村田製作所ではコンデンサの受注残が1年で89.5%増え、2026年3月末に2,692億円に達した。太陽誘電ではコンデンサの受注倍率が1.72まで上がった。不足はどれほどで、いつまで続くのか。開示の数字で確かめる。

AIサーバー向けの積層セラミックコンデンサ (MLCC) は、どれだけ足りず、いつまで続くのか。それを知るには、メーカー各社の開示資料を1つずつ読み解く必要がある。村田製作所の有価証券報告書と決算短信、村田と太陽誘電の決算説明会資料、TDKの決算短信、材料を供給する東邦チタニウムと日本化学工業の増産計画を突き合わせた。受注残の月数、受注倍率、材料増産の時期の3つの指標から、不足の実態を追う。

村田製作所のコンデンサ受注残は1年で89.5%増え、売上高の3.4か月分に達した

村田製作所の2026年3月期 (2025年度) の売上高は5.0%増の1兆8,309億円、営業利益は0.8%増の2,818億円だった。全体の伸びは小さいが、中身は偏っている。有価証券報告書の製品別の記載では、コンデンサの売上高が12.6%増の9,364億円となり、積層セラミックコンデンサが「サーバー向けを中心に幅広い用途で増加」した。前年の8,318億円から1,000億円以上増えた計算だ。同社は経営方針でも「AIサーバー及び周辺機器における電子部品の搭載数の増加により、データセンター関連の需要が大きく拡大しております」としている。

売上高より速く伸びたのが受注だ。同じ有価証券報告書の受注実績によると、コンデンサの受注高は27.7%増の1兆636億円、受注残高は2026年3月末時点で前年度末比89.5%増の2,692億円だった。同社は理由を「積層セラミックコンデンサの受注がサーバー向けを中心に増加し、受注高が売上を上回ったこと」と注記している。ファクトブックで1年前の受注残高を見ると1,420億円だ。

この受注残を月平均の売上高で割ると、受注残が何か月分の売上にあたるかが分かる。2025年度のコンデンサの売上高9,364億円を12で割った月平均は780億円で、受注残2,692億円はその3.4か月分にあたる。1年前は月平均693億円 (8,318億円÷12) に対して受注残1,420億円で、2.0か月分だった。受注残の月数は1年で1.4か月分伸びた計算になる (編集部の計算。以下の月数と割合も同じ)。受注残は期末の為替で円に換算される。期末の為替は1年で7%円安に進んだ (1ドル149.5円から159.93円) ため、受注残が全額ドル建てだと仮定すると、89.5%増のうち約12ポイントは円換算の膨らみで、為替を除けば約77%増になる。1.4か月の伸びも為替を除くと1.2か月前後で、目安として読む。

2026年度に入っても受注残は増え続けている。2026年4〜6月期の売上高は前年同期比20.7%増の5,023億円で四半期として過去最高、営業利益は59.8%増の985億円だった。コンデンサの売上高は30.0%増の2,825億円で、前四半期比でも16.5%増えた。積層セラミックコンデンサはデータセンターやモビリティ向けを中心に増えた。決算短信によると、同四半期のコンデンサの受注高は前年同期比85.5%増の4,155億円、受注残高は2026年6月末に4,022億円と3月末から49.4%増えた。受注高を売上高で割った受注倍率は1.47で、受注残は四半期の売上高を月に直した942億円の4.3か月分に達する。全社でも四半期の受注高6,739億円は過去最高で、全社の受注倍率は1.34だった。

同社はこの受注の数字に注意書きを付け、「長納期案件の増加に加え、一部用途では供給逼迫を懸念した前倒し受注の懸念もあるため動向に注視していく」と記した。長納期案件とは、納入までに時間のかかる案件を指す。不足が長引くと顧客は前倒しで注文を入れる。受注残の一部がその前倒しで膨らんでいる可能性に、村田自身が注意を促している。

指標2025年3月期2026年3月期2027年3月期 予想
コンデンサ売上高 (億円)8,3189,364 (+12.6%)11,575 (+23.6%)
コンデンサ受注残高・期末 (億円)1,4202,692 (+89.5%)未開示
受注残の月数 (か月分)2.03.4未開示
データセンター関連売上高 (億円)—1,7673,706 (+109.7%)
設備投資 (億円)1,8052,478 (+37.3%)2,550 (計画)

需要の源はどこにあるのか。村田は用途別の売上高に「データセンター関連」の欄を設けている。汎用サーバー、AIサーバー、HDD、アクセラレーターカード向けを含む区分で、コンデンサだけでなく電源モジュールや電池も入る。2025年度は1,767億円だった。2026年4〜6月期は前年同期比81.1%増の697億円、2026年度の通期予想は109.7%増の3,706億円と、1年で2倍を見込む。売上高全体に占める割合は2025年度の9.7%から2026年度予想の17.6%へ上がる。同社は7月、通期予想を売上高2兆1,100億円、営業利益4,300億円に引き上げた。4月時点の予想からそれぞれ1,500億円、500億円の上方修正で、売上高の主因は「AIサーバー向けを中心としたデータセンター関連の部品需要拡大」と為替、営業利益の主因は生産高の増加に伴う操業度益と円安効果だと説明した。コンデンサの売上高予想は23.6%増の1兆1,575億円で、「データセンター向けの旺盛な部品需要により増加を計画」としている。

供給面の対策も開示資料に記されている。2025年度の設備投資は前期の1,805億円から37.3%増の2,478億円で、うちコンデンサとインダクタを含むコンポーネント部門が1,877億円を占めた。2026年度の設備投資計画は2,550億円で、同社は「データセンター向けの小型大容量品向けの能力増強投資に向け、必要な投資を実行」すると説明する。棚卸資産の動きも需給の強さを示す。2026年6月末の棚卸資産はスマートフォン向けの部材を中心に増えた一方、「コンデンサは足元の需要の高さから微減」としている。作った分がそのまま出荷されている状態だ。

太陽誘電は受注倍率1.72、値下がりの鈍化でコンデンサ売上高予想を3か月で345億円上積み

太陽誘電の2026年3月期は売上高が4.1%増の3,553億円、営業利益が91.2%増の200億円で、営業利益率は5.6%だった。同社は増収増益の理由を「AIサーバー向けの需要拡大」と一言で説明している。コンデンサの売上高は8.5%増の2,518億円で、「AIサーバー向けで旺盛な需要拡大が続き、自動車向けも堅調に売上を伸ばす」としている。2026年1〜3月期にはコンデンサの受注が前四半期比26%増え、受注倍率は全社で1.25、コンデンサで1.31に上がった。

5月8日に公表した2027年3月期の見通しは、売上高が8.1%増の3,840億円、営業利益が50.0%増の300億円、コンデンサの売上高は12.0%増の2,820億円だった。需要については「AIサーバー向けは、積層セラミックコンデンサの大容量化と員数増による需要拡大が続く」(員数は1台あたりの搭載個数) と見込んだ。

3か月後、この見通しは大きく変わった。8月5日に公表した2026年4〜6月期は、売上高が939億円 (前年同期比10.7%増)、営業利益が48億円 (53.3%増) で、営業利益率は5.1%だった。前四半期比でも売上高5.3%増、営業利益38.6%増と伸びた。コンデンサの売上高は690億円 (前年同期比14.7%増、前四半期比7.9%増) で、「AIサーバーをはじめとする情報インフラ・産業機器や通信機器向けなど幅広い用途で売上が拡大」した。目立つのは受注だ。コンデンサの受注は前四半期比41%増え、受注残高は78%増えた。受注倍率は全社で1.58、コンデンサで1.72に達した。受注倍率の推移を同社の資料で追うと0.95、0.88、1.08、1.31、1.72で、2025年7〜9月期の0.88を底に3四半期続けて上がった。開示されているのは倍率と増減率だけだが、690億円に1.72を掛けると、この四半期のコンデンサの受注高はおよそ1,187億円になる (編集部の計算)。

同社はこの日、通期予想を売上高4,240億円 (前期比19.3%増、前回予想比400億円増)、営業利益450億円 (125.0%増、同150億円増) に引き上げ、営業利益率は10.6%を見込む。コンデンサの売上高予想は2,820億円から3,165億円へ、3か月で345億円 (12.2%) 上積みした。前期比では25.7%増になる。上方修正の理由として、価格について2点を挙げた。「AIサーバー向け需要は、積層セラミックコンデンサの大容量化と員数増が加速して期初想定を上回る見込み」と、「同一製品の値下がりペースは、期初想定に対して緩やかになる見込み。需給ひっ迫による値下げ圧力の緩和に加え、代理店向けを中心に一部の商品で価格改定を実施」だ。電子部品は同じ製品の価格が下がり続けるのが常で、村田も2026年度の利益予想に売価値下げの影響を550億円 (同社の推計値) の減益要因として織り込んでいる。太陽誘電はその下落が鈍り、代理店向けを中心に一部の商品で価格を改定したと説明している。

村田と比べると、2つの点が目立つ。1つは規模で、太陽誘電の2027年3月期のコンデンサの売上高予想3,165億円は、村田の2026年度のコンデンサの売上高予想1兆1,575億円の27.3%にあたる。伸び率は太陽誘電が25.7%、村田が23.6%で、どちらも2割を超える。もう1つは利益率で、2026年4〜6月期の営業利益率は村田のコンポーネント部門が32.5% (前年同期26.0%)、太陽誘電は全社で5.1%だ。太陽誘電は部門別の利益を開示しないので全社で比べるしかないが、同じAIサーバー需要の恩恵を受けていても差は27.4ポイントある。太陽誘電は情報インフラ・産業機器と自動車の売上構成比が合計55%で、「情報インフラ・産業機器は、AIサーバー向けのコンデンサが売上拡大をけん引」したと説明する。利益率の差を縮める材料が受注の勢いだけで足りるのかが、太陽誘電の決算を読む際の焦点になる。

設備投資の動きは両社で違う。太陽誘電の2026年3月期の設備投資額は404億円で前期の642億円から37.0%減り、2027年3月期の計画は当初400億円で、8月に420億円へ小幅に引き上げた。村田の2,550億円の6分の1にとどまる。太陽誘電は「物流停滞などの影響で工場稼働に制約が生じたため」棚卸資産が前四半期末と同じ水準にとどまったとも説明しており、生産能力を増やす前の段階で、物流の制約で生産に支障が出ている。

TDKのコンデンサも35%増、伸びたのは産業機器向け

村田、太陽誘電と並び称されるTDKの決算は内容が異なる。2026年4〜6月期の売上高は前年同期比38.3%増の7,410億円、営業利益は53.0%増の863億円だった。同社は決算短信で、増収の主因にスマートフォンなどの新製品の販売と、AIデータセンター関連の堅調な需要を挙げた。市場環境としてはAIデータセンター向けで大容量データの保存に使うニアラインHDDの需要が堅調だったとし、HDDヘッドとサスペンションを含む磁気応用製品は情報通信機器市場向けに49.6%増の816億円となった。AIデータセンターと結びつく製品として短信から読めるのはこのHDDヘッドである。売上高の過半を占めるエナジー応用製品 (二次電池と電源) は42.1%増の4,058億円で、電池の増加は主に情報通信機器市場向けと記す。

受動部品部門の売上高は28.0%増の1,768億円。このうちセラミック、アルミ電解、フィルムを合わせたコンデンサは35.1%増の808億円だった。伸び率は村田のコンデンサ (30.0%) を上回る。ただし同社は短信で、コンデンサの増収の主な要因を産業機器市場向けとし、「AIサーバー」という言葉は出てこない。コイルなどのインダクティブデバイスは26.2%増の620億円で、伸びたのは主に自動車向けだ。短信の記述からAIデータセンターの恩恵が読めるのはHDDヘッドであり、コンデンサについてはAIサーバーへの言及がない。「MLCC大手3社がAIサーバーで潤う」と一括りにする見方は、TDKの開示と合わない。

村田の見通しは需要が年30%増、生産能力の増強は年10%

村田が2025年12月1日の投資家向け説明会で示した見通しは、不足が一時的でないことを示している。同社は数量で見たAIサーバー向けコンデンサの需要を、2025年度比で2027年に2.0倍、2030年に3.3倍と予測し、これを年平均30%の成長 (2025〜30年) と表している。同社は中期方針を策定した時点からの変化として「AIサーバー総台数予測:変化無し」「コンデンサの搭載員数:増加」と示し、主基板 (ベースボード) 1枚あたりの平均搭載個数の見通しを1万〜2万個から1万5,000〜2万5,000個へ引き上げた。サーバーの台数ではなく、1台に搭載される個数が増えている。瞬間的に大量の電力を使うAI半導体を安定して動かすため、電力を一時的にためるコンデンサが多く必要になる。

一方で設備投資は、工程の負荷が高いサーバー・車載向けを中心に、生産能力を年10%ずつ増やす方針を続ける (資料の表記は「サーバーやモビリティ向けの工程負荷の高いコンデンサを中心に年間+10%の能力負荷ベース」)。年30%はAIサーバー向けの数量、年10%はコンデンサ全体の生産能力で、対象が違う。データセンター関連の売上高は全社の9.7%なので、AIサーバー向けの割合を高めれば、全体の能力が年10%の伸びでもその製品の供給は速く増やせる。それでも、需要の予測が能力の増強の3倍の速さで並んでいる以上、小型大容量品の需給が緩む時期を同社の資料から読み取ることはできない。建物の建設は先行している。2025年12月時点で、出雲村田製作所の新生産棟 (建物と生産設備を含む投資額約470億円) は2026年3月、積層セラミックコンデンサ研究開発センター (土地と建物で約350億円) は2026年1月に竣工する予定とし、フィリピンの建屋 (約112億円) は2025年10月に竣工した。

不足しているのが小型で容量の大きい製品であることも、同じ資料からわかる。村田は1005Mサイズ (1.0mm×0.5mm) で静電容量47マイクロファラッド (μF) のMLCCを世界で初めて量産したとし、AIデータセンターの基板には「小型大容量化に加え、発熱に伴う高温環境下でも使用可能な高信頼性」が求められるとしている。村田の製品の種類は約5万、年間生産数は1兆個を超える。原料から最終工程まで一貫生産し、重要な生産設備も自社で設計・製造している。製造技術の詳細は村田のMLCCの製造技術を扱った記事で取り上げている。

配電は54ボルトから800ボルトへ、村田はコンデンサに加え電源モジュールも狙う

コンデンサが増える背景には、電源の構成の変化がある。米エヌビディアは2025年5月20日の開発者ブログで、ラック内の配電を現行の54ボルト直流から800ボルト直流へ移す構想を示した。理由は銅の重さだ。同社はラックの消費電力が200キロワットを超えると現行の方式は物理的な限界に近づくとし、1メガワットのラックに54ボルト直流で給電すると最大200キログラムの銅製の配電部材 (バスバー) が必要になると試算した。800ボルト直流にすれば、電源から負荷までの効率が最大5%改善するという。本格的な量産は2027年で、同社の次世代ラック「カイバー」の投入と同時になる。同社は2025年3月の開発者会議GTCで、次世代GPU「ルービン・ウルトラ」576個を1ラックで動かす800ボルトの電源専用ラック (サイドカー) を展示した。

同社はこのブログで、協業先として18社を挙げている (2025年7月31日の更新時点。5月の初出時より電源半導体の社数が増えた)。電源半導体メーカーが10社、電源部品メーカーが5社 (デルタ電子、ライトオンなど)、電源システムが3社 (イートン、シュナイダーエレクトリック、バーティブ) で、日本企業は電源半導体のルネサスエレクトロニクスとロームの2社だけだった。同年10月には、日立エナジーが800ボルト直流の電源系統の開発でこの構想を支援すると日立製作所が発表した。コンデンサなどの受動部品メーカーは、7月末時点の一覧に1社も入っていない。

村田の資料は、この構図を部品メーカーの側から説明している。村田は投資家向け説明会の資料の電源のページで、電源システムが12ボルトから54ボルト、さらに±400ボルト/800ボルトへ高電圧化し、「電圧の降圧比が大きくなるため、複数のDC-DCコンバータが必要となり新たなDC-DC電源モジュールの需要が生まれる」と説明している。次世代プロセッサには、給電の距離を縮めて電圧降下と配線の損失を抑える「垂直給電」の採用が進むとしている。同社は2026年度、電圧を最終段の手前で下げる「セカンダリ電源」の売上高の獲得に取り組むとした。800ボルト化で需要が増えるのはコンデンサだけではない。電圧を54ボルトから1ボルト未満まで数段階で降圧する電源モジュールも増える。村田はコンデンサ以外のこの市場も狙う。業績への寄与はまだ小さい。2026年4〜6月期は電源モジュールの売上高がデータセンター向けで増えた一方、同事業で案件が中止になり、30億円の損失を計上した。2026年度は電源モジュールがサーバー向けに増える見込みだ。

技術面では、村田は2026年2月にAIサーバー内の配電設計の資料を公開した。ラック、ラック内の棚 (シェルフ)、基板、電力を使う回路のすぐそばという各段階の給電構成と、MLCC、シリコンキャパシタ、導電性高分子アルミ電解コンデンサ、インダクタの選び方を解説し、プロセッサの近くには低ESL (等価直列インダクタンス) 品を置くよう勧めている。低ESL品には、4端子の「LLF」シリーズ (高速で動くICの電源の雑音を抑える用途) と3端子の「NFM」シリーズがある。プロセッサが瞬間的に消費する電流で電源の電圧が落ち込まないよう、インダクタンスの低いコンデンサをプロセッサのすぐ近くに置く。こうした設計上の要求から、小型で容量の大きい製品の搭載数が増えている。

材料は粒の小さいニッケル粉が2倍、チタン酸バリウムは対応力1.5倍で、稼働は2027年以降

不足の解消を左右するのは、コンデンサメーカーの設備だけではない。MLCCは、誘電体のチタン酸バリウムと内部電極のニッケルを交互に何層も重ねて焼き固めた部品だ。小型で大容量にするほど、原料の粉末を細かくする必要がある。2026年8〜9月に、この材料を供給する国内のメーカー2社が相次いで増産を発表した。

JX金属は2026年9月10日、グループ会社の東邦チタニウムがMLCC向け超微粉ニッケルのうち、特に粒の小さい製品の生産能力を増強すると発表した。茅ヶ崎工場 (神奈川県茅ケ崎市) で2027年から設備を段階的に稼働させ、この製品の生産能力を2倍に引き上げる。「さらに需要動向を踏まえ、順次供給能力の拡充を図ってまいります」としており、2倍に達する時期は示していない。JX金属は発表文で「ハイエンドMLCCは、小型・大容量化に加え、高い信頼性が求められています」「その内部電極材料に使用されるニッケル粉についても、より微細で品質の安定した製品へのニーズが高まっています」としている。東邦チタニウムは、チタンの製錬技術を応用して、粒の大きさがそろった超微粉ニッケルを茅ヶ崎工場と若松工場 (北九州市) で生産している。若松工場ではニッケル粉の第5工場が完成し、2026年5月27日に竣工を発表した。新工場の完成直後に、別の工場でさらに2倍への増強を打ち出したことになる。

東邦チタニウムの2026年3月期の決算補足資料によると、全社の売上高は前期比56億円減の834億円、営業利益は約23億円減の44億円だった。主力の金属チタン事業が減収となる中で、ニッケル粉を含む化学品事業は売上高が前期の127億円から43億円 (34.0%) 増の170億円となり、営業損益は前期の10億5,000万円の赤字から1億6,000万円の黒字に転換した。1〜3月期に限ると、化学品事業の営業利益は4億4,000万円だった。化学品事業の売上高は、MLCC最大手の村田のコンデンサの売上高 (9,364億円) の1.8%にとどまる。なお東邦チタニウムは4月24日の臨時株主総会でJX金属との株式交換を承認した。5月28日に上場廃止となり、6月1日に株式交換の効力が発生する予定で (株式交換によりJX金属の完全子会社になる)、2027年3月期の業績予想は公表していない。ニッケル粉の増産の進み具合は、今後はJX金属の開示で確かめることになる。

チタン酸バリウムでは、日本化学工業が2026年8月18日に福島第一工場 (福島県郡山市) の生産設備を増強すると発表した。増強の完了と稼働開始はいずれも2027年度の予定。同社は「当社の電子セラミック材料におけるAIサーバー向け需要への対応力は、現行比約1.5倍に拡大する見込みです」とし、この能力はチタン酸バリウムに加え原料の高純度炭酸バリウムも含めて算定したと注記した。同社は背景に「AIサーバーや高速通信を支えるネットワーク機器、関連電子機器向け高性能MLCCの需要が世界的に増加」していることがあると説明し、「微粒子合成技術や粒径制御技術など独自の技術基盤」を強みに挙げる。材料メーカー4社の決算と、買い手との規模の差はチタン酸バリウムの供給会社4社の決算を検証した記事で詳しく取り上げた。

ここで時期を整理する。村田の受注残が売上高の3.4か月分へ膨らんだのは2026年3月末、太陽誘電の受注倍率が1.72に達したのは2026年4〜6月期である。これに対し、粒の小さいニッケル粉の増産は早くて2027年から段階的に進み、チタン酸バリウムの増強は2027年度に完了する。受注残が3.4か月分に達した2026年3月末を起点に取っても、材料の増産が始まるまでニッケル粉で9か月以上、チタン酸バリウムで1年以上の時間差がある。村田のように原料から一貫生産するメーカーもあるが、外部から材料を買うメーカーでは、設備を拡張しても材料が足りなければ、小型で容量の大きい製品は増産できない。

需給の逼迫は2027年まで続くと、村田・太陽誘電と材料メーカーの開示から読める

AIサーバー向けMLCCの不足は、村田製作所のコンデンサの受注残が1年で2.0か月分から3.4か月分へ伸び、2026年6月末には4.3か月分に達したこと、太陽誘電のコンデンサの受注倍率が3四半期続けて上がって1.72に達したことに表れている。村田自身は需要の伸びを年30%、生産能力の増強を年10%と見込み、前倒しの発注への懸念にも触れた。材料の増産が始まるのは2027年以降だ。供給不足がいつまで続くかを見極めるには、コンデンサメーカーの受注倍率だけでなく、材料メーカーの増強設備がいつ稼働するかを見る必要がある。

今後の注目点は3つある。1つは村田の2026年7〜9月期のコンデンサの受注倍率が1.47から下がるかどうかだ。下がれば前倒し発注の反動、上がれば不足が続いているとみられる。2つめは太陽誘電の2026年7〜9月期のコンデンサの受注倍率が1.72を維持できるかどうか。3つめは2027年以降に東邦チタニウムの茅ヶ崎工場と日本化学工業の福島第一工場が予定どおり稼働するかどうかである。3つめの時期が遅れれば、不足は2028年以降に延びる。

※本記事は2026年10月4日、一次資料に基づいて全面的に書き直しました。旧版にあった次の記述は、一次資料で裏づけが取れなかったため削除しました。「1000A級の電流」、「中国の第15次5カ年計画や宇宙データセンター構想が日本の電子部品への依存を高める」、「供給不足はトップメーカーが戦略的に維持している」、「サムスン電機の代替品は採用されない」、「シリコンキャパシタは製造コストが極めて高い」。「低ESL・超高容量のMLCCを製造できるのは村田製作所、TDK、太陽誘電などごく一部」という記述は、TDKがコンデンサの増収要因に産業機器市場を挙げ、AIサーバーには触れていないため、3社それぞれが開示した数字に基づく記述に改めました。電源の電圧 (54ボルト・800ボルト) と、電流・銅の使用量の数字は、米エヌビディアの開発者ブログと村田製作所の投資家向け資料の値に改めました。

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