンから710トンに下げた。開示にエヌビディアの名前は無く、同社は「AIサーバー」「ビッグテック各社」と書いている。三井金属の開示の要点は三井金属の銘柄ページにまとめている。
メイコーのAIサーバー向け基板は2028年度に600億円の計画、4〜6月は基板の利益率が低下
プリント基板そのものを作るメイコー (6787) は、決算補足説明資料で用途別の売上に「AIサーバー」の区分を設けている。この区分には、モジュール基板のうちAIサーバー向けの分と、アクセラレーターボードなどを計上している。売上は2024年度の42億円から2025年度に73億円となった。同社は2026年度に170億円を見込む。中期経営計画では2027年度に380億円、2028年度に600億円を目指す。2025年度から3年で約8倍になる計画だ。2026年4〜6月は26億円で、前年同期から85.7%増えた。
ただ、AIサーバーが電子回路基板の売上に占める割合は、2025年度で3.7%にとどまる。用途別で最も大きいのは車載で、2025年度は975億円だった。AIサーバーの割合は、計画どおりに伸びても2028年度に16.0%である。製品別の売上では、2026年度からビルドアップ基板の中に「高多層」の区分を新しく設け、2026年度に90億円、2027年度に310億円、2028年度に510億円を見込む。何層以上をこの区分に入れるかは書かれておらず、量産できる最大の層数もIR資料と製品の紹介に記載が無い。同社は外部の調査会社のデータを基に、高多層基板の世界市場の2023〜2030年の年平均成長率の予測を、2025年11月の22.5%から2026年5月に35.4%へ引き上げた。
増産は主にベトナムで進める。2025年7月に稼働したベトナム第4工場は、投資額を約250億円から約450億円に増やし、衛星通信とAIサーバー向けの基板の生産を拡大する。ACCL社との合弁会社 (メイコーの出資は30%) は、AIサーバー向けの高多層基板を2027年度から順次量産する計画だ。設備投資は2025年度の497億円から、2026〜2028年度は毎年700億円に増やす。
会社全体では、2025年度 (2026年3月期) の売上高が2,406億円、営業利益が246億円で、2026年度は売上高3,200億円、営業利益380億円を見込む。足元の利益は伸び悩んでいる。2026年4〜6月の売上高は前年同期比38.0%増の732億円だったが、営業利益は8.7%増の61億円にとどまった。会社は、「原材料不足にともなう価格の高騰」が製品の価格見直しを上回り、新工場の立ち上げ費用なども増えたと説明した。電子回路基板の営業利益率は11.2%から9.3%に下がった。投稿が挙げる「材料単価の上昇」は、銅箔を売る三井金属では値上げとして表れ、基板を作るメイコーでは原材料の費用の増加として表れているとみられる。メイコーは、どの原材料の価格が上がったかを明らかにしていない。
メックとイビデンの増益は、パッケージ基板の需要が支える
AIサーバーの基板は、大きく2つに分かれる。GPUやCPUの半導体チップを直接載せる「パッケージ基板」と、チップをパッケージ基板ごと載せるメインボードなどの基板である。本稿でプリント基板と呼んでいるのは後者だ。メイコーの資料も、AIサーバーの図でGPUとCPUの部分を「PKG」、その下の板を「メインボード 高多層」と描き分けている。投稿が挙げる4社のうち、メックとイビデンの伸びを支えているのは、主にパッケージ基板の需要である。
メック (4971、12月決算) は、銅の表面を処理して樹脂との密着を高める薬品を作る。2026年1〜6月の売上高は前年同期比34.2%増の125億9,400万円、営業利益は69.4%増の41億3,500万円だった。8月には通期予想を売上高258億円、営業利益83億円に引き上げた。柱の「CZシリーズ」は主にパッケージ基板向けで、上期の売上は37.1%増えた。同社は決算短信で「生成AI関連など先端半導体パッケージ基板向け」の需要が堅調と説明する。一方、同社は2026年2月、信号の損失を抑える技術をデータセンター向けなどの高周波基板に広げる事業 (同社は「応用展開」と呼ぶ) について、2027年12月期の売上目標を15億円から5億円に下げた。プリント基板の市場で技術の変化が遅れていることを理由に挙げた。北九州工場 (総投資約47億円) は2026年12月に稼働する予定だ。9月30日には、パッケージ基板関連の需要拡大を理由に、約20億円の第2期工事を決めた。
イビデン (4062) は、有価証券報告書で電子事業を「パッケージ基板の製造販売」と定義する。電子事業の2026年4〜6月の売上高は前年同期比37.7%増の775億2,200万円、営業利益は52.4%増の213億7,500万円で、利益率は27.6%だった。8月には電子事業の2027年3月期の予想を、売上高3,300億円・営業利益750億円から3,750億円・1,100億円に引き上げた。営業利益の上積み350億円のうち265億円は販売価格の上昇と製品構成の改善によるもので、会社は主に価格の要因だと説明した。2026〜2028年度には電子事業に約5,000億円を投じ、GPU向けの大野事業場などに約2,800億円、特定用途向け半導体 (ASIC) 向けの河間事業場などに約2,200億円を充てる。投稿もイビデンについて、高多層のプリント基板との結び付きはメイコーなどより一段弱いとみている。
三井金属、HVLP4以上の銅箔を2026年度下期に販売量の約6割と見込む
BofAの推計とされる数字を、本稿の読み方でGPU1基あたりに直すと、プリント基板の搭載金額が増え始めるのはVera Rubinからである。三井金属は、HVLP4以上がVSPの販売量に占める比率が、2026年度上期 (4〜9月) の約45%から下期 (2026年10月〜2027年3月) に約60%へ上がるとみている。この比率の上昇をVera Rubinの需要と結び付けるのは本稿の見立てで、2社の開示はエヌビディアの名前を挙げていない。
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