CPEは、光通信、メモリー、電源を1つの半導体パッケージの中にまとめる構想だ。部品を24個載せる案では、1個の歩留まりが99%でも全体は79%に下がる。編集部が確認した日本の8社に、3つをそろえた製品の量産時期を示した会社はない。
CPE (Co-Packaged Everything) という呼び名は、英語圏のSNSで使われている。ある投稿者はこの構想を、これまで見た中でも特に大胆だと評した。実現すれば半導体集積の究極の形になるとみる一方、量産で歩留まり (良品率) を確保するのが難しく、消費電力も大きいと指摘している。投稿者によると、CPEは、光電融合と呼ばれるCPO (Co-Packaged Optics) の考え方をメモリーや電源にも広げたものだ。
編集部は構想の中身を各社の発表で確かめ、消費電力と歩留まりを試算したうえで、日本の部品メーカーの開示と突き合わせた。台湾積体電路製造 (TSMC) は光、メモリー、電源の3つの技術をいずれも公表している。一方、光部品を手がける住友電気工業は、CPOの本格普及を2028〜2029年とみる。電源は、プロセッサーの真下に置くモジュールの量産が始まった段階だ。
CPEは光・メモリー・電源を1つのパッケージにまとめる
パッケージは、半導体チップを保護し、基板と電気的につなぐ部品だ。CPEは、3つの技術を組み合わせる。プロセッサーと同じパッケージに光通信の部品を載せるCPO、メモリーを載せるCPM (Co-Packaged Memory)、電源を取り込むCPP (Co-Packaged Power) だ。
| 技術 | 内容とねらい |
|---|---|
| CPO (光) | 光エンジン (電気信号と光信号を変換する部品) を半導体のすぐ近くに置く。電気で伝える距離を縮め、その先を光で送って消費電力を大きく減らす |
| CPM (メモリー) | 広帯域メモリー (HBM) などの次世代メモリーを積層し、プロセッサーのすぐ近くに置く。プロセッサーとメモリーの間で起きるデータ転送の遅れを減らす |
| CPP (電源) | 電源管理ICや電圧調整回路をパッケージの中に取り込む。電圧降下やノイズを抑え、大型化するAI向け半導体に大きな電力を安定して供給する |
(出所: SNSで共有されているCPEの説明を基に編集部が作成)
CPEという語を誰が最初に使ったかは確認できていない。編集部が確認した範囲では、TSMC、米エヌビディア、米ブロードコムの発表資料に、CPE、CPM、CPPの語はなかった。
3つの技術は、TSMCの計画と重なる。TSMCは2025年4月23日の発表で、高性能コンピューティング (HPC) 向けの技術として、先端パッケージのCoWoS (コワース) に続けて、ロジック半導体と組み合わせる技術を3つ挙げた。光エンジンのCOUPE (クープ)、次世代のHBM4の最下層でメモリーを制御するロジックチップ (ベースダイ) の製造技術、AI向けの新しい電圧調整回路 (IVR) だ。CPEの光、メモリー、電源は、この3つに当たる。ただ、TSMCは3つを1つのパッケージにまとめるとは述べていない。CoWoSの構造は用語辞典のCoWoSのページで説明している。
ガラスの中間基板に部品24個を並べる案
投稿者が紹介した案は「3.5次元の異種チップ集積」と題されている。チップを横に並べる2.5次元の実装と、縦に積む3次元の実装を組み合わせるためとみられる。案には、特許出願中との記載がある。
部品を載せる土台は、ガラスの中間基板 (インターポーザー) だ。ガラスに貫通電極 (TGV) を設け、表面に酸化シリコンを絶縁膜に使った再配線層を形成する。配線の幅と間隔は最小0.2マイクロメートルだ。
その上に、2組の半導体を並べる。1組目は、プロセッサーと、これを挟んで両側に3個ずつ並ぶ計6個のHBMだ。2組目は、データの行き先を振り分けるスイッチICと、その四辺に4個ずつ並ぶ計16個の光エンジンだ。光エンジンは1個ずつ光ファイバーで外部とつながる。部品は合わせて24個になる。
光エンジンは2枚のチップを重ねてつくる。光の通り道をつくり込んだ光集積回路 (PIC) の上に電子回路チップ (EIC) を載せ、銅の端子同士を直接つなぐハイブリッドボンディングで接合する。光ファイバーは下側の光集積回路につなぐ。
中間基板の下には、絶縁フィルム (ABF) を重ねて配線層をつくった樹脂製のパッケージ基板を置く。これらをプリント基板に実装する。
この案に電源の部品はない。電源は、投稿者がCPEの3つ目の技術として挙げたものだ。案の中心は、光とメモリーを1つの中間基板にまとめる点にある。
CPOの消費エネルギーは1ビット5〜7ピコジュール、光トランシーバーの約3分の1
投稿者が挙げた課題の一つは、消費電力の大きさだ。ただ、光通信に使う電力に限れば、各社の公表値ではCPOのほうが少ない。光通信では、1ビットを送るのに使うエネルギーをピコジュール (1兆分の1ジュール) の単位で比べる。
米インテルは2024年6月26日、光で信号を入出力するチップレット (小型のチップ) をCPU (中央演算処理装置) と同じパッケージに載せ、動作を実証したと発表した。消費エネルギーは1ビット当たり5ピコジュールで、装置の前面に差し込んで使う着脱式の光トランシーバー (約15ピコジュール) の3分の1に当たる。
ブロードコムの資料から計算しても、近い値になる。同社は2024年の半導体の国際会議「ホットチップス」で、通信容量が毎秒51.2テラビットのネットワークスイッチの消費電力を方式ごとに示した。光の接続にかかる電力は、CPOが光エンジン241ワットと、パッケージの外に置くレーザー光源 (外部光源) 118ワットの計359ワットだった。信号を補正する半導体 (DSP) を載せた光トランシーバーは1,024ワット、DSPを省いた光トランシーバーは630ワットだ。編集部が通信容量で割ると、1ビット当たりの消費エネルギーはCPOが7.0ピコジュール、DSPを省いた光トランシーバーが12.3ピコジュール、DSPを載せた光トランシーバーが20.0ピコジュールになった。この計算では、CPOはDSPを載せた光トランシーバーより65%少ない。ブロードコムは同じ資料で70%少ないとしており、編集部の計算とは5ポイントの差がある。
エヌビディアは2025年8月の開発者向けブログで、光トランシーバーの消費電力は1ポート当たり30ワットに達することが多く、CPOなら最小9ワットに抑えられると説明した。同社は2025年3月18日にCPOを使ったネットワークスイッチを発表し、電力効率は光トランシーバーを使う従来の方式の3.5倍になるとした。2026年5月31日には、イーサネット用の機種の生産を始めたと発表している。TSMCも2026年4月22日の発表で、パッケージ基板に載せるCOUPEを使ったCPOの生産を2026年に始めるとした。プリント基板に取り付ける光トランシーバーに比べ、電力効率は2倍、遅延は10分の1になるという。
量産が始まったのはスイッチ向けのCPOだ。インテルが示したのは試作品で、同社は製品化の時期を明らかにしていない。編集部が確認した範囲では、エヌビディアも画像処理半導体 (GPU) のパッケージに光エンジンを載せた製品を公表していない。プロセッサーと光エンジンを1つの中間基板に並べるCPEは、スイッチ向けの次の段階に当たる。方式の違いはCPO・NPO・LPOを比べた記事で扱った。
メモリーは量産済み、HBMは2028年に1パッケージ20個へ
3つのうち、メモリーはすでに量産段階にある。プロセッサーの隣にHBMを並べた製品が出荷されている。CoWoSは、プロセッサーとHBMを中間基板の上に並べる技術で、AI向けの半導体に広く使われている。
1つのパッケージに載せるHBMの数は増える。TSMCは2026年4月の発表で、現在生産しているCoWoSの大きさを、露光装置が1回で焼き付けられる面積の5.5倍と説明した。2028年には14倍に広げ、大型のロジック半導体約10個とHBM20個を1つのパッケージに載せる計画だ。
HBMの製造技術も、ロジック半導体に近づいている。韓国のSKハイニックスは2024年4月19日、HBM4のベースダイに、TSMCのロジック半導体の製造技術を使うと発表した。限られた面積に多くの機能を詰め込むためだ。TSMCは2025年の発表で、ベースダイ向けに回路線幅12ナノメートルと3ナノメートルの世代の技術を提供するとしている。
電源はプリント基板の上からプロセッサーの真下へ移る
AI向けの半導体は1ボルトを下回る低い電圧で大きな電流を使うため、電源から半導体までの距離が長いと、配線での電力損失が大きくなる。そこで、プロセッサーの真下から電力を供給する「垂直給電」が使われ始めた。
TSMCは2025年の発表で、AI向けの新しい電圧調整回路を挙げた。電源用のICを別にプリント基板へ載せる方式に比べ、垂直給電で供給できる電力の密度は5倍になるという。
給電の仕組みは、データセンター全体でも変わる。エヌビディアは2025年5月20日、800ボルトの直流で給電する方式を2027年から導入し、消費電力が1台1メガワットのラックに対応すると発表した。ラックの中で800ボルトを12ボルトに下げる。半導体が使うのは1ボルト未満で、最後は半導体のそばで電圧を下げる。TDKは2026年9月の資料で、この最終段の変換回路をプリント基板の上に置く方式と、パッケージの中に置く方式を並べて示している。最終段の変換回路をどこまでプロセッサーに近づけるかが、電源をパッケージに取り込むうえでの焦点だ。
部品24個なら歩留まりは79%、1個99%でも掛け算で下がる
投稿者が挙げたもう一つの課題が、歩留まりだ。1つのパッケージに載せる部品が増えるほど、すべてが正常に動く確率は下がる。
編集部は、この案の部品の数で試算した。プロセッサー1個、HBM6個、スイッチIC1個、光エンジン16個で、部品は24個になる。部品1個が実装後も正常に動く確率を99%とし、不良が部品ごとに独立して起きると仮定すると、24個すべてが正常に動く確率は79%になる。1個の確率が99.9%なら98%だ。パッケージ全体で98%を保つには、1個当たり99.92%が必要になる。
部品が増えれば、条件はさらに厳しくなる。TSMCが2028年に計画するCoWoSは、ロジック半導体約10個とHBM20個で、部品は約30個になる。同じ仮定では、1個が99%のとき全体は74%に下がる。HBMは1個の中に多数のメモリーチップを積み重ねており、光エンジンも2枚のチップを重ねるため、チップの数で数えればさらに多い。この計算は部品の歩留まりを単純に掛け合わせた試算で、各社の実際の歩留まりを示すものではない。
各社は、部品1個の不良でパッケージ全体が不良になるのを防ぐ工夫を重ねている。ブロードコムは、検査で良品と確認した光エンジンを組み立ての最後に取り付ければ、歩留まりを高められると説明している。エヌビディアは、光ファイバーを着脱できるコネクターでつなぐ構造にし、組み立て工程の歩留まりを高めたとしている。
量産後の保守にも課題がある。米シスコシステムズの技術者は、米電気電子学会 (IEEE) の実装技術の部会が公表した技術解説で、CPOは光部品の大半が装置の内部にあるため、故障しても現場で修理や交換ができないと指摘する。現場で交換できるのは外部光源だ。
住友電工「CPO普及は2028〜2029年」、古河電工は光源に380億円投資
光部品の量産時期は、日本の部品メーカーが決算説明会などで明らかにしている。
エヌビディアは2025年3月の発表で、シリコンフォトニクス (シリコンの基板に光の回路をつくる技術) で協業する企業として11社を挙げた。日本の上場企業は住友電気工業だけだ。同社はCPO向けに、パッケージ内の光配線や、光源のレーザーを開発している。
住友電気工業は2025年11月の中間決算説明会の質疑応答で、CPOの本格普及は2028〜2029年になるとの見方を示した。光コネクターの部品の増産計画には、CPO向けの需要を含めていないとも説明した。2026年6月に公表した質疑応答の要旨では、CPO向け製品の売上高について、2027〜2028年に一部を計上できる見通しとした。CPO向けの高出力レーザーは、2026年度末に「パイロット出荷」を始め、2027年度から出荷が本格化するとみている。一方で、顧客はCPOと従来の光トランシーバーを並行して検討しているとして、CPOの需要がすぐに大きく伸びるかどうかには慎重な見方を示した。
同社の情報通信部門の2026年4〜6月期の売上高は865億円で、前年同期比約40%増だった。決算短信によると、増収の要因はデータセンター向けの光配線機器や光デバイスの需要と円安だ。CPO向けの売上高を計上するのは2027年以降の見通しで、足元の増収は既存の製品によるとみられる。
古河電気工業は光源の増産投資を決めた。同社は2025年12月17日、光通信用のレーザーチップを増産するため、岩手県に工場を新設し、タイの工場にも生産ラインを設けると発表した。投資総額は380億円で、岩手の工場は2028年4月に量産を始める。2028年の生産能力は、2025年度の5倍以上にする。同社は、このレーザーチップがCPO用の外部光源にも採用される見込みだとしている。
住友電気工業がCPOの本格普及を見込む時期と、古河電気工業が新工場で量産を始める時期は、2028年前後で重なる。光源や光部品の供給網は、エヌビディアの光部品の供給網を調べた記事で詳しく扱った。
村田製作所とTDKはプロセッサー直下に置く電源を量産、パッケージ内蔵の時期は示さず
電源は、パッケージへの内蔵の一歩手前にある。プロセッサーの真下に置くモジュールの量産が始まった段階だ。
村田製作所は、垂直給電型の電源モジュールを手がける。同社は2026年4月30日の決算説明会で、最初の案件では採用が見送られたと説明した。量産の直前にファームウエア (機器を制御するソフトウエア) の不具合が見つかったうえ、顧客側の計画が想定より短期間で終わり、すでに認定を得ていた他社1社の供給で足りたためだという。2026年4〜6月期には、この案件に関連して約30億円の損失を計上している。次の案件は同じ顧客向けで、7月31日の説明会では、生産は始めたが売上高への寄与は下期になるとした。同じ説明会で、電源事業の2026年度の増収見込みを、従来の250億円から380億円に引き上げた。主にデータセンター向けの伸びを見込む。
TDKは2026年2月5日、小型の電源モジュールの量産を始めたと発表した。プリント基板の裏面の、半導体の真下に当たる位置に置ける。同社は9月の事業戦略説明会で、プロセッサーのパッケージに内蔵する薄膜インダクター (電流の変動を抑える部品) の技術も示した。資料に、この部品の量産時期の記載はない。
イビデンは基板を130ミリ角超へ、大日本印刷などはガラス基板の量産を目指す
土台になる基板でも、日本企業の開示がある。
パッケージ基板を手がけるイビデンは、2026年5月の決算説明会資料で、基板の大きさが2025年の80ミリ角から2028年に110ミリ角になり、2030年以降は130ミリ角を超えるとの見通しを示した。同じ資料の図には、光と電気の変換や電源の強化も描かれている。同社は2026〜2028年度に、総額約5,000億円を電子事業に投資する計画だ。
パッケージ基板の絶縁フィルムは、味の素グループが手がける。味の素は2026年5月7日、子会社の味の素ファインテクノを通じて岐阜県可児市に新工場の用地を取得すると発表した。2028年に着工し、2032年に稼働させる。川崎市と群馬県昭和村に続く3カ所目の生産拠点になる。
ガラスに貫通電極を設ける技術は、日本では、パッケージ基板の芯材にガラスを使うガラスコア基板向けに開発が進む。大日本印刷は2025年12月16日、埼玉県の久喜工場に試作ラインを設けると発表し、2028年度の量産開始を目指すとした。日本電気硝子も、2028年の量産開始を目指している。いずれもガラスコア基板で、ガラスの中間基板とは用途が異なる。
| 会社 | 分野 | 開示の内容 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 住友電気工業 | 光 | CPO向けの光配線とレーザーを開発。光コネクター部品の増産計画はCPO向けの需要を含まず | CPOの本格普及は2028〜2029年 |
| 古河電気工業 | 光 | 岩手県でのレーザーチップ工場の新設などに380億円を投資 | 2028年4月に量産開始 |
| 村田製作所 | 電源 | 垂直給電型の電源モジュールを生産。最初の案件は採用見送りで約30億円の損失 | 次の案件の寄与は2026年度下期 |
| TDK | 電源 | プリント基板の裏面に置く電源モジュールを量産。パッケージ内蔵の薄膜インダクターの技術を公表 | 内蔵用部品の量産時期は記載なし |
| イビデン | 基板 | パッケージ基板を大型化。光と電気の変換、電源の強化も図示 | 2028年に110ミリ角、2030年以降に130ミリ角超 |
| 味の素 | 基板の材料 | 絶縁フィルムの新工場の用地を岐阜県可児市に取得 | 2028年着工、2032年稼働 |
| 大日本印刷 | ガラス基板 | ガラス貫通電極 (TGV) を設けたガラスコア基板の試作ラインを新設 | 2028年度の量産開始を目指す |
| 日本電気硝子 | ガラス基板 | パッケージ基板向けのガラスコア基板を開発 | 2028年の量産開始を目指す |
(出所: 各社の決算説明会資料、質疑応答の要旨、発表資料)
メモリーは、プロセッサーの隣に並べる形で量産が進む。光はスイッチ向けで生産が始まり、住友電気工業は本格普及を2028〜2029年とみる。電源は、プロセッサーの真下に置くモジュールの量産が始まった。3つを1つのパッケージにまとめれば、部品が増える分だけ、1個に求められる歩留まりは高くなる。編集部が確認した8社に、3つをすべて備えた製品の量産時期を示した会社はなかった。
住友電気工業と村田製作所の開示は住友電気工業の銘柄ページと村田製作所の銘柄ページに、イビデン、古河電気工業、TDKの企業情報は企業データベースのイビデン、古河電気工業、TDKの各ページに掲載している。後工程の全体像は半導体技術の体系解説の製造の章で説明している。
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