テスラのマスクCEOが採用を表明した14A工程で、インテルは4〜6月期に開発をやり遂げると確約した。設計キット0.9版は10月に顧客へ渡る予定だ。直近期の売上のうちインテル向けはレーザーテックが20.7%、イビデンが18.1%だ。
テラファブは、米スペースXと米テスラが進める半導体製造の計画である。スペースXが6月に米証券取引委員会 (SEC) へ出した目論見書は、毎年1テラワット分のAI計算用の半導体を作ることを長期目標とする計画と位置づける。2026年3月に両社の協業として発表され、4月に米インテルが加わった。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者 (CEO) は4月22日の決算説明会で、インテルの14A工程を使う計画だと述べている。
ただ、当事者が提出書類に書いていることは多くない。スペースXは目論見書で、テラファブの開発の日程も設備投資の額も「まだ決まっていない」としている。インテルは7月の四半期報告書で14Aの開発完了を確約したと記したが、14Aを使う製品として挙げたのは自社が今後出す製品で、テラファブには触れていない。本稿は、3社が提出した書類と、インテル向けの売上を公表している日本の2社の有価証券報告書を突き合わせ、テラファブとインテル14Aの需要が日本の装置・部材メーカーに及ぶ道筋を探った。
テラファブは計画の大枠だけが決まり、日程も投資額も未定だ
スペースXの目論見書によると、同社はテスラとテラファブの今後の開発について大枠で合意した。個別の事業は別に交渉して契約を結ぶとしており、開発の日程、達成目標、設備投資の額はいずれも未定である。リスク要因の欄には、テスラもインテルも計画に参加し続ける義務は無く、最終契約に至らない可能性もあると書いている。テラファブの工場が稼働した後も、AI計算用の半導体の相当部分は外部の供給元から買い続ける見込みだという。
具体像はテスラが決算説明会で語っている。テスラはテキサス州オースティンの工場「ギガテキサス」の敷地に研究開発用の工場を建てる。投資額は約30億ドルで、処理できるウエハーは月に数千枚の規模になる。自動運転部門を率いる幹部は、メモリーとロジック半導体から回路の原版であるフォトマスクまでを1か所で作り、試作と改良を繰り返す期間を短くする狙いを説明した。量産規模に広げる最初の段階はスペースXが担う。量産を担う工場の用地と、必要な電力と水の量はグライムズ郡の計画を検証した記事で扱っている。
一方、テスラの四半期報告書にテラファブの名は無い。テスラは1〜3月期の報告書で、生産の対象を半導体にも広げているとし、2026年の設備投資を250億ドル超と見込んだ。4〜6月期の報告書でもこの見通しを変えていない。キャッシュフロー計算書によると、有形固定資産の取得による支出は1〜6月期で約83億ドルだった。通期で250億ドルを超えるには、7〜12月期に約167億ドルを超える支出が要る。1〜6月期の約2倍である。
テスラはインテル14Aを選んだが、インテルは外部の顧客の名を明かしていない
マスク氏は決算説明会で、インテルが中核の製造技術で協力することに意欲を示しているとし、14Aを「最先端で、実はまだ完全には仕上がっていない」工程と説明した。そのうえで「テラファブが規模を広げる頃には、14Aはおそらくかなり成熟している」と述べ、時期が合うとの見方を示した。インテルも1〜3月期の決算発表で、スペースX、xAI、テスラと並ぶ戦略的な協業相手としてテラファブに加わったと記した。超高性能の半導体を大量に設計、製造し、パッケージング (複数のチップを1つの部品にまとめる工程) まで手がける自社の力で計画を支えるという。ただし、工程名は書いていない。4月上旬の一部報道はインテルが18A工程を提供すると伝えたが、インテル自身は工程名を明らかにしておらず、マスク氏が22日に挙げたのは14Aである。
インテル14Aは、現行の最先端工程「18A」の次の世代にあたる。インテルが2025年4月の受託製造の顧客向けイベントで公表した内容によると、14Aは18Aで導入した裏面電源供給を発展させ、電源を直接接続する方式を採る。主要な顧客には、回路設計に使う設計キットの初期版を提供していた。
2026年7月23日の決算説明会で、インテルのリップブー・タンCEOは、14Aの設計キットの0.5版が完成し、0.9版は予定どおり10月に顧客へ提供すると説明した。欠陥密度とトランジスタの性能は、18Aの開発時を上回るペースで改善しているという。自社製品向けの試験生産を2027年後半に始める日程は変えず、2028年に量産を始める方針を4〜6月期に固めた。日程を守れる理由には外部の顧客との協議の進展と自社製品の需要の増加の両方を挙げ、顧客との協議は活発になっているとしたが、具体的な社名は明かしていない。7月24日提出の四半期報告書にも、テラファブ、スペースX、テスラの名は一度も出てこない。
1年続いた「中止もありうる」の記述が、7月の報告書で「開発完了を確約」に変わった
インテルは2025年7月に提出した四半期報告書から、14Aについて、外部の大口顧客を確保できなければ開発を一時停止するか中止する可能性があると書いてきた。テスラの採用表明の2日後、2026年4月24日に提出した1〜3月期の報告書が、この記述を載せた最後になった。同報告書は、外部の大口顧客の製品での設計採用と自社製品で十分な需要を確保できなければ、14Aを開発・製造しても採算が合わず、14Aとその後の工程の開発を一時停止するか中止する可能性があるとしていた。その場合でも自社製品の過半は少なくとも2030年まで18Aやその改良版など自社の工程で作り、その後の製品は外部の受託製造会社に頼るという。
7月24日の4〜6月期の報告書で、この記述は初めて消え、「4〜6月期に14Aの開発を完了することを確約した」に置き換わった。確約とあわせて記したのは、14Aを使うよう設計した自社の製品が複数あることと、14A向けの生産能力の増強が進んでいることの2つである。外部の顧客については、大口顧客になりうる企業が14Aを試せるよう、性能と設計の目標に向けて開発を進めたと書くにとどまる。増強の規模と速さは、自社製品と外部の大口顧客から確実に見込める需要で決まるとも書いている。
決算説明会では、設備投資の見通しを引き上げた。2026年は200億ドル超とし、製造装置を前倒しで発注し、クリーンルームの建設も早める。2027年は2026年を大きく上回り、大半を米国で使う計画だ。
メディアテックの名は、テラファブの当事者3社の提出書類に出てこない
2026年5月下旬、台湾の証券アナリストがテラファブの協業相手の候補として台湾の半導体設計大手メディアテックを挙げ、現地メディアが広く報じた。しかし、スペースXの目論見書、インテルの決算発表と四半期報告書、テスラの四半期報告書のいずれにもメディアテックの名は無い。スペースXの目論見書には、「14A」の語も、台湾積体電路製造 (TSMC) やサムスン電子の名も見当たらない。
一次資料で確かめられるメディアテックとインテルの関係は、2022年7月25日の受託製造の提携である。インテルの発表によると、メディアテックはさまざまなスマート端末向けの半導体をインテルの工程で作る計画だった。米国と欧州に生産能力を持つ受託先を加え、供給網の偏りを減らす狙いだった。発表に工程名は無く、18Aや14A、先端パッケージングでの協業にも触れていない。2025年4月のインテルのイベントでは、メディアテックの幹部がマイクロソフトやクアルコムの幹部とともに登壇した。テラファブとのつながりを示す資料は、10月4日時点で見当たらない。
レーザーテックのインテル向け売上は前期の6割弱に減り、首位から2位に
テラファブとインテル14Aの需要が日本の装置・部材メーカーに及ぶとすれば、製造とパッケージングを担うインテルからの発注を通じてになる。インテルを売上の1割以上を占める顧客として社名を公表している日本の上場企業に、フォトマスク検査装置のレーザーテック (6920) と半導体パッケージ基板のイビデン (4062) がある。両社の有価証券報告書の「主な相手先別の販売実績」から、インテル向けを抜き出した。
| 会社 (決算期) | インテル向け (億円) | 売上高に占める割合 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| レーザーテック (2026年6月期) | 476.9 | 20.7% | 43.0%減 |
| レーザーテック (2025年6月期) | 837.2 | 33.3% | ― |
| イビデン (2026年3月期) | 753.2 | 18.1% | 1.8%減 |
| イビデン (2025年3月期) | 767.1 | 20.8% | ― |
前期比は有価証券報告書の金額から編集部が算出した (以下の倍率と差額も同じ)。レーザーテックの2026年6月期の売上高は2,305億円で8.3%減った。インテル向けは837億円から477億円へ43.0%減り、前期の首位から2位に下がった。首位はTSMC向けの492億円 (21.4%)、3位はサムスン電子向けの465億円 (20.2%) で、上位3社がほぼ並んだ。
インテル向けの売上は、米国の顧客向けだけに計上されているわけではない。同社は地域別の売上を顧客の所在地で分けている。2025年6月期の米国の顧客向けは679億円で、同じ期のインテル向け837億円を下回る。米国向けがすべてインテル向けだったとしても、少なくとも158億円はインテルの米国外の拠点向けだった計算になる。
先行きを映すのは受注だ。2026年6月期の受注高は2,375億円で、前期の2.3倍に増えた。同社は2027年6月期の受注を3,000億〜4,000億円と見込む。前期の1.26〜1.68倍にあたる。決算説明会では、極端紫外線を光源に使うマスク検査装置について、ロジック半導体のフォトマスクの製造拠点からの受注を想定していると説明した。市場の状況については「1.4ナノメートル相当の技術開発が進行中」と述べている。この検査装置の売上はおよそ6割がフォトマスクの製造拠点向けである。テスラはテラファブの研究開発用の工場でフォトマスクまで自前で作る計画を示しており、レーザーテックのフォトマスク検査装置の売り先が増える可能性はある。ただし、同社は顧客ごとの受注を明らかにしておらず、テラファブ向けの受注の有無は報告書から確かめられない。
イビデンではエヌビディアが最大の顧客になり、インテル向けはほぼ横ばいだった
イビデンの2026年3月期の売上高は4,162億円で12.7%増えた。パッケージ基板を作る電子部門は2,433億円で23.4%増えた。最大の顧客は米エヌビディアに代わり、同社向けは751億円から1,225億円へ63.1%増えた。インテル向けは767億円から753億円へ1.8%減り、売上高に占める割合は20.8%から18.1%に下がった。それでも電子部門の売上の31.0%はインテル向けである。
イビデンも地域別の売上を顧客の所在地で分けている。米国の顧客向けは425億円で、インテル向けを下回る。インテル向けのうち少なくとも328億円、43.5%はインテルの米国外の拠点向けである。イビデンのマレーシアの顧客向けの売上は524億円ある。インテルは1〜3月期の決算発表で、マレーシア・ペナンの後工程 (組み立て・検査) の能力を広げたと書いている。インテル向けの基板の一部は、半導体を組み立てる米国外の拠点に納めているとみられる。
インテルは7月の決算説明会で、先端パッケージングの受注残が増えており、2027年に顧客の製品の量産が始まるのに合わせて量産体制に移すと説明した。基板とメモリーの確保も進めている。イビデンの電子部門の受注高は2,230億円で20.7%増え、受注残高は391億円で27.8%増えた。2026年3月期の設備投資は643億円で、うち電子部門が581億円を占め、主にパッケージ基板の製造設備に充てた。テラファブはインテルにパッケージングの力も求めている。インテルのパッケージングが拡大し、その基板をイビデンが受け持てば、その分は同社の「主な相手先別の販売実績」のインテル向けに表れる。
テラファブについての開示は大枠の合意にとどまり、インテルの14Aは自社製品を前提に開発完了を確約した段階にある。日本の装置・部材メーカーの報告書で確かめられるのはインテル向けの比重で、レーザーテックが20.7%、イビデンが18.1%だ。10月の設計キット0.9版の顧客への提供、外部の顧客の名を挙げる開示が出るかどうか、レーザーテックの四半期ごとの受注が、テラファブの需要が日本企業に及んだかを見極める材料になる。2社の決算の一覧はレーザーテックの銘柄ページとイビデンの銘柄ページにまとめている。
※2026年10月4日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版でテラファブを「マスク氏率いる半導体設計チーム」とした記述は、スペースXの目論見書の定義に合わせて半導体製造の計画に改めました。旧版の「2028年までの小規模量産」は、当事者が日程を未定としているため削除し、2028年はインテルの自社製品の量産の年と改めました。14Aの電源配線の説明は、18Aの方式を発展させた別の方式に改めました。メディアテックとの提携、9か月の設計周期、3つの工程で同時に試作を発注したとする記述、装置の割高な緊急調達、台湾の24時間の開発体制などの記述は、当事者の提出書類で確かめられないため削除しました。日本企業の節は、インテル向けの売上を公表しているレーザーテックとイビデンの有価証券報告書の数字に差し替えました。
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