サムスンのHBM4歩留まりが80%に接近したと報じられた。だが原文は、その数字が何を測ったものかを書いていない。12層積層で歩留まりが4つの別物に割れる構造を一次資料から分解し、土台チップの外注化と採算の変質まで追う。

サムスン電子のHBM4歩留まりが80%に接近したと韓国紙が報じた。数字だけ見れば大きな前進だが、その報道は80%が何を測った値なのかを一行も書いていない。12層を積むHBM4では、歩留まりという言葉が4つの別物に割れる。

広帯域メモリー(HBM)は、DRAMを縦に積み上げて演算装置のすぐ隣に置く部品である。生成AI向けの計算基盤で、演算能力そのものよりも先に足りなくなるのがこの部品であり、供給できる会社は世界に3社しかない。その1社であるサムスン電子の量産が軌道に乗るかどうかは、AI向け半導体の供給量を左右する。本稿は、報じられた歩留まりの数字を一次資料まで遡って分解し、そこから見える工程の急所と、土台となるチップの製造を誰が担うかという競争軸の移動、そして2026年に静かに起きたHBMの採算悪化までを追う。株価や目標株価は扱わない。追うのは、12枚のシリコンを積んで売り物にするまでの工学と、その周囲で動いた金の流れである。

「80%」の出所をたどると、匿名の業界関係者1人に行き着く

まず情報の出所を確定させる。この数字を最初に報じたのは韓国の経済紙ソウル経済で、2026年8月9日付の記事である。原文は「サムスン電子のHBM4歩留まりが最近80%の線に接近した」「今年2月の量産初期には歩留まりは60%を下回っていた」と書き、情報源を「業界によれば」「業界関係者は」とする。つまり匿名の業界関係者である。その後に出た複数の韓国メディア、および英語圏の技術メディアの記事は、いずれもこのソウル経済の報道を後追いしたもので、独自の取材による裏づけは加えていない。原情報は1本しかない。

ここで確認しておくべき事実がある。サムスン電子は、HBM4の歩留まりについて具体的な数値を公式に一度も開示していない。2026年2月12日の量産出荷を告げる公式発表が使った表現は「再設計なしに量産初期から安定した歩留まり」であり、数字はない。決算説明会でも「1cナノの生産能力を拡大し、計画どおり歩留まりを改善」と述べるにとどまる。流通している歩留まりの数値は、すべて匿名の業界関係者を情報源とする報道である。しかも公式が言う「量産初期から安定した歩留まり」と、報道が言う「量産初期は60%未満」は、トーンにおいて正面から食い違っている。

一方で、会社自身が公の場で述べた数字も存在する。2026年7月30日の決算説明会でメモリー事業部の担当役員が語った内容がそれにあたる。第3四半期のHBM4売上を前四半期比で3倍以上に拡大する見通し、下期のHBM4売上が全HBM売上の60%を十分に上回る見込み、という2点は会社の公式見解である。ただし3点目については注意がいる。報道は「年末までにHBMシェアをDRAMシェア並みの約38%へ」と伝えたが、会社の発言は「今年下期中に、全DRAM市場シェアと同等の水準のHBM市場シェアを確保」であって、時期は「下期中」、具体的な数値の言及はない。「年末までに」も「約38%」も報道側が補った表現である。

歩留まりという言葉が、12層積層では4つに割れる

半導体の歩留まりは、どの工程の出口で測るかによって値が変わる。HBM4のように12枚のDRAMを縦に積む製品では、この違いが決定的になる。

「歩留まり」は1つではない ― HBM4で数字が指しうる4つの段階
「歩留まり」は1つではない ― HBM4で数字が指しうる4つの段階

段階1は、ウェハー上のDRAMチップが電気的に良品かどうかを測る値である。段階2は、そこから良品だけを選び出して積層工程へ送る選別の話になる。段階3は、12枚を接合して縦につないだあとのスタックの歩留まり。段階4が、基板に載せて最終検査を通り、顧客に出荷できる状態の歩留まりである。売り物になるのは段階4だけであり、読者が「歩留まり80%」と聞いて思い浮かべるのも段階4だろう。だが報道はそれを保証していない。

段階1を指すとする根拠は複数ある。調査会社トレンドフォースは2026年4月15日の記事で、サムスンが「HBM4向けの1c DRAM歩留まりを80%へ引き上げようとしている」と当時の目標を明示的に定義したうえで、「組み立ての複雑さが加わるため、HBM4全体の歩留まりは依然として低い」と書いている。韓国の経済メディアも2026年3月時点で「HBM4用1c DRAMの歩留まり」を年末85%とする目標として報じていた。「60%未満から80%へ」という軌跡は、この段階1の目標軌跡と一致する。

一方で段階3を指すとする根拠もある。ソウル経済の英語版は歩留まり改善の要因として、熱圧着と非導電性フィルムを使う接合工程の限界を克服したことを挙げている。接合は積層工程そのものであり、そこが改善したから数字が動いたのなら、その数字は段階1ではありえない。

どちらとも断定できない。断定できないという事実こそが、この報道の性質を示している。

同じチップでも用途によって歩留まりが別々に測定される点も押さえておきたい。韓国の業界紙は2025年10月の時点で、サムスンの1c DRAMについて汎用メモリー基準では70%、HBM4基準では50%という2つの数字を並べて報じている。同じ製造ラインから出たチップでも、HBMに使うには要求される品質が高く、選別の網が細かくなるためである。

韓国メディア自身が、この取り違えを犯している

段階の混同は理屈の上の話ではない。実際に報道で起きている。

2026年2月5日、ある韓国メディアが「サムスンとSKハイニックスのHBM4歩留まりに1.5倍の格差」と報じた。中身を見ると、サムスン側の50から60%は段階1すなわちHBM4向け1c DRAMのダイの数字であり、SKハイニックス側の80から90%は前世代であるHBM3Eの製品としての数字、つまり実装工程を含んだ段階3から4の値だった。世代も測定段階も異なる2つを並べて「格差」としていたことになる。

この構図を知ったうえで冒頭の80%を眺めると、読み方が変わる。数字そのものより、それが何を測ったものかを明示しない報道が連鎖する構造のほうが問題である。

対象の報道整理には、もう1つ拾いきれていない点がある。「HBM4全体の歩留まりは約70%まで改善した」という記述だが、調べた範囲でこれに対応する報道は見当たらない。70%という数字が出てくるのは別の文脈で、サムスンの技術責任者が2026年6月30日の社内経営現況説明会で述べたとされる、次世代のHBM4Eの信頼性試験における歩留まりである。これを報じたのは韓国の経済紙1社のみで、しかも公開の場での発言ではない。世代も測定対象も違う数字が、HBM4全体の歩留まりとして流通している可能性が高い。

12枚を積む工程で、何が歩留まりを削っているのか

1枚のDRAMが作れることと、12枚を積んで売り物にできることは、まったく別の技術である。

12枚を積むまでに何が起きるか ― 接合方式の分岐と、検査が律速になる理由
12枚を積むまでに何が起きるか ― 接合方式の分岐と、検査が律速になる理由

工程は貫通電極の形成から始まる。シリコンに深い穴を掘り、絶縁膜とバリア層を付け、銅を電気めっきで充填する。次にウェハーを研削して薄くし、裏面から電極を露出させる。SKハイニックスは12層のHBM3Eについて、各DRAMチップを従来比で40%薄くしたと公表している。12層品を8層品と同じ厚さに収めるためである。ここまで薄くなると、シリコンは自重と内部応力で反り、割れやすくなる。

接合の方式で、サムスンとSKハイニックスは異なる道を選んでいる。サムスンは薄いフィルムを挟んで熱と圧力で1枚ずつ接合する方式を採り、チップ間の隙間を業界最小の7マイクロメートルまで縮めた。信号用には小さい電極を、放熱が必要な箇所には大きい電極を配置するという使い分けも公表している。SKハイニックスは積み上げてから電極を一括で溶かし、液状の樹脂で隙間を埋める方式を採る。積層時に圧力を加えないため放熱用の電極を多く置けるのが利点で、同社は熱圧着方式と比べて最大4倍まで増やせるとしている。改良版の封止材は従来材比で放熱特性が1.6倍になったという。

この世代で押さえておくべきなのは、銅どうしを直接つなぐ接合、いわゆるハイブリッドボンディングが採用されていないという事実である。SKハイニックスはHBM4についてもその次のHBM4Eについても、従来方式の改良版を継続すると公式に述べている。技術メディアの一部には「HBM4でハイブリッドボンディングが本格採用」と書くものがあるが、少なくとも同社の公式発表はそれを支持しない。サムスンはHBM4Eからハイブリッド銅接合を採用すると公表しているが、これは次世代の話である。

針を当てるたびに、電極に傷が残る

積層前に不良を落とす検査が、この製品の律速になる。理由は物理にある。

検査は直径25マイクロメートル程度の微小な電極に、針を当てて電気的に測る。半導体試験の国際会議で発表された実測データによれば、常温で6秒間1回接触した場合の傷の深さは0.87マイクロメートルだった。ところが105度の環境で600秒間、2回接触すると3.86マイクロメートルまで深くなる。直径25に対して深さ3.86の傷である。温度が高いほど、時間が長いほど、接触回数が多いほど傷は深くなる。この傷は、後の接合工程で電極どうしが確実につながるかどうかに直結する。

同じ会議系列の2025年の発表は、検査の流れ方によって効率がどう変わるかを比較している。積層してからまとめて検査する従来の流れでは、不良を含んだダイが次の工程まで一緒に運ばれ、そのたびに機械的な負荷がかかる。この流れでは検査効率が100から80、75、70、65、60へと段階的に落ちていく。一方、各工程で不良を落とす流れなら100を維持できるとされる。積層数が4から16へ増えるほど、この差は効いてくる。

もう1つ、よく流布する誤解を正しておきたい。「HBMの貫通電極は1024本」という記述を見かけるが、1024は入出力の端子数であって貫通電極の本数ではない。HBM4でこの端子数は2048へ倍増した。貫通電極の実数を各社は公表していない。実測値として公開されているのは、前世代のHBM2について報告されたスタックあたり約4000個という微小電極の数である。

土台のチップを、メモリー会社が自分で作らなくなった

歩留まりの議論の外側で、この世代にはより構造的な変化が起きている。

HBM4で動いたのは歩留まりだけではない ― 商流と、日本企業の置かれた場所
HBM4で動いたのは歩留まりだけではない ― 商流と、日本企業の置かれた場所

HBMのスタックの一番下には、演算装置とやりとりする回路を載せた土台のチップがある。HBM3Eまで、これは各メモリーメーカーが自社のDRAM製造技術で作っていた。HBM4でこれが先端のロジック製造技術へ移った。

SKハイニックスは2024年4月のTSMCとの覚書発表で、この移行を明言している。同社の説明は「HBM3Eまでは自社技術で土台のチップを作ってきたが、HBM4では限られた面積により多くの機能を詰め込むため、TSMCの先端ロジック工程を採用する計画」というものだった。メモリーメーカーがロジックの受託製造会社の顧客になる、という関係がここで生まれた。

マイクロンの動きが、この流れの重さを示している。同社はHBM4の世代では土台のチップを自社で作り続けた。ところが次のHBM4Eからは、標準品と受注設計品の両方をTSMCへ委託すると表明している。内製を守っていた側が降りたことになる。

3社のうちサムスンだけが違う道を歩む。同社はHBM4の土台チップを自社ファウンドリの4ナノ工程で製造すると公式に明記し、記憶・論理・受託製造・先端実装のすべてを持つ唯一の企業だと自称している。垂直統合による一括提供を掲げ、これを受託製造事業の立て直し材料にもしている。最大の顧客が自社のメモリー事業という構図である。

規格の側でも力関係が動いた。JEDECが2025年4月16日に公開したHBM4規格は、端子速度の上限を毎秒8ギガビットと定めている。ところが3社の製品はいずれもこれを大きく上回る。SKハイニックスが10ギガビット超、サムスンが11.7ギガビット(最大13)、マイクロンが11ギガビット超である。規格が事実上の製品仕様だった従来のDRAMと違い、HBM4では規格が最低ラインに降格した。仕様を決める力が、標準化団体から最大の買い手へ移りつつある。

顧客側の認定についても、正確に書いておく必要がある。NVIDIAは、どのメモリーメーカーを認定したかを公式文書で発表したことが一度もない。同社の主要な発表資料を確認しても、メモリーの供給元名は伏せられている。唯一の公開言及は、同社の最高経営責任者が2026年6月5日に韓国を訪れた際、空港で記者団に対して「3社とも認定を通過し、3社とも量産に入っていて、我々に供給しようと競っている」と述べたものである。記者団への発言であり、時期の明示もない。供給配分について「7割をSKハイニックスが」といった数字が流通しているが、これらはすべて調査会社やアナリストの推計であり、当事者のいずれも公表していない。

高く売れるはずのHBMが、汎用品に抜かれた

ここに、この分野で最も語られていない逆説がある。

HBMは長らく「汎用DRAMの数倍で売れる高収益品」として語られてきた。実際、前世代のHBM3Eはサーバー向けDDR5の4倍から5倍の単価だったとされる。ところが調査会社の分析によれば、この差は2026年末には1倍から2倍まで縮む見通しで、しかも2026年前半にはウェハーあたりの売上と収益性の両方で、HBMが64ギガバイトのDDR5モジュールに逆転された。

原因は契約の形にある。HBMは長期契約で売られるようになった。SKハイニックスは約10社と契約を締結し期間は通常5年程度、マイクロンは16件で原則5年かつ解約できない形、サムスンは生産能力の6割から7割を長期契約に割り当てている。上限価格と下限価格を契約に埋め込む例も出てきた。前払いを受け取ったことは複数社が認めている。

この構造は、需要が読めない設備投資のリスクを下げる。だが年に1度しか価格を決め直さない仕組みは、汎用メモリーが四半期ごとに値上がりする局面では足かせになった。長期契約は顧客を縛る道具として語られがちだが、2026年に起きたのは売り手の足も縛られるという事態だった。

HBMの生産が汎用メモリーを押しのけている構造も、数字で見ると輪郭がはっきりする。調査会社の集計では、HBMはDRAM全体のウェハー投入量の約22%を使いながら、ビット供給としては約9%しか生んでいない(いずれも2026年末時点の見込み)。2027年にはウェハー投入が約30%、ビット供給が約13%になるとされる。この2つの比を取ると、1ビットあたりのウェハー消費は業界平均のおよそ2.3倍という計算になる。別の業界筋の数字では約3倍とされ、いずれにせよ同じ容量を作るのに数倍の生産枠を食う。マイクロンの経営陣は決算説明会で、HBMの成長と世代ごとに上がる消費比率が、HBM以外の供給をさらに圧迫すると述べている。汎用メモリーの価格上昇は、AI向けの部品が生産枠を食っていることの裏返しでもある。この構造は当サイトが以前に扱ったメモリーとストレージの階層や、HBMと先端実装の物理的な制約とも地続きである。

そして、この制約は需要の側にまで跳ね返り始めている。調査会社は2026年8月、NVIDIAが次世代の上位機種向けに当初は12層のHBM4Eを一本で想定していたところ、8層のHBM4Eや12層のHBM4、8層のHBM4までを評価対象に広げたと報じた。理由として挙げられているのは、2027年もDRAMの供給逼迫が続きメモリーメーカーのHBM向けウェハー配分が制約されること、そして12層HBM4Eの検証日程と歩留まりの立ち上がりに不確実性があることの2点である。演算装置の側が、載せるメモリーの段数を削る検討に入ったことになる。歩留まりの改善が急がれている理由は、単価や利益率の話にとどまらない。

日本の装置と材料は、どこに立っているか

積層数が12から16へ進むほど、削る・貼る・測るという工程は増える。装置と材料の側から見れば、歩留まりが上がるほど数量が出るという関係になる。ただし「HBM関連」と括られる日本企業の中身は、精査すると大きく分かれる。

判定の基準を、自社の資料でHBMを名指ししているかどうかに置いた。

企業工程上の位置自社資料でのHBMの扱い
ディスコ研削、切断決算短信の本文でHBMを名指し。用途別記述での名指しは2026年7月資料が初出
TOWA樹脂封止決算短信で「HBMが市場を牽引」、統合報告書でHBMに自社技術が採用されたと記述
レゾナック積層時の絶縁接着フィルム製品を「HBMを接続しながら多段積層するために使用」と説明。統合報告書の製品表にHBM向けと明記
積水化学工業仮固定と剥離のテープ用途に積層型メモリーを挙げ、世代の進化で求められる耐熱性に言及
アドバンテスト試験装置法定開示ではHBMと書かず高性能DRAMと表記。技術説明会では「HBM向けは高いシェア」と明言
東京エレクトロン配線工程のエッチング、接合装置決算資料でHBM向け投資の増加に言及。ただしどの装置がHBM工程に入るかは非開示
東京応化工業実装材料、レジスト決算説明の質疑応答で自社材料がHBMのDRAMスタックに使われると述べる。製品ページには記載なし
SCREENホールディングス洗浄HBMが投資を牽引すると述べるが、自社装置とは結びつけない

東京エレクトロンは、この中で最も踏み込んだ開示をしている。決算説明資料でDRAM配線工程のエッチング装置について、配線層数の多いHBM向け投資の増加により事業機会が拡大すると述べ、接合装置についても高シェアと明記した。注目すべきは数字の動きで、同社は配線工程エッチング装置の2030年までの累計売上見通しを、2025年10月時点の5000億円以上から2026年7月時点で1兆円へと約2倍に引き上げている。

ディスコについては、時点を明示しないと不正確になる。同社が決算資料の用途別記述でHBMを名指ししたのは2026年7月の資料からで、その3か月前の資料には同じ語が一度も出てこない。研削装置と切断装置のメモリー向けが生成AIのHBM向けを中心に増加した、という書き方である。

材料の側では、レゾナックが積層時に使う絶縁接着フィルムについて「HBMと呼ばれるメモリーを、接続しながら多段積層するために使用される」と製品を説明し、統合報告書の製品表にもHBM向けと明記している。積水化学工業は薄いウェハーを一時的に固定して剥がすテープの用途に積層型メモリーを挙げ、世代が進むほど高い耐熱性が求められると述べる。東京応化工業は決算説明の質疑応答で、実装材料がHBMのDRAMスタックの構造形成に関わり、同社のレジストを使うHBMが量産段階に入って売上に寄与していると述べた。ただし同社の製品ページにはHBMという語がない。開示の場所によって書きぶりが変わる点は、調べる側が意識しておく必要がある。

アドバンテストの扱いには注意がいる。同社は決算短信でHBMという語を使わず「高性能DRAM」と表記する。一方で技術説明会では「現状当社はHBM向けは高いシェアを有しています」と明言し、メモリー試験装置の売上の約9割がDRAM向け、そのうち6割程度がウェハー試験向けで、さらにその過半がHBM向けという内訳まで示していた。法定開示だけを追うと、この会社のHBM依存は見えない。

一方でSCREENホールディングスは、決算資料でHBMとサーバー向けDRAMの投資が成長を牽引すると述べているが、自社の洗浄装置をHBM向けと書いてはいない。需要の説明と自社製品の位置づけは別物であり、この差を読み手が補ってはいけない。

もう1つ、広く流布している誤りを正しておきたい。味の素のビルドアップフィルムをHBMの材料として説明する記事があるが、同社の公表資料はこれを半導体パッケージ用の層間絶縁材料と位置づけ、用途として挙げるのは高性能CPUである。HBM・メモリーという語は出てこない。技術構造の上でも、この材料はHBMのスタック内部ではなく、その下で演算装置を載せるパッケージ基板の側にある。イビデンのパッケージ基板も同じく演算装置側であり、HBM本体の部材ではない。

読み違えやすい点も挙げておく。調べた範囲では、装置の型番と工程を結びつけてHBM向けと明示した公式資料は、どの企業にも存在しない。特定の型番をHBM製造装置と断定する記述は、すべて推定の領域にある。また新光電気工業は2025年6月に上場廃止となっており、同社の広帯域メモリー向け基板は製品ページ上で開発中と表示されている。量産供給と開発段階のものを同じ列に並べると、実態を見誤る。半導体製造技術そのものの体系は半導体技術の体系解説にまとめている。

数字が動いたこと自体は、報道のとおり前進である。ただしその数字が段階1を指すなら、売り物になるまでにはまだ接合と検査という2つの関門が残っている。段階3を指すなら、サムスンの量産は報じられている以上に進んでいることになる。どちらなのかを判別する材料を、いまのところ誰も公開していない。