エヌビディア関連の日本株を分類した一覧が決算前に出回っている。66銘柄すべてを有価証券報告書と突き合わせると、中核とされる5社のうち1社は減収減益で、最も増益率が高かったのは小型に分類された銘柄だった。

関連銘柄を7つの区分に整理し、中核と間接受益に分ける読み方が広く共有されている。区分そのものは事業内容に沿っており、大きく外れてはいない。ただし「中核」という言葉が示すのは供給網での位置であって、業績が伸びているかどうかではない。この2つは日本語で同じ「関連が強い」と表現されるため、混ざりやすい。金融庁のEDINETに提出された有価証券報告書から66社の実額を取り、区分と実績が一致しているかを確かめた。

66銘柄すべてを有価証券報告書で突き合わせた

対象は7区分に並ぶ66銘柄である。全社についてEDINETコードと決算期、資本金を確認したうえで、供給網での位置づけが「中核」とされる企業と、それ以外に分類された企業から代表を選び、直近通期の売上高と営業利益を1社ずつ取り出した。

決算期が会社ごとに違う点は先に断っておく必要がある。3月期が大半だが、ジーデップ・アドバンスは5月期、HPCシステムズは6月期、アセンテックは1月期、ABEJAは8月末、フィックスターズは9月期、モルフォは10月期と分かれている。同じ「直近通期」でも見ている期間が最大で11か月ずれる。四半期の業績が振れやすいと言われる分野で、この差は小さくない。

中核5社の1社は減収減益、最も伸びたのは小型に分類された銘柄

中核とされる5社の直近通期は次のようになった。ジーデップ・アドバンスは売上高69億4,901万円で4.8パーセント増、営業利益11億1,741万円で33.0パーセント増。リョーサン菱洋ホールディングスは売上高3,599億4,800万円で0.04パーセント増とほぼ横ばい、営業利益101億2,800万円は18.6パーセント増えたが、当期純利益は74億4,000万円で20.7パーセント減った。マクニカホールディングスは売上高1兆2,141億9,600万円で17.4パーセント増、営業利益419億5,000万円で5.8パーセント増。HPCシステムズは売上高70億6,443万円で1.7パーセント増、営業利益6億3,624万円で49.4パーセント増である。

5社目が食い違う。東京エレクトロンデバイスは売上高2,037億4,800万円で5.8パーセント減、営業利益102億5,300万円で17.7パーセント減と、減収減益になっている。中核に置かれた5社のうち1社だけ、実績の向きが逆を向いた。

中核とされる序列と直近通期の実績
中核とされる序列と直近通期の実績

対照的なのが、小型の関連株として一段下に置かれたAKIBAホールディングスである。売上高267億8,264万円で46.6パーセント増、営業利益12億9,066万円で80.2パーセント増、当期純利益は1億1,227万円から8億8,305万円へ7.9倍になった。今回調べた範囲で増収率も増益率も最も高い。自己資本比率24.9パーセントという薄さは付いて回るが、区分の序列と実績の順位は一致していない。

もう1つ、増収が利益に届いていない例がある。ヘッドウォータースは2025年12月期の売上高が39億40万円で34.2パーセント増えた一方、営業利益2億2,925万円は25.6パーセント減、当期純利益は2億7,279万円から5,766万円へ78.9パーセント減った。従業員は240人から389人へ62パーセント増えている。人を先に入れて案件を取りに行く段階にあり、売上の伸びがそのまま利益にならない構造である。

マクニカにも注意すべき変化がある。売上高が17.4パーセント伸びる一方で、総資産は5,564億3,800万円から7,008億8,700万円へ膨らみ、自己資本比率は45.4パーセントから39.8パーセントへ下がった。商社が扱う品目が高額になるほど、在庫と売掛金が資産を押し上げる。伸びの中身を見るには、売上高だけでなく資産の増え方を並べる必要がある。

従業員34人と5,261人が、同じ1人あたり売上高になる

66銘柄を一括りに「関連株」と呼ぶとき、最も見落とされるのが規模の差である。資本金でみると、Kudanの1,300万円からソニーグループの8,813億5,700万円まで、およそ6万8,000倍の開きがある。同じ材料で株価が動いても、その材料が全社業績に占める重みは桁で違う。

資本金と1人あたり売上高の開き
資本金と1人あたり売上高の開き

従業員1人あたりの売上高を並べると、別の姿が見える。マクニカは5,261人で1兆2,141億円を扱い、1人あたり2億3,079万円になる。リョーサン菱洋は1,644人で2億1,894万円。そしてジーデップ・アドバンスは、従業員34人で69億4,901万円、1人あたり2億439万円である。人数は155分の1でありながら、1人あたりの売上高はほぼ並ぶ。

これは商社型の事業に共通する形で、仕入れた製品をそのまま納める比率が高いほど、1人あたりの金額は大きく出る。同社の営業利益率16.1パーセントは、マクニカの3.5パーセント、リョーサン菱洋の2.8パーセント、東京エレクトロンデバイスの5.0パーセントより高い。少人数で高付加価値の構成を組む事業と、量を回す商社とでは、同じ「関連株」でも利益の作り方が違う。

一方でヘッドウォータースは389人で39億40万円、1人あたり1,003万円にとどまる。人が価値を作る受託開発では、この数字は低く出るのが自然である。1人あたり売上高は事業の型を映すのであって、優劣を測る物差しではない。並べるときは型をそろえる必要がある。

決算前の本体は粗利率74.9%、棚卸資産が1四半期で20.5%増えている

日本株の側を見る前に、本体の基準点を確かめておく。米国証券取引委員会に提出された直近の四半期報告によれば、2026年4月26日に終了した四半期の売上総利益は611億5,700万ドル、売上原価は204億5,800万ドルで、合計した売上高は816億1,500万ドルになる。粗利率は74.9パーセントである。前年同期は売上総利益266億6,800万ドル、売上原価173億9,400万ドルで売上高440億6,200万ドル、粗利率60.5パーセントだった。売上高は85.2パーセント増え、粗利率は14.4ポイント上がっている。

通期でみると2026年1月期の売上高は2,159億3,800万ドル、粗利率71.1パーセント、営業利益1,303億8,700万ドルだった。直近四半期の74.9パーセントは、その通期平均を上回る水準にある。

先行指標として見ておく価値があるのが棚卸資産である。2026年1月25日時点の214億300万ドルから、2026年4月26日時点で257億9,700万ドルへ、1四半期で20.5パーセント増えた。次の世代の製品を出荷する前に部材を積む動きと、需要が鈍って在庫が滞る動きは、この数字だけでは区別できない。粗利率と合わせて次の四半期を見る必要がある。

なお、この記事を書いている時点で、次の四半期の決算を伝える臨時報告書は同委員会にまだ提出されていない。直近の臨時報告書は2026年8月17日付である。ここで挙げた数値はすべて、決算発表前に確認できる提出済み書類にもとづく。

7つの区分と66銘柄

区分ごとの全銘柄を、企業データベースの該当ページとともに並べる。

① GPU・AIサーバー、半導体商社、高性能計算 (14銘柄)

証券コード企業供給網での位置
5885ジーデップ・アドバンスGPUサーバーとAI基盤の構築。従業員34人
167Aリョーサン菱洋ホールディングス半導体商社。2024年に2社が統合
3132マクニカホールディングス半導体・電子部品の商社最大手
6597HPCシステムズ科学技術計算向けの計算機を個別設計
2760東京エレクトロンデバイス半導体商社。GPUとネットワーク製品
3020アプライドGPUワークステーションの製造販売
3156レスター組み込み向けGPUと映像・ロボット用途
6840AKIBAホールディングス子会社がGPUサーバーを販売
7485岡谷鋼機鉄鋼・機械の専門商社。2月末決算
8020兼松電子・ITを軸とする総合商社
2338クオンタムソリューションズデータセンター構想は計画段階
3565アセンテック仮想デスクトップとGPU基盤。1月期
1721コムシスホールディングス通信インフラ工事の最大手
6778アルチザネットワークス通信試験装置。7月期決算

② AI導入、システム構築、高速化ソフト (7銘柄)

証券コード企業供給網での位置
7595アルゴグラフィックス設計・解析システムを製造業へ導入
4011ヘッドウォータースAI実装の受託開発。従業員389人
8001伊藤忠商事子会社の情報システム会社が構築を担う
2327日鉄ソリューションズ企業向け生成AI基盤の構築
3687フィックスターズ並列計算とソフトウェア最適化。9月期
6701NEC生成AIと映像AIを企業・官公庁へ
6702富士通AI計算基盤と産業向け統合基盤

③ AIファクトリー、GPUクラウド、通信、データセンター (8銘柄)

証券コード企業供給網での位置
9434ソフトバンク国内AIクラウドと通信網へのAI組み込み
9432NTTグループがAI基盤とGPUクラウドを担う
6501日立製作所鉄道・電力・製造の現場へAIを実装
3776ブロードバンドタワー都市型データセンターの運営
4751サイバーエージェント国産の大規模言語モデル開発。9月期
3778さくらインターネット国産GPUクラウドの中核
4784GMOインターネットGPUクラウドの商用展開。12月期
9433KDDI大阪・堺のAIデータセンター

④ エッジAI、画像認識、AIソフト (7銘柄)

証券コード企業供給網での位置
3652ディジタルメディアプロフェッショナル画像処理向け半導体設計と組み込みAI
4425Kudan自己位置推定と地図生成。資本金1,300万円
6629テクノホライゾン映像機器とマシンビジョン
6771池上通信機高精細映像処理。周辺の連想にとどまる
6752パナソニックホールディングス傘下の供給網ソフト会社がモデル開発基盤
5574ABEJA生成AIの実装基盤。8月末決算
3653モルフォ画像処理ソフトの開発。10月期

⑤ フィジカルAI、ロボット、自動運転 (14銘柄)

証券コード企業供給網での位置
6506安川電機産業用ロボットの学習と協調制御。2月末
6954ファナック工作機械と産業用ロボットの世界大手
7012川崎重工業医療・造船・輸送・航空宇宙へ展開
6758ソニーグループ画像センサーと映像AI。資本金は国内最大級
6645オムロン製造現場の検査・制御・自動化
6326クボタ自律農機とスマート農業。12月期
1803清水建設建設現場の安全管理へ映像AI
7267本田技研工業研究開発子会社がモビリティとロボティクス
7203トヨタ自動車次世代車両に車載計算基盤を採用
7201日産自動車高度自動運転に対応する車両基盤
7202いすゞ自動車自動運転バスの開発
8031三井物産物流・製造・産業現場への導入支援
8058三菱商事産業・モビリティ・エネルギーへの実装
6301小松製作所建設機械への映像認識の搭載

⑥ 半導体製造装置、検査、先端実装、電源 (10銘柄)

証券コード企業供給網での位置
4062イビデンAIサーバー向けパッケージ基板
6146ディスコ切断・研削・薄化装置
6857アドバンテスト半導体検査装置。営業利益率44.2%
8035東京エレクトロン半導体製造装置の国内最大手
6315TOWA先端実装向けの成形装置
7729東京精密測定機と半導体製造装置
7735SCREENホールディングス半導体洗浄装置で世界上位
6525KOKUSAI ELECTRIC成膜・熱処理装置
6723ルネサスエレクトロニクス車載と産業向けマイコン。12月期
6963ローム炭化ケイ素を中心とするパワー半導体

⑦ 光通信、電力、冷却、データセンター設備 (6銘柄)

証券コード企業供給網での位置
5803フジクラ超多心・高密度の光ファイバー
5801古河電気工業光ファイバーとコネクターの増強
5802住友電気工業次世代の光配線を開発
5805SWCC高密度光ケーブル
6777santec Holdings波長可変光源と光測定装置
6504富士電機無停電電源装置と受変電、冷却

検証できたことと、できなかったこと

有価証券報告書と米国の提出書類から確認できたのは、各社の売上高と利益、従業員数、資本金、決算期である。66社すべての上場区分とEDINETコードを照合し、代表8社の直近通期を実額で取った。ここまでは誰が計算しても同じ値になる。

確認できなかったものもはっきりしている。第1に、各社のエヌビディア向け売上高である。日本の開示制度では、特定の取引先向けの売上を単独で示す義務は原則としてない。装置株や光通信株が「関連度が高い」とされる根拠は、開示された数字ではなく事業内容からの推定にとどまる。第2に、市場規模の予測値である。調査会社が公表する2026年の投資額や市場成長率は、有価証券報告書にもSECの提出書類にも現れない。第3に、提携の発表から受注と量産、利益への貢献へ進むかどうかである。提携そのものは公表されても、そこから生まれる売上高は開示されない。

66銘柄を追うなら、区分ではなく決算期をそろえて売上高と営業利益の伸び、そして総資産と自己資本比率の変化を並べるのが確実である。今回それを実行した範囲では、中核とされる5社のうち1社が減収減益で、最も増益率が高かったのは小型に分類された銘柄だった。個別の銘柄と過去の分析は銘柄レーダー企業データベースから辿れる。